幼なじみの姫奈#2【もういっそ結婚】
「うん、なおったなおった。かわいいよ、ヒナ」
授業前の教室で、後ろからアルノの穏やかな声。
「オッケーオッケー」
正面のテレサが、ぐっと親指を立てる。
「もう本当最悪なんだけど・・・・・・」
顔を覆って、自分のチェックの甘さを悔やむ。
あんなに朝、鏡の前で戦ったのに。
後ろ髪にモコって残った寝ぐせ。
可愛いって思ってもらいたかったのに・・・
「寝癖くらい可愛いもんだって」
「そうそう、アルノの言う通り。むしろポイント高いんじゃない?うっかりドジっ子キャラみたいな」
ニヤニヤと楽しそうなテレサ。
「もぉー、ほんっと最悪」
「まあまあ、大丈夫だって」
アルノが優しく肩を撫でてくれる様子を見て、また口角を上げるテレサ。
「ヒナさ」
「なによ!」
「好きすぎでしょ、〇〇君のこと」
「ぶっ」
急に芯を食われて吹き出してしまう。
「てかさ、幼なじみで、毎日一緒に学校きて、テスト前は家で勉強教えてもらえてるって、もういっそ結婚しろと思ってるんだけど。こっちは」
「ええ;;け、結婚!!さすがに早いって!え、早くない?・・・早いよね?」
「はいはい、テレちゃん。からかわないの!そのへんにしときなさい」
アルノが注意してくれたのに、テレサの追撃は止まらない。
「今度私も〇〇君に勉強見てもらおうかな」
「え、ダメダメ;;ダメだよ;;」
「テレちゃん!やめなさいよ」
「はーい、でも、勉強見てもらってる時とかさ、どんな感じなの?2人きりで、そういう雰囲気にならないの?」
「ならないよ。さすがに集中してないのは申し訳ないし・・・ドキドキはしちゃうけど////」
「ふーん、でもなんとも思ってなかったら幼なじみって言っても、勉強見ないんじゃない?」
「そう?そうだよね?そう思うよね?」
「ヒナさ」
「なによ!」
「ぷっ、単純」
「ねえ!!もうほんと許せないんだけど。アルノ、もっと怒って!」
「テレちゃん、もう終わりだよ。終わったよ」
なんとか場をおさめようとするアルノと、目をなくして楽しそうに笑うテレサ。

「あはは。あ、テストでいい点とったら、ご褒美ほしいとか言ってみれば?」
「え!流石に悪いよ。こっちがお願いしてんのに」
「えー、いいじゃん言ってみたら、ご褒美ほしくないの?」
〇〇からのご褒美。
たしかにそんなのあったら、すごく頑張れる気がするけど
いいのかな・・・
「えっと・・・アルノはどう思う?」
「うーん、私は分かんないけど。ヒナが喜ぶなら、〇〇君も嬉しいんじゃないかな?」
ーーーーーー
学校が終わって、そのまま私の部屋で勉強を見てもらう。
教科書とノートが広げられたローテーブルの角を挟んで、斜め隣に座る。
近い////
いつも緊張はするけど、今日はいつもより胸が熱く脈打つ。
さっきのテレサたちの言葉がリピート再生されていて、ずっと落ち着かない。
油断すると右手も呼吸も止まってしまう。
それを〇〇に気づかれないように、必死に手を動かす。
『ヒナ、ここミスってる』
ふっと〇〇の優しい顔が近づいて、指でノートの数式を差す。
「あ、ほんとだ。昨日と同じとこ。ごめん」
『本番間違えなければいいんじゃない』
「うん・・・」
集中しないと。
消しゴムを走らせながら、頭の片隅でテレサの声が再生される。
言ってみたら・・・言えるわけない。
『ヒナ?』
「え、なに」
『手、止まってる。わかんない?』
「あ、ごめん;;」
シャーペンを持ち直す。
でも、全然頭に入ってこない。
〇〇は特に気にした様子もなく、自分のノートに視線を落とした。
睫毛、長いな・・・
違う違う;;そういうことを考えてる場合じゃない。
ちゃんと集中しないと、そう思っていたのに
「ねえ・・・」
自分の口からいつもより熱を帯びた声が出ていた。
〇〇が顔を上げる。
『ん?』
「えっと・・・」
『うん』
「テストで・・・いい点とったら」
『うん』
「ご、ご褒美って・・・もらえる?」

言っちゃった、そして即後悔。
・・・・・・
・・・・・・
沈黙。
三秒くらい。
体感は三年くらい。
『ご褒美?』
「う、うん。なんか、テレサが言ってて////いや、忘れて;;やっぱりいい」
『いいけど』
「えっ!!」
『なにがいい?』
からかうでもなく、ただまっすぐにこちらを見る。
「・・・わかんない」
『ふーん』
わかんないってなに?
我ながらわけがわかんない。
「ごめん・・・変なこと言って」
『じゃあ決めといて』
「え!」
『ヒナがそれで頑張れるなら、なんでもいいからさ』
当たり前みたいに笑いながら言われて、うまく言葉を返せなかった。
ねえ、その顔はずるいって////
ーーーーーー
お風呂からあがって、ベッドに倒れ込む。
「はぁ・・・」
見慣れた天井に〇〇の顔が、何度も浮かぶ。
ご褒美・・・
なんでもいい、って言った。
デートとか・・・
顔が熱くなって、ぎゅっと枕を抱きしめる。
「ねえ、アレクサ」
[はい]
「〇〇ってさ・・・」
少しだけ声が小さくなる。
「私のこと、どう思ってると思う?」
[情報が不足しています]
「むかつく!」
何きいてんだろ、分かるわけないのに・・・
[〇〇さんは分かりませんが、ヒナさんは〇〇さんのこと大好きですよね]
「ちょっと;;恥ずかしいから言わないで////」
[はい、分かりました。次からは言いません]
枕をつぶしながら、天井を見上げる。
「ねえ、ご褒美。デートって言ったらどうなるかな?」
[一般的には外出する可能性があります]
「それは知ってる!」
[それと、テストの点がよくないとご褒美はありません]
ほんとむかつく、コイツ。
「もう・・・」
ベッドにごろんと転がる。
ご褒美のために勉強を頑張るって、どういう状況だろう。
だいぶ不純すぎる動機だ。
でも・・・
頑張れる。絶対頑張れる。
「アレクサ、私テスト頑張るから!」
[はい、頑張ってください。応援しています]
「ご褒美////考えないとね////」
[お手伝いしますか?]
「ありがとう。でも自分で考える」
[分かりました、お手伝いできることがあったら言ってください]
「うん・・・アレクサ、電気消して」
[はい]
「おやすみ」
[おやすみなさい、ヒナさん]
電気が消える。
部屋が暗くなっても、顔の熱が引かない。
心臓もまだ、うるさい。
デート・・・
いや。
もういっそ結婚か?

自分で投げ込んだ手榴弾が、心臓でボカンと爆発する。
イタタタ;;;
早い////早いって////
胸をぎゅうぎゅう抑えながら、両脚をばたつかせてなんとか正気を保った。
【続け!】
読んでいただいてありがとうございます。
テレパンとアルノちゃんに出てもらいました。
ヒナちゃんと言ったらやっぱりこのふたりですね。
感想もらえたら嬉しいです。元気をくださいっ!
ありがとうございましたー!
