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日本は原油を円で買っているのか?ガソリンの元の値段をたどる

ペトロダラーの表と裏:第1回

ガソリンは円で払っている。灯油も円、電気代も円。では、その元になる原油も、日本は円で買っているのだろうか。

ここで少し立ち止まる人は多いと思う。日本で使うものなのだから、どこかで円で買っているような気がするからだ。

けれど、原油の値段は、私たちがふだん目にする買い物とは少し違う場所で見えている。米国エネルギー情報局(EIA)の公開ページを見ると、WTI(米国の代表的な原油指標)やBrent(欧州で広く参照される代表的な原油指標)といった原油価格が、日々、ドル/バレルで並んでいる。少なくとも、公開されている代表価格の世界では、原油は円ではなくドルを基準に見えている。

原油はドルで買う、とはどういう意味なのか。
円では買えないのか。
それは誰が、どこで、どういう意味でドルを使っているということなのか。

まずは、このもっとも基本的な疑問から始めたい。


ガソリンは円で払う。では、原油も円なのか

私たちが見ているのは、あくまで日本国内の価格だ。ガソリンスタンドの表示も、家計簿の出費も、全部円で記録される。だから、「原油も円で買っているのでは」と思うのは、まったく不自然ではない。

ただ、ここには一つ飛ばしてはいけない段階がある。ガソリンは、原油そのものではない。原油がどこかから運ばれ、精製され、流通し、税も上乗せされて、最後に私たちは円で払っている。EIAの公開情報でも、原油価格とガソリン価格は関係していても、そのまま同じものではないことが示されている。

つまり、私たちが見ている円建てのガソリン価格と、その手前にある原油の国際価格とは、同じ「油の値段」ではない。まずこの違いを意識するところから始めたほうがよいだろう。

原油の値段は、私たちの買い物とは別の場所で見えている

その一つが、EIAの価格ページだ。ここを見ると、WTIとBrentが、原油価格として日次で並んでいる。つまり、原油価格には、誰かが勝手につけた値札ではなく、日々参照される公開の代表価格がある。

ニュースで「原油価格が上がった」「原油価格が下がった」と言うとき、その数字はこうした代表価格をもとに語られている。EIAは別の解説記事でも、WTIとBrentを、原油市場の代表的な基準価格として扱っている。

ここで見えてくるのは、原油は日本の中だけで値段が完結する商品ではない、ということだ。少なくとも、私たちが原油価格として目にする数字は、もっと広い市場の中で決まっている。

原油価格は、WTIやBrentといった代表指標を通じて、ドル/バレル単位で日々公開されている。【出典】EIA Daily Prices

原油の代表価格は、主にドルが基準になっている

では、それはたまたまドル表示になっているだけなのだろうか。ここでもう一歩だけ進んでみる。

主要原油指標の一つであるWTI先物について、米国の先物取引所CME Groupの公開契約仕様を見ると、価格表示は1バレル当たりの米ドルとセントとされている。少なくとも主要な原油指標市場の公開仕様では、価格の基準通貨として米ドルが使われている、ということだ。

Brentについても、ICE Futures Europeの公開契約仕様では、通貨は米ドル建てと明記されている。WTIとBrentという主要な二つの代表指標を見ても、価格の基準としてドルが前面に出てくることがわかる。

ここまで来ると、最初の問いに対する答えは少しはっきりしてくる。原油は、少なくとも「円でそのまま見える価格の世界」にいるわけではない。代表的な価格指標の世界では、まずドル/バレルで見えている。

主要原油指標の一つであるWTI先物は、公開契約仕様上、ドル建てで価格表示される。【出典】CME WTI 契約仕様
Brent原油の主要先物契約でも、通貨は米ドル建てで示されている。【出典】ICE Brent 契約仕様

原油は「ドルでしか買えない」という話ではない

ここまで来て、最初の問いに戻ってみたい。

ガソリンは円で払っている。では、原油は円なのか。

答えは、少なくとも単純な意味では「そうではない」だ。私たちが見ているガソリン代は、日本国内で最後に円として支払う価格である。その手前には、国際市場で参照される原油価格があり、その主要な指標ではドル/バレルが基準として使われている。

この二つは、同じ「油の値段」のように見えて、見ている層が違う。だから、店頭で円しか見えないからといって、その手前に通貨の問題がないわけではない。

原油の話は、私たちが日々見ている円の世界だけでは完結していない。その入口に、まずドルという基準がある。

では、なぜその基準通貨がドルになったのか。それは単なる慣習なのか。それとも、もっと別の理由があるのか。

次回は、そこを見ていきたい。


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