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2046年に26歳の日本代表は、いま6歳。その子はサッカーを選んでくれるだろうか|2046年ワールドカップ優勝への道のりは、もう始まっている

拙著『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに』から生まれた問い。

私は、2046年のワールドカップで日本が初優勝する未来を想像している。

もちろん、根拠があって「2046年」と予測しているわけではない。

どちらかといえば、願望である。

ただ、20年という時間には意味があると思っている。

日本代表が、ある大会で突然すべてを突破し、いきなり世界一になる。

そんな未来を期待するより、

ベスト16の壁を越える。

ベスト8へ進む。

それが一度きりではなくなる。

ベスト4を経験する。

大会前から「日本は優勝候補の一つ」と海外でも語られるようになる。

その少し下の年代では、U-17やU-20の世界大会で決勝へ進む。優勝する世代も現れる。

日本人選手が欧州のトップクラブで中心選手になることも、今以上に珍しくなくなる。

そうした出来事を一つずつ積み重ねた先に、初めてワールドカップ優勝が見えてくるのではないだろうか。

そのためには、10年では少し短い。

20年くらい先なら、夢物語と現実の間に橋を架けられるかもしれない。

だから私は、2046年を考えている。

そして2046年から逆算してみると、とても面白いことに気づく。

2046年に26歳の選手は、いま6歳である

2046年のワールドカップで、日本代表の中心選手が26歳だったとする。

その選手は2020年生まれである。

2026年現在、6歳だ。

幼稚園か小学1年生くらいである。

25歳なら、いま5歳。

24歳なら、いま4歳。

つまり、2046年に日本を世界一へ導くかもしれない選手は、すでにこの国のどこかで暮らしている可能性が高い。

しかし、私たちはその名前を知らない。

当然である。

まだ日本代表選手ではない。

Jリーガーでもない。

Jクラブのアカデミー選手ですらないかもしれない。

地域の少年団に入ったばかりかもしれない。

公園でボールを蹴っているだけかもしれない。

そして何より、

まだサッカーを選んでいないかもしれない。

その子は、ものすごい運動能力を持っているかもしれない

想像してみる。

ある町に、6歳の子どもがいる。

足が速い。

身体を動かすことが大好きだ。

ボールを投げても上手い。

蹴っても上手い。

空間を把握する力がある。

相手の動きを予測できる。

負けず嫌いで、何かに夢中になると何時間でも続ける。

将来、世界のトップアスリートになれる可能性を秘めているかもしれない。

しかし、その能力に、

「サッカー選手になる才能」

という名前が最初から付いているわけではない。

野球をやるかもしれない。

バスケットボールを選ぶかもしれない。

陸上競技かもしれない。

水泳かもしれない。

テニスかもしれない。

複数のスポーツを経験してから決めるかもしれない。

あるいは、スポーツそのものを本格的にはやらないかもしれない。

どの道を選んでもいい。

本人が好きなものを選べばいい。

しかし、日本サッカーが2046年のワールドカップ優勝を本気で考えるなら、一つだけ考えておかなければならないことがある。

その子に、サッカーは魅力的な選択肢として見えているだろうか。

日本代表の強化は、代表選手だけを強くすることではない

「日本代表を強くする」と聞くと、現在の代表選手をどう強化するかを考えやすい。

監督。

戦術。

フォーメーション。

強豪国との親善試合。

海外移籍。

代表合宿。

分析。

フィジカル。

セットプレー。

もちろん、すべて重要である。

しかし2046年を考えるなら、それだけでは足りない。

いま6歳の子どもに、2046年の代表戦術を教えるわけにはいかない。

その前にやることがある。

まず、その子にサッカーを選んでもらわなければならない。

これは代表強化より、ずっと手前の話である。

世界一の可能性を持つ子どもは、サッカー界の中にいるとは限らない

日本サッカーには、すでに大きな育成基盤がある。

少年団。

街クラブ。

Jクラブのアカデミー。

中学校、高校の部活動。

高円宮杯。

大学サッカー。

年代別代表。

トレセン。

多くの指導者や関係者が、長い時間をかけて育成環境をつくってきた。

そこから多くの選手が世界へ出るようになった。

これは大きな成果である。

しかし、育成システムがどれほど優れていても、その入口に来なかった子どもを育てることはできない。

ここに、私がずっと気になっている問題がある。

世界一になれる可能性を持つ、まだ名前のない子どもに、どうすればサッカーを選んでもらえるのか。

才能を見つける以前に、

その才能がサッカーと出会う必要がある。

子どもは「日本代表強化計画」を読んで競技を選ばない

では、6歳の子どもは何を見てサッカーを選ぶのだろう。

おそらく、難しい育成計画ではない。

テレビで見た選手が格好よかった。

ワールドカップが面白かった。

近所のお兄さんがサッカーをしていた。

友達に誘われた。

親とJリーグを見に行った。

学校にサッカー選手が来た。

近所に楽しそうなスクールがあった。

ゲームで好きな選手を知った。

YouTubeでゴールを見た。

そんな小さな出来事ではないだろうか。

だから、日本代表を強くすることと、子どもの日常は、本当はつながっている。

スターが子どもの日常にいるだろうか

以前、このシリーズで、

「海外で活躍する日本人選手がこれだけ増えたのに、なぜ毎朝のニュースにならないのだろうか」

という問いを考えた。

サッカーファンなら、自分から情報を取りに行ける。

しかし6歳の子どもは違う。

家で何となくついているテレビ。

親が見ているニュース。

街で目にする広告。

友達との会話。

そうした環境からスポーツを知る。

世界で活躍する日本人サッカー選手が、その子の日常に何度も現れる。

名前を覚える。

プレーをまねする。

「この選手みたいになりたい」と思う。

その積み重ねも、2046年の代表強化の一部なのではないだろうか。

地域にも「世界への道」が見えているだろうか

さらに、

「日本代表選手が育った少年団や学校を、もっと地域の物語にできないだろうか」

という問いも考えた。

これも、いま6歳の子どもとつながっている。

日本代表選手が、

この町で生まれた。

この少年団で始めた。

このグラウンドで練習した。

この学校へ通った。

そこからJリーグへ進み、海外へ行った。

それを地域の子どもが知れば、

世界への道が、自分のいる場所から始まっている

と感じられる。

遠いテレビの中のスターが、急に自分と地続きになる。

記録も2046年へつながっていく

もう一つ、このシリーズで考えたのが、

「日本サッカーには、なぜ『記録を語る文化』がもっと育たないのだろうか」

という問いだった。

これも2046年へつながる。

例えば、いま6歳の子どもがサッカーを始める。

地域でプレーする。

育成年代の全国大会へ出る。

年代別代表へ選ばれる。

Jリーグで若くしてデビューする。

海外へ移籍する。

A代表に入る。

そして2046年、ワールドカップへ出場する。

その歩みが記録されていれば、

私たちは一人のスターが生まれていく20年間を追うことができる。

そして、その物語を見たさらに下の世代がサッカーを始める。

こうして循環が生まれる。

2046年の優勝は、2046年につくるものではない

ここまで考えると、少し見方が変わってくる。

2046年のワールドカップ優勝は、2046年に始まるものではない。

2038年でも遅い。

2034年でも、そのころには中心選手の多くが育成年代に入っている。

2046年の日本代表づくりは、もう始まっている。

ただし、それは代表チームの活動だけを意味しない。

子どもがサッカーを知ること。

サッカーを好きになること。

近所でプレーできること。

好きな選手ができること。

その選手の物語を知ること。

良い指導者と出会うこと。

途中で競技をやめずに済むこと。

世界へ進む道が見えること。

それら全部が、2046年につながっている。

アンダー世代の結果も重要になる

もちろん、子どもにサッカーを選んでもらえば、それだけで世界一になれるわけではない。

そこから20年間の育成が必要になる。

年代別代表が世界でどの位置にいるのか。

U-17。

U-20。

オリンピック世代。

そこでベスト8へ進む。

ベスト4へ進む。

決勝へ進む。

世界大会で優勝する世代が現れる。

そうした経験を持つ選手たちがA代表へ上がってくる。

そしてA代表でも、

ベスト16。

ベスト8。

ベスト4。

決勝。

と、一つずつ世界の壁を越えていく。

2046年に初めて奇跡を起こすのではない。

2046年までの20年間に、小さな「初めて」を何度も起こしていく。

私は、その方が世界一への道として自然だと思う。

「2046年優勝」は未来予測ではない

だから、2046年に本当に日本が優勝するかと聞かれれば、もちろん分からない。

2038年かもしれない。

2050年かもしれない。

もっと先かもしれない。

そもそも、一度も優勝できない可能性だってある。

スポーツなのだから、未来を決めることはできない。

それでも「2046年」と置くことには意味がある。

未来から逆算できるからだ。

2046年に26歳。

2026年には6歳。

そうすると、

「20年後の代表をどう強くするか」

という大きすぎる話が、

「いま目の前にいる6歳の子どもに、サッカーを選んでもらえるだろうか」

という具体的な問いに変わる。

サッカーが「選ばれる側」になる

ここで大切なのは、他のスポーツから子どもを奪うという発想ではないと思う。

野球にも魅力がある。

バスケットボールにも魅力がある。

バレーボールにも、陸上にも、水泳にも、それぞれ素晴らしい世界がある。

子どもには自由に選んでほしい。

だからこそサッカー側が、

「サッカーを選べ」

と言うのではなく、

「サッカーを選びたくなる環境」をつくる。

スターが見える。

世界への道が見える。

地域に身近なロールモデルがいる。

プレーできる場所がある。

観戦する文化がある。

職業としての未来も見える。

そして何より、サッカーそのものが楽しい。

その結果として、世界一になれるほどの可能性を持った子どもが、

「僕はサッカーをやりたい」

と言ってくれる。

それが理想なのだと思う。

2046年の決勝戦から、2026年の公園を見てみる

想像してみる。

2046年。

日本がワールドカップ決勝を戦っている。

日本代表の10番が26歳だったとする。

世界中が知っているスターになっている。

決勝でゴールを決めるかもしれない。

しかし時計を20年戻す。

2026年。

その選手は6歳である。

まだ誰も知らない。

近所の公園を走り回っている。

野球のバットを持っているかもしれない。

バスケットボールをしているかもしれない。

まだ何のスポーツもしていないかもしれない。

その子の前に、いくつものスポーツが並んでいる。

そして、サッカーもその一つとして置かれている。

ここで、私が『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに』を書いたときの問いに戻る。

世界一になれる可能性を持つ、まだ名前のない子どもに、どうすればサッカーを選んでもらえるのか。

2046年のワールドカップ優勝を考えるということは、

遠い未来の代表監督や戦術を考えることだけではない。

いま6歳の子どもが、明日何をして遊びたいと思うかを考えることでもある。

詳しくは『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに』で

今回の問いは、

「2046年のワールドカップ優勝は、2046年になってから目指して間に合うのだろうか」

だった。

私の答えは、間に合わない、である。

2046年に26歳になる選手は、いま6歳。

だから、2046年の日本代表は、もう始まっている。

本書では、この「まだ名前のない子ども」から出発して、競技選択、スター、メディア、記録、育成、地域、職業としてのサッカーなどをつなぎながら、日本サッカーの20年先を考えている。

『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに――子どもの競技選択から2046年ワールドカップ優勝まで』

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2046年の日本代表のエースが誰なのか。

私たちはまだ知らない。

でも、その子はもう、どこかにいるかもしれない。

だから最初の問いは、

「2046年に、どんな戦術で世界と戦うか」

ではない。

もっとずっと手前にある。

その子は、サッカーを選んでくれるだろうか。


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