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デマの心理孊 芚曞序目次


線者おがえがき

 本皿は䞭村叀峜の著䜜『流蚀の解剖』を、珟代の文䜓で翻刻したものである。原文衚蚘を原則ずし、旧字などは垞甚挢字たたはひらがなにあらためた。線集方針に぀いおは埌述する。たた、流蚀ずいう語が珟代ではあたり聞きなれないものであるこずから、思いきっお『デマの心理孊』ず改題させおいただいた。本文冒頭で定矩されおいるずおり、流蚀ずはかならずしも嘘い぀わりのみを意味するわけではないけれども、さしあたっおこのほうが、わたしたちには想像が぀きやすいのではないだろうか。

 本曞は、人びずの営みにデマずいうものが぀きものであるこず、それが歎史䞊あたりに無反省にくりかえされおきたずいうこずを匷調しおいる。読みはじめおみるず、序盀に著述されおいる内容は歎史的な事件などのふりかえりず解説ばかりで、「これのどこが心理孊なのか」ず疑問に思われるかもしれない。しかし、珟代の無味也燥した「心のない心理孊」的芖点を捚おお読んでみるなら、列蚘された人びずの営みが――あるいは愚かさが、いかに珟代のものず盞䌌おいるかに気づかされるだろう。䜓癖論で知られる野口晎哉もたた、その著曞で、珟代人はさしお賢くなったわけではないずいうこずをいっおいる。心理孊者でもあった䞭村叀峜博士は本曞で、流蚀、あるいはデマずいうものがどのような時局に発生しやすいのか、そしおそれに察しおわたしたちがどう向きあうべきかを論じおいるのである。

 呚知のずおり、こんにちマスメディア、むンタヌネット、そしおずりわけがそれを媒介し、過床に促進しおいる。だが、これは珟代の病ずいうわけではないのである。人は虚劄にずり぀かれやすい。どうしようもなく。ここで重芁なこずは、わたしたちはふ぀う、それが虚劄だず意識すらしおいないこずであろう。わたしたちはそれを、個人のレベルでは、真実ないしは事実だず確信しおいるのだ。個人のレベルではずいったのは、この心理的過皋が、個人の氎準でのみ説明しうるものではないからだ。それは集合的な無意識性の問題でもある。しかし、ここでは深く論じないようにしよう。

 なお、本曞で挙げられおいる歎史的なできごずや事件は、䞭村博士による解説や意芋が加えられおいるけれども、それらはなんらかの歎史的解釈や断定を䞻たる目的ずしたものではない。たた、囜内倖の諞事件にかんしお民族や人皮、ないしは宗教などに蚀及しおいるが、それはなんらかの䟮蔑的差別的な意図を含むものではないこずに留意されたい。ずもするず、いくらかわたしたちに、旧人の先入芳や偏芋、あるいはたた時代錯誀的な迷信をさえ感じさせるこずもあるかもしれない。こずに本曞が著されたのが第二次倧戊䞭ずいうこずもあり、戊時䞋の囜家意識に関する蚀説などは、わたしたちにずっおなかなか容易に共感や理解をしがたいものもある。ずきの戊時䜓制や思想を瀌讃するこずも承認するこずも䞍可胜だし、ほかでもない政府圓局が悪質で決定的な流蚀の発信䞻䜓ずなりえ、か぀歎史的にしばしばそうであった事実も看過するわけにはいかない。しかし先人の著した曞物を読むずき、わたしたちは時代の蚌蚀をありのたた聞いおいるのだから、脊髄反射ぎみに拒絶したり冷笑したりしおはいけないのだ。およそ先人から孊べないこずはひず぀もない。そしおそのこずを熟慮しうる人だけが、歩を着実に前ぞすすめるのであろう。

 䞭村叀峜は心理孊者であり、いわく人は「知らず識らず自らの心のわなに陥っお動きがずれなくなる。この心のわなの働きを説明しお、いささかいたしめようずするのが本曞の目的である」。そしお本翻刻の目的は、あくたで流蚀ずいう、人びずの営みにおける普遍的な珟象を心理的歎史的に考察するこずである。情報ずいうものは埗れば埗るほどに有意矩なものだが、同皋床に人をたどわせ䞍幞にする――それが虚停であろうず、真実であろうず。

  線集方針およびおがえがき
 
 旧字旧かなは新字新かなに改めた。人名や固有名詞等で通䟋旧字を䜿甚すべきず思われるものは、原文のたたにした。
 人名や地名等のカタカナに぀いおは、明らかに誀字ず思われるものを陀き原文のたた衚蚘したが、あたり違和感がある語に぀いおは、珟圚の䞀般的衚蚘に修正した。
 明らかな誀字脱字は修正し、平明さの芳点から挢字をひらがな衚蚘にしたり、分割たたは改行し、鍵かっこなどを加えたりした箇所もある。
 昚今の人暩等の感芚に照らし、䞍適切な衚珟ず思われる箇所もいく぀かあるが、圓時の慣甚や著者の蚘述法を尊重し、そのたた衚蚘するこずずした。
 著述された事件や蚌蚀などは、なるべく出どころを調査しながら線集したものの、いく぀かははっきりず特定できなかったものもある。
 ずきおり芋かけられる「〇〇」や「××」などの衚蚘は、原文のたた蚘茉した。
 脚泚はすべお線者による。

序

心の敵ぞの宣戊

 流蚀(1)の正䜓は、圢は、色は、匂いは、味は、――これはむずかしい問題だ。しかも今日のわれわれにずっお、切実な問題だ。歊力の敵は倖郚からくるが、流蚀はわれわれの心に朜む有力な敵なのだから。

 歊力の敵には歊力で察抗する。軍の䜜戊に信頌し、その指導に埓えばよろしい。しかし心の敵には倧砲や飛行機ではだめだ。われわれ䞀人䞀人の心で察抗するよりほかはない。

 本曞はこの目的のために、流蚀なるものをいささか心理的に芳察し、心の察抗策を考察したものである。心理的ずいっおも、お手軜にたるめおはかりに茉せたり、ものさしで枬ったり、むやみに数字をならべたり、いわゆる孊者らしい取り扱いはしなかった。だが、われわれのずるべき心がたえは、これだけでも充分わかっおもらえる぀もりだ。

 䞭に遞んだ実䟋は、珟圚のなたなたしいものを倚く入れたかったが、はばかりがあっお充分に採録できなかった。そのかわり、公衚されたものは、煩をいずわず収茉した。はなばなしい戊蚘のたぐいはよく埌䞖に残るが、海倖通信のような地味な仕事は、通信員諞君の血みどろな苊心にもかかわらず、あたり残されないのが惜しいからである。これだけの事䟋によっおも、われわれがどんな情勢に盎面しおいるかずいうこずは、充分わかっおもらえる぀もりだ。

 さらば諞君 匷くたくたしい意志をもっお、歊噚なき心の戊いを勇敢に戊いぬこうではないか。

昭和十䞃幎九月 著者

1 根拠のないうわさ、デマ、たたそれをいいふらすこず。

線泚

目次流蚀の解剖

䞀 流蚀は戊時䞋の重倧問題である

   流蚀ずは
   叀代すでにあり
   倧東亜戊
   留岡総監沈着を芁望
   政府の芁望

二 流蚀は悲惚な結果を招来する

 灜害に関する流蚀犍
   関東震灜の流蚀狂乱
   安政の倧地震
   九州の倉灜
   倩正の地震
 迷信に関する流蚀犍
   キシヌネフの虐殺
   疫病の流蚀
   碑文谷仁王
   傷寒の病
   はしかの流行
   悪星の浮説
   蕎麊を食えば死ぬ
   雷鳎の虚蚀
   䞖界䞃分通り死亡
   䞉途川老婆
   通倜の参籠所
   蛇を呑む垂民
   気味悪い予蚀
   埡蔭参りの流行
 瀟䌚盞に関する流蚀犍
   幕末颚刺のチョボクレ
   悪貚に察する浮説
   城兵什に関する浮説
   婊女城募の流説
   散髪呜什を恐る
   コレラ隒ぎ
   高石村の赀痢暎動
   日米開戊説
   昭和初頭の金融恐慌
 戊争に関する流蚀犍
   宣䌝に敗れたドむツ
   アむルランドの独立暎動
   フランスの独探隒動
   ロシアの民族的苊悶
 革呜に関する流蚀犍
   フランス革呜
   ロシア革呜

䞉 流蚀は雑談を媒介ずする

   流蚀発生の倖郚的条件
   話したがるこず
   聞きたがるこず
   話題は人を支配する
   雑談には埮劙な刺激がある
   雑談ず垞䌚
   男女どちらが流蚀しやすいか
   幎霢関係ではどうか
   どんな教逊の人が
   どんな性栌の人が
   その他の諞条件

四 流蚀は矀衆心理に支配される

   個人ず矀衆
   矀衆の構成
   矀衆の意識
   囜民粟神の昂揚
   犠牲的粟神の昂揚
   矀衆は暗瀺暡倣性が増倧する
   矀衆は䞍可胜を可胜にする
   矀衆には残酷性がある
   矀衆は単玔である
   矀衆の理智は䜎䞋する

五 流蚀にはこんな特質がある

 流蚀は母胎がある
   各個人に共通の問題
   各個人が矀衆化する状態
 流蚀は成長する
   䞍自然なものが合理化する
   自然のものはたすたす自然化する
   人為的のものも合理化しようずする
   流蚀はしだいに拡倧する
   蓋然圢のものが断定圢になる
 流蚀は疟走する
 流蚀は砎壊する
   流蚀の匷迫
   生掻の砎壊
   経枈の砎壊
   瀟䌚の砎壊
   無甚の砎壊
   砎壊目的のデマ

六 敗戊囜は流蚀に苊しんでいる

 アメリカ
   サンフランシスコ事件
   ニュヌペヌクの空襲サむレン
   サンノれの怪機隊
   流蚀に躍る米人の醜態
   気にかかる「日本軍䞊陞」
   倚皮倚様の颚説
   ワシントンは流蚀の巷
   米に流蚀暪行
   神経戊でも日本勝぀
   ワシントンでも空襲隒ぎ
   敗戊に気も狂うアメリカ囜民
   コレヒドヌル島神経衰匱時代
   笑えぬアメリカ兵気質
   ルヌズノェルトの倧獄
   尻からはげるデマ
 むギリス
   愚鈍クヌパヌ
   支離滅裂のシンガポヌル
   地獄島シンガポヌル
   自暎自棄の攟送
   英海軍はかくお敗れたり
   英民心動揺はなはだし
   米英囜民の䞍安぀のる
   英劎働者の䞍満
   英囜の闇取匕暪行
   戊争開始埌の奇珟象
   闇で盗たれる煙草
 ゜ノィ゚ト連邊
   独の鋭鋒䞋戊う゜連の苊悶
   䞀郚に動揺する思想的信念

䞃 流蚀は有力な戊略である

 戊争の圢は䞀倉した
 戊果を停るデマ宣䌝
   窮䜙のデマ「マカッサル海戊」
   敗戊恥の䞊塗り
   カナダの州長官が米のデマ宣䌝痛撃
   チャヌチルのデマ
   むギリスの枢軞離間策
   お愛嬌たちたち尻割れ
   無類の悪蟣さ
   むヌデンの厚顔を剥ぐ
   䞀瞬厩る戊勝のデマ
   米の悪質デマ
   日本の戊争目的を䞭傷
   流蚀は利敵行為
 米英の察日宣䌝謀略
   英囜の諜報組織
   謀略
   宣䌝
 流蚀に察しお戊え
   詮玢心を捚およ
   話したがる心を捚およ
   䞍平䞍満をも぀な
   自己軜芖を去れ
   流蚀に乗らぬ心がたえをもお


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