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編集者目線で考える「質と量、どっちが大事?」

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
「質と量、どっちが大事?」
 
これは、編集者をやっていると、本当に何度も聞かれる質問の1つです。著者さんからもそうですし、若手編集者からもそうですし、 最近だとSNSでもよく見かけるテーマではあります。
 
最初に結論からお伝えします。
 
どっちも大事、でも順番がある、です。編集者目線で言うと、【最初は「量」。途中から「質」】というのが正確な結論かもしれません。
 
今回のnoteでは、この話を編集現場のリアルと、「偉人たちの言葉」も借りながらお伝えします。


偉人たちが語る「まずは量」の真実

「最初は量が大事」という考えは、最近出てきた考え方ではありません。日本の経営者やトップアスリートは、驚くほど同じことを言っています。
 
たとえば、パナソニック創業者の松下幸之助さんです。松下さんは、経営や人材育成の文脈で一貫してこのようなことを言っています。

「まず数をこなさなければ、良いものは生まれない。判断力も、質も、経験量の中からしか育たない」

この考え方は、編集の仕事そのものだなと思います。
 
なぜ、最初は量なのか?
 
理由はシンプルです。量を出さないと、何もわからないからです。何が良いのかもわからないし、自分の癖や弱点も見えないし、比較材料も溜まらない。つまり、量がないと、そもそも判断する材料が少なすぎるから、いいかどうかも判断できない。その“判断の質”がどうしても落ちるわけです。
 
よく「最初から質を高めたい」と言う人がいますが、正直言うと、「質を高めよう」と本気で言えるのは、量を出した人だけと考えています。編集や執筆の世界でも、最初から質の高い企画を目指したものを見かけたりしますが、だいたい空回りするというのが現実です。

「圧倒的な量」が質を変える

「圧倒的な量」という考え方は、京セラ・KDDI創業者の稲盛和夫さんも、ほぼ同じことを言っています。稲盛さんの有名な言葉に、

「誰にも負けない努力をする」

というのがあります。
 
才能じゃない。センスでもない。継続的な大量行動こそが、仕事の質を変える、と。
 
これは、編集者の世界でも全く同じで、企画が当たる人は、例外なく出している量が多いと感じます。企画書として出す前から、いろいろリサーチしていたり、気になるテーマや著者候補をメモで書き溜めていたり、そういった量が半端ない。
 
「量が、見えない資産を生む」
 
と言えると思っています。
 
量を出すと、目に見えない資産が溜まるんです。例えば、こんなものが溜まります。
 
◎失敗パターンのデータ
◎読者や市場の反応
◎「これはウケる」「これはダメ」という身体感覚

 
といったものです。
 
特に3つ目に挙げた身体感覚は、六感という感覚に近いかもしれません。経験値から見いだされた感覚です。
 
なお、この感覚は、本を何冊読んでも、セミナーをどんなに受けても身につかないものだと感じています。それは場数でしか、身につかない感覚です。
 
元メジャーリーガーのイチローさんの名言の1つにこんな言葉があります。

「特別なことをするために、特別なことをするのではない」

日々の小さな反復。
誰にも注目されない量。

 
それが結果として、圧倒的な質になるというわけです。

「質」はいつから大事になるのか?

ここまで聞くと、「じゃあ、質はいらないのか?」と思うかもしれません。そんなわけはありません。質が一気に大事になる瞬間があります。
 
量を出して、手応えのある型が見えてきて、これ再現できそうだなと思った瞬間。
 
このタイミングがあるんです。実際、量を出していると見えてくるものがあります。
 
例えば、本のタイトル案を出すとき、量を出さないと見えてきません。編集者それぞれだと思いますが、基本的にメモレベルで言ったら、マイナーチェンジ案を含めて、100本以上のタイトル案を出します。量を出していると、手応えのある型がだんだん見えてきたりするから不思議です。「この案を軸に、応用すればいいかな」みたいなものが見えてきたりします。
 
このタイミングです。ここで質に全振りすると、質の高いレベルでアイデアがどんどん出てくるわけです。

編集現場における「量から質」へのフェーズ

ここまでお伝えしてきたように、「最初から質を追求」することは、基本的にはあり得ないと言ってもいいかもしれません。まずは量。企画にしろ、タイトル案にしろ、大量の未熟な企画やタイトルの中から一本が立ち上がるというイメージです。
 
以下に、編集現場における「量から質」へのフェーズに整理してみます。

【フェーズ①】量が効く「探索期」

最初のフェーズは、「探索期」です。
 
たとえば、企画でいえば、次のようなことをやります。
 
・同じテーマで20〜50本企画を出す
・タイトル、切り口、読者像を少しずつズラす
・通るかどうかはいったん、気にしない

 
この時点では、全部70点未満でOKです。むしろ、70点を狙い始めると
量が止まってしまいます。
 
このフェーズで、なぜそこまで量にこだわったほうがいいのか?
 
それは、企画会議でいえば、自分の想定とズレることが多いからです。会議出席者から「このキャッチコピーをメインコピーにしたほうが訴求力がある」とか、「この切り口を○○に変えたらよくなる」といった意見が出てきたりします。いい意味での「ズレ」ですよね。このズレが企画に新たな視点を与えてくれたりするわけです。
 
ただ、これも量を出した人だけが体験できます。量がないと、その意見の良さや驚きを自分ごとにすることが難しいからです。

【フェーズ②】量から「芽」が見える

量を出していくと、ある時点で変化が起きます。例えば、企画や企画会議で言えば、
 
・会議で他の人の意見や反応に一定の共通点が見えてくる
・自分でも「この切り口、強いな」とわかってくる
・ボツ企画が、素材に変わる

 
といった変化が見えてきます。
 
例えば、あるジャンルのすべてを網羅するよりも、1つのテーマに絞った「一点突破」的な企画やタイトルにしたほうがいいかもといったことが見えてくるんです。フェーズ①の「探索期」で出した100本のうちの2~3本がだんだん80点ラインになってくるわけです。

【フェーズ③】質を一気に上げる

ここまで来たら、質の出番です。「固定期」です。やることは一気に絞られます。例えば、企画で言えば、
 
・ターゲット読者を1人に絞る
・競合書を10冊以上、徹底的に見る
・タイトル、目次、ジャンルを完全に連動させる

 
といったことに注力します。読者が見え、差別化が一瞬で伝わり、書店の置き場所を想像できるところまで追究していくわけです。
 
以上が「量から質」への3つのフェーズです。

量で探し、質で決める

編集現場における「量と質」についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
 
あらためてまとめると、
 
◎量=探索
◎質=決断

 
という構図が成り立つと考えています。
 
「量と質」について、松下幸之助さんも、稲盛和夫さんも、イチローさんも、偉人の方々が言っていることは、
 
「まず、やれ。出せ。積め」
 
という共通点があります。
 
編集者としての結論は、「量で探して、質で決める」です。量も質も大切。でも、量が先だというわけです。これは、私たち出版の世界だけではなく、多くの世界でも言えることなのだと、あらためて感じます。
 
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