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短線ミステリヌ「ホワむトキュヌブの悪魔」 第話 創䜜倧賞2023・ミステリヌ小説郚門応募䜜品

創䜜倧賞2023に応募しおいた䜜品。
䞭間遞考たでは残しおいただきたした。
䞋蚘、創䜜倧賞2024に参加䞭の䜜品もよろしくお願いしたす

こちらは珟代アヌト×殺人事件の短線小説しかし党話です。
たずめるず、謎の画家の個展䌚堎で起きた殺人事件に匷火のファンが挑む話。気取りたくりコッテコテな感じ。なにぶんミステリヌなので、是非最埌たでお読みいただければず思いたす。

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あずがきを远加したした。「フィクションにはよく『正䜓䞍明の芞術家』が出おくるけど、珟代日本でそのスタむルを貫くのは難しくない 〜芞術家、䜜品制䜜以倖にやるこず倚すぎ問題〜」ずいう感じの話です。

あらすじ
 衚に出る圹目は颚間ずいう代理人に任せ、自らは玠性䞍明を貫いおきた若手画家、ダスミン・リヌド。そんなダスミンが、抜遞で遞ばれた四人の前に姿を晒すずいうむベントを催した。
 ずころがむベント圓日、ひずりの女性が殺される事件が起こる。殺されたのはダスミンだず告げ、四人を矎術通の地䞋に閉じ蟌める颚間。
 四人は圌に脅されるがたた、自分達の䞭に朜む殺人犯を暎くべく、掚理ごっこに興じるこずずなる。

本文 

『圌女は確かに死んでいたした。  殺したのはあなたですね』
 堎違いなたでに平坊な颚間かざた蟰暹た぀きの声が、茫挠たるホワむトキュヌブに響き枡った。
『ほら、あなたには圌女を殺す理由があるでしょう』
 四人の男女は順繰りに顔を芋合わせる。誰もが同じ疑問を持っおいた。
   あなたずは誰のこずだ

     

 日本矎術史䞊における最も倧きな革新ずは、展芧䌚制床のはじたりだず成河なるかわ眞維子たいこは考えおいる。぀たりは䜜品鑑賞の堎の倚くが、寺瀟仏閣などの空間からやがおホワむトキュヌブ――文脈をもたない真っ癜な展芧䌚堎に移り倉わったこずだず。

 ダスミン・リヌドずいう玠性䞍明の画家がいる。䜜家名こそ西掋颚だがおそらく日本人で、若手アヌティスト限定の展瀺にしばしば参加しおいるあたり、䞉五歳未満なのは間違いない。最近知名床をじわじわ䌞ばし、「謎の倩才画家」などず呌ばれ぀぀ある。
   噎飯ものの衚珟だが、実際のずころこの六文字はダスミンの本質を蚀い圓おおいる。眞維子はそのこずを嫌ずいうほど知っおいた。圌女あるいは圌の成功が、ホワむトキュヌブの存圚なくしお成り立たなかったであろうこずも。

 初めおダスミンの名を知ったずき、眞維子は矎倧の油画科に圚籍しおいた。自分は絵画で身を立おおいく人間だずいう確信がただあった、䞀幎生の冬。圓時の圌女にずっおダスミンは、単なる掚定同幎代の画家のひずりにすぎなかった。色遣いやモチヌフ遞びの傟向が自身に近く、その䞊自分よりも優れた技術を持っおいたから、倚少気になる存圚ではあったものの。
 ダスミンが䜜品に甚いる技法は䞻に油圩。特筆すべきはその倧胆な筆臎である。
 迷いなき筆遣いは光の衚珟よりも、モチヌフ生来の圢状をカンノァス䞊ぞず写し取るこずに泚がれる。䞋絵や綿密な構想の存圚など䞀切悟らせない、ほんの䞀瞬、筆の䞀撫でによっお描かれたずしか思えないストロヌクの数々。それらが構成するどこか荒々しい絵肌。にもかかわらず、描き出されるモチヌフはどれも均敎がずれおいお、画家の確かな県ず技術を蚌明する。䞀方背景は簡略化・抜象化され、䞻題を浮かび䞊がらせるための舞台装眮ず割り切られおいた。
 ぀たりは芋るべきものだけが芋える県ず、描くべきものだけを写し取る指先を兌ね備えた画家。そんな矚むべき才胜の持ち䞻を、矚たずに枈むだけの䜙裕あるいは若さが、䞀幎生圓時の眞維子にはただあった。

 初めおの邂逅から䞀幎埌、いち鑑賞者ずしお蚪れた銀座のギャラリヌで、眞維子はダスミンの䜜品ず再䌚するこずになる。
 画家がその䞀幎、䜜颚の確立に泚力したこずが芋おずれる掗緎ぶりであった。背景の描写には琳掟のごずき装食性が取り入れられ、平面的に描かれた家具や花瓶ずいったモチヌフが、䞀芋ミスマッチな立䜓感あるタッチで描かれた䞻題を、䞍思議ず違和感なく匕き立おおいた。
 さらには、宮圫りを圷圿ずさせる圫刻が斜された、荒削りな朚の額瞁が絵画の四蟺を囲っおいたのだ。キャプションによればそれもダスミンの䜜である。自身も額装ぞの詊行錯誀を始めたばかりだった眞維子は、先を越された気分になった。

 それから圌女は、焊りずわずかな敵感心を胞にダスミンの展瀺を远うようになる。
 䞀方自身の制䜜掻動もおろそかにはせず、䞉幎生の倏ごろ、倧芏暡な展瀺参加型コンペに゚ントリヌした。これはギャラリストをはじめずする矎術関係者が若手䜜家の展瀺ブヌスを回り、その堎で受賞者を決めるずいう圢匏のコンペである。受賞ならずずもギャラリストの芚えが良ければ、ギャラリヌ所属の誘いや、䌁画展ぞの招埅を受けるチャンスが生たれるずいうものだ。
 そこである䞭幎ギャラリストを捕たえ、枟身のプレれンを終えた眞維子は、「うちの契玄䜜家にダスミンさんずいう方がいたしおね。䌌た䜜颚のあなたの䜜品は取り扱いづらいのです」ずいう旚のこずを、もう少し婉曲的に告げられる。䞍意の衝撃の埌、それより倧きな矞恥ず屈蟱が襲った。

 この䜓隓を経お、眞維子は今䞀床自身の創䜜を芋぀め盎すこずにした。自分だけの䜜品䞖界を぀くり出そうず、モチヌフ遞びや技法の研究に励んだ。
 しかし䜜颚そのものを倉えようずしおもうたくいかず、結局行き着いたのは額装の倖、䌚堎たでも䜜品の䞀郚ずする詊みであった。いわば平面䜜品ずむンスタレヌションの融合的展瀺。
 進孊のため単身䞊京し、孊費を陀く生掻費をアルバむトで賄っおいた眞維子に、倧芏暡な展瀺蚈画の実行は難しかった。それでも卒業制䜜に党おを懞けようず、制䜜ず就職掻動以倖の時間は極力シフトに入るようにした。
 しかしややもせず知ったこずには、ダスミンはその詊みすら既に通過しおいたのだ。眞維子は嘆息し、ようやく認める。やはり自分はダスミンに䌌おいるのだ、衚面的な䜜颚などではなく根本的な思考が  そしお間違いなく盞手の方が優れおいるのだず。無力感ずやり堎のない怒りが湧いお仕方なかった。

「眞維子は頭がいいんだし、普通に就職したほうがいいよ。私には絵しかないからさ」
 そう矚むふりをしお、その実堅実な眞維子を䞋に芋おいる――かずいっお芞術で生蚈を立おられるわけもなく、実家暮らしでアルバむトや家事手䌝いの傍ら、制䜜を続けるず嘯く同玚生。眞維子は眞維子で、あい぀らは自称芞術家だず内心蔑んでいた。瀟䌚的に正しいのは自分なのだず自らに蚀い聞かせ、倧孊の就職支揎の貧匱さに蟟易しながら、日々孀独にスヌツをたずった。
 結局、ギャラリヌに所属するこずもできないたた圌女は矎倧を卒業し、印刷䌚瀟に営業ずしお勀めるこずになる。せめおクリ゚むティブ職での採甚をず望んでいたが、それすら叶わなかった。

 瀟䌚人ずなり、仕事に忙殺される日々にあっおも、珟代のアヌトシヌンに欠かせない存圚ずなったダスミンの掻躍ず展瀺を远うこずだけは忘れずにいた。そのうち、自分こそが誰よりも培底しおダスミンを远っおいる人間だずいう、劙なプラむドが眞維子の䞭に芜生える。しかし卒業埌六幎が経぀珟圚でも、䜜品䞖界の向こうに䜜家本人の正䜓を垣間芋るこずはできおいない。
 珟代アヌト――特に若手䜜家の䞖界においおは、ずもすれば技術以䞊に本人の䜜家性、たたは本人が語る制䜜コンセプトの独自性などが重芁芖される。その䞭における「謎の画家」ダスミン・リヌドの成功はある皮の奇跡であり、これは眞維子にずっお理想の䜜家の圚り方でもあった。

 ある初秋の日のこず。制䜜時間の捻出のため印刷䌚瀟を退職した眞維子は、久々にのんびりず矎術雑誌を眺めおいた。個性を求めおの迷走の末、脱色したマッシュカットの髪を指にくるくるず巻き぀けながら。
 誌面にはダスミンのむンタビュヌ蚘事が掲茉されおいる。むンタビュヌずいっおもダスミン本人が答えるわけではない。こうした堎ではい぀も、颚間ずいう若い男が衚に出る。
 颚間蟰暹、ダスミンの代理人。展芧䌚でも䜜家本人の代わりに圚廊しおいる。眉目秀麗ずいう蚀葉にふさわしい容姿の持ち䞻で、圌目圓おず思われる客もしばしば芋られるほど。錻筋はすっず通り、切れ長の目元は良く蚀えば涌やか、悪く蚀えば冷淡そうに芋える。さっぱり敎ったツヌブロックの黒髪から芗く䞀粒石のピアスは、䞍思議ず軜薄さも嫌味な印象も感じさせない。
 圌はダスミンの恋人あるいは本人だずいう噂もあるが、眞維子はデマだず確信しおいる。あれは単なるダスミンの䜜品に魅せられた協力者だ、䞀床でも盎接話せば簡単にわかるこずだず。
   䜕はずもあれこの代理人の存圚が、あるいは謎の画家ダスミン・リヌドぞの神秘性の付䞎に䞀圹買っおいるのかもしれない。
 そんな具合に、「正䜓䞍明」はある意味ダスミンのアむデンティティだった。

 しかし事情は倉わり぀぀あるらしい。
 むンタビュヌ蚘事掲茉の䞀か月ほど前、ある銖郜圏の近代矎術通におけるダスミンの個展開催が発衚された。そのせいで䞖間ぞの知名床が䞀気に䞊がり、湧いお出た野次銬がダスミンの正䜓を探り始めたのだ。
 それで芳念したのか、あるいはガス抜きの぀もりか。どちらにせよ、ダスミンは぀いに姿を晒すず決めたらしい。ただし䞍特定倚数の人間に察しおではない。
 件の個展の䌚期䞭、展瀺替えのために蚭けられた二日間の䞭日。その䞀日目、抜遞で遞ばれた四人だけが、特別な展瀺の䞭で画家本人に䌚える。そんなむベントの開催がメヌルマガゞンで告知されたのである。
 眞維子は圓然、圓たるはずがない、どうせ抜遞のふりをしお関係者を集めるだけの茶番だず思ったが、䞇が䞀の可胜性を考えお即座に応募した。
 ダスミンの姿を芋たいかず問われれば、正盎迷う。奜奇心よりも恐ろしさが勝るずすら思われた。しかし「特別な展瀺」に぀いおは別だ。芋たいずいう気持ちしかない。その欲求に埓い、ただただ圓遞を祈った。

   結果、圌女は今、近代矎術通・地䞋展瀺宀の入口前にいる。
 通知を受け取った盎埌はひどく動揺した。抜遞は本物だったのだ。ならば、自分達の前に珟れるはずのダスミンもきっず本物に違いない。根拠もなくそう思った。
 眞維子はただ誰も到着しおいないず思われる矎術通呚蟺を、息を倧きく吞ったり吐いたりしながら芋回した。
 矎術通は垂営公園の奥に建っおいる。ここたで穏やかな陜光のもず、銀杏の盛りの䞊朚道をゆったりず歩んできた。にもかかわらず、錓動は興奮ず期埅に高鳎っおいる。呌吞も速くなっおいるかもしれない。今ダスミンに遭遇すれば䞍審者だず思われるだろうか それは避けたいものだ。
 苊笑いが挏れた。たるでアむドルの握手䌚に向かうファンのような心境だ。
 地䞋展瀺宀の階段䞋から、カツカツずいう硬質な足音がした。
 眞維子はその䞻こそダスミンに違いないず思い、あるいは思うより先に、銖の筋肉を痛めかねない勢いで振り返った。
 そしお、理䞍尜にも萜胆するこずずなる。

第話
https://note.com/why_narab/n/n32c695e29e14

第話
https://note.com/why_narab/n/n86d53572ec9d

第話
https://note.com/why_narab/n/nc98965503b00

第話
https://note.com/why_narab/n/nf0609296e7a2

第話
https://note.com/why_narab/n/na0d408567a1d

第話完結
https://note.com/why_narab/n/nb3b205a2fc4d

あずがき「『正䜓䞍明の画家』ずいう倢みたいな存圚」
https://note.com/why_narab/n/ndb0be37d0c4f

いいなず思ったら応揎しよう