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MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : From NACA to NASA / 航空研究から宇宙開発へ

From NACA to NASA / 航空研究から宇宙開発へ

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航空研究から宇宙開発へ

20世紀前半、人類は飛行機を発明しただけでは、まだ「 飛行 」を完全には理解していなかった。

翼はどのような形がよいのか。
空気抵抗をどう減らすのか。
高速になると空気はどう変化するのか。
より高く飛ぶためには何が必要なのか。

こうした問いを、実験とデータによって解き明かしていったアメリカの航空研究機関が、NACA( National Advisory Committee for Aeronautics / 国家航空諮問委員会 )だった。

後に人類を月へ送り、惑星探査へ向かう NASA は、何もないところから突然誕生したわけではない。
その基盤には、40年以上にわたって蓄積された航空研究があった。

1915|NACAの誕生

NACA は1915年、第一次世界大戦によって航空技術の重要性が急速に高まるなかで設立された。
当時、航空技術ではヨーロッパが先行しており、アメリカには航空研究を体系的に進める必要があった。

NACA が目指したのは、特定の航空機を大量生産することではない。
「 飛行という現象そのものを科学すること 」だった。

風洞を使った翼型研究。
空気抵抗の測定。
プロペラ研究。
エンジン冷却。
高速飛行。
機体形状と空気の関係。

こうした研究によって、航空機設計は経験と試行錯誤だけに頼るものから、測定・実験・理論に基づく工学へと変化していった。
NACA が公開した翼型データや研究成果は、軍用機だけでなく民間航空機の設計にも広く利用されることになる。

風洞から未知の速度領域へ

航空機の性能が向上すると、研究対象も変化していった。
より速く、より高く。
しかし速度を上げれば、これまで問題にならなかった現象が現れる。
音速付近では空気の圧縮性が無視できなくなり、衝撃波が発生する。さらに高高度へ進めば空気は薄くなり、従来の翼や舵による制御も次第に難しくなる。

そこで航空研究は、既存の航空機を改善するだけでは足りなくなった。
誰も十分に飛んだことのない領域へ、実際に機体を送り込んで測定する。
そのために登場したのが、Xプレーン と呼ばれる実験機群だった。

Xプレーン|空と宇宙の境界へ

代表的な存在が Bell X-1 である。
1947年10月14日、チャック・イェーガー が操縦する X-1 は、有人航空機として水平飛行中に制御された状態で音速を突破した。

遷音速から超音速にかけて、機体と空気の間で何が起こるのかを実際に測定することだった。

1959年に飛行を開始した North American X-15 は、ロケットエンジン を使用し、Mach 6 を超える極超音速と高度100kmを超える領域にまで到達。

そこでは空気力学だけでなく、空力加熱、耐熱材料、高高度での姿勢制御、人間が極端な環境で飛行するための生命維持などが研究対象になった。
航空研究は、いつの間にか宇宙飛行と共通する問題へ到達していたのである。

1957|Sputnik Shock

1957年10月4日、ソビエト連邦は世界初の人工衛星、Sputnik 1 の打ち上げに成功した。
ロケット技術は長距離弾道ミサイルとも密接に結びついていたため、この成功はアメリカにとって国家安全保障上の衝撃でもあった。

宇宙は、科学の新しい領域であると同時に、国家の技術力を示す新しい競争空間 となり、アメリカには、分散していた宇宙研究を国家規模で統合する組織が必要になった。

1958|NASAの誕生

1958年、アメリカ議会は National Aeronautics and Space Act を成立。
同年10月1日、NASA( National Aeronautics and Space Administration )が正式に活動を開始する。
NACA は廃止され、その約8,000人の職員、研究施設、研究能力が新しいNASA の中核となった。

さらに NASA には、他の政府機関が持っていた宇宙関連施設・計画も移管されていった。

しかし同時に、その研究文化、人材、施設、空気力学、高速飛行研究という基盤の多くを NACA から継承した。
そして NASA の正式名称に現在も Aeronautics という言葉が残っていることは、その出自を象徴している。

空を研究した先に、宇宙があった

航空機と宇宙機は別の乗り物に見える。
しかし技術的な境界は、それほど明確ではない。
ロケットは打ち上げ直後、大気中を高速で通過する。
宇宙船は地球へ帰還するとき、大気圏へ再突入する。

再使用型宇宙機なら、宇宙から戻った後に再び空気力学によって飛行する。
高速流体、衝撃波、空力加熱、安定性、姿勢制御、材料、人体への影響。
航空研究で生まれた多くの問いは、そのまま航空宇宙研究へ連続していった。

NACA が研究していた「 より速く、より高く 」という問いを突き詰めていくと、やがて空そのものが終わってしまったのである。

Legacy

NACA は、人類が空を科学的に理解するための研究機関だった。
NASA は、その蓄積を受け継ぎながら、研究領域を地球の大気圏の外へ広げていき、空を理解し、その限界へ近づき続けた先に、宇宙という次の研究領域が現れた。

NACA から NASA へ。
それは単なる組織の交代ではなく、人類の「 飛ぶ 」という研究対象が、空から宇宙へ拡張された歴史だった。

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