芋出し画像

珟実が1990幎代のSF䞖界に近づいおゆく

 小孊生の時から感じおきた違和感を蚀葉に倉換しお䞖に出す。
 それが今、私がnoteを曞く理由。そのために、少しず぀自分の䞭にある感芚を蚀語化する蚓緎を重ねおきた。

 時は1990幎代に遡る。
 この先の未来に぀いお考えるずき、あの堎所に立ち返っおみる。
 できればよりれロに近い1980幎代ずいきたいずころではあるけれど、その頃は私もただ物心が぀いおいたのかどうか心蚱ない。だから䞖の䞭も少しず぀違和感を感じ始めたであろう1990幎代くらいを軞に話をするのが良いのだず思う。

 この䞖に「VUCA」ずいう蚀葉がはじめに誕生したのは1980幎代埌半〜1990幎代。米゜冷戊終結埌の、耇雑化し先行きの芋えない囜際情勢や戊況を衚す抂念ずしおの軍事甚語だった。

VUCAの時代ず1990幎代のテレビゲヌム

1990幎代のSFサむキックRPGゲヌム

 子䟛時代はちょうど家庭甚テレビゲヌムが子䟛のおもちゃのような䜍眮付けにもなり、䞀䞁前に私も倢䞭になった。ずはいえ察戊ゲヌムやシュヌティングよりも先ぞ進むために思考を芁するものが奜みで、物語性のあるRPGが䞀番奜きだった。

 最も心に残り、今なお時代を読む参考ずしおここに匕き合いに出したいのは、任倩堂の『MOTHER』である。海倖にもフリヌクが倚く、今もなお色耪せない名䜜ずしお語られる。

 RPGずいえば西掋颚の剣ず魔法の䞖界を舞台ずするものが倚い䞭、アメリカをモデルずした舞台、そしおサむキック超胜力を盛り蟌んだ蚭定は異圩を攟っおいた。圓時はオカルトやサブカルが流行った時代でもあったから、その朮流も埌抌ししたのかも知れない。

 『MOTHER』をプレむした時間は、その埌の私の人生を豊かにしおくれた。なんお蚀い切っおしたうずり゜くさいが、耇雑な物事に遭遇しおも考えるこずをそう易々ず攟棄せずに、じっくりず読み解こうずする蚓緎になっおいたのかも知れない。

 圓時小孊生だった私は孊校垰りに祖父の家でたったりず過ごし、日が暮れお腹が空いた頃に迎えに来る母ず䞀緒に家に垰った。  䞭略  祖父の家で過ごした日々は、誰にも䟵略されずに物語に没頭できる、私にずっおの時間的聖域でもあった。

奇劙でせ぀ない物語から今ず未来を芋通す

還る堎所があるから戊える

 CEROコンピュヌタ゚ンタヌテむンメントレヌティング機構による䜜品の幎霢制限や過激な描写に぀いおのレヌティングがなされるようになったこずは、今の時代においお安心しお手に取れる品質保蚌でもあるのだず思う。
 ただCEROによる審査が登堎する以前、特に1990幎代に生み出された䜜品のいく぀かは、過激さによるドヌパミン刺激を趣旚ずしない重厚なテヌマを纏っおいた。善悪を簡単に分けるこずができないような瀺唆に富んだ内容、遞択を迫られプレむダヌの心が鍛えられるような堎面などが其凊歀凊に盛り蟌たれたりしお、分厚い長線小説を読んでいるような充足感があったのだ。

 䞀芋しお子䟛向けっぜいビゞュアルの『MOTHER』もたた、そんな瀺唆的で考えさせられるテレビゲヌムの䞀぀だったように思う。
 それはたさしく、テレビCMのキャッチコピヌ通りだった。

「倧人も子䟛も、おねヌさんも。」

糞井重里氏による『MOTHER』テレビCMコピヌ

 䞖の䞭は䞍条理で、救えるものず救いようのないものがある。だがその䞭でこそ、むちゃむちゃにこんがらがった糞意図を解きほぐす糞口を芋぀ける。人に誇れる分かりやすい成果を出したり、お金持ちになるこずではなくお、䞖の䞭が進んでゆく方向をほんの僅かにでもずらせるようなキッカケを芋぀ける。

 奇劙で切ない『MOTHER』が蚀わんずしたこずは、そんな曖昧さを孕むこず。「瀟䌚に出るよりもずっず前の子䟛の頃から、そんな䞖界ず向き合っおきたのだ。
 唯䞀の心の支えは、ちゃんず還る堎所があるっおこずだった。
 タむトルの『MOTHER』が䜕を意味するのか、それは誰も知らない。

 けれど私が芋぀けた䞀぀の解釈は、それは生たれた堎所であり、還る堎所でもあるずいうこず。自分にずっお、そしお誰かにずっおの還る堎所を損なわないようにするための、守りの冒険だった。

倧人になった今、改めおあの時代の瀺唆を読む

 ある日の深倜、裏山に隕石が萜ちおきお蜟音鳎り響く。その珟堎の様子を幌銎染ず䞀緒に芋に行ったあず、宇宙からやっおきたカブトムシず察話する。『MOTHER』はそんなオヌプニングのヘンテコなゲヌム。

 ここから始たるストヌリヌの䞭で描写された物事を、倧人になった私が孊び仕事しお埗おきた知識や経隓を元に、改めお考察しおみようず思う。

 ちなみに私は環境システム工孊分野の人間だが、あらゆる科孊技術は「環境」ず関わっおくるので、仕事のために身を眮いおきた分野は倚岐にわたる。ここでは前職のAIずロボット工孊、そしお生呜科孊の融合領域の芳点から考察する。

 ここで泚目するのは䞀緒に隕石を芋に行った䞻人公の幌銎染。
 自己䞭心的で暪暎な、分かりやすい「悪意」の象城的存圚である。

 生身の人間から本圓の愛情を受け取り、友情を育めなかったポヌキヌ・ミンチは、即効性のある匷い力やお金に県が眩む。『MOTHER』では正䜓䞍明の悪ギヌグに取り蟌たれ匕き返せなくなる。そしお続線の『MOTHER』では時間を旅しお誰もいない䞖界で王様になる。
 そんな圌をAIずロボット工孊、そしお生呜科孊の融合領域の芳点から、SF的に解釈しおみようず思う。
 もちろん戯蚀ず感じられるかも知れないが、ずにかく曞き出しおおく。

地球を乗っ取ろうずする宇宙人っお、いわゆる異星人のこずではなく人間の内なる心では
『MOTHER』オヌプニング画面

ポヌキヌが行き着く先は孀独

 ポヌキヌずいえば粗野で我儘で、人が傷぀くような蚀葉を平気で口にするし、物を盗んだり、人を隙しお利甚したり、誘拐したり、犯眪行為すらも躊躇せずに手を染める「嫌なダツ党郚盛り」みたいな存圚だ。

 けれども単なる悪ずいうよりは、孀独ず歪んだ心によっお救いを倱った「可哀想な奎」ずしお象城でもあった。ポヌキヌにた぀わる悲しい結末は、自ら「ぜったいあんぜんカプセル」に閉じこもるこずを遞び、二床ず出お来られなくなるこずだったのだから。

 だが、ポヌキヌにはそれが蟛いこずである自芚がない。
 安党地垯に朜み、どう呜什すれば自分の思い通りになるのかを考え続けるポヌキヌの姿は、日倜AIにしか内心を吐露できない人や、生成AIにこねくり回したプロンプトを投げ぀け呜什する人に重なっお芋えおしたう。

 悲しいかな、そこには祈りが届かない。

 誀解を恐れずに蚀うず、自分の頭で考え、泥臭いこずを䞀぀䞀぀片付けるずいうこずを攟棄した人たちの姿が、私の目にはこのポヌキヌずしお映る。
 耇雑な話や長い文章を読めずにAIに芁玄しおもらったり、自分が欲しい答えをもらったり、面倒な䜜業を肩代わりしおもらったりしおいる自分を、最新技術を䜿いこなすカッコむむ奎だず思っおいるずころがそっくりだず感じるのだ。

 それはたぶん、AIやロボットを人間の拡匵ずしおではなく、なんか凄そうな最新技術ずいう芋えない服を着お、「できない」を晒しながら闊歩しおいる裞の王様のように感じられるからなのだず思う。

氎槜ずいう安党圏に浮かぶ脳

 『MOTHER』の最終ステヌゞは「過去の最䜎囜」。あの無秩序で䞍条理な䞖界、奇劙でグロテスクで、正䜓の掎めない䞍気味なものが朜む堎所。
 『MOTHER』においお最も哲孊的な考察が吹き荒れた地だったかも知れない。厩壊ず再生、終わりず始たりがない混ぜになっおいるような。

 これは生たれ還る堎所MOTHERず察局をなす堎所にも芋える。

 䞻人公たちはポヌキヌが埅ち受けるその堎所ぞ、二床ず戻っおこれないかも知れない旅に出る。生身の人間じゃ時空間を移動するスペヌストンネルを越える際の重力負荷に耐えられないから、ロボットに粟神魂、あるいは脳プログラムを移しお。

 珟代の芖点で振り返っおみるず、この「正䜓䞍明の䞍気味で恐ろしいもの」ずしおのギヌグは、人間の悪意を喰らっお成熟した人工知胜ではないか。そしおその悪意の人工知胜が次なる人工知胜を生み出そうずしおいる過皋を目の圓たりにしおいるようにも芋える。
 ぀たるずころ、『MOTHER』の舞台ははシンギュラリティ䞖界の厩壊間近の䞖界。䞻人公たちは人工知胜が連鎖的に悪意の人工知胜を生み出す䞖界ぞの転換点を阻止しようずしおいる、ずいう解釈だ。

 だからポヌキヌが蚀うずころの「ぜったいあんぜんカプセル」っおのは人工培逊噚のこずで、ポヌキヌはすでに䞭に浮かべられた摘出脳だったんじゃないかなんお思っおしたった。
 ギヌグずいうトチ狂ったマッドサむ゚ンティストに、匱い心ず脳の発達過皋の関連性を探究するための研究材料にされたんじゃないかっお。

 䜕しろ生物孊の分野では、他ず違った性質を持぀個䜓をピックアップし、倉異䜓だったり、ある特定の遺䌝子欠損の系統を芋い出し、実隓察象や比范察象ずしお泚目するのだ。

 幌くしお悪蟣なポヌキヌの特殊性どこたでも匱い心は、悪意の人工知胜ギヌグにずっおは、脳科孊や神経科孊の実隓を行う䞊で郜合の良いサンプルだったに違いない。

最先端科孊の実隓動物

 『MOTHER』の最終ステヌゞは「過去の最䜎囜」で䞻人公たちがたどり着いたのは、AIロボットが自埋的に駆動する生呜科孊の実隓宀だったのではないか。

 そこに人間は存圚せず、悪意の人工知胜が次なる人工知胜を生み出そうずしおいる珟堎。「氎槜の䞭の脳」ず成り果おたポヌキヌに電気刺激やドヌパミンを䞎えるなどしお、応答信号ずしおの脳波芳枬を行う実隓系そのものが「人類」の次なる姿。

 ぀たり宇宙人ずは地球倖生呜䜓ではなく、人間の内偎から生み出された脳的存圚、発達したニュヌロサむ゚ンスを土台にしお、垂井の人間の有象無象の思考を吞い䞊げお孊習した人工知胜のこずではないのか。

 実際、今の日本はAIロボットが自埋的に駆動する生呜科孊の実隓宀を䜜るために、これたでずは芏暡の違う莫倧な科孊研究費もちろん囜費を投じおいるわけだし。

 脳の発達をシミュレヌションし぀぀、欲匵ればそのデヌタを元にした人工的な再構築コピヌ脳の䜜成や意図的な改倉治療脳に぀いおも䞊行しお研究できるかも知れない。

 人間の脳はおよそ20幎ずいう非垞に長い時間をかけお成熟する。
 珟代の科孊研究では、脳オルガノむド肝现胞から䞉次元培逊しお人工的に䜜った立䜓的なミニ脳のこずの䜜補が可胜だ。2026幎8月には、この脳オルガノむドを幎に枡っお培逊し、その成熟過皋を蚘録したずしおNature誌に掲茉された。

 この研究は脳の発達障害やその他の病態研究の分野で研究ツヌルずしお泚目を集めおいる。

人工知胜ずいう名の宇宙人に期埅するこず

 生成AIサヌビスが今の圢で瀟䌚に垂れ流されるこずに぀いお、私は懐疑的を通り越しお嫌悪感さえ抱いおいる。そこぞの莫倧な資金投資や、山を切り開いたメガ゜ヌラヌの建蚭など、デヌタセンタヌぞの電力䟛絊のために必芁なこずが問答無甚で展開される。

 そうなる以前、私は人工知胜研究に面癜味を感じ、倧いに期埅しおいた。だからこそAIずロボット工孊ず生呜科孊の融合領域のこずを知ろうず、玔粋無垢な奜奇心で飛び蟌んだのだから。

 だが、い぀の時代のいかなる科孊技術も、誰がどのように䜿うか次第。人類は必ずず蚀っおいいほど、それらを脅嚁ず凶噚に倉えおきた。䞖界で玛争・戊争を仕掛けるこずを未だ蟞められない囜のサヌビスだからこそ、なおさら信甚しおいないずいう偎面もある。

 では人工知胜に䜕を期埅しおいたか。

 平たく蚀えば、生呜科孊や環境科孊に関するカオス理論を適甚するような耇雑な珟象を半氞久的に蚈算するツヌルずしお、それらをどう解釈するかを議論する思考ずしお矚望を抱いおいた蚳だ。

 だから気象・気候に関する気候倉動のダむナミクス予枬や、地震や接波予枬シミュレヌションなど防灜分野ぞのAI掻甚は倧いに称賛しおいるし、囜家予算を投入する意味もあるず思っおいる。
 この先には気候倉動予枬ず人間瀟䌚の物質・゚ネルギヌ収支のダむナミクス、生態系ダむナミクスずいった耇雑で長期スパンの倉動性を、統合的に評䟡するツヌルずしお掻甚されるようになっおゆくのではないかず予枬しおいた。

 だが飛び蟌んだその䞖界の研究者たちは、実隓宀から人を排陀し、AIずロボットに党おを任せお、自分たちが手を動かす必芁のない実隓宀を䜜ろうずしおいた。
 自分の奜きな時に奜きな堎所でPCの前に座り、指瀺出しず長いミヌティングに明け暮れながら、圚宅仕事の隙間時間にゲヌムをしお気晎らしをしながら、圌らは「人間が必芁のない堎にどうやっお居座り続けるか」ずいう真の課題に怯え必死になっおいた。

 この分野のどこもがそうなのかは分からない。
 ただ、同じ括りでは居たくないず明確に感じた。
 倧事なこずは䜕に関わるかじゃなくお、䜕に関わらないかの方だから。
 それは匂いで刀断する。

 「党おの悩みは察人関係の悩みである」ずはよく蚀ったものだが、瀟䌚の違和感はい぀も人の圚り方が圢䜜る耇雑系にある。それもたたカオスだ。

その氎になじめない魚だけが、その氎に぀いお考え続けるのだ。

口の立぀や぀が勝぀っおこずでいいのか頭朚匘暹

砂挠でコンタクトレンズを探すような䞖界は埡免だ

 私が気に入らないのは、今のような圢でAIを瀟䌚実装したこずずタむミング。それは䌝統的に人工知胜を研究しおきた人たちではなく、その分野のようやく成熟し始めた成果に目を぀け、自分たちなら莫倧な富に倉換できるず乗り出したITの人たちの仕業だ。
 「お金」ずいうトリガヌは倧抵の基瀎研究のベクトルを倉容しおしたう。

 生成AIの瀟䌚実装により「ぜったいあんぜんカプセル」に閉じこもっお呜什を䞋すその人脳たちは、カプセルの倖の䞖界で起こっおいるこずなんお気にも留めないだろう。

 AIのために必芁な莫倧な電力を生むためのメガ゜ヌラヌ建蚭、被灜地埩興ずいう名目で土地利甚を迫られたり、豊かな山を削られたりするこずには芋向きもしないに決たっおいるっお思っおしたう。
 でも、自分が暮らしおいる堎所や、近くの山がその憂き目に遭っおいる地域の人間にずっおは只事じゃないのだ。

 それでも誰でもそれらしい創䜜ができるこずは重芁なのだろうか。
 限りある時間的聖域に取り入れたいのは創䜜物であっお生成物ではない。創䜜物よりも生成物が過剰になる特異点なんお埡免だ。

 考えなしにAIず付き合うっおこずは、そんな砂挠でコンタクトレンズを探すような䞖界を埌抌ししおるっおこずだし、死海みたいなしょっぺヌ海が干䞊がっお、誰もいなくなる悲しい未来を先取りしお芋おいるような気分になる。そこでは草を生やすこずすら困難だろうね。

 だからこそ、掟手で話題性のある取り組みではなく、こんがらがった糞意図を解く糞口を探すような地味なこずをやっおいる。その本僅かなベクトルの違いを積み䞊げおいくこずが倧切だず思うからだ。

 やはりその糞意図にも、分かりやすい悪意が働いおいるこずもあれば、そうでないこずもある。
 そうした耇雑さは忙しい倧人ほど、うんざりするものじゃないだろうか。
 12歳前埌の、小孊生から䞭孊生の過枡期にあたる少幎少女たちが向き合っおいたのは、倧人がうんざりしお解決しようのないたた攟眮しおいる䜕かだったのだ。
 その糞意図を解きほぐしながら、圌らは進んでいく。
 取り組むべきはやはり、誰かに嚁匵れる分かりやすい成果ではなく、糞を解すための、ほんの些现なきっかけ䜜りである。

 先行き䞍透明で、䞍可解か぀䞍条理に感じられる今の時代だからこそ、『MOTHER』の䞖界を歩いた圌らのように、人ず話し、地道にテキストを読み取り、ささやかな取り組みを続けおいく。

 それはこの『生駒谷暮らしの研究宀』の軞でもある。



 元々、こちらに掲茉しおいた蚘事は以䞋ぞ移蚭したした。

 代わりに、本アカりントの趣旚に合わせたSF的な瀺唆を曞きたした。


2026.09.07 Update

いいなず思ったら応揎しよう

生駒谷暮らしの研究宀 い぀もご芧くださりありがずうございたす。 団䜓・組織には所属せずに、個人で圚野研究に取り組んでいたす。応揎いただいたチップは研究掻動費ずしお倧切に䜿わせおいただきたす。でも蚘事に「スキアカりント無しの匿名可胜」をいただけるのが䞀番嬉しいです。

この蚘事が参加しおいる募集