ピンクのラベルと世界の端っこで(紹介編)
第1章 インドでカルチャーショックを吸い込んだ日
デリーの空港に降り立った瞬間、砂っぽい熱気と雑踏の音に包まれた。
階段に座り、何を待つでもなく過ごす人々。
「ここが国際空港なの?」と、いきなりのカルチャーショック。
サプライヤーの迎えを待つ間にも、タクシードライバーが次々に声をかけてくる。
この国では“綺麗な格好で女一人”というだけで、もう事件の匂いがした。
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第2章 インド・パニパットの地獄絵図で悟ったこと
グルガオンの五つ星ホテル。高級なはずなのに、
サプライヤーが約束の時間に来ることはまずない。
1時間遅れで「グッドモーニング!」と笑顔で登場する彼らに、怒りを通り越して呆れた私は、
翌日からロビーではなくレストランで“待ち”の時間を過ごすことにした。
インドのコットン製品の調査と開発のために来たのだが、
向かったパニパットの工場では、埃と糸くずの舞う空気に“息をしてはいけない”と感じた。
ラフなデニム姿で降り立った途端、取り囲むように集まってくる現地の男たち。
攫われるんじゃないかと思うほどの視線。
そして出てきた商品は、私の依頼とはまったく違う“彼らが売りたいもの”——
バスマットやIKEAアウトレットの山だった。
荒野に積まれたそれを見て、私は悟った。
この国で“交渉”とは、“戦い”の別名なのだと。
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第3章 ニューヨークで傘をなくした日
真冬のニューヨーク。
5番街のホテルへ向かうタクシーの中で、懐かしいイントネーションに気づいた。
運転手はインド人。
英語がインド訛りだったから、私は笑ってしまった。
橋をどっちに渡るか聞かれて「どっちでもいい」と答えたら、
「遠回りでもいいか?」と。もちろん即答で「ダメ」。
買い付けを終え、体調を崩しながらポストオフィスへ。
「タクシーを捕まえて」と頼むと、アシスタントが「3ブロックだから歩きましょう!」と明るく言う。
本気で倒れそうな私は、水たまりに突っ込みかけて腕をつかまれた。
「お願い、5時になったら起こして。絶対にご飯に行こう」と言い残して眠り、
本当に5時に起きた私を見て彼女は叫んだ。
中華街では英語が通じず、唯一通じたのはたまたま出会った日本人青年だった。
温かいワンタンスープの一口で、涙が出るほど癒やされた。
夜、大通りでタクシーを捕まえようとして奮闘。
「なんで私たちの前でタクシー取るのよ!」と地団駄を踏む私。
その時、綺麗な青年二人が私たちの前で車を止め、
なんと手招きして「先に乗っていいよ」と言ってくれた。
その優しさが、凍える街の中でいちばん温かかった。
傘をなくした夜、私は笑いながら思った。
——失くしても、得るものはある。
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第4章 パリでピンクを選んだ理由
観光が嫌いな私が、気まぐれで訪れたパリ。
街は美術館のように美しくても、足元には現実が転がっていた。
気まぐれな天気に振り回され、英語が話せない友人のサポートに明け暮れる。
吐き気さえ覚えるほど疲れ切った頃、ようやく訪れたヴァンヴの蚤の市。
寒さと空振りで体調を崩し、ホテルに戻ると高熱だった。
翌朝、友人はモン・サン・ミシェルへ出かけ、私は高熱のままベッドで天井を見つめていた。
その時、夢を見た。
パリの街が淡いピンクに染まり、一枚のシルクの布がふわりと舞い降りた。
「これがあなたの色よ」誰かにそう言われた気がした。
目覚めたとき、頬がほんのりピンクに染まっていた。
その色は、やがて私のブランドの原点となった。
完璧ではなく、優しさの色。
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第5章 ロサンゼルス——成功と失敗のあいだで
ロサンゼルスは、私が成功も失敗も手にした街。
QVCの仕事が決まり、ロスの友人たちから祝福を受けた。
ホームパーティーでの出会い、乾いた風、夕暮れのベランダ。
“もう怖いものなんてない”と笑っていた。
しかし現実は違った。
香港のサプライヤーとの契約が、再びの悪夢の始まり。
うん千万円の発注、コンテナ、運送費、保管料。
湯水のように資金が流れていく。
QVCのQAは恐ろしく細かく、何度も商品が突き返される。
倉庫に積まれたリジェクトの山を見つめながら、
私はただ呆然と立ち尽くした。
光の街ロサンゼルスで学んだこと——
成功と失敗は、同じテーブルの上に並んでいる。
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第6章 ハワイ——風と沈黙のあいだで
ハワイは、私にとって帰る場所だった。
何十回も訪れ、娘と過ごした年末年始。
朝は散歩、昼はロコモコ、夜は波音。
母として、ひとりの女性として、心がゆるむ時間。
ロスの地獄を経て、この島の風が教えてくれた。
焦らず、競わず、呼吸することの尊さを。
ハワイでは、怒りも疲れも潮に溶けていく。
頑張らなくても愛されることを、私はようやく思い出した。
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