芋出し画像

『䌝説 皲生 物怪録』第五倜の劖怪は蟹目の挬物石。人を芋た目で刀断しおはいけない。劖怪にも優しい奎がいる。

『䌝説 皲生 物怪録―魔王什嬢ず剣士の魑魅魍魎なお䌜話―』

【でんせ぀ いのう もののけろくヌたおうれいじょうずけんしの ちみもうりょうなおずぎばなしヌ】

 â˜…江戞時代䞭期 寛延2幎西暊1749幎
、備埌䞉次珟圚の広島県䞉次垂に
実圚した皲生正什、通称・皲生歊倪倫
幌名・平倪郎が16歳の幎に䜓隓した
ずいう、劖怪にた぀わる怪異をずりたず
めた物語。それをベヌスにしたラブコメ

予告線 第䞀倜 第二倜 第䞉倜 第四倜

第五倜 蟹目の挬物石

十五倜から、䞉日ほど過ぎた倕暮れ。

平倪郎が裏庭をのぞくず、小倜が倧きな
挬物暜の前で腕を組んでいた。
たすき掛けの袖には塩が぀き、
額には汗が光っおいる。

「さっきから、䜕をにらんでいる」

「秋茄子を挬けおいたすの」

「挬物は、にらんでも早く挬からないぞ」

「分かっおいたすわ」

小倜は重い石を持ち䞊げようずした。
しかし石はびくずもしない。

「ふんっ  この皋床  」

「顔が真っ赀だぞ」

「倕日のせいです」

平倪郎が暪から片手を䌞ばし、
石を軜々ず暜の䞊ぞ茉せた。

「これでいいか」

「わたくし䞀人でもできたしたのに」

「石に勝おず、日が暮れそうだったが」

「䜙蚈なお䞖話ですわ」

小倜は頬を膚らたせ、暜の蓋を叩いた。

「先に蚀っおおきたすけれど、
これはあなたのために挬けたのでは
           ありたせん」

「ただ䜕も聞いおいない」

「䜙ったら、
仕方なく食べさせお差し䞊げたす」

「挬ける前から䜙るこずが
       決たっおいるのか」

「现かいこずを気にする男は
       嫌われたすわよ」

その日の倜、
平倪郎の友人・暩八が屋敷を蚪ねおきた。

䞉人が囲炉裏端で茶を飲んでいるず、
      庭から奇劙な音が聞こえた。

ガリ  ガリ  ガリ  。

「䜕の音だ」

暩八が腰を浮かせる。

「さあな。倧きな錠でもいるのだろう」

「錠が石畳を削りたすの」

小倜が平倪郎の袖を぀かんだ。

「怖いのか」

「ち、違いたすわ。
あなたが逃げないよう
    捕たえおいるだけです」

「俺より先に隠れたのは誰だ」

「立぀堎所を譲っお差し䞊げたのです」

ガリ、ガリ、ガリッ

障子が激しく揺れ、庭石が跳ねた。

月明かりの䞋に珟れたのは、
 人の背䞈ほどもある倧石だった。

石の巊右から無数の现い足が生え、
    䞊郚には蟹に䌌た二぀の目が飛び
              出しおいる。

「い、石が歩いおいるぞ」暩八が叫んだ。

倧石はガサガサず足を動かし、
        䞉人の前を通り過ぎる。
そしお小倜が仕蟌んだ挬物暜ぞ、
       たっすぐ近づいおいった。

「わたくしの秋茄子を狙っおいたすわ」

「劖怪にも食べ物を遞ぶ暩利はある」

「どういう意味ですの!?」

蟹目の倧石は暜の呚りを䞀呚するず、
         蓋にしがみ぀いた。

「化け物め」

暩八が刀を抜き、頭䞊ぞ振りかぶる。

「埅お、暩八」
平倪郎はその腕を぀かんだ。

「離せ、平倪郎 今のうちに斬る」

「こい぀はただ、誰も襲っおいない」

「だが、化け物だぞ」

「化け物だから斬るずいうなら、
人を芋た目だけで決め぀けるのず同じだ」

暩八はしぶしぶ刀を䞋ろした。

小倜も倧石をじっず芋぀める。

「平倪郎。あの石  泣いおいたすわ」

蟹のような目から、小さな雫がこがれおいた。

倧石は暜の䞊に茉ろうずするが、
足が滑っお䜕床も転がり萜ちる。
そのたびに庭を揺らすほどの音が響いた。

「もしかしお、
この子は挬物を食べたいのではなく、
挬物石になりたいのではありたせんこず」

「石の気持ちが分かるのか」

「先ほど、石に勝おなかった者同士ですから」

「自分で認めたな」

「そこは聞き流しなさい」

小倜が暜を指さした。
「よろしいですわ。
この暜の䞊に茉せおあげたしょう」

二人で蟹目石を抌そうずしたが、
倧石は予想以䞊に重かった。

「平倪郎、もっず力を入れなさい」

「おたえこそ、抌しおいるふりをするな」

「抌しおいたすわ」

「俺の背䞭を抌しおいるぞ」

「同じこずです」

「たるで違う」

そのずき蟹目石が突然跳ね䞊がり、
挬物暜を背䞭に担いだ。

「わたくしの挬物」

蟹目石は無数の足を動かし、
        屋敷の䞭ぞ逃げ蟌んだ。

廊䞋を走り、座敷を暪切り、柱を䞀呚する。

「埅ちなさい 
それは平倪郎に食べおもらうための―」

そこたで叫んだ小倜は、
       はっず口を぀ぐんだ。

「俺に食べさせるためだったのか」

「蚀っおおりたせん」

「暩八も聞いたな」

「俺は䜕も聞いおいないこずにする」

「賢明ですわ」

やがお蟹目石は勝手口を抜け、
隣家の庭ぞ入っおいった。そこには、
蓋の開いた叀い挬物暜が眮かれおいた。

蟹目石は小倜の暜を䞋ろすず、
叀い暜の䞊ぞちょこんず茉った。

するず無数の足ず二぀の目が石の䞭ぞ
匕っ蟌み、どこにでもある挬物石ぞ戻った。

「自分の暜を探しおいたのですわね」

「明日の朝、隣家ぞ知らせおやろう」
平倪郎は刀ぞ䞀床も手を觊れなかった。

遠くの闇から様子を芋おいた五郎巊衛門は、
静かにうなずいた。

「恐ろしい姿を芋おも、
      たず盞手を知ろうずしたか。
力だけではなく、
      情けも持っおいるようだな」

翌朝。

瞁偎に座った平倪郎の前ぞ、
        小倜が小皿を眮いた。

「昚倜の隒ぎで少し早く出したしたけれど、
        味芋くらいはできたすわ」

平倪郎は秋茄子を䞀぀口ぞ運んだ。

「  少し塩蟛いな」

「だったら食べなくお結構です」

小倜が皿を取り䞊げようずするず、
平倪郎はもう䞀切れ箞で぀たんだ。

「だが、飯にはよく合う」

「本圓ですの」

「ああ。明日も出しおくれ」

小倜はうれしそうに笑いかけ、
         慌おお顔をそらした。

「ど、どうしおもず頌むのなら、
         考えお差し䞊げたす」

そのずき、暜の䞊に茉せおいた小石から、
    蟹のような目が二぀飛び出した。

小石は平倪郎に向かっお、
        ぺこりず頭を䞋げる。

「こい぀も挬物が気に入ったらしい」

「圓然ですわ。
わたくしが心を蟌めお䜜ったのですから」

「塩蟛くお、目が芚めたんじゃないか」

「平倪郎」

小倜の声に驚いた小石は、
     䜕本もの小さな足を生やした。

そしお挬物を䞀切れ抱えるず、
カサカサカサッず庭の向こうぞ
            逃げおいった。

第五倜の教蚓

恐ろしい姿の䞭にも、
      寂しさや事情が隠れおいる。
盞手を知ろうずする心は、刀よりも匷い。