動画の真似では、筋肉は育たない。― ボディメイク競技者の58歳が5年かけて気づいた「骨格」という盲点
1. 「言われた通りにやっているのに、効かない」
ボディメイク競技を続けている58歳です。7月の大会に向けて、今日も体を作っています。
ジムに通い始めた人が、必ずぶつかる壁があります。
「YouTubeで有名な選手の動画を見て、言われた通りにやっている。でも、狙った筋肉に全然効かない」
この経験、ジムに通ったことがある人なら心当たりがあるはずです。
私も5年間の競技生活の中で、何度もこの壁にぶつかりました。そしてたどり着いた答えは、非常にシンプルでした。
「動画の選手と、あなたの骨格は違う」。ただそれだけです。
2. その原因は「骨格」にある
人間の体は、一人ひとり違います。当たり前のことですが、筋トレにおいてこれは決定的に重要です。
腕の長さ(リーチ)、胴の長さ、肩幅、骨盤の角度。これらが違えば、同じマシンで同じ動きをしても、効く場所が変わる。
たとえば背中を鍛える「ラットプルダウン」。一般的には、手幅を広くすると背中の外側や上部寄りに、狭くすると広背筋の下部寄りに効くと言われています。でも、これは「一般論」であって、個人の骨格で大きく変わります。
私の体の場合、ラットプルダウンではどう手幅を変えても、背中の下部にはうまく入りません。5年間試しましたが、ダメでした。
だから私は、下部を狙うときはラットプルダウンを諦めて、「ダンベルローイング」や「ストレートアームプルダウン」など、別の種目に切り替えています。
「効かない種目」に固執するより、「自分の骨格で効く種目」を見つけること。これが、動画の真似では到達できない、自分だけの正解です。
3. 「握り方」を変えるだけで、効く場所が変わる
もう一つ、初心者が陥りやすい罠があります。
バーをギュッと握り込むと、前腕に力が入り、背中への負荷が逃げてしまう。
これは「あるある」です。背中を鍛えているつもりが、腕ばかり疲れる。
私が実践しているのは、こうです。
① 親指を外して、指を引っ掛けるだけにする(サムレスグリップ)
「握る」のではなく「引っ掛ける」。これだけで前腕への負荷が激減し、背中に効く。
② 「手で引く」のではなく「肘を下におろす」イメージで動かす
意識を「手」から「肘」に移すだけで、背中の筋肉に意識が通る。これが「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるもの。
この「マインドマッスルコネクション」は、筋トレの世界では広く知られた概念であり、研究でもその有効性が示されています。「狙った筋肉を意識しながら動かす」ことで、その筋肉への刺激が有意に高まるのです。
握り方を変える。意識する場所を変える。たったそれだけの「コツ」で、トレーニングの効果は何倍にも変わります。
4. 「取捨選択」できるようになった時、本当のトレーニングが始まる
筋トレを始めた頃は、「この種目をやらなきゃ」「あの動画の通りにやらなきゃ」という義務感がありました。
でも5年間やってきて、一番大事だと分かったのは「やらない選択」です。
「この種目は自分の骨格には合わない」と判断して、やめる。代わりに「自分の体で効く種目」を選ぶ。この「取捨選択」ができるようになった時、初めて本当のトレーニングが始まります。
以前の記事で「エゴを手放した」と書きました。重量を他人と争わない。無理をしない。
そしてもう一つ。「動画の正解」を手放す。自分の体だけが知っている「自分の正解」を見つける。これも、エゴを手放すことの一つです。
5. 安全管理も筋トレも、「現場を見る」しかない
これは、私の仕事である安全管理とまったく同じ構造です。
安全のルールブック(動画)通りにやっても、現場ごとに環境が違う。熊が出る現場もあれば、6mの穴がある現場もある。ルールブックには書いていないリスクが、現場にはある。
動画(ルールブック)は「出発点」であって「正解」ではない。正解は、自分の現場(自分の体)に立って、自分の目で確認して、初めて見つかる。
筋トレも、安全管理も、人生も。「誰かの正解」を真似するだけでは、自分の正解にはたどり着けない。自分の体と向き合い、自分の現場に立ち、自分で考える。そこにしか、本当の成長はありません。
※本記事は、ボディメイク競技者としての5年間の個人的な経験と気づきに基づいています。トレーニングの効果は個人の体格・骨格・健康状態により異なります。特にサムレスグリップは高重量で手が滑るリスクがあるため、まずは軽い重量から試してください。
まとめ〜この記事から得られる3つの教訓
教訓1:動画の「正解」は、あなたの「正解」ではない
人の骨格は全員違う。腕の長さ、胴の長さ、肩幅が違えば、同じ種目でも効く場所が変わる。動画は「出発点」であって「ゴール」ではない。自分の体で検証するしかない。
教訓2:「握り方」と「意識」を変えるだけで、効果は何倍にもなる
バーを「握る」のではなく「引っ掛ける」。「手で引く」のではなく「肘を下ろす」。たったこれだけのコツが、前腕への負荷を減らし、狙った筋肉に効かせる鍵になる。
教訓3:「やらない選択」ができた時、本当の成長が始まる
「この種目は自分には合わない」と判断してやめる勇気。代わりに自分の体で効く種目を選ぶ知恵。「取捨選択」ができるようになった時、初めて本当のトレーニングが始まる。
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