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【アフリカ旅#3】スマホなしで旅してみた日のこと(ヴィクトリアフォールズ)

3月、南部アフリカをひとり旅してきた。

このnoteには、ジンバブエとザンビアの国境を徒歩で越え、ヴィクトリアフォールズ(滝)を見物した4日目の日記を書く。

#DAY4:ヴィクトリアフォールズ観光

SIMはあえて買わない

実は今回、ジンバブエでの3泊は、外出中にネットが使えない。私が調べた限り、このエリアに対応しているeSIMが見つからなかったからだ。

数年前まで、私は海外でSIM類を使わず、空港やホテル、カフェのWi-Fiだけで乗り切る派だった。そんな当時の旅は冒険っぽくて、良くも悪くもまったく別ものだったような気がする。

いまあえて、あの頃の旅を再現してみるのもいいかもしれない。そう思い、今回は物理SIMも買わず、オフラインの旅に挑戦することにした。

今日は、ジンバブエとザンビアの間にある巨大な滝、ヴィクトリアフォールズに行く。ジンバブエ側から滝を見たあと、徒歩で国境を越えてザンビア側からも見るつもりだ。

ジンバブエ側の入り口はどこで、どう回ると効率的か。ザンビアのイミグレーションはどのあたりか。ホテルのWi-Fiが使えるうちにあらゆる情報を検索し、スマホに保存した。

知らない人の「大丈夫」を信じる

ヨーグルトとフルーツの朝食をとり、7時半にホテルを出発。

しかし、さっそく足が止まった。ホテルの前に大量の猿がいる。どうしよう。

立ち尽くしていたら、猿の向こう側から地元民らしき人がやってきて、「行きな行きな!」と言う。「これ行けます……?」と聞くと「大丈夫!」と励ましてくれた。その人が見守ってくれれば心強いだろうが、あっという間にどこかへ行ってしまう。腹をくくり、猿から目をそらして、無意味に体をよじりながら早足で通り抜けた。

ひろびろとした道路に約15匹の猿

こちらの人たちは、すれ違うと、目を合わせて「Morning! How are you?」と言ってくれる。「Morning! Good! And you?」と返し続けているうちに対応がこなれてきて、目が合った瞬間に「モーニングーッド!」とか「モーニンハワユー?」と言うようになっていた。相当省略してるけど、たぶん相手にはバレてないと思う。

滝の入り口に向かって歩いていると、出勤中だというお土産もの屋さんに話しかけられ、一緒に歩く。きっと毎日、観光客を見つけてはこうして売り込みをしているのだろう。終盤で現れた別の観光客も引き入れてあれこれ話したあと、「帰りにうちのお店に寄ってよ」と念押しをして去っていった。

こんな道なので、話しかけられると逃げ場がない

シュレディンガーの滝、的な

残された私たちは、入場料支払いの列に並びつつ、滝の水しぶきを防ぐためのレインコートをごそごそと着る。それぞれ入場料を払い、「Enjoy!」と言い合って別れた。

滝のある国立公園に入ると、半端ない量の水しぶきが降りかかってくる。いくつかのビューポイントをまわりつつ、先ほどの人と会うたびに「これって雨じゃなくて水しぶきだよね?」「ほんとびしょ濡れ!」などと言い合った。

そもそも水しぶきが大量すぎて滝が見えない。ゴゴゴという水音がとどろいているので「そこに滝があるらしい」とは思われるが、確信はない。濡れないよう厳重にしまってあるスマホを取り出して、またしまうのが面倒で、写真もほとんど撮らなかった。

そこに滝があるのだろうとは思う
心の目で見る
見えた、濡れた

ほぼ見えなかったとはいえ、ジンバブエ側の滝は十分に体験できたと思う。今度は国境を越えてザンビアに入国し、そちらからも滝を見るつもりだ。

ただ、ジンバブエとザンビアをつなぐ大きな橋は見えているのに、そこまでの道が見つからない。事前に調べていた情報は役に立たず、ネットがないのでその場で調べることもできない。

何度も同じところをぐるぐる歩きまわっていると、先ほどの人が別の人と一緒に歩いているところに出くわした。ふたりもこれからザンビアに向かうらしい。「一緒に行こう」と言ってもらえたので、甘えることにする。

狭い道を、3人で縦に並びながら歩く。水しぶきを避けるために、みんな顔を伏せて、口も閉じている。足音は滝の音でかき消されるし、何も聞こえないのに相手の気配を感じられるほど親しい仲ではない。ときおり振り返ってお互いの存在を確認した。といっても、顔を上げられないので、見えるのはびしょ濡れの靴だけだ。

しおしおになったパスポート

ついにジンバブエとザンビアを結ぶ橋にたどり着いた。橋を歩いてジンバブエから出国し、ザンビアに入国する必要がある。

ここではじめて3人が横並びで歩き、自己紹介しあった。ヨハネスブルグ出身のAさんと、アルジェリア出身のBさんだ。「明日からヨハネスブルグに行くんです」と言ったら、Aさんは「危険だよ」と顔をしかめた。

あれこれ話しながら揃って国境を越え、ザンビア側の国立公園に入場。

出会ったときから気になっていたのだが、Bさんはレインコートを着ていない。手の施しようがないほど全身びしょ濡れになっており、すれ違う人たちから「Wow! Why!」と突っ込まれていた。イミグレでチラ見すると、パスポートは完全にしおしおになっている。

あまりに水しぶきと轟音がすごくて、全員無言で滝を見物した。1秒立ち止まるだけでびしょ濡れになるし、顔を上げていると水が鼻にかかって息苦しいほどなのに、熱心にTikTokか何かの撮影をしている人がいる。3人で顔を見合わせ、笑いをこらえながら、足早に通り過ぎた。

さらに1時間ほど道を下っていけば、かなり近くから滝を見上げることができるようだ。けど、私は「もう滝は満足かな」という気持ちになっている。最後の最後にスマホを取り出し、連絡先を交換したあと、ふたりに別れを告げてホテルに戻ることにした。

心配無用の熟年バックパッカー

雷の音が近づいてきている。ネットがないので天気予報は確認できないけど、いまにも雨が降りそうだ。せっかく服も髪も乾いてきたのに、再び濡れるのは避けたい。急いでホテルに向かう。

自分の部屋に到着したとたん、やはり雨が降ってきた。

時計を見るとまだ12時すぎ。さっきまで巨大な滝のそばにいて、初対面の人たちと笑い合っていたことが信じられないような気持ちになってくる。

ホテルのWi-FiにつないでAさんにお礼のメッセージを送ると、「無事に国境越えできた?Bさんと『Yuiをひとりにしてしまって大丈夫だったかな、ジンバブエまで付き添うべきだったかも』と心配してたんだよ」と返ってきた。

正直なところ、国境越えは何度となく経験してきたので、心配には及ばない。だからこそ、こうして気にかけてもらえるのはひさしぶりで、なんだかくすぐったい気持ちになった。

私のスマホがネットに繋がっていたら、道に迷うことはなかったし、ふたりと過ごして、誰かから心配されるうれしさを感じることもなかっただろう。そもそもスマホばかり見ていたら、Aさんと言葉を交わすきっかけもなかったと思う。またネットなしで旅してみるのもいいかも、なんて思った一日だった。

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