【アフリカ旅#1】ただ遠いところに行きたくて(ジンバブエ)
3月、南部アフリカをひとり旅してきた。繁忙期を抜けたと思ったらそれを上回る繁忙期がやってきて、なんだか遠いところに行って自分の仕事以外の人格の実力を確かめたくなったのだ。
こういうときに備えて、旅してみたいルートを複数ストックしてある。
行けるはずもないアフリカ周遊プランのバリエーションだけが、スマホのメモ帳に蓄積されてゆく🦒 pic.twitter.com/03uE7z0PxE
— ゆい (@yuitabi1990) February 13, 2026
今回、ストックのなかから選んだのは、南部アフリカを周遊するルートだ。このnoteでは、1日目と2日目の日記をまとめる。
#DAY1:東京からジンバブエへ
繁忙期の人間を飛行機に乗せるとどうなるか
今日は成田18時発のフライトだ。午前中くらいは働けるかなと思っていたのだけど、よくよくスケジューリングしてみるとそんな余裕はなく、全休をもらう。実際、ジムに行き、お風呂で本を読み、パッキングをして、お味噌汁でも食べていると、あっという間にお昼を過ぎてしまった。
最終目的地はジンバブエのヴィクトリアフィールズ空港だ。香港とヨハネスブルグで乗り換える。

香港行きのフライトでは、行きつけの町中華「寿福」のご主人に勧められていた『ズートピア2』を鑑賞。
時差ぼけを避けたいなら、決してこのタイミングで寝てはいけない。でも「寝ちゃだめだ」と思うほど瞼が重くなる。繁忙期の人間を飛行機に乗せたらこうなるのはしごく当然のことである。
想像の5倍おいしいエッグタルト
続くヨハネスブルグ行きのフライトは飛行時間13時間。ぼーっとしているだけで過ぎるような時間ではない。ギャレーに行ってお菓子をもらってみたり(はじめてなので緊張した)、『ひゃくえむ。』を2回観たり(なぜならまた寝てしまったから)、スマホにも入っているスピッツのアルバムをわざわざ機内エンタメで聴いてみたりする。

機内エンタメでIVEのライブ映画を観ていると、CAさんに耳元で「エッグタルトはいかがでしょうか?」と囁かれた。
答えはもちろんイエスに決まっている。真っ暗な機内で、想像の2倍大きく、3倍あたたかく、5倍おいしいエッグタルトを頬張った。画面のなかで歌い踊る美しい推したちを眺めながら。


着陸が近づくと、「これからスプレーをまきますので、鼻と口を覆ってください。コンタクトレンズをご使用の方は30秒ほど目を閉じていてください」とアナウンスが入った。想像以上に煙くて、眼鏡をかけている私もみちっと目を閉じる。
あとで調べたところ、アフリカの一部地域に到着する飛行機では、殺虫スプレーを散布するルールがあるそう。経験しない限り検索するきっかけのない情報に接し、さっそく「来てよかった」と思う。
#DAY2:ヴィクトリアフォールズ到着
「憧れの南部アフリカ8日間」
ヨハネスブルグ空港で乗り継ぎ。飛行機を降りると、日本発ツアーの人たちが集合し、うきうきと話していた。ガイドさんの手には「憧れの南部アフリカ8日間」というボード。
きっと私とほぼ同じルートだろうなあ。一緒に旅する人がいることに対する羨ましさとともに、孤独と不安が押し寄せてくる。「私もついていっていいですか」と声をかけたい気持ちを抑えて、バックパックの持ち手をぎゅっと握り、乗り換えの方向へと進んだ。

ヨハネスブルグ空港には、大都市の空港とは思えないほどひっそりした空間がそこここにある。私以外の人類は絶滅してしまったのではないかと思うくらいだ。標識を信じて進むうちに、賑やかなゲートに出てほっとした。


次はジンバブエのヴィクトリアフォールズ行きの飛行機に乗り換えだ。

同僚たちは繁忙期の真っ只中。私にできることはすべて終えてきたとはいえ、仕事の進み具合が気になって仕方なく、Slackをちらちらと見る。
心配性で気が小さいので、知らない国を旅するより東京で仕事をしているほうがずっと心地いい。まとまったお金と時間を旅行に投資しているから、認めたくないけれど。
「遠いところに行きたい」とは言ったけど
お昼過ぎ、ジンバブエのヴィクトリアフォールズ空港に到着。入国審査の列に並ぶ。
覚えたばかりの現地語で挨拶すると、審査官がとびっきりの笑顔を返してくれた。「どこで勉強したの?」と聞かれて「Googleです」と返すと爆笑されたけれど。

予約しておいた送迎ドライバーさんに挨拶するとまたウケて、「タテンダ、タテンダ」(ありがとうの意)と何度も私の口真似をしている。
乗り込んだのはトヨタ車で、カーナビの現在地は飯田橋だ。街ゆく車もトヨタがほとんど。ドライバーさんに聞いてみると、「トヨタは修理が簡単だし、頑丈でいい」とのこと。このあとまわった街でもトヨタ一強の様子で、もはや本名ではなくトヨタと名乗ったほうが楽しい旅になるのではと思うくらいだった。


ここから3泊するのはホテル「nkosi guest lodge」。ンから始まる名前にアフリカを感じてうれしくなる。しりとりの「ん」の手札に「ンコシゲストロッジ」が仲間入りだ。

お部屋に入ってひとりになった瞬間、長い長いため息が出た。東京の家を出発してから33時間。遠いところに行きたいと言ったのはほかでもない私だが、それにしたって遠すぎた。


ベッドはお姫さまめいていて一瞬ときめいたものの、実際はただの蚊帳である。床でふわっと広がるくらい長くてたっぷりした布なので、蚊帳の内側に入ると、抜け出すのが面倒だ。これもまた、現地で体験しないと知り得なかった感覚である。

8本のペットボトルをリュックに詰めて
この街にやってくる人の大半は、世界三大瀑布のひとつであるヴィクトリアフォールズがお目当てだろう。私もそのひとりだ。
明日は日帰りでサファリツアーに行き、明後日にヴィクトリアフォールズを見る予定である。ホテルから滝の入り口までは40分ほどあるようなので、散歩がてら行き方を確かめておこう。よいしょっと立ち上がって街へと繰り出した。

木の種類が多種多様で、何度も立ち止まっては、いろんな角度から眺める。アフリカに限らず、海外に来たという実感が湧くのは、いつだって日本では見かけない木を見たときだ。


中心部に着いても、観光客の姿はほとんど見えない。海外では「想像してたより都会だった」というケースがほとんどだけど、今回は逆パターンである。

それにしても、とても暑い。30分ほど歩いたところで、「この暑さのなか、これ以上歩きまわるのは危険だ」と判断し、滝の場所を確認するのは諦めた。
最優先は、滞在中に飲むミネラルウォーターを入手することだ。スーパーが見当たらなくて、暑さと疲労でまわらない頭をフル回転させる。

ふらふらと入店した酒屋さんで尋ねると、棚の隅っこに陳列されているお水を案内してもらえた。500ミリリットルのペットボトル1本0.25セント(社会の教科書に載っていたとおり、ジンバブエはハイパーインフレにより現地通貨の信用がなくなり、米ドルが流通している)。お釣りが足りないというので、8本も買うことになった。
リュックに大量のペットボトルを詰め込んで、酷暑のなかホテルをめざす。道の脇に猿がいたが、怖がる余裕もない。

なんとかホテルの部屋に帰りつき、SlackやSNSをチェックしたり、漫画を読んだりして過ごした。やっていることは東京と変わらない。私に現在地を思い出させるのは、部屋に立ち込める虫除けスプレーのにおいと、蚊帳の内側にいることだけである。
明日はもう少しアフリカらしい一日になるだろうか。

▼続き
