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MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : Breaking the Sound Barrier / 音速突破

Breaking the Sound Barrier / 音速突破

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音速突破

第二次世界大戦 が終わる頃、航空機はライト兄弟の時代とは比較にならないほど高速化していた。
強力なレシプロエンジン、高性能なプロペラ、金属製の機体、そしてジェットエンジン、しかし、速度を上げ続けた航空機は、新しい領域に突入する。

音速である。
音速へ近づいた航空機では、激しい振動、衝撃波、急激な抗力増加、操縦性の変化など、それまでの低速飛行では目立たなかった現象が現れる。
パイロットにとっても技術者にとっても、その先には未知の領域が広がり、
いつしか、この境界は Sound Barrier 「 音の壁 」と呼ばれた。

音速はなぜ「壁」になったのか

音速は一定ではなく、気温などによって変化するため、航空機の速度は音速との比率である Mach Number( マッハ数 )によって表される。
Mach 1が、その環境における音速である。

航空機が音速へ近づくと、機体全体が同時に音速へ到達するわけではない。
翼や機体表面の一部では周囲より空気が加速し、機体そのものが Mach 1 未満でも局所的に音速へ達することがある。

すると衝撃波が発生し、空気抵抗や圧力分布が大きく変化する。
この 遷音速領域 では、従来の航空機で経験してきた空力特性がそのまま通用しない。

問題は単に「 もっと強力なエンジンが必要 」ということではなかった。
音速付近で航空機そのものがどう振る舞うのかを理解する必要があった。

Bell X-1

その未知の領域を調べるために開発されたのが、アメリカの実験機 Bell X-1 だった、X-1 は実用戦闘機ではない。
目的は、高速・遷音速・超音速領域を実際に飛行し、データを得ること。
機体にはロケットエンジンを搭載。

地上から通常離陸するのではなく、B-29 などの母機によって高高度まで運ばれ、そこから空中発進する方式が採用され、これによって燃料を実験に必要な高速飛行へ集中して使用することができた。

機体形状には、高速で安定して飛ぶことが知られていた.50口径機関銃弾の形状も参考にされた。
X-1 は、未知の速度領域へ入るために作られた 空飛ぶ研究装置 だった。

Chuck Yeager

1947年10月14日、Bell X-1の操縦席に座ったのが、アメリカ陸軍航空軍のテストパイロット、Chuck Yeager( チャック・イェーガー )だった。
母機から切り離されたX-1はロケットエンジンを点火し、加速していく。
そして高度約13,000メートル付近で、Mach 1.06 に到達した。

有人航空機による、制御された水平飛行での史上初の音速突破だった。
後に「 Glamorous Glennis 」として知られる X-1 によるこの飛行によって、一つの大きな境界が越えられた。

音速を越えても、航空機は飛行し、操縦できる。
それが実際の飛行によって示されたことである。

「壁」の正体を理解する

X-1 シリーズによる試験飛行では、遷音速から超音速領域における航空機の挙動についてデータが蓄積された。
それまで未知だった領域が、観測と測定によって少しずつ理解可能な領域へ変わり、「 音の壁 」は物理的な壁ではなかった。

理解されていない現象の集合だったのである。
その現象を測定し、構造を理解し、設計へ反映することで、人類はその先へ進めるようになった。

音速突破が変えた航空機

超音速飛行が現実になると、航空機設計も大きく変化していく。
後退翼、薄い翼、高強度材料、高速飛行に適した胴体形状、高性能なジェットエンジン、そして超音速域でも航空機を制御するための新しい空力設計。

1950年代には、超音速戦闘機が登場する。
さらに研究は Mach 2、Mach 3 へ進み、高速飛行は軍用航空だけでなく、実験機や民間航空にも広がっていった。

1970年代には、Concorde が超音速で大西洋を越える定期旅客輸送を行うまでになり、1947年には未知だった領域が、わずか数十年後には人を運ぶ交通空間になった。

Beyond the Barrier

X-1の目的は、まだ十分に理解されていない領域へ入り、次の航空機を作るための知識を持ち帰ること だった。
この考え方は、その後のXプレーンへ受け継がれていく。
そして、極超音速・高高度飛行へ挑んだ X-15
航空機による高速飛行研究は、次第に大気圏と宇宙の境界へ近づいてく。

Legacy

1903年、ライト兄弟 は人間が動力航空機を操って飛べることを示した。
1930年代から40年代、ジェットエンジン は航空機をさらに高速化する新しい推進方式を現実にした。
そして1947年、Bell X-1 は、音速という境界の向こう側でも、人間は航空機を制御して飛べる ことを示した。

しかし、その本当の価値は「 Mach 1を超えた 」という数字だけではない。
未知の領域へ実際に入り、測定し、理解し、次の設計へつなげたことにある。

航空史はここから、単純な速度競争を越えていく。
より速く、より高く、そして、大気圏のさらに先へ。

「 音の壁 」を越えた飛行は、人類が空の限界そのものを探り始める、新しい時代の入口となった。

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