後輩の冨里#1【素直が一番】
「先輩、私いまけっこう幸せってやつ感じてます」
放課後の自宅、並んでダラっと過ごしているとソファの端から強い視線を感じる。
『そうか、よかったな』
「先輩はどうですか?」
『オレは普通だな』
「先輩・・・」
『ん?』
「おバカさんですか?」
『は?』
「こんなに可愛い後輩が、家に来てるんですよ?わざわざ、先輩の為に」
・・・・・・
「先輩も幸せ感じてますよね?」
そう言いながら、体重を預けるみたいにこっちへ寄ってくる。
ソファが少し沈んで、膝が軽く触れる。
逃げようと腰をずらすと、その分だけ距離も詰まる。
「どうなんですか?」
視線が低い位置からまっすぐ上がってくる。
無駄に近い。というか近すぎる。
これはなんと言えば;;
人懐っこいを具現化したような童顔と、その下のふたつの大きな膨らみ。
慢性寝不足のオレの脳では、正解の答えを導き出すことは難しい。
・・・・・・
・・・・・・
「もーいいです。先輩なんか知りません」
ぷくっと口を膨らませた後に、ソファの端に戻って正面を向く。
はあ、このぷく顔をされるとどうにも弱い。
このあと機嫌が戻らないのも面倒だし・・・
『冨里すまん、オレも一応幸せ・・・みたいの感じてるぞ』
「えっ?なに?なんて言いました?」
待ってましたとばかりに、ぷく顔はすぐにいなくなる。
絶対聞こえてたろ・・・
『だからオレも幸せだって』
「ほらー、ほらほら。ですよねー」
これでもかと両目を垂らしながら、オレの腿を雑に指で突き刺してくる。
「素直が一番ですよ、先輩」
そう言いながら、楽しそうに笑う。
ほんと最近、遠慮がなくなったな。コイツ・・・

『今日は何時までいるんだ?』
「何時までいてほしいですか?」
『お前な・・・』
「だって、私が帰ったら先輩ひとりになっちゃうじゃないですか」
少しだけ、声が柔らぐ。
「寂しいですよね?」
・・・・・・
『いや・・・まあそうかもしれんが』
「ほらー。だからいてあげてるんです」
『はいはい・・・オレは構わんが親御さん、心配させるなよ』
「ほんと先輩は心配性ですねー」
『とにかく帰る時は送ってくから、時間は連絡しとけよ』
「はーい」
妙な聞き分けの良さでスマホをいじってから見せてくる。
「はい、お母さんに連絡しましたー」
『んっ、よし』
「へへー」
頷いてみせると嬉しそうに目が垂れる。
「先輩と一緒なら何時でもいいって」
『絶対なんか勘違いされてるだろ、それ;;』
「ん-、どうですかね。勘違いはしてないと思いますけど」
なんか楽しそうだな・・・コイツ・・・
「ってことで先輩、なんか映画とか観ません?テレビいいですか?」
既にリモコンで画面を操作しながら言う。
許可をとるつもりがあるのか無いのか・・・
オレが断らないことを分かってるのか・・・
「どれがいいですかね?」
『冨里の好きなのでいいぞ』
「んぅー、じゃあ——」
一拍置いて、にやっと笑う。
「ちょっとえっちなやつにしましょうか?」
『は?』
「先輩、そういうの好きじゃないですか」
『勝手に決めんな;;;』
「え、好きですよね?さっきからちらちら私の胸見てますし」
『いや;;それは・・・すまん』
見てなくはないが・・・
「先輩なら、もっと近くで見てもいいですよ////」
『やめろやめろ;;』
大きな胸を大きく揺らして、楽しそうにふわふわと笑う。
完全に遊ばれてるな・・・
「先輩はほんとに幸せものですね。私みたいに可愛くて胸が大きい後輩がいて////」
『お前、自分で言うなって;;』
「先輩が言ったんじゃないですか、オマエの胸はおっきいぞ、自信持てって////」
『そんなこと言ってないわ;;』
まあ近しいことは言ったし、冨里がこんなふうになったのはオレのせいもあるんだろうが・・・
ーーーーーー
冨里は高校のダンス部の後輩だった。
大所帯のダンス部の中で、思い出してもあのころから冨里は頭一つ二つ抜けていた。
圧倒的なスタイルと童顔。
ただ本人は望むところではなかったようで、当初は言動も行動も控えめだった。
なんでダンス部に入ったんだろうと思うくらいだ。
それでも別に詮索する趣味はない。というかオレは他人にそこまで興味がない。
友人たちともつかず離れず、それなりの関係性を続ける毎日。
ニコニコしてそれなりに前向きな発言をしていれば周りとはうまくやれる。
家の外では常にそんなことを考えながら生活していた。
冨里とまともに話したのは暑くなり始めたころだった。
いつものように部活終わり一人で練習していた。
別にダンスにそこまで熱を入れていたわけではない。
家に帰っても特段やることもないので、学校を施錠するギリギリまでただただ時間をつぶすようなイメージだ。
その日もいつも通り練習していると、突然ガタっと音がして振り返ると冨里が立っていた。
「あ;;」
『冨里?』
「すいません。邪魔するつもりはなかったんですけど;;」
『忘れ物でもしたのか?』
「あ、いえ;;先輩が一人で練習してるって聞いたので」
『ああ、冨里も自主練か?』
「え、;;;いいんですか?」
『ん?いいんじゃないか?』

それから度々自主練を一緒にするようになった。
『冨里って手の使い方うまいよな』
「え;;」
『腕長くてきれいに見えるってのはそうだけど、指先の表現とか丁寧だし』
「ほ、ほんとですか?」
目をまん丸にして人懐っこい表情を見せる。
『嘘つかないぞ』
「ありがとうございます、嬉しいです。あの;;どうしたら先輩みたいに踊れますか?」
『オレ?』
「はい、先輩いつもすごく楽しそうでキラキラしてて。私も先輩みたいになりたいです!」
『楽しそう?んー、オレみたいにって言われてもな・・・』
正直ピンとはこないが・・・
・・・・・・
・・・・・・
「あのアドバイスください・・・っていうのは甘えすぎですか?」
遠慮がちに見上げてくる視線が、不安定に揺れる。
『別に甘えてるとは思わないぞ、大体後輩は先輩に甘えるもんだろ』
一瞬きょとんとしてから、ぱっと目を丸くする。
・・・・・・
・・・・・・
『・・・冨里ってうまいんだけど、ちょっと自信なさそうな感じが顔に出てる時あるよな』
「はい、そうだと思います。私なんかがダンスってどうなんだろうって」
『ふーん、そういうふうに思ってんだな』
「はい・・・そんなのが部活入ってたら迷惑ですよね」
まあ、人それぞれ思うことはあるんだろう。
オレには関係ないことだが・・・
『冨里はスタイルもいいし、顔も可愛いんだからもっと自信持っていいと思うぞ』
「え;;可愛い;;」
『ああ、技術的なとこより、そっちじゃないかな。冨里が意識した方がいいのは』
「・・・可愛い////」
『聞いてるか?』
「あ。はい;;ありがとうございます!!」
このころはまだ、遠慮がちな後輩だったな・・・

ーーーーーー
「先輩、いつも送ってくれてありがとうございます」
『オレが勝手に送ってるだけだから気にすんな。親御さんも多少安心するだろ』
「はい、お母さんも先輩と一緒の時は心配してないので」
『絶対勘違いしてるよな、それ;;』
夕焼けに染まった住宅街に伸びた影が、少しだけ重なる。
徒歩で20分くらいの近くもなく遠くもない距離を並んで歩くのももう何回目だろうか。
「先輩、明日の放課後はどうしましょうかね」
どうやら冨里の中では明日も一緒にいることは決定しているらしい。
嬉しそうに垂れる目に取り込まれてしまいそうで視線を落とすと、歩幅に合わせて揺れるそれに目がいってしまう。
すごいな・・・
「先輩、どこ見てるんですか?」
ピタッと止まった影に核心を突かれて、跳ねるように視線を上げる。
夕暮れに染まった街灯の下、両目がいたずらっぽく垂れる。

「いま、すっごく分かりやすく動揺しましたね?」
・・・・・・
『すまん・・・してなくはない////』
「ふふふっ、素直ですね////」
楽しそうに鼻を鳴らす音が、右の耳を柔らかく覆った。
【続け!】
読んでいただいてありがとうございます。
ここまできたら5期生コンプリートと思って
初めてのなおなおに挑戦です。
続きもお付き合いいただけたら嬉しいです。
感想ください!感想がほしいー!
誰か助けてくださいー。
あーやといろぱはメインヒロインでは書いてないですが、
カウントに入れてます;;
ありがとうございましたー!
