【北米エンタメニュースまとめ】「なぜロマンタジーは数十億ドルのビジネスになったのか」「ハーパーコリンズ、新たな漫画レーベルを米国で立ち上げ」「ZAQが見据えるキャラソンの現状と未来」「米メタルバンド、Netflixを商標権侵害で訴え」
エンタメビジネスをリサーチするlibroによる日々の北米エンタメ市場などのニュースなどのまとめです。今週は
なぜロマンタジーは数十億ドルのビジネスになったのか
ハーパーコリンズ、新たな漫画レーベルを米国で立ち上げ
キャラソンは本当に衰退したのか?ZAQが見据えるキャラソンの現状と未来
JETRO、コンテンツ海外展開支援拠点を9都市に拡充
米メタルバンド、Netflixを商標権侵害で訴え
です。
オンライン時代、デジタルコミックスは積み上がりつつある
コロナ禍で紙の漫画・コミックスの人気が高まる一方で英語圏ではコミックスのデジタル配信はなかなか成長の兆しが見えず。2023年にはAmazonがサービスを終了しました。しかし最近はAmazonの出身者や出版業界の人が新たなデジタルコミックスのサービスを拡大しようとしています。
著者はアルゴリズムを避け、読者に直接販売
面白い。英語圏で著者によるオンデマンド印刷を利用した直接販売が増えているとのこと。もちろん在庫や倉庫確保のリスクなどがあるものの、従来のルートに加えて直接読者とつながるルートを著者が確保しようとしている。
Netflix、“ゲーム事業本格参入”のために買収・設立したスタジオ2社を一挙に閉鎖。わずか5年足らずで、ゲーム戦略急転換
数年前、ゲーム市場参入でスタジオを買収したNetflixですが早くも閉鎖に。ただ完全に撤退するわけではなく、みなでリビングで遊べるようなゲームに注力するもよう。
「鬼滅の刃」カフェ、シカゴにオープン
日本の作品をテーマにした拠点が増えつつあります。こちらは「鬼滅の刃」をテーマにしたカフェでシカゴにオープンしました。結構ムードもよさそう。
書店を「弱い小売業者」ではなく「ネットワーク」として作り直す
なるほどな、と思いました。各国の書店支援の動きは面白いです。共同プラットフォームは重要。
なぜロマンタジーは数十億ドルのビジネスになったのか
米ブルームバーグテレビジョンのロマンタジー特集です。作中に登場するキャラクターのコスプレがかっこいい。ロマンタジーは専門書店もできてきているように完全に英語圏の読書市場を席巻しています。
アニメ「とんがり帽子のアトリエ」、アストラ賞でベストアニメ賞を受賞
アストラ賞は米国のハリウッド・クリエイティブ・アライアンスが主催する映画賞です。とんがり帽子のアトリエがBest Anime Seriesを受賞しました。
ハーパーコリンズ、新たな漫画レーベルを米国で立ち上げ
米出版社のハーパーコリンズが米国で新たな漫画レーベルを立ち上げます。ハーパーコリンズはフランスで日本の漫画の翻訳出版を手掛けるKAZEを買収しており、そのブランド「Kazé」を活用します。
7月の米国の「Manga Graphic Novels」売り上げランキング 「呪術廻戦」強い
7月の米国のManga Graphic Novelsのランキングです。「呪術廻戦」が強い。「鬼滅の刃」の1巻もまだ売れ続けています。
サイコロを振る 流通の未来は今にある
日本もですが米国でも紙のコミックスの流通は揺れています。大手の流通企業の倒産を受けて、現在裁判中ですが、やっと出版社が流通に預けていた在庫が返品されることになりました。とはいえこれまで売られた分は返ってこない。
「ヒップな読書クラブ」に1万人集まる…世界が注目した韓国図書館の進化
韓国は嬉しいことに紙の書籍への回帰が確実に若い世代で起きていてそれが書店や図書館主導で広がっています。
瀋陽市でアニメ・ゲーム博覧会、約4万人が来場
米国もですが中国も大都市以外でのアニメ・漫画・ゲームイベントが大規模になってきた感じです。
Kakao Entertainment、コンテンツビジネスを手掛ける3子会社を集約
Kakao Entertainmentがコンテンツビジネスを手掛ける3子会社を集約すると発表しました。IPビジネスを強化する狙いとのこと。3社ともWebtoonやウェブ小説を手掛けていました。
劇場のバルコニー席が、まるごとマンガの棚になっていた(南米ツアーこぼれ話)
これすごいですね。ブエノスアイレスには本好きの間で有名な世界一美しい書店があるのですが、その書店にもMANGAの棚が。売れるから置いて、奥から売れるのサイクルになっていそう。
キャラソン文化は本当に衰退したのか?ZAQが見据えるキャラソンの現状と未来
J-POPの次に海外に出て行ってほしいのがキャラソン。「キャラクターが歌う、キャラクターのための歌」(BYZAQさん)はキャラクターが愛されるいまこそありだと思います。
楽曲の調査をされた河瀬さんがまたすごい。意外に2025年直近でも出ていることがわかります。ただこれはアイドルアニメに増加によるアイドルソングが増えたことが背景にあるもよう。「ヒプノシスマイク」とかどうなるのだろう。
私はキャラソンといえば「幽遊白書」「テニスの王子様」「黒子のバスケ」なので、対談にも出ていた「家庭教師ヒットマンREBORN!」の六道骸のキャラソン「クフフのフ~僕と契約~」みたいなとんちきソングも大歓迎。黄瀬涼太の「シャララ☆Goes On」とか高尾和成の「エース様に万歳」も相当でした。キャラソンもすばらしい日本のアニメ文化のひとつです。
ニューズウィーク特集「世界が愛する日本のアニメ」
各国の日本のアニメで育ったり研究したりしている方々の寄稿でどれも読みごたえがありました。各国でほぼ同時期に水面下でアニメがジワリと広がり、その土台の上に今があるのが読み取れます。
「本を読み語ることは、権力への抵抗」。人気歌手が作った「禁書の図書館」、日本人作家の小説も
いま欧州中心に小説家や読書家を中心に「intellectual influencer」が誕生しつつあります。彼らを旗印に、図書館などまとまったコレクションができつつある。このあたりブッククラブの拡大とも関連しているのかも。
生き延びて、殺されるためのファンダム
「ファンたちの市民社会」の著者、渡部宏樹氏の、インタビュー記事をきっかけにした同僚の方との往復書簡です。非常に貴重な議論で読ませていただけてありがたい。エンタメビジネスはすべからくこの悪質性もあるファンダムを資本主義的に使おうとしているのでることに自覚的でなければいけないと思う。
少数精鋭でイタリアを席巻 J-POP Manga、CEOが明かすIPビジネス推進のコツ
イタリアで日本漫画の出版を手掛ける出版社の方のインタビュー。イタリア市場も大きいですね。
JETRO、コンテンツ海外展開支援拠点を9都市に拡充。ニューヨーク・香港を新設
政府の支援はいろいろ揺れていますがJETROのコンテンツビジネス支援拠点の拡充は第一歩だと思います。音楽やアニメ、漫画についてはロサンゼルス拠点が米国市場の鍵になっていますが、NYが増えたのはすごい。あとは欧州とアフリカ大陸をもう少し増やしてほしい。
存在感増す中国製ゲームやアニメ、政府は「コンテンツ大国」目指し生産や輸出を後押し…産業基地作り連携
韓国はもちろん、ポップカルチャーで中国も存在感がグローバル市場で高めています。最近はビリビリがグローバル版のアプリを立ち上げました。韓国はもちろん、中国は長い創作の伝統となんといっても多くのクリエイターがいますので、厳しい競争相手になりそう。
Fantagraphics、「Takumigraphics」レーベルを立ち上げ 東アジアのコミックスに注力
米中堅出版社のFantagraphicsが「Takumigraphics」というレーベルを立ち上げました。東アジアのコミックスの翻訳に注力する方針。第一弾は韓国のアーティストによるグラフィックノベル「Lovers of the Empire」です。
SXSW、ポッドキャストに特化したフェスティバルを2027年に立ち上げへ
テクノロジーやカルチャーに関するフェスティバルを主催するSXSWが2027年にポッドキャストに特化したフェスティバルを立ち上げます。映画やテレビ、音楽やコメディと並んでSXSWのコアにする狙い。
作品は、どうしたら生き続けられるのか
面白いなと思いました。アニメやゲームの映像とあわせて生演奏によるコンサートというのは最近増えていますよね。海外でも大人気です。作品の寿命が延びてきて、周年記念などをやるとなれば重要なメディア展開のひとつになると思います。この方の会社がHeartbeat Projectというオーケストラ楽団を抱えているのはすごい。
先日もこういうnoteをまとめました。少し応援上映にも近くて同じ空間でファンとともに感動を再共有するという側面もありそう。日本よりも海外展開したときに必要です。このnoteでは「NARUTO」「ONEPIECE」「進撃の巨人」「僕のヒーローアカデミア」などを事例として挙げたのですが、いまなら何がいけるのだろうか。「薬屋のひとりごと」「とんがり帽子のアトリエ」あたりか?
英国の作家ら、政府に地方税の減税を要求
世界的なインフレによる不動産価格の上昇、本当に書店ビジネスには厳しい。英国ではパブやクラブ、音楽ライブハウスに対する地方税の20%減税を受けて、作家らが独立系書店の求める減税を後押しするオープンレターと支持する方針を示しました。確かにパブとかが減税の対象になるのであれば書店も対象にしてほしい。
ちなみに記事で触れられているvape shopはわかるのだけれども、同じように増えているbetting shopとかadult gaming centre。adult gaming centreは18歳以上対象のスロットマシンのお店らしく、ようは日本のパチンコ店みたいです。
Crunchyroll、オンラインサイトから紙の漫画やラノベを削除
Crunchyrollの方針が見えない。通販の強化でアニメを見た人にグッズを売るなどのビジネスを広げるのかと思っていたら、直近で通販サイトから紙の漫画やラノベを削除したとのこと。通販サイトではパッケージソフトやアパレルグッズを強化する方針なのか。
Crunchyrollは2022年にRight Stufという通販サイトを買収して事業を強化するとみられていたのですが。
アニメ「ヤニねこ」、香港で配信停止 たばこの広告規制に違反
意外なところから規制が。「ヤニねこ」が香港の配信サイトから削除されました。たばこの描写がオンライン上のたばこの広告を規制する法律に違反したためです。書き込みをみると、どうやらたばこのパッケージをリアルに描写しすぎたらしい。X上の書き込みによると台湾でも規制されたそうで、パッケージの描写を消せばOKとのこと。
『ハートストッパー』はなぜアルゼンチンで60万部売れたのか(南米ツアーこぼれ話)
「ハートストッパー」、すごくいいM/Mグラフィックノベルで素敵な映像化されたのですが、アルゼンチンで人気というのは嬉しい。こおういうロマンチックな恋愛物語は根強い人気がありますしメディア化でファンが広がりやすいしファンもすすめやすい。
あとスペイン語圏の紙の単行本の流通の仕組みも興味深いです。確か南米のスペイン語圏は各国で少しずつスペイン語が違うとも聞いたことがあるのですが、紙の書籍の受け入れられるデザインとかも少しずつ違うよう。マーケティング上はどこの出版社とどう出すかも重要そうですね。
米メタルバンド、Netflixを商標権侵害で訴え
一瞬何のこと?となったのですが、米国のメタルバンド「Demon Hunter」が「KPop Demon Hunters」を巡りNetflixを訴えたとのこと。
KPop Demon Huntersはもともと配信版アニメーションで、人気を受けてグッズ販売やライブコンサートを行っており、そこがメタルバンドの活動を重なったようです。訴えによると実際に消費者に混乱を生んでいるという主張で、彼らに寄せられたメールにはKPop Demon Huntersだと思って購入したライブのチケットがバンドのライブだったというものもあったそうです。SNS上のタグ付けでアニメのほうに「Demon Hunter」とつくこともあったそうです。
バンド側は「recorded music, live shows and merchandise」にKPop Demon Huntersの名前を使うことの制限を求めています。(当たり前ですがアニメは別ですね)
早速専門家の方の商標権についての分析が出ていました。専門家の方から見ても今回の訴えは道理が通っているとのこと。確かにアニメの配信停止とかではなくあくまでグッズやライブ分野で争っていますからね。落としどころはライブ名の変更とかなのだろうか?
韓国ネイバーウェブトゥーン、アニメ・AIで利用者囲い込み…休載中も閲覧数増
Webtoonも積極的な作品の増加から、1作品あたりをしっかり広げる方にシフトしているようにみえます。
NTTドコモ、米国の配信サービス「MANGA MIRAI」を終了
電子書籍配信サービスに淘汰の波。NTTドコモなどが手掛けていた米国の「「MANGA MIRAI」が終了となります。購入作品は「MangaPlaza」に移管されるというのが手厚い。
ICv2のMANGAWEEK Yen Press代表インタビュー
米メディアICv2のMANGAWEEKのインタビュー特集。KADOKAWAグループの米出版社、YenPressの代表のインタビューです。
去年のヒット作として「ダンジョン飯」はもちろん「光が死んだ夏」などが挙げられています。
同じシリーズのこちらの記事zにもありますが、やはりアニメ化というのは相当漫画の売上高に影響するもよう。
ブッククラブ人気の背景は 竹田ダニエルさんが問う米国のAIと読書
日本ではあまり顕著ではないですがこのブッククラブ人気は米国、韓国、東南アジアの若者に共通しているといえます。
韓国の若者「酒より書店」へ…玩具店20%増、居酒屋やネットカフェは減少
面白いしいい方向だな、と。友人とも仕事な仲間ともだらだらお酒を飲むのでなく、趣味や文化的な活動に費やす時間を増やしているよう。仕事仲間との時間の共有も映画や公演になっているらしい。
中国の動画サイト「bilibili」にグローバル版アプリ 日本でも配信開始 まずはAndroidから
YouTubeとニコニコ動画とTwichがある中でbilibiliがどう根付くか気になります。
【2026夏アニメ】中盤戦で海外勢の評価が高いアニメは⁉️
納得のランキング。私も新作は「天幕のジャードゥーガル」一択です。原作が素晴らしいのはもちろんその良さを抽出してアニメという表現に見事に落とし込んでいると思います。「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」も各国で人気ですよね。シリーズものもコミになると「BLEACH」強いのですがその中でも「天幕」が健闘しているのはうれしい。
菊池健さんの「マンガ業界Newsまとめ」です。
今週はcomicoやwebtoonなど日本では非伝統的な漫画のスタイルについていろいろとニュースになり、菊池さんがしっかり分析されています。個人的にはスタイル云々より、それぞれのメディアに適切な作品を作り出し、適切に届けられるかが勝負だと思っています。菊池さんご指摘にように国内では「縦読み<横読み」なのですが、日本以外の市場を見るとwebtoonおよびそれを出発点とするmanhua、Manhwaはすっかり定着しています。
個人的に気になったのは中国人気小説のコミカライズの中止です。作品がより多くの人にオープンになればなるほどいろいろな議論を呼び、提供する側はその議論に耐えられるかということになるのだと思います。
今週私のX上では某漫画家の某作品に関する発言から幅広い方の感情を刺激し、「炎上」気味になっていました。私はその作品を詳しく知らなかったので改めて読んでみました。いろいろなバックグラウンドを持つ人が情報発信する中、受け手側の倫理観も問われているなと思います。
【余談】
SNS時代の批評と感想――「推し」とチケット高騰の時代に、私たちは何を残すべきか
漫画・アニメ関連を見ている方からは「何の話」となるかもしれませんがこのところX上で演劇コミュニティで話題になった投稿がありました。いろいろな表現はありつつ趣旨でいくと「お金払ってチケットを買ってみにきたのだからSNS上に悪い感想は流さないでほしい」という発言でした。
SNS時代になって誰でも感想を公開できるようになり、ときにそれはビジネスを支え加速させるものですが一方でネガティブな感想も広まりやすい。まあ表現者はそれを許容せよという話もわかるのですが、実際に口コミが悪いと集客の妨げになることは事実。一方で演劇のチケット代は上昇しており、どのような感想を持ち発信するのかも自由です。
個人的にはチケット代含めてエンターテインメントを楽しむコストが上がる中での発言で怒りを買ったという側面もあったかなと思いますがこちらのnoteのように悩ましいところだなと思います。私もお金を出すからには「はずれ」は引きたくないし、ネガティブな評価は知りたいところ。というより自分が楽しんだものでもヒットしなかったら「なぜか」を知りたい。
ただ「ネガティブなコメントが作品の寿命を左右する」というのは同じ問題は連載漫画でも共通するのかなと思いました。このあたりは文化であり資本市場に立脚する商業作品でもある二面性のつらいところです。
今週はここまでです。引き続きよろしくお願いいたします。
