空想ブックカフェと小さな犬と、何も変わることのない物語 ~#5 エピローグ|「物の怪」の住む場所
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海沿いの国道をはずれた場所に、小さな道祖神がある。
「物の怪」(もののけ)と呼ばれる存在が鎮められていた。
それまでは災いを起こして楽しんでいた。
道祖神として鎮められた後も、時折「物の怪」は動物の身体を借りては悪さをしていた。ある日、迷子犬の身体に入り込んでいたところを、国道ではねられた。
身体を借りているときは、ダメージを受ける。「物の怪」が動けなくなり、意識を失う直前、目の前に赤い自転車が止まるのが見えた。
「物の怪」が気づくと動物病院にいた。まだ借りている身体から抜け出すことはできなかった。病院に運んだ男は、アパートを引き払って治療代にあてた。それが「物の怪」だとは知らずに。
回復した「物の怪」は病院を抜け出し、身体を借りていた迷子犬は飼い主の元に戻った。男は安っぽいアパートに住み替えていた。彼は老いた愛犬を看取れなかったことをずっと後悔していた。縁のない犬を助けたのも、そうするしかなかったのだろう。愛犬と過ごすブックカフェを空想している男だった。
だから「物の怪」は、黙って彼の空想を現実につなげてやった。
だが、その犬がもう現世にいないことを男はわかっている。
「物の怪」はつぶやいた。「恩は返した。あとのことは知らん」と。
◆「空想ブックカフェと小さな犬と何も変わることのない物語」
現実との境界線が曖昧になった客たちが迷い込んでくる「空想ブックカフェ」を舞台にした物語
・#1 プロローグ
・#2 迷い込んできた女と奇妙な本
・#3 捨てられない男と海辺の幻想
・#4 夢を見ていた少女と空想を見ている男
・#5 エピローグ|「物の怪」の住む場所 ←今回
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