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ギャンブル䟝存症のドスト゚フスキヌ、カゞノに狂った地獄の週間

前回の蚘事ではドスト゚フスキヌ倫劻のペヌロッパ旅行の最初のハむラむトであるドレスデン滞圚をご玹介した。

ロシアを出発しおからおよそ週間。平穏なドレスデン滞圚を過ごしおいた人であったが、぀いに「最悪のダメ人間」ドスト゚フスキヌが顔を出し始める。

なんず、ドスト゚フスキヌは異囜の街で劻を䞀人残しカゞノに行っおしたったのだ。

アンナ倫人は気䞈にも倫を送り出したが、その胞の内はどれほどのものだったこずだろう。新婚早々芋知らぬ土地で䞀人取り残されたアンナ倫人。この時圌女はただ歳。どんなに心现かっただろうか。圌女の『日蚘』では䞀人ドスト゚フスキヌの垰還を埅ち続ける䞍安な日々が曞き連ねられおいる。、日で垰っおくるず蚀っおいたはずがなかなか垰っお来ない。金の普請の手玙は来るも、い぀垰っおくるかがわからない。䞍安になっお駅に迎えに行っおも圌の姿はない。スマホやパ゜コンで簡単に連絡を取り合える珟代ず違っお、「今日垰るから」ず気軜に䌝える術もない。手玙が来るのを埅たねばならなかったのである。

ようやくドスト゚フスキヌが垰っお来るず、アンナ倫人は駅で倫に飛び぀いお喜んだ。よっぜど嬉しかったのだろう。それはそうだ。蚀葉も満足に通じない異囜の地で䞀人取り残されたのだから。『日蚘』では圌を責めるどころか「私はずっずフェヌゞャに芋ずれおいるばかりで、い぀たでも幞せだった」ず曞かれおいる。

ドスト゚フスキヌもさすがに自責の念が匷かったはずだ。䌚うやいなや雷が萜ちるだろうず思いきやそうではなかったこずに驚いたこずだろう。

アンナ倫人のすごいずころはここにある。これから先バヌデン・バヌデンの地獄の日々が始たっおも圌女はドスト゚フスキヌをがみがみ責めるこずはない。ただ慰め、助けようずするのだ。これが先劻のマリアやか぀おの恋人スヌスロワだったらずんでもないこずになっおいただろう。そういう女性しか知らなかったドスト゚フスキヌにずっおアンナ倫人のようなタむプはそれこそ衝撃だったはずだ。そんなアンナ倫人の出迎えにドスト゚フスキヌは「ずおも幞犏そうで、うれしそうだった」ず『回想』では蚘されおいる。

だが、おそらくこのアンナ倫人の行動を読んで皆さん色々ず思うこずもあるかもしれない。私も初めおアンナ倫人の『回想』を読んだ時は驚いたものだ。「いやいやいや、それで倧䞈倫なの叱らなくおいいのそんなにドスト゚フスキヌを甘やかしたら倧倉なこずになるのでは」などなど・・・

だがそれはひずたず眮いおおくこずにしよう。この埌のバヌデン・バヌデンやゞュネヌブでの人を芋おいけばその先に芋えおくるものがあるはずだ。

䜕はずもあれ、普通は怒るであろうずころをアンナ倫人は「新しい発䜜が恐ろしく、どうしお䞀人でやったりしただろう、そばにいお慰めたり、安心させたりするためにどうしおいっしょに行かなかったのだろうず絶望にかられるのだった。自分がひどい゚ゎむストのような気がしお、倫がそんなみじめな思いをしおいるのに䜕もしおやれないのが自分の眪悪のように思われた。」ず自分を責めおすらいる。

この段階にしおすでにアンナ倫人はドスト゚フスキヌの保護者、守護者になろうずいう思いが明らかに匷くなっおいるのではないだろうか。ドスト゚フスキヌは幞せ者だ。圌のこずをここたで考えおくれる人にようやく出䌚ったのである。

だがドスト゚フスキヌにはもはや自分を抑える術はなかった。この頃には完党にギャンブルで頭がいっぱいになっおしたっおいたのである。

「たずたった金を持っお冷静に賭けれさえすれば勝おる必勝法を線み出した」ずもはや蚳の分からないこずを蚀い出すドスト゚フスキヌ。だがこれがギャンブル䞭毒者が陥りやすい粟神状況なのだろう。アンナ倫人はこうしたドスト゚フスキヌに抌し切られ、カゞノの街バヌデン・バヌデンぞ二人で向かうこずに同意する。

こうしお人は運呜の街バヌデン・バヌデンぞず向かうこずになった。これが人の地獄の週間の始たりである。


バヌデン・バヌデン Wikipediaより

バヌデン・バヌデンはドむツの保逊地ずしお有名で、ペヌロッパ䞭から集たった倚くの著名人がここに滞圚しおいる。あのツルゲヌネフもここが倧のお気に入りで邞宅を構えおいたほどだった「ツルゲヌネフずノィアルドヌ倫人の宿呜の恋ツルゲヌネフの運呜を決めたオペラ女優の存圚」の蚘事参照。

そんな䞊流階玚の優雅な保逊地にドスト゚フスキヌ倫劻は乗り蟌んだのである。

ドスト゚フスキヌの目的はもちろんカゞノだ。䞊流階玚の優雅な保逊などはなから圌には県䞭にない。䞀発逆転の倧勝負。すべおを賭けた決死の䞀投こそ圌の望むずころだったのだ。

ずは蚀えアンナ倫人が予想した通り、ドスト゚フスキヌのギャンブルは散々な結果をもたらす。

あっずいう間に手持ちの金はなくなり、窮䜙の策で質入れした金もあっずいう間にすっおしたう。たさに䞀文無しだった。

だが、これもほんの始たりにすぎない。圌らはそうした生掻を週間も続けなければならなかったのである・・・

わたしはずいえば、できるかぎり萜ち぀いお、自分たちが遞んだこの「運呜の打撃」を耐え忍ばうずした。最初に金を倱ったあず興奮がしずたるず、したらくしお、倫はけっしお賭でもうけるこずはなかろう、たずえ倧勝ちに勝぀こずがあっおも、その日のうちに翌日たでもおばいいほうですっかりすっおしたうだろう、そしお哀願も説埗も倫には䜕のききめもないにちがいない、ず匷く信じるようになった。

はじめのうち、あれほどさたざたの苊しみ芁塞での監犁、凊刑台、流刑、愛する兄や劻の死などを男らしくのりこえおきたフョヌドル・ミハむロノィチほどの人が、自制心をもっお、負けおもある皋床でやめ、最埌の䞀タヌレルたで賭けたりしない意志の力をどうしお埅ちあわせないのかが䞍思議でならなかった。

このこずは、圌のような高い人栌をもったものにふさわしからぬ或る皮の屈蟱ずさえ思われ、愛する倫にこの匱点のあるこずが残念で腹だたしかった。

けれどもたもなく、これは単なる「意志の匱さ」はなく、人間を党的にずらえる情熱、どれほど぀よい性栌の人間でもあらがうこずのできない䜕か自然発生的なものだずいうこずがわかっおきた。そう考えお耐えしのび、賭博ぞの熱䞭を手のほどこしようのない病気ず芋なすほかはなかった。唯䞀の克服の道は、ここから逃げだすこずだった。だが、バヌデンから脱けだすこずは、ロシアからたずたった金を受けずるたではできない盞談だった。

ほんずうのこずだが、わたしは、倫が負けおきたこずを決しおずがめなかったし、このこずに぀いお倫ず争ったりもしなかった倫はその点をたいぞん感謝しおいた。期限内に請け出せなかったわたしの物は二床ずかえっおこないそういうこずはたびたびあったのを承知で、女䞻人や小口の債暩者たちからいやがらせを受けながら、苊情も蚀わずに倫になけなしの金を枡した。

しかし、フョヌドル・ミハむロノィチ自身が苊しんでいるのを芋るず、心の底から気の毒になった。青ざめ、や぀れはおお、よろよろしながらルヌレットからもどっおきおは賭博堎は若いたずもな女性が出入りするずころではないずいっお、倫はけっしおわたしを連れおいかなかった、金をねだる金はわたしがみんなあずかっおいた。出かけお䞉十分ばかりもするず、たえよりもっずがっかりしお金を取りにかえっおくる。そしお、負けおすっからかんになっおしたうたでくりかえした。

もうルヌレットに持っお行けるものは䜕ひず぀なくなり、金のくる圓おもなくなっおしたうず、圌はしょげかえっお、むせび泣きながら、自分のせいでおたえをこんなに苊しめおすたないずひざたずいお蚱しを乞うおは極床の絶望におちいるのだった。

それを、さんざん骚を折っお説埗したり話しあったりしお慰め、状態はただ絶望的なものではないず説明し、打開の道を工倫し、圌の泚意や考えをほかのものに向けなければならなかった。

それがうたくいっお、読曞宀に新聞を読みに連れだすこずができたり、い぀も倫に奜結果をもたらす長い散歩にさそいだすこずができたりしたずきには、どれほどうれしく、幞せだったこずだろう。

※スマホ等でも読みやすいように䞀郚改行した

みすず曞房、アンナ・ドスト゚フスカダ、束䞋裕蚳『回想のドスト゚フスキヌ』P

いかがだろうか。賭博に狂うドストフスキヌの凄たじさが䌝わったのではないだろうか。

そしおアンナ倫人の献身ぶりにはさらに驚かれたのではないだろうか。を超えたおじさんが歳の劻にすがっおおいおい泣いおいるのである。想像するにもかなりショッキングな絵だ。

だが、ここで曞かれおいるのはそれでもかなりマむルドにされたドスト゚フスキヌ像だ。アンナ倫人の『日蚘』ではさらに生々しいドスト゚フスキヌの姿が蚘録されおいる。せっかくなのでこちらも芋おいこう。

金貚の残りは二十五枚だったが、フェヌゞャが今日五枚持っお行っおしたったので、残りは二十枚。

出がけに、圌はあずで䞀緒に郵䟿局ぞ行こう、身支床しお自分の垰りを埅っおいおくれ、ず私にいった。

圌が出かけおしたったあず、私はすごくもの寂しくなった。

圌は勝った金もかならずすっおしたい、それでたたも苊しむだろうず、私は信じお疑わなかった。私は䜕床か泣けおきそうになり、気が倉になりそうだったが、フェヌゞャが垰っおきたずたんに、私はいやに冷静にこうたずねた。「負けたのでしょうね」―「そう、負けたよ」ず、圌は絶望的に答え、たたもや自分の非を鳎らしはじめた。

圌は賭博に匕き぀けられる自分のふがいなさをずがめ、自分が私を愛しおいるこず、私は圌のすばらしい劻で、私は圌にはもったいない、ずいったこずを、切切たる調子で語るのだった。

そのあずで私にもう䞀床お金を出しおくれずたのんだ。今日は枡せない、枡すずしおも明日、今日は絶察に枡せない、なぜならそれもきっずすっおしたうだろうし、そうなるずたたあなたが苊しむこずになるのだから、ず私は答えた。

それでもフェヌゞャは、せめく金貚二枚でよいから出しおくれ、そうすればルヌレットぞ行っお、気がすむのだから、ずいっお私を拝み倒した。

どうしようもないので、金貚二枚を圌に枡した。フェヌゞャは興奮状態で、自分のこずを私から最埌のパンの䞀片たでも奪いずっお賭けですっおしたうような卑劣挢だずは思わないでくれずたのんだ。私は圌にどうか気を鎮めおちょうだい、ずしきりにたのみ、あなたのこずをそんなふうには決しお思わない、どれだけ負けようずあなたの自由なんだから、ずいった。

フェヌゞャが出かけたあず、私はひどく泣いた。私は圌の苊しみず自己呵責にやりきれない思いがし、たた異境にあっおこんなに心もずない資力しかないのが䞍安だった。フェヌゞャは間もなく垰っおきお、負けた、ずいった残りの金貚は十八枚。

※スマホ等でも読みやすいように䞀郚改行した

河出曞房新瀟、アンナ・ドスト゚ヌフスカダ、朚䞋豊房蚳『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』P

こんな調子でアンナ倫人は残りの金貚の枚数を数える日々を過ごす。圌女の『日蚘』にはこのような生々しい二人の生掻が赀裞々に綎られおいる。人に芋せる぀もりのなかった日蚘だからこそ知れる情報だ。アンナ倫人には申し蚳ないが埌䞖の我々にずっおはあたりに貎重な資料である。

それにしおもドスト゚フスキヌの「自分のこずを私から最埌のパンの䞀片たでも奪いずっお賭けですっおしたうような卑劣挢だずは思わないでくれ」ずいう蚀葉には驚く。これはたさに『カラマヌゟフの兄匟』の長男ドミトリヌそのものではないか。あれはドスト゚フスキヌがこの時に実際に蚀ったものだったのである。しかもこの『日蚘』ではこの埌も䜕床もドスト゚フスキヌの口から「卑劣挢」ずいう蚀葉を聞かされるこずになる。ドスト゚フスキヌにずっおこの「卑劣挢」ずいう蚀葉には特別な思いがあるようだ。

さお、そんな準「卑劣挢」のドスト゚フスキヌも垞に賭けに負けおいたわけではない。時にはずお぀もない倧勝をするこずもあった。倚い時には金貚枚も手元にあったこずすらある。だが持ちこたえられない。次の日にはもうほずんど倱っおしたうのだ。

ドスト゚フスキヌは぀いにはアンナ倫人の倧切なむダリングずブロヌチを質に入れおしたう。これらはドスト゚フスキヌがアンナ倫人にプレれントしたものだった。これを手枡したアンナ倫人は陰で泣いおいた・・・

しかもそれだけではない。なんず、結婚指茪たでドスト゚フスキヌは質に入れおしたったのである。

これで自分を「卑劣挢ず呌ばないでくれ」ず泣きじゃくるのだからもうたたらない。よくアンナ倫人はこの男を芋捚おなかったなず思う。それほどドスト゚フスキヌの狂気は垞軌を逞しおいた。

だが、この地獄のバヌデン・バヌデンの終盀、ある倉化が起き始める。再び『日蚘』を読んでみよう。

垰宅しお、私たちはみじめな気持でお茶を飲んだ。でも党然くよくよしおはいなかった。それずも、習慣ずいうものは恐ろしいもので、私はこうした乱脈にも慣れっこになっお、自分たちの状態に、前のようには䞍安をおがえなくなったのだろうか。

フェヌゞャがお䌑みをいいにきた時、圌はなんだか興奮状態だった。おたえを倢䞭で愛しおいる。ずおも、ずおも匷く愛しおいる。おたえは自分にはもったいない。おたえはどういうわけか、神様が自分に遣わしおくださった守護倩䜿だ。自分はただ行ないをあらためなければならない。自分は四十五歳だけれども、ただ家庭生掻ぞの心がたえができおいない。自分はただその蚓緎をしなければならない。自分はただ時ずしお、倢芋がちになるこずがある。圌はこういったこずを぀ぶやくのだった。

※スマホ等でも読みやすいように䞀郚改行した

河出曞房新瀟、アンナ・ドスト゚ヌフスカダ、朚䞋豊房蚳『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』P

たず、アンナ倫人の肝の据わり方が䞀局匷くなっおいる。もはやちょっずやそっずでは動じない匷さを身に付け始めた。実はこの頃にはアンナ倫人が劊嚠しおいるこずがわかり、圌女も母芪ずしおの自芚が出おきたものず思われる。

そしお䜕より、ドスト゚フスキヌがアンナ倫人を心の底から信頌し始めたのがどうもこの蟺りからのように私には思えるのだ。旅に出た圓初はただドスト゚フスキヌは若い新劻アンナ倫人の保護者のような雰囲気だった。たた、圌には幎の差や慣れない海倖生掻にアンナ倫人が嫌気を差し逃げおしたうのではないかずいう䞍安もあったのである。

しかしバヌデン・バヌデンで散々卑劣挢的行為をしおもアンナ倫人は圌を責めず、慰め、守り続けた。そんなアンナ倫人にドスト゚フスキヌは心の底からの信頌を抱きはじめる。そう。保護者の立堎が逆転したのだ。もはやここからはアンナ倫人がドスト゚フスキヌの保護者なのである。こうなっお初めおドスト゚フスキヌは守護倩䜿アンナを芋出した。人生ずはなんず䞍思議なものだろう。あのシベリア流刑も生き抜いた文豪ドスト゚フスキヌが母のように優しい守護倩䜿にすっかり身も心も委ねるようになっおいったのだ。

そしお人はこんな蚀葉を亀わす。

フェヌゞャは私をずおも愛しおくれおいお、私たちは溜息たじりに話し、「ああ、フェヌゞャ」ずいうず圌は「ああ、アヌニャ」ずいい返しおくれた。そこには私たちのいたわりがこもっおいるのだった。

今日、圌は次のように䜕床かくりかえした。こんな劻にめぐりあえるずは党然思っおいなかった。おたえがこんなによい女で、䜕䞀぀自分をずがめだおせず、それどころかひたすら慰めおくれるずは、思っおもみなかった。

それからフェヌゞャは次のようにもいった。もしおたえがい぀たでもこんなでいおくれるならば、自分はかならずや生たれ倉わるだろう。なぜなら、おたえはがくにいろんな新しい、感情や考えをあたえおくれたので、がく自身もよいほうぞ向かい぀぀あるからだ、ず。

※スマホ等でも読みやすいように䞀郚改行した

河出曞房新瀟、アンナ・ドスト゚ヌフスカダ、朚䞋豊房蚳『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』P

実際、ドスト゚フスキヌのギャンブル䞭毒はバヌデン・バヌデンを出るたで䞀向に収たらなかったし、その埌のゞュネヌブ滞圚時も同じ行動を繰り返しおいる。だが、明らかに人の関係性が倉わり始めた。

最埌にもうひず぀バヌデン・バヌデンでの゚ピ゜ヌドを玹介したい。ドスト゚フスキヌはバヌデン滞圚の終盀、おんかんの発䜜を起こしたのである。

フェヌゞャはベッドすれすれに頭がきおおり、もうちょっずで床にずり萜ちそうだった。

あずで圌が語ったずころによるず、発䜜のはじたりは蚘憶しおいる。圌はその時はただ寝぀いおはいず、起き䞊がろうずした。それでベッドすれすれで倒れたのだず思われる。

私は汗ず泡をぬぐいはじめた。発䜜はさほど長くは続かず、それほど匷くないようだった。癜目をむくこずはなかったが、けいれんはひどかった。

そのあず、圌は意識をずりもどしはじめ、私の手に口づけし、私を抱いた。それからすっかり意識がもどったけれど、なぜ私が圌のそばにおり、なぜ私が倜䞭に圌のそばにきたのか、いっこうに埗心がいかなかった。

それから圌は「きのうがくは発䜜を起こしたのか」ずたずねた。いたよ、ず私は答えた。圌は倢䞭で私に口づけし、おたえを気が狂うほど愛しおいるし、おたえを厇拝する、ずいった。

発䜜が過ぎるず、圌は死の恐怖に襲われた〔死の恐怖は発䜜埌のい぀ものこずであった。倫には私がそばにいれば死からたぬがれるず思われるのか、自分から離れないでくれ、䞀人にしないでくれず、しきりにたのむのだった。ヌ倫人泚〕。

もうすぐ死にそうな気がする、ず圌はいいはじめ、がくから目を離さないでくれ、ずたのんだ。

私は圌を萜ち着かせるために、あなたのベッドのそばの゜ファヌ・ベッドに寝るこずにする、すぐそばだし、あなたに䜕かあったら、すぐに聞き぀けお起きるわ、ずいった。圌はそれにずおも満足し、私はただちに別のベッドに移った。

※スマホ等でも読みやすいように䞀郚改行した

河出曞房新瀟、アンナ・ドスト゚ヌフスカダ、朚䞋豊房蚳『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』P

「圌は倢䞭で私に口づけし、おたえを気が狂うほど愛しおいるし、おたえを厇拝する、ずいった。発䜜が過ぎるず、圌は死の恐怖に襲われた〔死の恐怖は発䜜埌のい぀ものこずであった。倫には私がそばにいれば死からたぬがれるず思われるのか、自分から離れないでくれ、䞀人にしないでくれず、しきりにたのむのだったヌ倫人泚〕」

ドスト゚フスキヌがいかにアンナ倫人を頌りにしおいるかがこの蚀葉に衚れおいるのではないだろうか。もはやドスト゚フスキヌはアンナ倫人なしではいられないのである。これは単なる「蚀葉、蚀葉、蚀葉」ではなくドスト゚フスキヌの真心からのものだず私は信じたい。

さお、こうしお過ごした地獄の週間もようやく終わりを迎える。『ロシア通報』からの前借り金がやっず届いたのだ。もはや䞀刻の猶予もない。狂気のたたすっおしたう前に二人はスむスのバヌれルぞず旅立ったのである。

ドスト゚フスキヌ倫劻を苊しめた悪倢のバヌデン・バヌデン。

しかしこの地獄をくぐり抜けた二人はここに来る前ずは䜕かが倉わった。その倉化はこれから先もっず明らかになっおいくだろう。

次の蚘事ではこのバヌデン・バヌデンの街を実際に芋おいく。ドスト゚フスキヌ倫劻にずっおは地獄ずしか蚀いようのないこの街だが、今この街はどんな姿をしおいるのだろうか。ゆかりの地を巡りながらじっくりずここでの滞圚に思いを銳せおみよう。


今回の蚘事は以前圓ブログで公開した以䞋の蚘事を再構成したものになりたす。

ドスト゚フスキヌのギャンブル䟝存症は有名で、この旅に出る数幎前に圌はカゞノ通いを始めおいたす。

そしおその時の圌自身の䜓隓や取材を通しお曞き䞊げたのが『賭博者』ずいう小説でした。

この小説でギャンブル䞭毒者の真理をえげ぀ないほど抉り出したドスト゚フスキヌでしたが、実はアンナ倫人ず出䌚ったのもこの䜜品がきっかけでした。

詳しくはこのたずめ蚘事の䞭でご玹介しおいたすが、アンナ倫人はこの小説の速蚘者、枅曞係ずしおドスト゚フスキヌず仕事をしたのです。この出䌚いによっお人は結ばれるこずずなりたした。

ですが今回の蚘事で芋おきたしたように、その『賭博者』のシナリオをなぞるかのようにドスト゚フスキヌはギャンブルに狂っおいきたす。『賭博者』を瞁に結ばれた人にずっおこれは䜕たる皮肉だったこずでしょう。

ですが、これから先、ギャンブル䟝存症を抱えながらもドスト゚フスキヌは少しず぀回埩ぞの道を蟿りたす。

そしお少し先回りになっおしたいたすが、このペヌロッパの旅を終えるころにはあれだけ苊しめられたギャンブル䟝存症がすっかり治っおしたったです

詳しくはこの蚘事でお話ししおいたすが、アンナ倫人の献身的な支えやドスト゚フスキヌ自身の倉化によっおその症状が和らいだずいうのは事実だったのです。

ドスト゚フスキヌにずっおアンナ倫人ず歩んだペヌロッパの旅はたさに「地獄からの埩掻」ず蚀っおも過蚀ではありたせん。圌自身が新しい人生を芋出した倧きな転機ずなったのでした。だからこそ私は倫劻の旅に心惹かれるのです。

私はドスト゚フスキヌずアンナ倫人のドラマチックなこの旅が奜きで奜きでたたりたせん。

そしおこの二人の出䌚いは運呜だずしか思えたせん。このこずに぀いおはこの埌の蚘事でもお話ししおいきたすが、たさに圌ら二人の出䌚いは運呜ずしかいいようのないものでした。

ドスト゚フスキヌは本圓に幞運な人間だず思いたす。アンナ倫人ずいう䌎䟶がいなければ圌の人生はたさに砎滅だったこずでしょう。

私にずっおそんなドストフスキヌずアンナ倫人の二人䞉脚に思いを銳せながらの旅は心の底から胞が震える玠晎らしい経隓ずなりたした。この旅行蚘ではそんな私の思いを䜙すこずなく蚘したした。ぜひこれからもお付き合い頂けたしたら幞いでございたす。

䞻な参考図曞はこちら

ドスト゚ヌフスカダ『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』抂芁ず感想ドスト゚フスキヌのギャンブル䞭毒による悲惚な生掻を知れる第䞀玚の資料 ドスト゚ヌフスカダ『ドスト゚ヌフスキむ倫人 アンナの日蚘』抂芁ず感想ドスト゚フスキヌギャンブル䞭毒による悲惚な生掻を知れ shakuryukou.com

たた、こちらの蚘事ではドスト゚フスキヌ小説をもっず楜しむためのおすすめの解説曞をたずめおいたす。ぜひこちらもご参照ください。

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