ドナルドダックよ、いずこへ


新卒の国語教師として、とある学園に赴任した頃。

「これ、お前に似てるから」と父親が買ってきた弁当箱のイラストは、
怒り顔でどこかに向かって突進している、
ドナルドダックだった。
前傾姿勢で、明らかに何かにキレている。

冷静に考えてどういう評価?と思うが、当時のわたしはありがたく受け取り、毎日せっせとブチギレてるドナルドに弁当を詰めた。

わたしが赴任した学園は、インターネットで「ブラック学園(御三家)」と評される学校。
昭和のルールが、机の上にプリントと一緒に積まれていた。

赴任開始から、“これ、注意される筋合いある?”が3日に1回は発生していた。

同期は3人いたが、
美術科のAちゃんは美術室に逃げ、
理科のYくんは理科室に逃げ、
英語科のNくんは中途採用で年が上なので、なぜかあまり叱られず、

そうなると理不尽の矛先は、職員室にいる
わたしにピンポイント着弾した。
「国語科にも、せめて何かしらの部屋をくれ…」とわたしは何度も願った。

行事があり、職員に弁当が配られる時、弁当を率先して配らなかったという理由でAちゃんとわたしだけ呼び出された。
なが〜いお説教。
男性同期は、なぜか呼ばれない。

「女子は台所のこととか率先してできないと」というワードに、
「いや何時代の話ですか?」と反射で言い返してしまった。
さらに先輩の怒りは延焼した。
たぶん私は、火に油というよりガソリンを進んでぶっかけていた。
正しいことを言ったつもりだったが、状況は特に良くなっていない。
帰宅後に脳内反省会を6周ほどした。

なんかうまく出来なかった。
うなずくべきだと頭ではわかっているのに、首が動くタイミングだけが毎回ずれる。
「はい」と返す前に、一瞬だけ黙る。
そして、空気は少し悪くなる。
20代のわたしは、前傾姿勢で突っ込んでいた。
無差別ドナルドダック期だった。

それから10年余りたち、今のわたしは別の学校に、非常勤講師として赴任している。
今の赴任校では、上司と部下が、
「でっかいアリ捕まえた!」と盛り上がっている。
怒りの温度が存在しなさすぎて、逆に不安になる。

私は丸くなったのかもしれないし、ただ突っ込む先がなくなっただけかもしれない。

弁当箱のドナルドダックは、まだどこかへ向かっているのかもしれないし、箱の中で眠っているだけかもしれない。
私はそれをまだ、確かめていない。

父親は苦い顔で、「俺もそれで昇進を逃した」と言った。
血か。




こちらのエッセイは、マイキーさん主催、『#エッセイしりとりコンテスト』にて頂いたバトンで書かせていただきました!
わたくし、元・平成女児ですので、プロフィール帳とか交換日記みたいなもんが、「書いて♡」と回ってくるとウッキウキで書いてしまいます!

▼コンテストの概要

バトンを回してくださったのは、
エッセイのようなものさんこと、ナガタさんです!

ナガタさんの文章を読むと、「顔はポーカーフェイスなのに、脳内でずっと面白いことを考えている人」が浮かびます。
大声で「ここ面白いですよ!」と差し出してくるわけではない。みんなが通り過ぎる部分について、ひとりでずっと考えてる。
わたしの好きな漫画家・和山やま先生の描くキャラクターたちに、どこか似ています。

バトンは3人まで回せるとのこと。
せっかくなので、今回はナガタさんから受け取った「ポーカーフェイスなのに内面がたいへん豊かな方達」の系譜を、勝手につないでみたいと思います。

1人目・遠藤貧さん

遠藤さんは、わたしが今注目している書き手さんの1人です。
こちらの記事ぜひ読んでください。
遠藤さん、貝お嫌いなんですよ。
なのにめっちゃ貝のこと観察してる。
嫌だ嫌だ言いながら、めっちゃ貝のこと考えてる。たぶん貝好きな人より、貝の解像度(韻を踏んでしまった)高いです。
遠藤さんと、貝食べたい。嫌がる様をじっくり見たい。

2人目・ほんのちょっと困ってるさん

ほんのちょっとさんは、ささやくような声で、いつも妙なことを言ってらっしゃいます。
「NOTEではチャラくありたい」という信念を持ち、他のクリエイターさんたちと交流されております。(noteの表記がいつも大文字なのも、どうも妙なんだよなぁ)
地球最後の日の晩餐は、「グミとか適当に食べて滅したい」とのことでした。

3人目・羊男さん

羊男さんの文章を読むと、鮮やかな情景が、静かに浮かんできます。こちらの記事がわたしはすごく好きなんですが、夏の記憶が、
回り燈籠のように次々と立ち現れて、読んでいると言葉にならない気持ちがわあーっと湧いてきます。
先日まで旅に行かれてらっしゃったそうなんですが、羊男さんは「旅行」よりも「旅」という言葉が似合う方だなあと思いました。


企画は8/31までとのこと。
バトンを受け取っていただける場合、
タイトルの指定は「へ」から始まるタイトルです!

お忙しいと思いますので、
ご参加は、ご都合ついて気が向いたらで
全然大丈夫です🙆‍♀️✨
(参加しなくても勿論かまわないです!)
せっかくの機会なので、3名の魅力について語りたい!と思い、お名前あげさせていただきました。