シャドーイングで音声変化が聞き取れない原因|音がつながる・消えるときの見つけ方
シャドーイングをしていると、スクリプトを見れば知っている単語ばかりなのに、音声だけではまったく聞き取れないことがあります。
このようなときは、聞こえないまま音源全体を繰り返すよりも、一度0.5倍速まで落とし、スクリプトと実際の音のズレを確認する方が効果的です。
進め方は、次の3段階です。
0.5倍速で、聞こえなかった音の正体を見つける
0.8倍速以上で、音のかたまりを声に出す
通常速度へ戻し、スクリプトなしで聞き取れるか確認する
英語は、単語が一つずつ辞書どおりに並んで聞こえるわけではありません。
音がつながったり、弱くなったり、ほとんど聞こえなくなったりします。隣り合う音の影響を受け、別の音のように変わることもあります。
大切なのは、リンキングやリダクションといった名前をすべて覚えることではありません。
自分が想像していた発音と、音源から聞こえる音の違いに気づくことが先です。
シャドーイングで音声変化が聞き取れないのは、単語ごとの音を待っているから
英単語を覚えるときは、単語帳や辞書を使い、一語ずつ発音を確認することが多いと思います。
一つひとつの単語を正しく発音できるのは、もちろんよいことです。
ただし、「英語は単語ごとに区切って発音される」というイメージが強くなりすぎると、実際の会話で音が変化したときに認識しにくくなります。
単語ごとの発音は、一枚ずつの写真に近いものです。
一方、実際の英会話は、それらの写真が連続して動く動画のようなものです。前後の音が影響し合うため、一枚で見たときとは形が少し変わります。
写真を知っていても、動きの中で形が変わると、同じものだと気づけないことがあります。
英語の音声変化でも、これと似たことが起きています。
知っている単語ほど、実際の音とのズレを見落としやすい
250名以上の受講生を見てきましたが、シャドーイングで止まりやすいのは、必ずしも難しい単語ではありません。
a、the、to、of、forなど、すでに知っている短い単語を聞き落としていることがあります。
スクリプトを見せると、「この単語は全部知っています」と言えます。
しかし、音声だけになると別の単語だと思ったり、その単語自体が発音されていないように感じたりします。
これは、単語の意味や辞書的な発音を知らないからではありません。
単語単体で覚えた音と、文の中で変化した音が、まだ結びついていない状態です。
難しい単語なら、知らないことに気づきやすいものです。一方、知っている単語は「聞き取れるはず」と思いやすいため、音の認識がずれていても見落としてしまいます。
first of allは、3単語ではなく一つの音のかたまりで聞く
たとえば、first of allという表現があります。
文字を見れば、どれも難しい単語ではありません。
ところが、first、of、allの3単語が、それぞれ独立してはっきり発音されるのを待っていると、実際の音声では認識できないことがあります。
会話では単語の境目がつながり、first of all全体が一つの音のかたまりになります。日本語話者には、「festival」に近いまとまりのように聞こえることもあります。
もちろん、first of allとfestivalが同じ発音になるわけではありません。
ここで伝えたいのは、3つの単語が文字どおりに分かれて聞こえるとは限らないということです。
日本語でも、「ありがとうございます」を毎回一音ずつ明瞭に発音するわけではありません。
会話の速さや場面によっては、「あざます」や「あーす」のように短く聞こえることがあります。それでも、日本語話者は音のまとまりや文脈から「ありがとうございます」だと認識できます。
英語も同じです。
文字どおりの音が一つずつ聞こえなくても、音のかたまりと元の表現を結びつけられれば、リスニングでは認識できます。
音声変化は、名前より「何が起きたか」で見つける
英語の音声変化には、リンキング、リダクション、脱落、同化など、いくつもの名前があります。
仕組みを学ぶことに意味がないわけではありません。ただ、用語を覚えたからといって、実際の音源で音声変化を見つけられるとは限りません。
シャドーイング中は、変化の名前を当てるよりも、実際の音がどう変わったかを確認する方が実用的です。
音がつながると、単語の境目が消える
たとえば、an appleでは、anの最後の音とappleの最初の音がつながります。
単語ごとに「アン・アップル」と区切られるわけではないため、どこまでがanで、どこからがappleなのか分かりにくくなります。
turn it offやpick it upも同じです。
一語ずつ聞き出そうとするより、文の中でつながった音を一つのまとまりとして捉える必要があります。
音が落ちたり弱くなったりすると、文字どおりには聞こえない
next weekでは、nextの最後にあるtがはっきり聞こえず、「ネクスウィーク」に近いまとまりに聞こえることがあります。
スクリプトにはtが書かれているため、学習者はその音が聞こえてくるのを待ちます。
しかし、実際の音声ではほとんど聞こえないことがあります。
このとき、「tを聞き取るまで繰り返す」という練習を続けても、うまくいきません。
もともとはっきり出ていない音を、文字どおりに聞き出そうとしているからです。
文字につられて、音源にはない音を自分で足してしまうこともあります。
たとえば、ingで終わる単語です。
つづりにはgがあるため、語尾で「グ」のような音まで強く出そうとする方がいます。しかし、英語のingは通常 /ɪŋ/ で発音され、最後に独立した「グ」を足すわけではありません。
スクリプトに何と書かれているかだけでなく、音源では実際にどう発音されているかを聞くことが必要です。
スクリプトから想像した音を声に出している場合は、シャドーイングではなく音読に近づいている可能性があります。
音源より文字を追ってしまう方は、「シャドーイングが音読になっていませんか?」も確認してみてください。
2つの音が重なると、別の音のように聞こえる
did youは、「ディド・ユー」と一語ずつ区切って発音されるとは限りません。
音が影響し合い、「ディジュー」に近く聞こえることがあります。
単語帳で覚えた音だけを正解にしていると、会話の中で変化した音を別の表現だと判断してしまいます。
これは、ネイティブが単語を雑に発音しているという意味ではありません。
文の中では、前後の影響を受けて音が自然に変化します。単語単体の音と、文の中で変化した音の両方を結びつける必要があります。
0.5倍速は「練習」ではなく、音声変化を見つける確認に使う
音声変化が聞き取れないとき、通常速度の音源を何度も繰り返すだけでは、同じところで止まり続けることがあります。
3000回以上、受講生のシャドーイングを聞いてきましたが、音声変化で止まる方は、聞く回数が足りないとは限りません。
聞こえない場所を特定しないまま、音源全体を繰り返していることがあります。
このようなときに使いやすいのが、一時的な0.5倍速です。
まず通常速度で、音を見失う2〜3語を絞る
最初から音源全体を0.5倍速で聞く必要はありません。
まずは通常速度で聞き、どこから音が分からなくなるのかを探します。
「全体的に聞き取れない」では、何を直せばよいか分かりません。
first of allの境目で分からなくなるのか。next weekのtを探して止まっているのか。did youが別の単語に聞こえているのか。
「この2〜3語で音を見失っている」と絞れると、練習が具体的になります。
音源が長い場合も、最初から最後まで確認するのではなく、聞き取れなかった短い範囲だけを切り出して聞きます。
0.5倍速とスクリプトを照らし合わせる
聞こえない箇所を絞ったら、その部分を0.5倍速まで落とし、スクリプトと照らし合わせます。
実際の指導でも、通常速度ではどうしても聞こえない箇所を、0.5倍速で聞いてもらうことがあります。
すると、「本当に言っていますね」と驚かれることがあります。
通常速度では、音源がその単語を発音していないように感じていた。しかし、速度を落として確認すると、音がまったく存在しないわけではなかったと分かります。
音がつながったり、弱くなったりして、自分が拾えていなかったのです。
そして、「本当にこの音が抜けていたんですね」と、ご自身でも認識できるようになります。
「なんとなく聞こえない」が、「自分はこの音を聞き落としていた」に変わることが、0.5倍速を使う目的です。
ただゆっくり聞くのではなく、スクリプトから想像していた発音と、実際の音がどこで違うのかを探してください。
低速の音だけを正解にしない
0.5倍速は便利ですが、その音だけを正しい発音として覚えないようにします。
再生アプリによっては、速度を下げることで音が少し不自然になることがあります。英語本来のリズムや音のまとまりも、通常速度とは違って聞こえます。
0.5倍速は、文字と音のズレを一時停止して観察するための速度です。
音声変化を見つけたら、通常速度でも同じ箇所を聞き直してください。
0.5倍速をどのくらい使い、どう通常速度へ戻すか迷う方は、「シャドーイングは0.5倍速まで落としていい?」で、低速練習の考え方を詳しく整理しています。
見つけた音は、0.8倍速以上で声に出す
0.5倍速で「あの単語を言っている」と分かっても、通常速度に戻した瞬間、再び聞こえなくなることがあります。
見つけた音を、自分の口でも一つのまとまりとして再現できるようにします。
ただし、声に出して練習するときは、できれば0.8倍速以上を使います。
0.5倍速のまま発音練習を続けると、英語本来のリズムや音のつながりが崩れやすいためです。
マンブリングで音のかたまりを口に移す
最初から大きな声で、すべての単語を正確に言おうとすると、再び文字どおりの発音に戻りやすくなります。
まずはマンブリングで、聞こえた音を小さく口で追ってみてください。
この段階では、一語ずつきれいに発音することよりも、音の流れを崩さないことを優先します。
first of allであれば、3単語を別々に読むのではなく、一つの音のまとまりとして口を動かします。
オーバーラッピングで音源と重ねる
次に、スクリプトを見ながら、音源と同時に発音するオーバーラッピングを行います。
速度は0.8倍速程度から始めるとよいでしょう。
音源と重ねると、自分だけ音が遅れている箇所や、文字につられて余分な音を足している箇所に気づきやすくなります。
音源が弱く発音している語を、自分だけ強く読んでいないか。
音源がつなげている部分で、自分だけ区切っていないか。
このようなズレを確認しながら、音源と同じ流れに近づけます。
最後にスクリプトを見ず、シャドーイングで確認する
0.8倍速で音の流れを再現できたら、通常速度へ戻します。
最後はスクリプトを見ずにシャドーイングしてください。
確認したいのは、覚えた文章を読めるかどうかではありません。
通常速度で聞いた瞬間に、音のかたまりを元の表現として認識し、少し遅れて口から出せるかどうかです。
最初は聞こえなかった音を自然に捉えられるようになれば、その箇所で毎回0.5倍速を使う必要はありません。
0.5倍速を使わなくても音声変化に気づけるようになることが、ひとつの成長の目安です。
シャドーイング全体の手順に不安がある方は、次の記事で基本の6ステップを確認しておくと、今回の練習をどこに入れるか整理しやすくなります。
意味が分かっても、音を聞き取れているとは限らない
シャドーイングでは、英文の意味を理解することも欠かせません。
ただし、意味が分かることと、実際の語彙を音として聞き取れていることは別です。
指導中、文構造が少し複雑な箇所について「どのような意味でしたか」と聞くと、内容を答えられることがあります。
ところが、「実際にどの単語が聞こえましたか」と聞くと、音源で使われていた語彙を言えないことがあります。
意味は分かっている。
しかし、何という語が聞こえたのかは説明できない。
この場合、文脈や事前に確認した日本語訳から内容を覚えていて、英語の音を正確に認識できているとは限りません。
これは意味理解が不要だという話ではありません。
音声変化を確認する段階では、「何を言っていたか」だけでなく、「どの語が、どのような音で聞こえたか」まで確かめる必要があります。
意味は答えられても、聞こえた語彙を言えない場合は、その短い範囲に戻り、スクリプトと音をもう一度照らし合わせます。
意味理解の処理で止まっている場合は、原因が少し異なります。「シャドーイングで意味が入ってこない原因」で、音を追えるのに内容を理解できないケースを確認してみてください。
0.5倍速でも聞こえないなら、確認方法を変える
0.5倍速にしても、どう音が変わっているのか分からないことがあります。
その状態で再生を繰り返しても、急に聞こえるようになるとは限りません。
聞く回数を増やすのではなく、確認方法を変えます。
スクリプトで、聞こえなかった音を先に知る
まずはスクリプトを見て、何という単語が使われているのかを確認します。
目的は、何も見ずに耐えることではありません。
聞こえなかった音と、文字として知っている単語を結びつけることです。
答えを確認してからもう一度聞くと、「この弱い音がtoだったのか」「ここがofだったのか」と気づけることがあります。
その後はスクリプトを閉じ、音声だけでも認識できるか確かめます。
それでも曖昧なら、2〜3語だけディクテーションする
スクリプトを確認しても、どの音を聞き落としていたのか分からない場合は、短い範囲だけディクテーションします。
音源全体を書き取る必要はありません。
聞き取れない2〜3語だけを書き出すと、聞こえている部分と、意味から推測していた部分が分かれます。
毎回すべてを書き取ると時間がかかるため、普段はマンブリングやシャドーイングを中心にして、どうしても分からない箇所だけに使う方が現実的です。
両者の役割を整理したい方は、「シャドーイングとディクテーションの違い」で、ディクテーションを入れるタイミングを紹介しています。
音源全体が難しいなら、教材のレベルを見直す
短い範囲を0.5倍速にしても、ほとんどの音が分からない場合は、音声変化だけの問題ではないかもしれません。
語彙や文法が難しすぎたり、音源の速度や長さが現在のレベルに合っていなかったりする可能性があります。
音源の一部で音を見失うなら、その部分を確認します。
音源の大半が分からないなら、教材のレベルを一度見直します。
難しい教材に耐えることよりも、どの音がどう変わったかを自分で確認できる教材を使う方が、シャドーイングの練習は進みやすくなります。
3000回以上聞いて分かった、音声変化で止まりやすい人の共通点
受講生のシャドーイングを聞いていると、表面上は音を追えているようでも、実際には細かい単語を聞き落としていることがあります。
文章全体のリズムは合っている。大きな意味も分かっている。
しかし、どの単語が聞こえたかを確認すると、短く弱く発音された語が抜けている。
この状態は、本人も気づきにくいものです。
難しい単語より、短く弱い語を落としている
a、the、to、of、forなどは、単語自体が簡単なので、語彙学習の対象になりにくいものです。
しかし、文の中では短く弱く発音されるため、リスニングでは落としやすくなります。
聞こえなくても文章の大意を推測できるため、シャドーイングでも曖昧な音で埋めたまま進めてしまうことがあります。
すべての弱い音を強く発音する必要はありません。
必要なのは、弱く発音された語も存在していると認識したうえで、音源に近い弱さで再現することです。
「この2〜3語」に絞れると、練習が具体的になる
「英語の音が全体的に聞こえない」と考えると、何から直せばよいか分からなくなります。
一方で、「first of allを3語に分けて聞こうとしていた」「next weekのtが聞こえるのを待っていた」と分かれば、直す場所は明確です。
音声変化を見つけるとは、ルールに名前をつけることではありません。
自分がどの音を、どのように聞き間違えていたかを具体的にすることです。
「聞こえたつもり」と実際の聞き取りの違いを詳しく確認したい方は、「シャドーイングで聞き取れていないのに続けていい?」も参考にしてみてください。
音声変化が聞こえないときは、回数より「ズレの発見」を先にする
シャドーイングで音声変化が聞き取れないとき、耳が悪いわけでも、努力が足りないわけでもありません。
英単語を一つずつ覚えたときの音と、文の中で自然に変化した音が、まだ結びついていないだけです。
聞こえない箇所を2〜3語に絞り、0.5倍速とスクリプトで文字と音のズレを見つける。
見つけた音は、0.8倍速以上で声に出し、通常速度のシャドーイングへ戻す。
0.5倍速は、ずっと使い続ける練習速度ではありません。聞こえなかった音の正体を見つけるための、一時的な確認手段です。
意味が分かっただけで終わらず、実際にどの語がどのように聞こえたのかまで確認してください。
聞こえないまま回数を重ねるよりも、この小さな確認を挟む方が、練習は具体的になります。
文字と音を比べると、これまで消えているように感じていた音が、別の形でそこにあることに気づけるはずです。
