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MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : From Sky to Space / 空から宇宙へ

From Sky to Space / 空から宇宙へ

MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : From Sky to Space / 空から宇宙へ

空から宇宙へ

1947年、Bell X-1 が音速を突破した。
かつて「 壁 」と考えられていた音速の向こう側へ進んだ航空研究は、そこで止まらなかった、Mach 2、Mach 3、さらにその先へ。

速度を上げれば、航空機はより高い高度へ到達する。
高度が上がれば大気は薄くなり、従来の翼や操縦舵は次第に効かなくなる。
そして、その先には大気圏と宇宙の境界があった。

人類の飛行技術は、「 空をどう飛ぶか 」から、「 空の限界はどこにあるのか 」を探る段階へ進んでいく。
その最前線に立った実験機が、North American X-15 だった。

North American X-15

X-15は、アメリカのNACA、NASA、空軍、海軍などによって進められた高速・高高度研究計画のために開発されたロケット実験機である。

初飛行は1959年、通常の航空機のように滑走路から離陸するのではない。
X-15 は B-52 Stratofortress の翼下に搭載され、高高度まで運ばれた。
そこから切り離され、ロケットエンジンを点火する。
猛烈な加速によって高高度へ上昇。

エンジン停止後は慣性によって飛行し、やがて大気圏を降下。
最後はエンジンを使用せず、滑空して地上へ帰還した。
飛行機と宇宙船の特徴を併せ持つような、極めて特殊な研究機だった。

Mach 6.7

X-15 が到達した領域は、それまでの航空機とは大きく異なっていた。
1967年10月3日、William J. Knight が操縦した X-15A-2 は、Mach 6.70、約7,274 km/h を記録した。
音速の6倍を超える極超音速領域である。

1963年8月22日、Joseph A. Walkerの飛行では、高度107.96 km へ到達。
一般的に宇宙との境界の一つとして使われる高度100kmのカーマン・ラインを超える高さだった。

X-15 は人工衛星のように地球を周回する軌道飛行を行ったわけではない。
それでも人間を乗せた翼のある機体が、航空と宇宙の境界領域へ実際に到達した。

翼が効かなくなる場所

高高度では空気が極端に薄くなる。
通常の航空機は翼や尾翼に流れる空気を利用して姿勢を制御する。
空気そのものがほとんど存在しなくなれば、空力舵は十分に機能しない。

そこで X-15 には、通常の操縦装置に加えて Reaction Control System( 反動制御システム )が搭載された。
小さなロケット噴射によって機体姿勢を変える。

これは宇宙船で使用される姿勢制御と同じ考え方である。
X-15 は、空気を利用して飛ぶ航空機と、空気のない場所を飛ぶ宇宙船の境界
を実際に経験する研究機だった。

極超音速という未知

問題は高度だけではなかった。
Mach 5 を超える 極超音速飛行 では、空気との摩擦や圧縮によって機体表面が猛烈に加熱される。
従来の航空機で使われていた材料や設計思想だけでは対応できない。

耐熱材料、機体構造、高速域での安定性、極超音速空力、高高度での姿勢制御、装置、再突入に近い環境での加熱。
X-15 はこうした問題を、実際に人間を乗せて飛行することで調べた。
合計199回に及ぶ飛行によって、膨大なデータが蓄積されていった。

NASAの誕生

X-15 が開発されていた時代、世界ではもう一つの大きな変化が起きていた。
1957年10月4日、ソ連が世界初の人工衛星 Sputnik 1 の打ち上げに成功。
宇宙は科学研究の対象だけでなく、国家間の技術競争の舞台となった。

翌1958年、アメリカは、それまで航空研究を担ってきた NACA( National Advisory Committee for Aeronautics )を母体として、NASA National Aeronautics and Space Administration を設立する。
「 Aeronautics 」と「 Space 」、その名称が示すように、航空研究と宇宙開発は一つの組織の中で接続された。
そして X-15 計画も、NACA から NASA へ引き継がれていった。

空から宇宙へ

X-15 は、その研究には後の有人宇宙飛行へつながる多くの要素が含まれた。
極超音速飛行、高高度での姿勢制御、空力加熱、耐熱構造、宇宙服に近い与圧服、高速飛行からの大気圏内帰還。
そして、人間が極限環境で航空宇宙機を操縦する経験。

X-15 計画で得られた知識と経験は、その後のアメリカの航空宇宙研究へ引き継がれ、特に後年の再使用型宇宙輸送システム研究にも重要な基盤を提供していった。

Legacy

1903年、Wright Flyer は12秒間、空を飛んだ。
1947年、Bell X-1 は音速を越えた。
そして1960年代、X-15 は Mach 6 を超え、高度100kmのさらに先へ到達。
わずか60年ほどの間に、人類の飛行領域は地表近くの空から、宇宙との境界まで広がった。

この機体が問い続けたのは、「 航空機はどこまで行けるのか 」だった。
その答えを求めて速度と高度を押し広げた先で、航空研究は宇宙飛行と交わり始める。

人類が見上げていた空は、もはや終着点ではなかった。
空の向こう側に、宇宙が続いていた。

そして同じ時代、人類はさらに巨大なロケットを作り始めていた。
次の目的地は、Moon 月 だった。

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