【アフリカ旅#4】“世界最恐都市”に恋をする(ヨハネスブルグ)
3月、南部アフリカをひとり旅してきた。
このnoteでは、世界最恐都市・ヨハネスブルグで過ごした2日間の日記をまとめる。
#DAY5:ジンバブエから南アフリカへ
うれしい知らせに飛び出る笑顔
ジンバブエのヴィクトリアフォールズを発つ日。毎日移動するような旅が多いので、3泊も滞在した街なんてひさしぶりだ。

昨夜、ホテルのスタッフさんに空港行きのタクシー手配をお願いしてあった。35ドルと聞いて「高いなあ」と思ったのが顔に出てしまっていたのか、「シェアタクシーがないか聞いてあげる」とのこと。昨日の今日で確保できるのだろうか。あまり期待せずにカウンターに行ってみると、「予約できたよ、20ドルで」!
15ドルの節約は大きすぎる。この旅いちばんの笑顔が飛び出た。

ご機嫌のまま近くのカフェに出かけ、大きな木の下でコーヒーを飲む。浮いた15ドルをぱーっと使い、ここにいるみなさんにご馳走したいくらいだ。


知らないほうが幸せなこともある、けど
海外を旅するのはいつだって緊張するけど、今回はちょっとレベルが違う。今日から2泊する南アフリカのヨハネスブルグは「世界最恐都市」という異名がついているのだ。
「外国人が道を歩けば150%襲われる」「手ぶらなら大丈夫でしょと言って出て行った旅行者が、身ぐるみを剥がされて帰ってきた」など、恐ろしい噂に事欠かない。知らないほうが幸せだとわかっていても、怖いもの見たさにどんどん調べてしまった。

すごく怖い。だけど、だからこそ行かずにはいられない。搭乗を待つ間も落ち着かなくて、本を開いても、気づけば同じページばかり読んでいた。

15時半に着陸。よし、ヨハネスブルグと対決だ!結婚指輪を外してセキュリティポーチにしまい、意を決してアライバルを出た。

Uberを使う手もあったけど、現地の列車を体験したくて、「ハウトレイン」を選択。料金がやや高額ということもあって、この列車は安全らしい。

空いている車両は避けて、女性たちがぽつぽつと座っているエリアに腰を落ち着けた。膝の上で荷物をぎゅっと抱きながらも、はじめて見るヨハネスブルグの街から目が離せない。



徒歩1分の距離、Uberに乗る?
ホテルの最寄駅に到着。腰に銃を携帯した警備員さんたちが目を光らせるなか、乗客たちはどんどん地上に消えていく。怖い、置いていかないで。

ヨハネスブルグの住民たちは、安全のため、徒歩1〜2分の距離さえUberに乗るらしい。
今日泊まるホテルは駅の目の前にある。せいぜい徒歩1分だろう。こんな距離でもUberに乗るの?本当に?

警備員さんに「Uberに乗るべきでしょうか?それとも歩いて行けますか?」と聞いてみると、「歩きな」との回答。「私が無事にホテルに入るまで、絶対に目を離さないでくださいよ」と祈りつつ、ダッシュでホテルに向かった。
近いとはいえ、横断歩道を2つ渡らなければならない。信号待ちのあいだ、車からの視線をびしびしと感じる。女ひとりで歩くアジア人が珍しくて眺めているだけだろうが、もし獲物として見られているとしたら……?自分の心臓の音が聞こえそうだ。
信号が青になった瞬間、もう一度ダッシュしてホテルに駆け込んだ。客室のドアには、安全のためのアドバイスが掲示されている。ブランドものは身につけないこと、Uberは屋内で待つこと、ATMはホテルのものを使うこと、などなど。

すぐ近くにはショッピングモールがある。食事をしようと思って下まで降りたものの、帰る頃には日が暮れているだろうことを想像すると怖くなった。だって、Uberを待っている間に何かあったら?結局、部屋に引き返すことにした。

窓際で飽きるまで外を眺める。治安に不安がある街では、こうして部屋から景色を眺めながら過ごす夜がけっこう好きだったりする。

ここは東京で言えば丸の内にあたるエリアらしい。洗練されたオフィス街といった雰囲気なのに、外を歩く人はほとんど見当たらない。夜が近づくにつれ、遠くの車の走行音さえ聞こえなくなった。この街に私ひとりしかいないような気分になる。

#DAY6:ヨハネスブルグ観光
目が合えば少なくとも手を振り、たいていはダンス、あるいは投げキス
ヨハネスブルグには、「外を歩ける」とされているエリアがふたつある。昨日泊まったサントンと、今日泊まるローズバンクだ。
ふたつの街をどちらも体験したくて、1泊ずつホテルを分けることにした。1泊目のホテルをチェックアウトし、次のホテルへ移動する。


ホテルで荷物を預かってもらったあとは、直結のモールを通り、外をさささと歩いてバス乗り場へ。私の危険センサーは反応しない。気をつけていればだいじょうぶそうだ。
ただ、ホテルを出るとき、ドアマンに「外ではスマホを出さないこと」と言い含められた。Googleマップなしで目的地にたどり着かなければならず、方向音痴かつ記憶力のない私には厳しい。

今日のメイン活動は、2階建ての観光バスに乗ることだ。これなら、安全を保ちながら、ヨハネスブルグのいろんなエリアを見られる。シティビューのホテルに泊まるのと同じく、これも海外ひとり旅でたまに使う手だ。


とはいえ、バスの2階から街を眺めることに、どこか後ろめたさもあった。現地の人たちは、こうやって「観光対象」みたいに見られることをどう思っているんだろう、と。
だけど実際には、目が合うと、たいていの人はにこっと笑って手を振ってくれる。踊ったり、投げキスをしてくれたりする人もいる。こちらも笑顔になり、緊張がすこしほどけた。

すぐに曇る窓を何度も手で拭きながら、流れていく景色を見つめる。博物館に入るためにバスを降りた人を警備員さんが迎えに行ったり、高級住宅街の塀の中にドーベルマンが2匹いたり、「歩いてはいけない」エリアで雨宿りをする人たちがいたりと、この街の断片がすこしずつ見えてくるような気がした。
別れのあいさつは「Stay safe」
途中でミニバンに乗り換えて、ソウェト(アパルトヘイト時代に「黒人居住区」に指定されたエリア)のツアーに参加。ソウェト出身・在住のガイドさんが解説してくれる。



ネルソン・マンデラ博物館とヘクター・ピーターソン博物館のそばでは、外を歩かせてもらった。わっと人が寄ってきて、ちょっとどきっとする瞬間があったのだけど、ガイドさんは「みんなネルソン・マンデラをリスペクトしてるから、ここで悪いことは起きないよ」と言う。そうかそうかと安心する反面、じゃあここから離れたところではどうなんですか、とも思ってしまう。



本当ならアパルトヘイト博物館を見たかったのだけど、残念ながら休館日だ。ミニバンを降りたあとはマボネン地区(アーティストが集まる、比較的安全とされるエリア)に行くことにする。配車依頼したUberが到着するまで、警備員さんが付き添ってくれた。
雨のヨハネスブルグを、大量の水をまき散らしながらUberで移動する。舗装が十分ではないのか、道路のあちこちから泥水が吹き出していた。

Uberを降りるとき、たいていの運転手さんは「Have a nice day」とか「Enjoy your trip」と言ってくれるものだ。しかしここでは、雨音にかき消されそうな声で「Stay safe」と言われて、そのひと言がふしぎと耳に残った。
私の名前が書かれた手と握手する
まずはカフェ「Home of the Bean」へ。南アフリカのベストカフェに選ばれたお店らしい。
外とドア1枚隔てただけなのに、店内にはゆるっとした空気が漂っていた。ヨハネスブルグ感があるのは入口に取り付けられたゲートだけ。


おそるおそる外を歩く。ストリートアートが素敵なので一つひとつ鑑賞したいが、アジア人らしき人はひとりもいないし、その場にいる全員と目が合う。早々に退散することに決めた。



警備員さんがいたので、「ここでUberを呼んでもいいですか?」と聞くと「もちろん」と言ってくれて、しばらくアフリカ旅の感想などを話した。「名前を覚えたいから」と手に“Yui”と書いてくれて、別れぎわにはその手と握手をする。

Uberでホテルに戻る。運転手さんから「日本にはUberがないのか。じゃあ、どうやって移動するんだ?」と聞かれた。ここでは、歩いたり、自転車に乗ったりするという選択肢がほとんど存在しないのだ。
戻ったホテルでは、朝に来たときと同じスタッフさんがいて、Welcome back, Yui!と言ってくれる。外国人の名前は覚えにくいだろうに、さらっと呼びかけてくれたことがうれしい。


そのあとはショッピングエリアを歩いて、カフェ「Father Coffee」に行く。訪問前、このエリアのカフェの口コミを眺めていたら「テラス席でも襲われません」というものがあり、思わず二度見した。



すこし離れたところにあるアートエリアも様子見しながら歩いてみた。


好みのギャラリーを見つけて入ったり、


エリアにいくつもある像を眺めたり。ヨーロッパや東アジアの都市を歩いているときと変わらない「観光」だ。



通りがかった際、カフェアンテナが強く反応したお店「here joburg」はもう最高。人目につかない階段をのぼっていかなければならなかったけど、自分の嗅覚に従ってよかった。


帰りには南アフリカ発祥のチキン屋さん「Nando’s」へ。見た目よりもスパイスの効いたチキンを頬張っていたところ、ふと視線を感じた。顔を上げると、店員さんがニヤニヤしながら「おいしい?」。
とてもおいしいです。それに、こんな何気ない会話がうれしいです。

スーパーはイースターのお菓子でいっぱい。楽しげな雰囲気に囲まれつつ、お土産を仕入れてホテルに戻った。

旅に終わりはない
「ヨハネスブルグに行く」と言うと、たいていの人から心配されたり、忠告されたりした。これまでいろんな街を旅してきたが、それらの比ではないほど真剣に。
私自身、この街に対して抱いていたのは、「怖い」という、ずいぶんシンプルで平面的な印象だった。だからこそ、自分の目で見て、歩いて、立体的なイメージを持ちたかったのだ。

現地では、何人もの警備員さんやドライバーさんに守ってもらった。目が合えば手を振ってくれる人や投げキスをしてくれる人がいて、名前を覚えようとしてくれる人も、「Stay safe」と声をかけてくれる人もいる。直接コミュニケーションを取らなくても、そっと見守ってくれていた人もいるだろう。

カフェでは、人びとが仕事をしたり、誰かとおしゃべりをしたりしている。そのシーンだけ切り取れば、東京と何も変わらない。

今回はほんの一部のエリアしか見ていないし、滞在はたった2泊だ。「わかったつもり」にはなりたくない。それでも、ヨハネスブルグという街に惹かれずにはいられなかった。
まだ出会っていない、私に恋をさせる街が、世界中にあといくつあるのだろう。
まだ旅の途中だというのに、頭のなかではもう次の旅先を探し始めていた。
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