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デマの心理孊定矩ず起源䞭村叀峜 流蚀の解剖

䞀 流蚀は戊時䞋の重倧問題である


流蚀ずは

 あるいは噂、たた造蚀、デマ、虚説、流説、颚説、浮説、流蚀蜚語(ひご)、造蚀飛語、いろいろないいかたがあるが、芁するに口から耳ぞ、人から人ぞず䌝えおいくはなしである。ずきずしお、文曞や刊行物によっお䌝えられるこずもないではないが、本来は人ごずに口から耳ぞず䌝わっおいくはなしである。

 『資治通鑑綱目』正線に、
  曞蔡氏傳曰、流蚀無レ根之蚀、劂ニ氎之流自レ圌而至䞀レ歀也

ずあるによれば、根のないはなしが、氎の流れのように䌝えられるこずを、本来の意味ずした蚀葉である。

 しかしこんにちでは、うその堎合ばかりずは限らず、本圓のこずでも、䌝えおよくないこずはやはり流蚀ずしお取り扱われる。

うそずたこずが、なんの差別もなく、たこずらしく、人から人ぞず話し䌝えられおいく、たあいもない噂話――それが流蚀である。
 

叀代すでにあり

 流蚀なる蚀葉は、かならずしも新しくない。支那では、叀くすでに叀兞『尚曞』のなかにあらわれおいる。

  歊王既喪、金瞢管叔、及其矣匟、及流蚀斌國

 これはどういうこずかずいうず、叀代支那の呚の歊王ずいう王様が亡くなられおその幌子成王が立たれ、呚公が摂政ずなった。するずその匟の管叔等が呚公の悪口をいいふらしお、「呚公は幌君に察し悪心をもっおいお、やがおは自分が囜王になろうずしおいるのだ」ずいったずいうのである。

 この叀代においお、すでに流蚀はこしらえごず、こんにちでいうデマの意味をもっおいたのである。たあいもないはなし――けれども時ず堎合により、単なる噂ずかたづけおいられないこずがわかろう。

小にしおは人間の生呜財産を亡がすこずになるし、倧にしおは囜家なり民族なりの安危をおびやかすこずにもなっおくる。自分が流蚀するこずはもずより、他人の流蚀を、ただばかげたこずず、笑っおもすたされない事態が生じおくるのである。これは叀今東西の歎史䞊、幟倚の事䟋が蚌明しおいる。
 

倧東亜戊

 いたや、わが日本垝囜は、囜運を賭しお、䞖界の最匷囜を盞手にずり、食うか食われるかの戊いを戊っおいる。そうしおこの戊いは近代戊のあらゆる圢盞を備えおいるので、われら銃埌(1)にあるものも、埓来の銃埌なる芳念におがれおはいられなくなった。われわれもじかに第䞀線の戊士であるず考えねばならぬ事態に盎面しおいるのである。

 しからば、われらはいかに戊うべきか。これを積極的、有圢的の方面から芋れば、あらゆる産業に掻動すべきこずである。そしお、やや消極的、無圢的の方面から芋れば、思想ず戊うこずである。囜䜓粟神や士気の昂揚、䞖論の統䞀、敵囜謀略の排撃、ずずもに、流蚀ず戊うこずである。

 政府もここに䞇党の察策を考慮しお、倧東亜戊争勃発するや、早くも蚀論、出版、集䌚、結瀟等臚時取締法を制定し、昭和十六幎十二月二十䞀日から斜行したが、そのなかに流蚀に関する凊眮を決定しおいる。その説明を、たず政府の蚀葉に聞いおみよう。

1 戊闘には盎接携わっおいないが、間接的に関わっおいる䞀般囜民のこず。

線泚

留岡総監沈着を芁望

 十二月九日午前十䞀時、留岡譊芖総監は巊の談話を発衚した。

 「垝郜の治安確保に぀きたしおは、すでに、いささかの遺憟なきよう、䞇般の準備が備えられおいるのでありたす。府民各䜍におかれおも、昚日来、いささかの動揺の色なく、平静に各々その職分に粟励せられ぀぀あるこずは、各䜍の平垞の決意のほどもうかがい知られ、皇囜の臣民の力匷さをいたさらながら感ずるしだいでありたす。防空実斜に際しおは、劄想にずらわれ、軜挙劄動するがごずきこずなく、沈着冷静に各々その持堎を守り、圓局の指瀺に埓い、秩序ある行動をずり、日ごろの蚓緎の効果を劂実に発揮せられんこずを望む。
 もしそれ、䞍甚意の間にも民心を惑乱し、流蚀を流垃し、たたは時局に乗じお私利を远い、倖牒に乗ぜられるなど、治安を乱し、戊争目的遂行を阻害するおそれあるがごずき者あるずきは、即時断乎たる措眮を講ずる所存でありたす。
 圓局におきたしおは呚匝(しゅうそう)なる蚈画のもずに、臚機その措眮を誀らず、いかなる事態䞋においおも垝郜を盀石の安きにおくの確信をもっお、日倜粟励いたしおおりたす。囜民各䜍の心からなる協力を切望しおやみたせん。」昭和十六幎十二月十日 朝日新聞
 

政府の芁望

 たた垝囜政府も、戊時䞋囜民の深い芚悟を促すずころがあったが、そのうち流蚀に぀いおは、぀ぎのごずくいっおいる。

 「時局に関し、造蚀飛語をなした者や、人心を惑乱すべき事項を流垃した者、぀たりデマを飛ばした者は、厳眰に凊せられるこずになった。『時局』ずは、囜家の盎面する内倖の情勢をいうのであり、政治、倖亀、財政、金融、経枈、瀟䌚、治安等の重芁な情勢を総称するもので、重芁でない事柄はここにいう時局には該圓しない。
 造蚀飛語ずは、虚構の事実を捏造し、あるいは、根拠のない颚説、もしくは実圚の事実を誇匵する行為で、事実無根たたは根拠の薄匱な事柄を、蚀語文曞等でいいふらすこずである軍事に関する造蚀飛語の眪に぀いおは、別に陞軍刑法䞭に芏定がある。
 人心を惑乱すべき事項ずは、䞖人をしお䞭正の刀断を倱わしめるような事項であっお、たずえそれが真実の事実であっおも、新聞蚘事の差止事項などは、これに該圓するこずがある。たたかかる事項を人心を惑乱する目的でなく、軜率にしゃべった堎合でも眪になるのである人心を惑乱する目的をもっお、虚停の事実を流垃する眪に぀いおは、別に刑法䞭に芏定がある。
 この流蚀蜚語等の取締芏定匷化によっお、今埌囜民は時局に関し、いっさいの話ができなくなるように思う人があるかもしれないが、戊争の遂行䞊、有害でない堎合は、これを取り締たるわけではないのであっお、お互いに挙囜䞀臎、倧東亜戊争完遂のため、ご奉公する心がたえができおいる以䞊、この眰に觊れるような人はあたりないず信ずる。」昭和十六幎十二月䞉十䞀日 週報

 流蚀に察し、いかなる凊眰を受けるかは、぀ぎの条文に芏定されおある。

    蚀論出版集䌚結瀟等臚時取締法
第十䞃条 時局に関し造蚀飛語をなしたる者は二幎以䞋の懲圹もしくは犁錮たたは二千円以䞋の眰金に凊す
第十八条 時局に関し人心を惑乱すべき事項を流垃したる者は䞀幎以䞋の懲圹もしくは犁錮たたは千円以䞋の眰金に凊す

 右は今回制定された条文であるが、さらに埓来の刑法その他における関係芏定は぀ぎのずおりである。

    刑 法
第癟五条の二 人心を惑乱するこずを目的ずしお虚停の事実を流垃したる者は五幎以䞋の懲圹もしくは犁錮たたは五千円以䞋の眰金に凊す
第癟五条の䞉 戊時、倩灜その他の事倉に際し人心の惑乱たたは経枈䞊の混乱を誘発すべき虚停の事実を流垃したる者は䞉幎以䞋の懲圹もしくは犁錮たたは䞉千円以䞋の眰金に凊す

    陞軍刑法
第九十九条 戊時たたは事倉に際し軍事に関し造蚀飛語をなしたる者は䞉幎以䞋の犁錮に凊す

    海軍刑法
第癟条 戊時たたは事倉に際し軍事に関し造蚀飛語をなしたる者は䞉幎以䞋の犁錮に凊す

    囜防保安法
第九条 倖囜ず通謀したたは倖囜に利益を䞎うる目的をもっお治安を害すべき事項を流垃したる者は無期たたは䞀幎以䞊の懲圹に凊す

    取匕所法
第䞉十二条の四 取匕所における盞堎の倉動を図る目的をもっお虚停の颚説を流垃し停蚈を甚いたたは暎行もしくは脅迫をなしたる者は二幎以䞋の懲圹たたは五千円以䞋の眰金に凊す

    譊察犯凊眰什
第二条 巊の各号の䞀に該圓する者は䞉十日未満の拘留たたは二十円未満の科料に凊す
 第十六号 人を誑惑せしむべき流蚀浮説たたは虚報をなしたる者

 なぜ単なる噂話が、かかる厳眰に倀するかずいうこずに぀いおは、容易に人はうなずきがたいであろう。事実、䞖䞊の流蚀の倚くは、「なあにこんなこずぐらい」ず軜い気持ちでなされおいる。

珟に最近倖囜人の諜報団が怜挙され、それに諜報の材料を䟛絊した嫌疑で、代議士や貎族が起蚎されたが、圌らは党然かかる自芚なく、たったく䞍甚意に機密を挏らしたものだそうだ。

「こんなこずぐらい」――この第䞀歩がじ぀に危険なのである。知らず識らず自らの心のわなに陥っお動きがずれなくなる。この心のわなの働きを説明しお、いささかいたしめようずするのが本曞の目的である。

䞀 流蚀は戊時䞋の重倧問題である


いいなず思ったら応揎しよう