デマの心理学 ブレイク~『流言の解剖』を歴史的・政治的な視点から評価する
中村古峽の『流言の解剖』を翻刻し、順次公開しておりますが、読者におかれましては、なるべく先日投稿した『デマの心理学 覚書~序~目次』における編者おぼえがきを事前にお読みいただけるとさいわいです。
といいますのも、本書『流言の解剖』は心理学を扱う読みものであるいっぽう、第二次大戦中に著されたものであることから、日本が連合国に勝利するにはどうすべきか、という作者のメッセージがこめられていたことは否めず、そのため本来の意図とは裏腹に(というか当然に)歴史的政治的な視点から評価されることはまぬがれない、と思うからです。
本書は、一般庶民のなかに歴史上普遍的に流言というものは――デマというものは発生してきた、そしてそのたび破滅的な悲劇があったのだということを強調してはいます。
よって、流言の主体たりうる庶民は無知蒙昧であってはならない、個々に考え、群衆化に飲まれないように気をつけなければならない、とも。
しかしながら、作者である中村古峽がいみじくも当時の連合国側の動向について指摘しているように、流言を発するのは必ずしも庶民がというわけではなく、しばしば戦略的に国家ないしは政府側からも発せられるというのが、厳然たる歴史的な事実です。
このことは「編者おぼえがき」の太文字部分にて述べました。
作者である中村古峽の政治的スタンスについて云々することは、本稿の目的ではありませんし、本意でもありません。
戦時中、および戦争の前後の時期というのはデリケートな時代です。
主要な目的に沿わない一握りの良識や真実というものは簡単に葬りさられ、文字どおり歴史に忽然と文化的空白が現れるのが戦争です。
これは文献を調査していると身にしみてわかります。
そしてこれは、日本に限ったことでもないのです。
なお、先に公開した『デマの心理学 解説』では、『流言の解剖』の全体を要約し、解説してあります。
翻刻し注釈を付しているとはいえ、昭和初期の学者の文章というのは非常に難解です。
ですので、時間のない方、内容をかいつまんで知りたいという方は、ぜひ解説のほうをご参照ください。
最後のほうは一部有料とさせていただいておりますが、序盤から中盤より少し先(定義から群衆心理)までは、そのままお読みいただけます。
『流言の解剖』について、あるいはそれに関連する心理学的問題についての補足等が必要である場合には、どうぞご遠慮なく、コメントやメールなどでお問い合わせください。
編者
