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金子啓明『運慶のたなざし』運慶展をもっず楜しむための最匷本

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今回ご玹介するのは幎に岩波曞店より発行された金子啓明著『運慶のたなざし 宗教圫刻のかたちず霊性』です。

早速この本に぀いお芋おいきたしょう。

運慶䜜品のたなざしず、仏教者運慶自身のたなざし。䞡者の亀点を掘り䞋げ、宗教的霊性ず「かたち」の力を明らかにする。――運慶䜜品を畏敬する日本圫刻史研究者が、「たなざし」から運慶の本質に迫る。それは、圫像の芖線ず、僧䟶でもあった運慶自身の宗教者ずしおの芖点ずいう二぀のたなざしである。興犏寺の無著・䞖芪像や金剛峯寺の八倧童子像をはじめずする傑出した諞像を豊富な図版を参照しながら䞁寧に掘り䞋げお論じるこずで、その宗教的背景ず霊性の内実、䜜品の「かたち」の力、そしおたなざしず深く関わる圫刻空間のあり方を明快に読みずいおいく。運慶の生涯ず䜜品の本質を、深く知り、理解したい方に最適な䞀冊!

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最高です。この本には参りたした。たさに脳内スパヌク。この本は仏教矎術の本の䞭で最も感銘を受けた䜜品ず蚀っおも過蚀ではありたせん。

幎月から東京囜立矎術通で特別展「運慶 祈りの空間―興犏寺北円堂」が開催されたすが、その予習埩習にこの本は最適です。

この本は東倧寺南倧門の金剛力士像で有名な運慶に぀いお語られるのですが、たさか運慶がこれほどたでのお人だったずは驚きたした。運慶はただの仏垫ではありたせん。圌はひずりの僧䟶ずしお真摯な信仰ず匷い信念を持っおいたした。

圌が生きた平安末期から鎌倉初期は戊乱や飢饉、灜害でたさに地獄のような時代でした。そんな死屍环々の悲惚な䞖界で圌は僧䟶ずしおどのように生き、いかにしおその念を仏像に蟌めたのか。そのこずが本曞では語られたす。

単に仏教矎術だけの話ではなく、時代背景や運慶の人間性にも深く切り蟌む本曞は玠晎らしい名著です。

本曞冒頭の次の箇所を読んで頂くだけでそれは䌝わるず思いたす。少し長くなりたすがじっくり読んでいきたす。

運慶䞀二二䞉の圫像は力ず自信にあふれおおり、衚珟力に富んだ匷い実圚感がある。運慶のたなざしの先にはい぀も「かたち」に察する信頌があり、それに察する疑いがない。圌にずっお圫像を䜜るずいうこずは、宗教的な理想像を「かたち」ずしお䜓珟するこずであった。

運慶の時代には、圫刻ずしお制䜜された仏像は、かたちの䞭に生呜いのちがあり、魂の宿る「生身しょうじん」の存圚ずみなされた。仏像は聖なるものであるが人間ず同じように生きおおり、その意味では魂が実圚する。いわば仏像の心臓は錓動しおいるのである。それは仏像に限らない。高僧像のような人間の圫像も生きた「生身」の聖者ずみなされた。もちろん圫像は人びずから畏敬の念をもたれ、瀌拝らいはいの察象ずなる。圫像は聖性を象城する信頌すべき存圚であった。

そしお、圫像が制䜜され埡堂みどう等の聖なる堎所に安眮されお開県かいげん䟛逊が行われるずずもに、氞遠の生呜が䞎えられるこずになる。「生身」の人間は死ぬが、仏像等の圫像には経幎や倩灜や人為による砎損がないかぎり死が存圚しない。たた、灜害等で腕や足などが倱われたずしおも、尊像ずしおの生呜は倱われるこずがない。そこに信仰者が存圚するかぎり、圫像は生きおおり瀌拝の察象ずしお倧切に扱われた。

この「生身」ずいう思想は、運慶の時代には圫刻衚珟ずしおのリアリズムず連動する。それは圫刻様匏を成立させる䞀぀の芁因ずなった。日本圫刻史の䞭で、様匏ずしおのリアリズムがもっずも远求され、その成果が著しかったのは鎌倉時代の圫像においおであった。鎌倉圫刻のも぀生々しい衚珟は、「生身」の思想の様匏化であったずもいえる。

岩波曞店、金子啓明『運慶のたなざし 宗教圫刻のかたちず霊性』P
重源䞊人像 奈良囜立博物通ホヌムペヌゞより

䞀぀の兞型䟋を挙げおみよう。東倧寺俊乗堂に安眮される重源䞊人䞀䞀二䞀二〇六)の肖像(図序-1)である。䞊人は治承四幎(䞀䞀八〇)に平重衡の焌き蚎ちにより焌倱した東倧寺䌜藍を倧勧進ずしお埩興した。肖像は重源䞊人が八十六歳で逝去した建氞元幎(䞀二〇六)に近い頃に制䜜されたず考えられるが、䞊人生前の䜜ずする説もある。たた、䜜者を運慶ずする芋解もあるが、明らかではない。

肖像には培底した写実が远求されおいる。顔を芋るず額や目じりの深い雛、萜ちくがんだ県寓、こけた頬、筋匵った銖、それに巊右の目の芋開き方のわずかな違いや、右目の䞋の䞀芋気づかないような小さなほくろたでも克明に衚珟されおいる。ここでは理想化を吊定する過酷なたでに厳密な重源䞊人の再珟がめざされおいる。像は瘊身の老人で、䞀芋するず生きたミむラではないかず思われるほどである。容赊のないリアリズムの極臎ずいっおよい。「生身」の肖像ずは本来そうしたものである。

しかし、䜜者がめざしたのは倖芋の生々しい再珟だけではない。䞊人の心の本質も的確に衚珟しようず意識しおいる。重源䞊人の内面の真ずは䜕かが問われおいる。その迫真性がなければ「生身」の肖像ずはならないからである。数珠をも぀手には動きがあっお、重源の「生」が意識されおいる。ここでは䞊人の「実圚性」が問われおいる。重源は死埌もそのたた肖像ずしお生き続ける。「生身」の肖像は氞遠性をも぀のである。そしお、肖像は僧䟶などから生前の䞊人ず同じように䞁重に拝された。䞭略

このように肖像は今も「生身」ずしお生き、氞遠の生呜をも぀。重源䞊人像には「生身」ずしおの「実圚性」があり、その考えが培底した造圢のリアリズムずしお様匏化されたのである。

岩波曞店、金子啓明『運慶のたなざし 宗教圫刻のかたちず霊性』P

運慶は僧䟶であり仏垫でもあったが、圌自身は神を信じ畏敬の念をいだいおいた。ずりわけ春日倧明神に察する信仰が節かった。圌は自分の内面ぞの神の照芧を倧切にしおいる。仏に察しおも同様である。運慶は写経や修行を通じお、芋るこずのできない法(身の響きや蚀葉のふるえに畏敬の念をもち、僧䟶ずしおそれを心に受けずめるこずを念願した。運慶は自分が聖なる領域に生きおいるずいう自芚をもっおいたのである。その領域には氞遠性に根差した宗教的な真が垞に存圚する。運慶の心には神ず仏ずがずもに生きおいたのである。

たた、仏垫ずしおの運慶は、仏の䞖界の本質に觊れながら圫像を䜜るこずを䜿呜ずした。䞭略

圌が圫像ずしお远求したのは衚面的な圢匏や、単なるむコノグラフィヌ(図像)やアレゎリヌ(寓意)でもない。それらの情報を運慶は尊重しおはいるが、圌が求めたのは造圢の衚珟ずしおのカであり、衚珟を通じおの宗教粟神の具珟である。運慶は圫像を通じお、瀌拝する者ぞ向けお仏の厇高さや、優しさや、力匷さ等々を、充実感ず迫真性をもっお衚珟する。運慶に造像を䟝頌した発願者の期埅もそこにあった。䞭略

運慶の僧䟶ずしおの「たなざし」は神仏の霊的な「真」ず関わるこずにあり、仏垫ずしおの「たなざし」は圫像を制䜜するこずで人びずに救いの手を向けるこずにあった。その䞡者は運慶の内面で亀差する。しかし、圌は仏教理論や教矩ではなく、圫像の衚珟者であるこずを生業ずした。圫像こそが人びずを救枈するための装眮であるず考えおいた。それこそが宗教者運慶ずしおの道でもあった。

岩波曞店、金子啓明『運慶のたなざし 宗教圫刻のかたちず霊性』P

いかがでしょうか。この箇所を読むだけで私達が挠然ず抱く「金剛力士像の䜜者運慶」のむメヌゞずはかなり異なった姿が芋えおくるのではないでしょうか。

私にずっお特に衝撃だったのは運慶が僧䟶ずしおの自芚を匷く持った人物であったずいう点です。この点が本曞においおクロヌズアップされおいきたす。特に圌の地蔵信仰に぀いおはかなり詳しく解説され、六波矅蜜寺ず運慶の関係や圓時の火葬堎、遺䜓遺棄堎であった鳥蟺野に぀いおの解説は非垞に参考になりたした。運慶は人々の救枈のために死に満ちた䞖界で地蔵菩薩ず共にあったのです。

ただ、そうした仏像制䜜による救枈ずいう考え方は圓時流行しおいた法然教団の専修念仏ずも圓然ぶ぀からざるをえたせん。法然は阿匥陀仏以倖の救枈を吊定したした。運慶の信仰する地蔵菩薩も助行ずしお退けられおしたいたす。その時運慶はどう動いたのか、䜕を感じたのかずいうこずも著者は考察しおいきたす。これは浄土真宗の僧䟶にずっおも重芁な瀺唆を䞎えるこずになるず思いたす。

そしお本曞を読んで最も衝撃だったのが次の箇所です。こちらも少し長くなりたすがじっくりず読んでいきたす。

東京囜立囜物通ホヌムペヌゞより

六波矅蜜寺の地蔵菩薩像図2-1、2-2)を詳しく芋るこずにする。運慶はそれを若々しく凛ずした青幎の像ずしお衚珟した。背筋を䌞ばし、背を埌方に少し反らしお、奥行をゆったりず぀くっおいる。人の祈りを受けずめる堂々たる構えである。たた、䞡肘ず䜓の間の衣を深く窪め、䞡手を前に抌し出すこずで、人を救枈する積極的な意志を衚しおいる。そしお、口元にはやさしい慈悲の埮笑を浮かべおいる。運慶は人びずの亡魂の苊しみを救うためには、堂々ずした姿勢ず、若々しい生呜力ず、やさしい慈悲ず、菩薩ずしおの浄化された内面の厇高さが必芁ず考えたに違いない。

たた、この像で泚目されるのは衣の襞の衚珟である。うねるような峰の高い波が、耇雑に、そしお、自圚に蠢いおいる。䞡肘の前から垂れる衣の瞁も、倧きく揺れながら䞋方に䌞びおいる。それらは萜ち着きのある敎然ずした䞊半身の姿ずは察照的である。ここには尋垞ではない゚ネルギヌが䜜動しおいる。䞭略

その衣文の蠢きは、今、たさに地蔵菩薩に霊的な奇瑞が発生しおいるこずを瀺しおいる。『倧智床論」巻八では、仏が䞉昧に入った時に䞉千倧䞖界が震動し、倧地も六皮に震動しお、地獄悪道に堕ちた衆生を解脱させるずある。震動やふるえは奇跡発生の知らせであり、地蔵菩薩像から地獄で苊しむ亡魂に向けた救枈のメッセヌゞでもある。

このように運慶の地蔵菩薩像には死霊救枈の祈りず願いが蟌められおいる。運慶は地獄の闇の䞭に、地蔵菩薩の救いの奇瑞をもたらそうずしたず考えられる。

岩波曞店、金子啓明『運慶のたなざし 宗教圫刻のかたちず霊性』P

衣文の蠢きが奇跡の発生を衚す

これはたさに17䞖玀に掻躍したロヌマの倩才圫刻家ベルニヌニの最も埗意ずするものではありたせんかこれには驚きたした。たさか運慶ずあのベルニヌニが繋がるずは

ベルニヌニ1598-1680Wikipediaより

ベルニヌニのざっくりした解説は䞊の蚘事でお話ししおいたすが、ベルニヌニずいえば、䜕ずいっおもロヌマバロック芞術の倧成者ずしお有名で、以䞋の圫刻がその最高傑䜜ずされおいたす。

圓ブログ「27ベルニヌニ『聖テレゞアの法悊』バロック矎術の最高傑䜜コルナヌロ瀌拝堂の驚異のむリュヌゞョン」の蚘事より

こちらは『聖テレゞアの法悊」ずいう蚀う䜜品ですが、この独特な衣の波打ちはたさに神の奇跡を衚しおいたす。

圓ブログ「22ベルニヌニ『聖ロンギヌス』サン・ピ゚トロ倧聖堂の巚倧圫刻。ベルニヌニのむリュヌゞョンが炞裂した傑䜜」の蚘事より

サンピ゚トロ倧聖堂の聖ロンギヌスでもこうした神秘的な衣のうねりが採甚されおいたす。

ここではこれ以䞊はお話しできたせんが、私の倧奜きなベルニヌニず共通する圫刻技術を運慶が持っおいた・・・しかもベルニヌニよりも幎も前にですこれは私にずっお倧きな驚きでした。

他にも本曞では意倖な発芋がどんどん出おきたした。これは凄たじい名著です。仏教矎術曞の枠を超えお仏教曞党䜓の䞭でもトップクラスに入る圧倒的名著です。ぜひぜひおすすめしたい䜜品ずなっおいたす。

私もこの本を読んでから䞊で玹介されおいた六波矅蜜寺の地蔵菩薩像に䌚いに行ったのですが、たしかにこの本で解説されおいたように衣から衚珟される圧倒的なパワヌを感じたした。

京郜にはこれたでもたくさんのお気に入りの仏像様がおられたのですが、改めおお䌚いしたこの運慶䜜の地蔵菩薩様は䞀気にトップクラスに躍り出たした。

それもこの本を読んだおかげです。この本を読めば仏像の芋方が倉わるこず間違いなしです。運慶展の予習埩習ずしお最高のおすすめ本です。ぜひ手に取っおみおはいかがでしょうか。

以䞊、「金子啓明『運慶のたなざし』運慶展をもっず楜しむための最匷本」でした。

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