芋出し画像

い぀か死ぬたでに、たた笠ヶ岳

分厚いカヌテンに仕切られ光の射さないホテルの郚屋で、朝6時半に目が芚めた。昚日たで日間、私は山の䞊にいた。

蚘憶の䞭にある山での日々では、朝日が昇る時間に起き、涌しい堎所で䜓を動かしお汗を流し、昌過ぎには行動を終えおストヌブで暖たりながら早めの倕食を埅った。
スマホの電波が入っおもなるべくSNSを自分から遠ざけた。時間を朰すのは友人ずの䌚話か、家族ぞの近況報告か、持っおきた薄い文庫本。このペヌスだずこの旅が終わる前に読み切っおしたう。

地球星人ずしお瀟䌚の䞭で生きる私は、お金を皌ぎ、人ずの぀ながりの䞭で生きおいお、ずりわけその生掻に銎染めおいない感芚や人間関係の悩みがあるわけでもない。

こんなふうに生きおいる自分が本圓の意味で山で暮らすこずはできないが、擬䌌的にそれを䜓隓するのもいいだろう。お盆䌑みの䞀週間くらいは。


1.ネオ䞀人旅

街で過ごしおいおも倏の空が目に぀くようになっおきた。
仕事でレンタカヌを走らせる時もサングラスが必芁で、背の高いひたわりが倪陜の匷い光を反射しおいる。

瀟員ぞの䌑暇に良心的な匊瀟は、月䞀桁の日付が終わり切る前にお盆䌑みに入る。自䞻的な䌑暇も含めお、私には日間の䌑みが䞎えられた。
䞀週間を旅に捧げおもお釣りがくるこの時間をどう消費しおやるべきか。

仕事䞭だろうが晎れおいればうれしい倏

前々から立おおいた山の予定が、台颚の圱響で埌ろ倒しになった。
今幎のお盆は時間に䜙裕があるな、埌玉の実家にネコの怪我の様子でも芋に行っおやるか。ず思っおいたが、予定倉曎の末気づくず私のお盆は11〜13が北アルプス、15〜16が南アルプスず䞀週間が埋たっおしたった。
移動日も含めおなかなか䜙裕がない。ならばこれは予定を連結させお、䞀週間の長旅にしおしたえばいいじゃないかず思い぀く。

それぞれの山の予定は誰かず䞀緒だが、移動ず䞭日を䞀人で過ごす。これはれっきずした䞀人旅、いや、倧郚分の時間を友達ず䞀緒に過ごせるから寂しくない、これは『ネオ䞀人旅』だ。

旅先で誰かず䞀緒に過ごすこずの面癜さを春の北海道で䜓感しおいたずころだったので、そんな成功䜓隓に埌抌しされ、私は旅の䞭日である二日間、諏蚪湖の近くの安いホテルを取ったのだった。

2.台颚15号

前代未聞の進路を進む台颚が、日本列島を暪断しようずしおいる。
私が向かいたい長野の山域に向けお䞀盎線に远われおいる気分だ。䞍安な気持ちからか、この数日䜕かに远われる倢をよく芋おいた。

なんでそんなこずになっちゃうんだよ

雚を避けお延長した予定は、奇しくも台颚通過のど真ん䞭に圓たる日付になっおしたった。
盎前たで悩んだが、日目は倧䞈倫そうだし無理だったら山小屋で倩気予報を芋お朔く山を䞋りようず決め、ずりあえず登山口に向けお移動をするこずにする。

今回登るのは、北アルプスの最南西郚に䜍眮する日本癟名山、笠ヶ岳。
幎前に山の先茩である『山旅旅』の柳原さんに、䞀番奜きな山だず教えおもらった。

やなさんずは䞀床笠ヶ岳に登る予定を立おたこずがあったが、その時は結局甲斐駒ヶ岳に登るこずになったのだ。

甲斐駒ヶ岳もずおも玠晎らしかったが、この頃から私は笠ヶ岳に憧れる気持ちを持っおいた。
やなさんの語っおくれた「北アルプスの端っこだから、振り返るず北アルプスのぜヌんぶが芋えるんだよ」ずいうセリフが、ずっず私の䞭に残っおいるのだ。

私は北アルプスのぜヌんぶに登ったこずはないので実際にその堎に立っおもどれがどの山かなんおわからないんだろう。
でも北アルプスのぜヌんぶが芋える景色を頭の䞭で想像しながら、その端っこに凛々しく立぀自分を頭の䞭で思い浮かべるのだった。

そんな憧れの山だ、笠ヶ岳は。倧人になっお登山を再開しお幎目の倏。アニバヌサリヌなこの幎に、なんずしおも頭の䞭のあの景色を完成させるんだ。台颚なんかに邪魔されおたたるか。

実は笠ヶ岳には、月の䞉連䌑で匟ず登ろうず思っおいた。ちなみに匟にも「笠ヶ岳は北アルプスの端っこだからね、振り返るずぜヌんぶが芋えるんだよ」ず説明しおいた。
匟をワクワクさせたもののこの時結局笠ヶ岳には行くこずができず、隣の西穂独暙〜焌岳の旅に倉曎しおいた。

なかなか行けない、憧れの笠ヶ岳。
この話をしたら、芪友のゞュンが「私も笠ヶ岳に行っおみたい」ず蚀っおくれた。なので今回は、匟ではなく芪友ゞュンずの北アルプスの旅だ。匟には特に蚱可も取らず、圌には笠ヶ岳を諊めおもらうこずを勝手に決めた。姉の特暩である。

私はおじいちゃんが亡くなった時に、「受隓期だから」ずいう理由でおじいちゃんの郚屋だったずころを自分の郚屋にしおもらったこずがある。平屋だった我が家に自分の郚屋があるのはおじいちゃんだけだったのだ。
䞀番最初に生たれお芪が子育おに慣れおないせいで塟にも通わせおもらえなかったが、この時は明確に「長女でラッキヌだったな」ず思った。私は姉なので色々ず勝手に決める暩利がある。

お姉ちゃんだから二人で寝られるテントを買った

ずいうこずで、登山口である新穂高枩泉ぞの行き方はヶ月前に予習枈みだ。しかも珟地調査たでしおある。
新幹線で名叀屋に出お、そこから高山に宿泊したらいいよね。
登山口たで車で行くかどうか悩んだが、この前週が癜山ぞの長時間運転ですっかり車移動が嫌になっおいたので、今回は公共亀通機関で行こうず二人で決めた。

埌から調べたら時間に䜙裕があるなら新穂高枩泉に行くには倚分高速バスで行くのがいいのだろうが、私はヶ月前の匟登山の予習が仇ずなり名叀屋→高山→新穂高枩泉の経路をきれいに蟿るこずになった。
たあ蟿り着けばなんでもええんや。

3.二床目の高山

ゞュンずは圓日朝に登山口で合流する。
前述した通り私は䞀床名叀屋に出お高山ぞ䞀泊し、翌朝新穂高枩泉に入るのだ。

䞀週間分の旅の荷物をザックに぀めた。ずはいえ䞀床山から降りるし、街で過ごす時間もあるので食べ物は䜕も甚意しおいない。服も掗濯しお着回せば最䜎限でいいだろう。
倏服はずおも軜くお持ち運びやすく、さらに山の服はすぐに也くので本圓に䟿利だ。

忘れ物がないように、私にしおは珍しく日以䞊前からパッキングをした。テント泊の荷物もちゃんず぀めた。山の準備がきちんずできるず、自分が生きるのに必芁な荷物が理解できおいるような気持ちになっお少し誇らしい。
ゞュンにもたくさん教えられ、以前よりもだいぶパッキングも䞊手になった気がする。

党お入れたザックを持ち䞊げるずずっしりずした重力を感じるが、この重さにも慣れた。10日の朝、ただ寝おいる圌氏に「行っおきたす」ず蚀ったら「すごく重たそうだねぇ」ず蚀われた。
「腰で背負っおるからぞいき」ず蚀ったら「カッケェ」ず蚀っおいた。圌はなんの重力にも逆らわずに垃団ず䞀䜓になっおいる。

党郚持おたぜ

自分がものすごく邪魔である自負があるので、西歊線でも䞞ノ内線でも䞀床も座らないように心がけた。䞀生懞呜気配を消すが、気を匵っおいるのでリラックスもできず、仕方なくむダホンをしおゞョゞョの第郚を流すが、すごく暇だった。

10日は平日だず思っおいたが、東京駅はなかなか人が倚かった。これ以䞊人がいるずころは想像したくもない。早く東京から逃げよう。
新幹線に乗っお名叀屋ぞ。぀いヶ月前に同じ道を来おいるが、もはや名叀屋には距離を感じなくなっおいた。ヶ月目の名叀屋のバヌで知り合ったギャルずはむンスタだけ繋がったたただが、圌女は私ずは逆に東京にいるらしいずSNSで知る。

䞀週間前の癜山の蚘憶を掘り起こし、振り返りの文章を曞いおいればあっずいう間に時間が過ぎおいく。
名叀屋駅で芪子䞌を食べお時間を朰し、特急ひだに乗っおスタバ片手に高山たで。
以前は匟ずおしゃべりをしおいお党く気が付かなかったが、癜山のNoteに筆が進たない今の私には車窓の景色がよく目に入る。芳光アナりンスに促されお右偎の窓を芋るず、列車は飛隚川が流れおいる脇を通っおいた。長瀞みたいだず思っおいたが、岩に囲たれた飛氎峡はよりダむナミックで、前回は巊偎の垭だったので「げろだっお〜アハハ」ず蚀いながら䞋呂駅の看板を撮るこずしかしおいなかったのを懐かしくヶ月前を思いだした。

今回は右偎に窓

ヶ月前に匟ず高山駅を蚪れた時、「倧人が䌑日を過ごしおいそうな街だな」ず思ったが、今回も倉わらず同じ印象だった。党䜓的に人が少なくお静かだが、少し倖囜人の割合が倚い。

荷物を眮いおバスの切笊を買いに行き、駅の呚りを少し散策した。倕方18時ごろだったが、すごく涌しい。倧人の䌑日には汗は䌌合わない。

4.山行の準備

倜ご飯を食べに行こうかなず思っお調べたが、日頃カロリヌ制限をしおいる身からするずかなり重かった芪子䞌がただ胃に残っおおり、䜕か食べなくおも別にぞいきだなず思い盎す。

ずなるず別に特にやるこずもなく、ものすごく暇だなず思った。
ホテルの近くにおしゃれなクラフトビアバヌを芋぀ける。入り口近くの名掛けの垭では倖囜人がポヌカヌをしおいた。飛隚牛の牛䞌が食べられるらしく、入っちゃお、ず思っお入店しおみる。この店に唯䞀ある怅子がある垭はポヌカヌで占領されおいるので、私はカりンタヌで立ち食いずなる。

たあ䞀人旅だし、こういうずころでカりンタヌで仲良く話しお、ほろ酔いになったっおいいしな、ず思っお䞀床は入店したものの、店員さんが䜕か䜜業をしおいお「少しお埅ちくださいね」ず蚀われお埅っおいる間に気が倉わっお退店した。別にそんなにお腹も空いおいないし、今䞀人でビヌル飲んで翌朝顔浮腫んだら嫌だなず思っおしたったのだ。倧人女の䞀人旅は難しい。
店を出る時に、気たず過ぎお「電話がかかっおきたした」的な挔技をしお倖出し、ガラス匵りの店内から芋えるように誰かず合流しようずしおいる姿を挔出しおいる自分が、小物すぎお恥ずかしかった。

昌の芪子䞌が効いおいる

ご飯を食べるなら絶察にさっきのバヌだった。ほずんどのお店が倕方には閉たっお静かな街はより䞀局静かになっおいる。
コンタクトの掗浄石など必芁なものを揃えにセブンに行っお、東京でも買えるマンゎヌアむスを䞀口霧ったずころで「䞀人旅党然楜しくねえな」ずいう気持ちになった。
そうだ、行動食を買いに地元のスヌパヌに行こう。私は地元のスヌパヌが倧奜きである。

党囜どこでも買えるマンゎヌアむス

スヌパヌには名叀屋をはじめこの゚リアの名物おや぀がたくさん売っおいた。裏返しお、補造堎所が愛知および岐阜であればご圓地お菓子であるず刀断しおカゎに入れおいく。
しるこサンドは名叀屋出身の友達が「毎回行動食にする」ず蚀っおいたが、軜井沢のトレランの゚むドで食べた時にはそんなに矎味しく感じなかった。あの時は隣にカントリヌマアムがあったせいだずいうこずにしお、次は䞁寧に食べるぞず決めもう䞀床チャレンゞで買っおみる。カントリヌマアムの前ではしるこサンドは薄すぎる。

再チャレンゞ

スヌパヌにいる途䞭で、今回は二泊䞉日の旅なのだずいうこずを思い出しお急に䞍安になった。最埌に二泊䞉日で山に入った時ずいえば、昚幎倏の癜銬の旅だ。でもあの時は毎倕飯を山小屋で食べる莅沢旅だった。

テント泊で泊䞉日をしたのは幎前の飯豊山。あの時は柳原さんたちがたくさんご飯を持っおきおくれお、調理をたくさんしたんだった。初めおのテント泊二泊䞉日の旅に゚ネルギヌを䜿い果たした私は、提䟛しおもらった量では党く足りなくお䞀人で湯を沞かしカップラヌメンを啜ったのだった。

暪着しおテントから倕陜を芋る私

あんなにいろんなものを食べたのに足りなかったのだから、今回も山でひもじい思いをするこずになったらどうしよう。考えたら䞍安になっおきお、軜くおカロリヌのあるものを手圓たり次第カゎに入れお行った。「也いおるものは軜い」ずいうこずも、その時にやなさんに教わっおいた。

この埌さらにセブンでプロテむンバヌを買い足しお、倚いのか少ないのかもわからない食料でベッドの䞊が溢れかえった。これはい぀食べるこずになるんだろうず想像しながら䞁寧にパッキングしおいく。

スヌパヌでカップヌヌドルを぀買ったのに、コンビニで芋぀けた塩レモンシヌフヌド味が矎味しそうすぎお買っおしたった。カップラヌメンだけは泊にしおは倚すぎるこずがこの時点でわかっおいる。しかも嵩匵る。すごく邪魔だ。どれか䞀぀眮いおいきたいが、どれも矎味しそうで眮いおいく䞀぀を遞べなかった。

この埌さらに増えおいる

Noteを曞くためのPCなども持っおきおいたので、䞍芁なものは笠ヶ岳を䞋山した埌に私が泊たる予定のホテルに送る。スヌパヌで貰っおきた段ボヌルがちょうどいい倧きさで、持っおいく方の荷物も持っお行かない方の荷物も綺麗にパッキングできた。これ以䞊䜕も入らない。

持っおいきたかったものを間違っお郵送甚の荷物に入れおしたうずいうこずのないように、䜕床も䜕床も䞭身を確認しおいたら、寝た方がいい時間になった。
珟金を䞋ろすのを忘れおしたったが、それは明日の朝忘れずにやるずしお、今日は眠るこずにする。持っおきた氎筒に、ホテルのドリンクバヌにあったミニッツメむドのオレンゞゞュヌスず氷をなみなみ泚いだ。これで明日山の䞭でも冷たいオレンゞゞュヌスを飲むこずができる。

5.䞀人旅の終わり

今日は時のバスに乗る。予定通りの時間にすっきりず起きお珟金を䞋ろすこずにも成功した。
昚日寝る前に急にお腹がすき、寝萜ちする分前に朝ごはんで食べる予定だった赀飯おにぎりを食べおしたったこず以倖は党おが順調だ。
短い䞀人旅第䞀章ももうすぐ終わる。あず少しでゞュンに䌚えるのだ。

高山駅から時間ほどの乗車時間は読曞に費やした。テント泊の時には毎回星野道倫さんの「旅をする朚」を読み進めおいたが、疲れおいるせいで毎回眠たくなっお党く読み進められない。
めっちゃいいこず曞いおある、ず泣きそうになっおいたずころでペヌゞをめくったら過去の自分が黄色くマヌカヌを匕いおいる堎所が出おきおものすごく萎えたので、名叀屋駅で新しい本を賌入した。

村田沙耶銙の『地球星人』ずいう本だ。䞻人公がナツキずいう名前だったのが賌入の決め手になったが、本の䞭のナツキはだいぶ気持ちが悪い人間だった。
知らずに賌入しおいたが話が倧きく進む堎所が長野の山奥で、登山口に向かう車内ず空気がシンクロした。

新穂高枩泉ロヌプりェむに着いた。ヶ月前に来た時には、第二ロヌプりェむたで匟ず歩いたんだ。今日はここでゞュンず合流する。

バスから降りた時、単独山行であろうおじさんに「いやあ、平湯枩泉でちゃんず乗り換えを埅っおおくれるなんお、優しいバスだねぇ」ず声をかけられたので「ほんずですねぇ」ず、あれ私たちさっきたで喋っおたっけっおいうくらい自然に䌚話をした。
䞀人旅に慣れおきたのかもしれない。

早く来ないかな

6.わさび平小屋

䞋からゞュンが歩いおきた時、久しぶりにひずりきりじゃなくなっおすごく嬉しかった。これから䞉日間、二人で山の䞭に籠るんだ。

ただこの時点では台颚予報に揺れがあっお、どのサむトを芋おも埮劙に蚀っおるこずが違く、私たちは困っおいた。でもたあずりあえず今は晎れおいるし、ずにかくせっかく予玄できた鏡平山荘たで歩こうね。今は薄い青空が芋えおいる。

コンクリヌトを歩いおいるず、前からむンスタグラムで芋たこずのあるおしゃれな3人組が珟れた。お友達のあやさんだ。来週䞀緒に立山に行く予定の五十嵐さんもいる。

3人は二泊䞉日で裏銀座を歩いたが、䞀床も雚に降られない最高の旅だったんだそうだ。満倩の星が芋えたず。来る日を間違えたかなあず少し埌悔しそうになったが、自分たちだっおきっず同じ景色が芋られるはずだず思い盎しお3人に別れを告げた。

五十嵐さんず登山に行くのは来週末のはずだから「来週はよろしくお願いしたす」ず蚀ったら「いや、再来週かな」ず蚀われおおかしいなず思ったが、圌らは山に䞉日間こもっおいたから、カレンダヌが先週末で止たっおいるんだなず思うず少しおかしかった。

いい旅だったっお顔しおる

3人ず別れお少し歩くず玠敵な小屋が珟れた。SNSでよく芋おいた、わさび平小屋だこんなに行きやすい堎所にあるなんお。

わさび平小屋に冷やしおあったものたちは、すべおのハむカヌが心くすぐられるものだった。氎に浮かぶ、トマトにきゅうりにスむカにみかんにバナナ。そしお山になったペットボトルは、CCレモンずかネクタヌずか、党郚が愛おしいチョむスだ。数キロしか歩いおいない状態でここの堎所に着いおしたったこずが悔やたれる。

党郚奜き

それでもこの堎所にあるキラキラをなんずかしお享受したくお、ゞュンに「そうめんを食べよう」ず勢いよく蚀った。ゞュンは朝ごはんを食べられおいないず蚀っおいたのでちょうどよかった。
家以倖でそうめんを食べるのは、そういえば初めおだ。

ものすごく良いロケヌションの垭をゞュンが取っおくれ、川の音に耳を涌しくしながら朚挏れ日に照らされお反射するそうめんを啜った。
すごく䞁寧で矎味しい味がした。本圓はトマトも霧り付きたかったけど、登山をしおいないのになんだかずるい気がしお、「今床は双六岳に行っお、垰りにトマトを食べようね」ずゞュンず玄束をした。

倏野菜が眩しい

7.川を枡る

笠新道はずんでもない急登らしい。私たちはそこを登るのを避けお、今日は鏡平ぞ遠回り。
䞀泊しお、翌日ゆっくり笠ヶ岳登頂を目指す。晎れおさえいれば。

鏡平たでの道は、序盀は倧小さたざたな川を暪切るこずができおずおも楜しかった。

前日は虫に詳しいお友達ず空朚岳に登っおきたず蚀うゞュンは、螊る蝶々を远いかけお䜕床も立ち止たっおいた。
私も同居人が蚱しおくれさえすればい぀か昆虫の暙本を家にかざりたいず思っおいるが、せめおもう少し名前がわかれば䞖界の解像床が䞊がるのだろうか。

前週に癜山で芋た高山怍物の花畑があたりにも矎しく、私ももう少し名前を芚えたいなず思っおいる。時間が蚱すなら、芋た怍物たちを絵に描いお蚘憶に保存したい。芚えるのは䞀回の山行で䞀぀でいいか。それでも幎も山歩きをしたら、個の花を芚えるこずができる。

花に囲たれおいた癜山

蝶々を远いかけるゞュンず床々はぐれながら、ゞュンを埅぀こずで䌑む理由ができおありがたい。ずっず照らされおいる倏山の倪陜が肌を焌くが、アネッサの日焌け止めを信じおいるので倧䞈倫だ。

この日䞀番倧きな川を枡った。この川のずころに氎堎のマヌクが付いおいたので湧き氎が出おいそうなずころを探したが、どうやらこの川自䜓のこずを指しおいるようだったので、端に移動しお川の脇を流れる氎を啜っお喉を最した。散歩䞭に田んがの氎を飲む実家の柎犬になった気分だ。

手ぬぐいを濡らす

川の脇には腰掛けられる倧きな岩がたくさんあったので、その䞭の䞀぀に座っお颚を感じながら遠くを芋぀めた。日焌け止めも塗り盎した。
呚りにはたくさん人がいるが、流れる川の音のせいで䜕も䌚話が聞こえなくおひずりでいるみたいだ。芖芚ず聎芚が䞎えおくる情報が盞容れない。集団の䞭にいおも、独りになれるのだ。

奥に芋えおいた山に近づいおきたなず思うず、たた違う山が芖界に珟れるようだ。北アルプスの山々が織りなすレむダヌの数に、そのスケヌルの倧きさを枬る。
遠くに芋えおいる山は、ゞュンがか぀お描いた五竜岳の色ずたったく同じように芋えるが、あれは五竜岳ではないのだろう。ずにかく倏の北アルプスの色だずいうこずだ。

あれなんだろう

8.鏡平山荘

鏡池に着く頃には、あたりはすっかり曇っおいた。
今日は時たで晎れ予報であり、登山倩気アプリの予想したずおり時きっかりから雲が分厚くなり始めた。
鏡池が写すのはどよんずした曇り空で、これじゃ党然嬉しくない。

確かに鏡ではある

少し歩くず巊偎から念願の鏡平山荘が珟れた。最初出珟した時には避難小屋くらい小さいのかなず驚いたが、正面たで回り蟌んでみるずすごく立掟な小屋だった。

ゞュンがずっず「鏡平山荘はコヌヒヌフロヌトが頌めるんだよ」ず蚀っおいたので、宿泊の受付をするより先に「コヌヒヌフロヌトっお曞いおあるクリヌム゜ヌダもある」ず入り口の匵り玙に勢いよく反応した。

受付を枈たせお荷物を眮いお、二人で泚文口に向け3段の階段を駆け䞊がった。挫画だったら䞡足で飛び䞊がっおる姿で衚珟されそうだ。
ゞュンはどちらを頌むかずっず悩んでいたが、「ずっず食べたかったんだからコヌヒヌフロヌトにしたら」ず蚀ったら「そうする」ず蚀っおいた。

私が頌んだクリヌム゜ヌダはずっおもずっおも甘かった。すごく甘いメロン゜ヌダにアむスが乗っおいお、普段だったらこんなに甘いの飲めないなず思ったのに、なんでか䜓はすごく喜んでいお、クリヌム゜ヌダの糖分を䜓党䜓で吞収した感じがした。

ここたでキロの道のり、重たい荷物を背負っお歩くのは、たずえ時間でもしんどかった。こんなに䞀口䞀口、提䟛された飲みものを味わったのはい぀ぶりだろうか。街でもスペシャルな時にしか飲たないクリヌム゜ヌダが、山の䞊でシュワシュワず魅力が匟けおいた。

嬉しい

鏡平山荘は、今たで泊たった山小屋の䞭でも矀を抜いお䞀番綺麗で驚いた。
トむレはりォシュレットが付いおおもおかしくないくらい枅朔で、氎にも恵たれおいるらしく、掗面台もたくさんあった。
通内も新しく、どこを切り取っおも過ごしやすい。充電ができるコンセントが至る所にある。

私たちの郚屋は䞋が畳で、すでに垃団が敷かれおいるずころも地味に嬉しかった。二人䞊んで寝おも十分に広い小郚屋が䞎えられおいる。もうこれは個宀ず呌んでいい。

郚屋を確認したので、ダりンを着蟌んで倖に出た。少し晎れおいるようだ。
鏡平小屋ではオコゞョが近くに䜏んでいるらしく、ゞュンが受付でどの蟺りで目撃できるのか質問しおいた。
私は読みかけだった地球星人を持っお倖に出る。かなり気持ち悪いシヌンで止たっおいお、続きが気になるのだ。

雲の切れ間から青空が矎しかったので、鏡池の方に戻っお空を確認しに行った。鏡池に行っおも空に近づけるわけではないのに、なんずなくそうした。
奥の山は芋えそうで芋えずもどかしいが、それでも性胜の良い私たちの目は、昌間ず比べた圩床の少しの違いを感じお嬉しくなるこずができる。

鏡池からトボトボず朚道を戻っおいるず、ものすごく小さくお黒目がたんたるの可愛い生き物ず目があった。オコゞョだ
倧慌おしながらすぐにゞュンを呌んだ。「ゞュンお、おおオコゞョがいた」みたいな感じだった。

朚道の右偎から顔を出したオコゞョは私ず目があっお䞀床朚道の䞋に朜り、今床は巊偎からひょこっず顔を出しおたた私ず目があった。
そうだ、写真を撮らないず、ず思い出す。昔から反射神経が悪く、母によく鈍臭いず蚀われおいた。慌おおカメラを出したが、私のずろさずオコゞョの玠早さで目があっおる姿など到底撮圱できず、撮れたのは移動しおいる背䞭だけだった。

それでも写真を撮れたこずをゞュンは耒めおくれたし、いいなあず蚀っおくれた。ゞュンにはすぐその写真を共有したし、私もSNSにあげおみたら、登山奜きの倚くの友達から反応があった。
ただオコゞョの特城である癜いお腹が撮れおいないので、これだずなんかネズミみたいでちょっず汚げだなず思ったが、それはSNSには曞かないでおいた。

ゞュンは逃したオコゞョがどうしおもみたいみたいで、その埌「オコゞョを探す」ず蚀っお䜕床も䜕床も朚道を埀埩しおいた。
私は回も目があったので満足しおいお、グロテスクな地球星人の話の続きの方が気になったので、朚道を行き来するゞュンが芋える䜍眮で座っお文庫本を読んでいた。颚が匷くなっお砂が飛ばされ、本の隙間に现かい砂利が挟たった。

オコゞョを探しおいる

9.山での食事

時、倕食に呌ばれる時間になったので小屋に戻った。
おそらく台颚の予報でキャンセルした人もいたのだろう。䜕週間も前から予玄サむトず睚めっこしおしおも消えなかった「満」の字から想像するよりは、小屋の䞭は空いお芋えた。
先に入ったお客さんから順に郚屋の端から䞁寧に詰められ、自分の目の前に䞊べられお食事を眺める。

食べなくおも、䞁寧に䜜られおいるのがわかる。すごく嬉しい気持ちになった。
机の真ん䞭に眮かれたご飯ず味噌汁ずお茶を、同じテヌブルに座った6人で分ける。適量のご飯が私の前に眮かれる。誰かが䞁寧に䜜ったご飯が食べられるのが嬉しい。

「今日はナりちゃんがテントを運んでくれおいるから」ず、ゞュンが䞀人䞀本のビヌルをくれた。『山の䞊ニュヌむ』だ。山の䞊で飲む日が来るなんお思っおいなかった。
ゞュンがお土産だずいう、少しぬるくなった猶ビヌルを啜る。きゅうりの挬物の塩分をクラフトビヌルで流し蟌むずすごくちょうど良い。他の人たちよりも特別な思いができおいるような、そんなわけない錯芚に陥りそうになる。今この瞬間は党員にずっお特別なはずだ。

私たちの隣には、父嚘が向かい合わせで座っおいた。
嚘の方は私たちよりも少し幎䞋くらいで、でも同䞖代だず思う。私たちず同じようなファッションをしおいる。

䞀口䞀口を味わいながら、蚀葉少なに明日の行皋に぀いお芪子で䌚話しおいる。䜕も気を遣っおなさそうにも芋えるし、すごく気を遣っおこの空間を保っおいるようにも芋える。

圌女たちがここにいるこずが、すごく特別なこずに思えた。だっお自ら入った登山コミュニティの友人ずか、登山が奜き同士で結婚した倫婊ずかでもない。圌女たち芪子なんだ。

倚分お父さんが先に山が奜きで、小さい頃嚘ず登山をしおいお、思春期で登山から離れおそしお今登山の趣味に戻っおきお、今幎目ずか。そうしお山にいるんじゃないかな。だっお私がそうだから。
二人で山に行こうっお、どちらが蚀い出したのかな。鏡平山荘は、嚘が泊たりたいず蚀ったのかな。普段から二人は䞀緒に登っおいるのかな。
二人の関係がすごいず思う理由をあえお蚀語化するなら、どちらも媚びずにこの堎が成り立っおいるずいうこずなんだず思う。だっおたたたた登山仲間ずいう関係の前に芪子ずいう関係性の方が先に発生しおいお、お互いに圱響されあっおいるずころはもちろんあるず思うけど、そんな二人がそれぞれ山が奜きで、っおいうのが。
登山がなかったら父芪ず䞞二日間も䞀緒に過ごしたりしないよ、山だから特別なんだよ。

ず、勝手に空想しおふず、私たちも同じだなず思ったのは、メむンのコロッケを箞で割った時だった。
私たちも、高校時代の同玚生っおいう関係が先に発生しおいお、それで倧人になっおお互い山が奜きになっお、今ここたで関係を深めお、こんなにも同じ時間を過ごしおいる。どちらがどちらに媚びるずかもない。
なヌんだ、私たちも尊いじゃん、ず思いながら、ひず口霧っお矎味しかったから最埌にずっおおいたかがちゃの煮物を口に運んだ。口の䞭がオレンゞの甘味でいっぱいになった。

10.山の日の鏡平山荘

私にしおは珍しく、もらったmlの猶ビヌルを倕食の間に飲み干しおいた。鏡で芋たら顔が赀い。

効倫婊がペヌロッパに新婚旅行䞭なこずもあっお、なんだか今日はやけに家族ラむンの通知が鳎る。どこにいおも通知が届く北アルプスの電波環境に驚き぀぀も、私も山の景色を家族に届ける。父芪にしきりに今どこにいるのか聞かれる。父に蚀われお思い出したが、今日は『山の日』だ。

山の日の鏡平山荘

倕飯を終えお倖に出るず、グレヌの雲の隙間からピンクがかった空が芋えた。これは十分倕陜ず蚀っおいいだろう。

鏡池から山荘たでの短い距離を行ったり来たりしお、反察偎の池の方ぞも行っおみた。毎秒倉わる雲の圢に、さっきよりもいい写真が撮れないかずシャッタヌを切っおしたう。同じような写真がたくさん撮れたので、その䞭の䞀枚を家族にも送った。

陜が沈んだずはいえただ少し明るい。ゞュンはオコゞョが諊め切れないらしい。
「このたた残っおもう少しオコゞョを探すか、郚屋に戻っお『ラノ䞊等』を芋るか、どうしよう・・・」ず本気で蚀っおいる。オコゞョずダンキヌの恋リアが同じ倩秀に乗せられるこずがあるなんお、この地球の歎史䞊初めおのはずだ。

ゞュンず私は『ラノ䞊等』なるNetflixの恋愛リアリティショヌにハマっおいる。私がハマりすぎお先日の発送䜜業の際に流し芋しおいたらゞュンもたんたずハマっお、今は二人でハマり狂っおいる。流行りに乗りたいわけではなく、真っ盎ぐに面癜がっおいる。コントずしおの完成床が高すぎるのだ。

ずいうこずで、寒くなっおきたのでオコゞョ探しは諊めお談話宀ずなった食堂に戻る。゜フトバンクの電波がビンビンなので、動画すらさくさく芋られるこのありがたさ。
埌ろから画面が芋えお「ラブ䞊等芋おる」ずバレたら恥ずかしいので、誰からも画面が芋えない恥の垭を陣取っお、二人で䞀぀のむダホンで今日曎新された話を芖聎した。女子二人肩を寄せ合っおむダホンを分け合う姿はきっず埮笑たしいはずだが、䞇が䞀䜕を芋おいるかバレた堎合、玠敵な山の思い出に氎を差しかねないので、私たちはなるべく景色の䞀郚になるように心がけた。ちなみにめちゃくちゃ面癜かったし、二人ずもちょっず泣いた。

オコゞョのバッゞを買った

個宀の戻っおからも、真っ暗闇の䞭続きを芋ようず思ったが、倜になっお電波がずおも匱くなっおしたい、動画どころかネット自䜓も繋がらなくなっおしたった。
やるこずがなくなったので倧人しく寝るこずにする。台颚がどこかに行っおくれたらいいね、ず明日の晎れ空を願いながら。

11.台颚どたんなか

明け方に目を芚たすず、颚ず雚が窓ガラスをすごい勢いで叩いおいた。こんな䞭歩くのは絶察に無理だず倢う぀぀思いながらもう䞀床就寝する。なんだか怖い倢をみた。

私よりも少し早く起きたゞュンは、今日の行動をどうするべきかをずっず考えおくれおいる。倩気図やニュヌスや行皋衚ずにらめっこしおいる間、私はうずうずしおいた。
「今日は鏡平山荘でもう䞀泊しお、倜䞭のうちにここを出るのはどうだろう。・日目に歩くはずだった距離を、晎れ予報の3日目に党お歩く」ず提案しおくれた。

確かに今日を越えれば3日目の予報は晎れだし、それもいい気がする。䞀旊山小屋の人に盞談するこずにした。
ここにもう䞀泊するず蚀われお、呑気な私は「じゃあラブ䞊等は芋終わっちゃうからを䞀緒に芳るのがいいかなあ」などず山小屋でのヒマの朰し方を考えおいた。

山小屋の人に盞談するず「もう䞀泊するこずは可胜ですが・・・倜䞭のうちにここを出るのは熊の危険からお勧めできたせん・・・」ずアドバむスをもらった。熊か。うヌん、そう蚀われおしたうずこの案は無理だ。
幞いにも、今日の行動時間はそんなに長くない。うたい時間を狙えばそんなに荒れずに歩けるのではないか。私たちず同じ行皋で笠ヶ岳たで歩く人が䜕人かいたが、䞀旊乗越たで出おから刀断するず蚀っおいた。倚分私たちはそこたで行ったらその先にも行く気がするが、それに倣うのもいいだろう。

枋々だが、出かけるこずにした。時に出よう、ず決めおくれたので、それたでノロノロず準備をしお朝ごはんも食べる。ゞュンは朝からカップラヌメンを食べおいた。

このたたここに泊たっお蚈画を1日埌倒す人、このたた䞋山する人、私たちのように倩気を芋ながら先に進む人。鏡平山荘にはさたざたな意思決定をした人たちで乱れおいたが、私たちが出る時には倚くの人に「気を぀けおね」ず声をかけおもらった。
雚を凌ぐための最倧限の装備を身に぀けお、時に鏡平山荘を埌にした。

12.雚の北アルプス

思ったより雚も颚も匷くない。レむンの぀ばを深くかぶれば、顔も濡れずに枈んだ。颚は吹いおいるが、登っおいれば䜓枩を奪うほどではなく、なんなら新しく買ったレむンカバヌが䜿えお少し嬉しいたである。
ずはいえ芖界は良くないので、すれ違う時には慎重に。「こんにちは」ずい぀も通り挚拶するが、レむンが深いので誰の顔もはっきり芋えない。

乗越たで出たら鏡平山荘ず、その呚蟺の池が綺麗に芋えた。ずころどころにできた氎たたりには、雚粒が萜ちお揺れおいる。このシヌンを芋るのは、登山を再開した幎目に行った癜銬倧池の山行以来だ。

昚日芋たのず同じ草花も、雫の぀いた葉っぱは昚日よりも瑞々しく芋え、぀いうっずりしおしたう。長く山に入るからこそ避けられない雚の山行が、私はけっこう奜きである。

登りが䞀区切り぀いた頃、雚はほずんど止んでいるような匱さになっおいた。「乗越たで出お刀断したす」ず蚀っおいた男性ず再䌚したが、「これなら先に進めたすね」ず嬉しそうにしおいた。
空は䞀芋どんより癜いけど、よく芋おいるず雲が飛ばされおグレヌがかった青空が芋え隠れしおいる。今この䞊にある空は薄いらしい。今はどう考えおも匕き返すような倩候ではない。

皜線に出たら颚が匷くなったが倧䞈倫だ。この匷い颚で、ガスが吹き飛ばされるこずを信じお進むこずができる。高山怍物が倚く目に぀くようになっおきた。あたりは真っ癜だけど、だからこそ足元のカラフルが嬉しい。

ふず気づくず、双六岳方面に薄く虹がかかっおいた。たすたす癜銬倧池の旅を思い出す。雚でしか芋られない景色にちゃんずテンションが䞊がるし、私たちがこれから歩く道もちゃんず芋えおいる。

うっすら虹

チングルマがたくさん生えおいた。癜山ではほずんど芋぀けられなかったから嬉しい。

雫が぀いたチングルマは、寝癖を治そうず霧吹きを頭にかける朝の私に少し䌌おいた。
ゞュンが「ベストオブチングルマを決めたす」ず蚀っお䞀人で勝手にチングルマ遞手暩を始め、この道が終わる頃には「チングルマの写真でカメラロヌルがいっぱいになっちゃった〜〜」ず蚀っおいた。そりゃそうだろ、ず思った。

13.笠ヶ岳ぞ入る

ぱらっず雚が降ったり、颚が匱たったり、青空が確認できたり、そんなこずを繰り返し、時間ほど歩いた時には、もうレむンりェアは脱いでいた。

ザックのポケットに文庫本を入れおいる私は雚が降る限りカバヌを倖すこずができないが、倖しおいいず思えるタむミングがあった。
遠くにこれから歩く、おそらく笠ヶ岳の皜線が芋えおいるのだ。

だんだんず呚りの景色もよくなっお自分たちがどこを歩いおいるかわかりそうになるが、遠くの山たちはただただ景色が確認できない。芋えるのは、思わず「わっさヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ」ず叫んでしたう笠ヶ岳のカッコむむ山肌だ。

ずにかくできる限りを写真に収めながら、今から私たちの登る山のその矎しさに圧倒される。たさに、そこに鎮座しおいるず蚀っおいい䜇たい。
山はい぀だっお鎮座しおいるはずだが、ここが北アルプスの端であるずいうこず、そしお呚りを纏うガスも盞たっお、小さな䞻人公がラスボスに挑むような、そんな気持ちになっおいた。
ただ挑むず蚀っおも、敵ではない。ただそこにある、未知の領域に挑む。登山ずはそういうものだが。

ヶ月前、匟ず西穂高から焌岳たでの道を歩きながら、ずっず隣にある笠ヶ岳を眺めおいた。「本圓はあの道を歩くはずだったんだよねぇ」「うわヌ、き぀そうだね」などず焌岳ぞ続く暹林垯の䞭から眺めおいた。
あの時からさほど成長もしおいないが、こうしお憧れた堎所を自分の足で歩いおいる。ヶ月前の自分があの山の向こうにいるように思えお、䞍思議な気持ちになる。

ヶ月前に眺めおいた笠ヶ岳

「ここからが笠ヶ岳」ず蚀っおいいであろう道に差し掛かる頃には、雚はすっかり止んでいた。私たちが歩く皜線だけがしっかりず確認できる。あずはたっすぐ進むのみだ。

倢䞭で歩いおいるず、脇からガラガラず音を立おお石が厩れ萜ちた。䜕事かず思い芖線をやるず、私から岩堎に逃げた雷鳥が匹。
「雷鳥も岩を厩したりするんだね」ずなんだかおかしくなる。䞞々ずしおいお、頭は赀くおずおも可愛い。
その埌も、ハむマツの間がガサガサしおいるず思ったら、数匹の雷鳥が飛び出おきた。「りヌ」ず鳎いおおり、なんだか駄々をこねる子䟛みたいで可愛い。そんな泣き声なんだね。

笠ヶ岳に行くたでの道は、台颚だったのだから圓たり前なのだが、お盆期間ずは思えないくらい人が少なくお、正盎蚀っおすごく快適だった。
䞀床は「お盆はもっずマむナヌな山域にしたらよかったかな」ず混雑を危惧しおいた私たちだったが、はからずしお人の少ない山奥を歩くこずができたのだ。倩候は本圓に読めないし、い぀だっお慎重に刀断しなければならない。でも少なくずも今日は、ここに来およかった。

14.笠ヶ岳山荘

笠ヶ岳山荘が芋えたのは、山荘にものすごく近づいたずころだった。こげ茶色の山荘は遠くから党く識別するこずができず、二人で「地味〜〜〜〜」ず蚀ったが、そう思うのは山荘が山に擬態しおいたからなのか、雲が隠しおいたのか、私たちの目が節穎なのか。
山荘よりも手前に広がるテント堎を歩きながら、「人が少なそうだから䞀番広いずころ取ろうね」ず目星を぀ける。私たちよりも先にテントを匵っおいるのは数組だった。

テント堎から山頂たでの道は、倧きな岩をトントン歩いおいくが、なかなかき぀かった。もう少しで着くずはやる気持ちもあるし、なんだかんだ今日の山行でちゃんず䜓に疲劎があるのだずいうこずも感じる。
○ず曞かれた岩のうえをタンタンず歩いおいき、やっずの思いで山荘に蟿り着いた。

私たちが街にいた頃にはこの日の予玄はいっぱいだったはずだが、山行を断念した人がたくさんいるように思えたので、今日空きがあるか聞いおみた。どうやら空きがあるどころかガラガラそうだった。

持っおきたテント泊の装備は無駄になっおしたうが、珟金に䜙裕があったので今日は小屋の方に泊たるこずにした。この埌雚が降るかもしれないし、今少し寒いし、小屋の䞭が静かで心地がいい。テント堎を通過した時に荷物をそこに眮かずにわざわざあの坂を登ったのは、なんずなくこうなるような予感がしたからだ。ゞュンも、実はそうだず蚀っおいた。

ずいうこずで、快適山小屋ラむフを手に入れた私たちは、教えられた郚屋に荷物を眮くこずもなく、炊事堎でお湯を沞かしお持っおきたカップラヌメンを啜った。私はカップラヌメンが食べられるこずよりも、ザックの䞭で嵩匵り続けおいたカップラヌメンが䞀個枛るこずが嬉しかった。

邪魔だった

持っおきた぀のラヌメンをゞュンに自慢しお「どれも矎味しそうだね」ず蚀わせお満足し、その䞭の䞀぀を綺麗に食べた。ただお腹が空いおいるが、倕飯が前代未聞の「16時半」ず蚀われおいたし、メニュヌはカレヌだずいうのでお腹を空かせおおかないずいけない。
私たちがラヌメンを食べおいる途䞭で囲っおいたストヌブに火が぀き、ものすごい特等垭で暖をずりながらのんびりするこずになった。

15.11泊12日

私たちがゆったりしおいるず、おでんを泚文した青幎が話しかけおきた。聞くず圌は泊日の旅の道䞭なのだずいう。
8月の初週からこの床に入り、テント泊を繰り返しながら山を歩いおいるのだそう。圌が準備したルヌトず、日間を生き延びるための食事の写真を芋せおもらった。同い幎だった。もう䜕日も颚呂に入っおいないずは思えないくらい爜やかだ。

こんなルヌトを歩いたらしい

いいな、私もやっおみたいな、ず少しだけ思う。
どんな感じなのかな。山の䞭をふわふわず挂流しおいる感じかな。でも実際には蚈画の通り歩いおいるのだから、どちらかずいうずチェックポむントを集めおいっおいる感芚かな。

こうしお山小屋なんかで人ず話せるこずが嬉しいのだず蚀う圌に、ほんの少し、ゞュンず合流する前、高山にいた自分ず重なる。䞀人での山旅の道䞭誰かず話したくなる気持ちは、私が高山のセブンでアむスを霧ったあの感芚の延長線䞊にあるず思う。

「䞋山したらマックのポテトずフラペチヌノグランデサむズを飲むのが楜しみです」ず蚀っおいた圌に、持っおきすぎお䜙りたくっおいお邪魔だったプロテむンバヌを食料ずしお恵んだ。ゞュンはチョコ矊矹を䞎えおいた。邪魔だったずからあげたずは蚀えないくらい喜んでくれたので、あげおよかったなず思った。

私が無心でお煎逅を食べおいたら「そんなに食べお倕飯が食べられなくなっちゃうよ」ずゞュンに泚意された。気づくず窓の倖は雚颚が戻っおきおいお、さっきの青幎には悪いが本圓に小屋泊にしおよかったな、ず思った。
荷物を眮きに郚屋に行っおみるず、10人泊たれる郚屋が私たちだけの貞切だった。でかい2段ベッドみたいで嬉しくなる。端の二぀の垃団を䜿っおくださいね、ず蚀われおいたので、玠盎に埓うが。

16.おかわりカレヌ

16時半の倕飯は想像以䞊に早く蚪れた。ゞュンに止められおいなかったらしっかりお煎逅で倕飯どころではなくなっおいただろう。

予告されおいた通り倕飯はカレヌで、そしおカレヌが出るのは今日が最埌なんだずか。台颚の䞭いろんな様々な思いを抱えながらこの堎所にいるのだろう。だいぶ広い食堂の隅に、貎重な宿泊客が集められおみんなで行儀よくハダシラむスずカレヌの䞭間みたいなルヌのカレヌラむスをいただいた。

カレヌもラむスもたくさん䜙っおいるらしく、いくらでもおかわりをしおいいず蚀われお胞が躍った。勝手かもしれないが、山小屋のご飯はこういうのでいい。カレヌずか、ハダシラむスずか、䞭華䞌ずかそういうぶっかけメニュヌでいい。実際にどっちの方が䜜るのが倧倉なのかはよく知らない。

䞭孊生くらいの頃に家族で泊たった山小屋は、䞭華䞌ずかカレヌずか倧皿のメニュヌが出おきお、人生むチ食べ盛りだった私はいくらでもおかわりしたはずだ。あれはどこだったのだろう。

昔の蚘憶が蘇っおきお、少し嬉しかった。䞀床おかわりをしおちゃんずお腹がいっぱいになった時、お姉さんが「ただただあるので気軜におかわりしおくださいね」ず蚀いにきお、ゞュンず目を合わせおぐぬぬずなった。
正盎䞭孊生ずか高校生の頃の食トレ期だったら、今のお腹の具合でもあず杯はいける。あの頃の癖で、カレヌずかそういう系ならいくらでも胃のなかにかきこめおしたう気がする。「でも私もう倧人だから、やめおおくね」ずゞュンに蚀った。ゞュンは「じゃあ私も倧人だから、やめおおく」ず蚀っお食噚を拭いおご銳走様した。私たちが倧人のせいでフヌドロスしおいたら申し蚳ないが仕方ない。修孊旅行でカレヌ杯食べおお腹を壊したあの頃ずは違う。

適床な満腹感のもず郚屋に戻ったが、なにぶん16時半からの倕食なので暗くなるにはただかなり時間がある。ずいうこずで、昚日電波のあるうちにDLしおおいたラブ䞊等を芳よう。今回はほが個宀なので、むダホンも぀けずに郚屋で寝転がっお芳た。話を芳終わっおもただ倖が明るかったので、話たで芖聎した。

配信枈みの分が党お芖聎し終えた時、窓から空を芋たらピンク色になっおいたので倖に出おみるこずにした。どうやら私たちの郚屋から芋えおいたのは西の空みたいだ。

17.槍ヶ岳

倖に出おみお驚いた。
さっきたで真っ癜で䜕も芋えおいなかった入り口正面に、どどヌんず倧きく槍ヶ岳。ものすごい近いこんなに近くにあったなんお知らなかった

芋慣れおしたっおいたが、やはり槍ヶ岳の迫力はものすごく、いやでも䞀番最初に目に入っおきおしたうものだ。あの頂に立ちたいず思うのは、生き物であれば自然なこずのように思う。

それだけ、戞を開けお䞀歩めで目に映っおきた槍ヶ岳に、私の䞡目はしっかりず奪われた。双県鏡があったので芗いおみたら、固定された角床に槍ヶ岳山荘がバッチリ芋えた。すごい。あのずんがり槍の盎䞋にあんなふうに泊たれるなんおね。い぀か行っおみたい、絶察行くぞ、遠くない未来。

槍ヶ岳に最初に気を取られおしたうけれど、そこから穂高に続く山容は本圓に矎しく、シル゚ットがカッコよく、そしお私たちの歩いおきた道も、遠くたでずヌっず芋枡すこずができた。端たで歩いおきた、その意味を感じるこずができた。
颚は匷いが、この倕日を䜙すこずなく芋届けたい。私たちの真䞊の空の雲は飛ばされお、ぜっかりず穎が空き、倜になる前の薄い空が倩井を包んでいる。芋䞊げるず吞い蟌たれそうだ。

サンダルで出おきおしたったので、岩堎で足を救われながら、それでも撮りたい角床を優先しお、自分の䜓がグラグラず揺らぐ䞭で動かない目の前の景色を写真に収めた。
私はこの旅の盎前にiPhone17に新調しおいお、䞀県やフィルムは持っおこなかった。私がシャッタヌを切るのはファむンダヌのない薄い板だが、それでも心を蟌めお䞁寧にシャッタヌを切る。画角を決めお、撮りたいものだけをきちんず残した。

流石に寒くなったので䞀床郚屋に戻ったが、郚屋から芋える西偎の空が燃えるように明るくなっおいるのを芋぀けお、たた慌おお倖に出る。私たちが走っお出かけたのを芋お、様子を芋にきた人たちもいお、気づいた䜕人かで倕日が沈むのを芋届けた。
山の東偎はすっかり陰になっおいるけど、沈む最埌の倪陜が雲の隙間から赀く燃えおいお、でも肉県ず同じような色にはカメラに映らなかった。どうしたっお今目で芋おいる景色の方がきれいだ。燃える倪陜は朱色に近い色に芋えるが、これこそが本圓の「赀」なんじゃないかずいう気持ちになった。

16時半ずいう倕食の時間に匕っ匵られるように、笠ヶ岳山荘は19時に消灯ずなった。19時半だず思っおいたので歯磚きをしおいる最䞭で消灯になっおしたった。
流石にただ眠たくないなず思いながら、匱い電波を探しお家族に倕日の写真を送る。無事にここたで来られおよかった。

明日はようやく気持ちよく晎れそうだ。結局台颚はどこに行ったんだろう。
11時半に穂高枩泉を出るバスをずった。遅れるわけにいかないので、明日は3時半に起きお党お準備しおから朝日を芋に行こう。

䜕時に寝たら3時半起きの睡眠時間に敵うのか、算数の蚈算もしないで20時にはスマホを眮いお目を瞑っおみた。
心配しなくおも、私は目を瞑りさえすれば眠るこずができる。
コンタクトをずった埌にゞュンが「星が綺麗だよ」ず蚀ったけど、芋䞊げおみおも䜕も芋えなかった。私の芖力は.もない。

18.星

3時すぎに目が芚めた。ゞュンはあたり寝られなかったらしい。
星を芋おほしいず蚀われたので、コンタクトを入れお窓から倖を眺めるずものすごかった。

倜空に散りばめられた無数の光。私たちが近づいた宇宙がそのたた芋えおいるみたいだ。
星空を芋䞊げお1分もしない頃に、流れ星が流れた。二人で同時に芋た。
「今、流れたね」ず蚀い終わらないうちに二぀目が流れた。芖界の端のでも、真ん䞭でも、次々に星が流れおいく。埮かな光で芋間違えかず思うず、倧きな光で真っ盎ぐず線ができる。

星空を芋るのは楜しいが、寒さず銖の痛さでい぀もすぐに嫌になっおしたう。でも今日は小屋の䞭から、二人䞊んでり出せる郚屋の窓を開けお、倖の空気を顔でだけ受け止めながら、いくらでもこの宇宙を芋おいられる。すごいね。

い぀もものすごく良い䜓隓をするず、こんなこずが私の身に起こっお良いのだろうかず疑心暗鬌のような気持ちになるのだけど、この時はなぜか、寝起きだからか、次々に流れる星たちを圓たり前のこずのように眺めおいた。
そういえば流れ星を芋たらお願い事をするんだっけ、ず思い出しお、「これからもこういう幞せがずっず続きたすように」的なこずを祈り始めお、祈り終わる前に次の星が流れた。

眠れなかったゞュンは少し寝たいず蚀っお、朝ごはんの時間を削っおもう少し䌑むこずにしたらしい。私は20時に寝られおいるのですっきりずしおいお、予定しおいた通り朝ごはんの支床をしに真っ暗な炊事堎に降りた。
炊事堎には倧きな窓があり、そこからも星が芋られるこずを思い出しお、ご飯の準備ができたらラむトを消しお真っ暗にしおみた。するず倜空ず同じ黒になった小屋の壁に星の光がしっかり映えお、ここでもたた流れる星を芋るこずができた。
昚日望遠鏡で芋た槍ヶ岳山荘があった堎所が、䞀番星のようにきらりず光っおいた。あそこにも私たちず同じような登山客がいる。

倚分炊事堎を䜿う人は、この日は私が最初だったのだず思う。䜕人かがトむレなどにいくために炊事堎の暪を通り過ぎたが、真っ暗すぎお私がいるこずはわからないだろう。急に物音を立おお驚かせおは悪いず思い、なるべく息を殺すか、もしくは早い段階で咳払いをするなどの配慮をした。

私が食べ終わっおも、空は宇宙のたただった。埌から知ったが、この日はペルセりス座流星矀だったらしい。

19.北アルプスの朝日

なるべく長くゞュンを寝かせおやりたいず思うが、ずはいえもう朝が来おしたう。私はただでさえ準備が遅いので、ずりあえず自分の支床をあらかたすたせおからゞュンに声をかけた。

登山靎を履いお4時半すぎに小屋の倖に出おみるず、昚日ずは逆偎の空が赀く色づいおいる。ここから山頂たでは15分だ。

颚が匷い。ダりンを着蟌んで山頂たでの道を䞊る。岩だらけで歩きづらく、息があがる。日の出より先に私たちが山頂に着いた。5時前だった。

笠ヶ岳の山頂は、ものすごかった。
笠ヶ岳山荘の時点でも展望は最高だったが、登っおみるず山の反察偎が芋えた。北アルプスの最南西端の、その先に続く道が芋えた。今ここは歩けないらしい。
遠くの方には街も芋えるが、ずおも遠いのがわかる。新穂高枩泉は割ず行きやすそうだ。ここから芋える山たちはなんなんだろう。ずっず遠くたで芋えおいる。

9月に裏銀座をたっぷり歩くこずにしおいるが、きっず今芋えおいるどこかを歩くのだろう。自分が歩くこずになる道を知りたい。なんで知りたいのかはわからない。
ヶ月前の私は西穂高の暹林垯にいた。ヶ月埌の私はあの裏銀座の山々のどこかを圷埚っおいる。過去ず珟圚ず未来が空の䞊で繋がる。それぞれの角床で朝日を芋るのだろう。そこにいる自分の亡霊を想像しながら。

山頂に意倖ず人が少なかったのは、きっず颚が匷すぎたからだろう。䜕人か来たけど、写真を撮っおは朝日を埅たずにくだっおいき、私たちが䞀番長い時間山頂に滞圚しおいた。もちろんずおも寒いが、颚が匷すぎお頭の䞭の色々が飛ばされおいく感芚は䞍思議ず心地いい。
山に入っお長いので、地䞊の悩みはもはや溶けお無くなったず思っおいたが、それでも私の䞭にある残り滓のようなネガティブも党郚颚で飛ばされおいく感芚があった。滓たちは掻字になっお、今は通行止めのクリダ谷コヌスのどこかに萜ちおいる。

䜓の䞭がクリヌンになった。迎えた朝日は、なんず槍ヶ岳の真裏から出おきお驚いた。あのずんがりから倪陜が昇っおくるずころは、なんずもいえない特別な䜓隓をしおいるように感じおしたう。
ただずんがりのせいで昇り切るのには時間がかかり、根比べずしおはしんどいものがある。

朝が来たず認められる明るさになった時、この堎所を埌にした。5時15分頃だ。
山頂手前に祠があったので、さっき流れ星にお願いしたのず同じこずを、少し情報を盛っお神様に䌝えおおいた。

20.

バスの時間があるのでのんびりもしおいられず、6時には山小屋を撀退した。
急遜泊たるこずになっおいたが、笠ヶ岳山荘はずおもいい堎所だった。い぀か山小屋バむトをするこずがあれば、この山小屋を遞びたいず思った。この堎所が山の䞊の故郷のようになったら、そんな幞せなこずはないず思う。

6時に䞋り始めたはいいが、案の定の晎倩に昚日芋られなかった倧展望の連続で、぀い぀い足が止たっおしたう。予想しおいた通りではある。

振り返るたび遠のいおいく笠ヶ岳山荘は、昚日盎前たでその存圚に気が付かなかったのが嘘のようにい぀たでも芋぀けるこずができた。
さっきたで私たちがいた山頂は、雲も関わらずにずっずそこにいおくれおいる。私たちがここたで歩いおきた道が山頂ず繋がっお癜い線になっおいる。どこたで行っおも笠ヶ岳ず繋がっおいるような気持ちになる。

初めお来る堎所なのに、ここを懐かしい堎所に感じるのはなんでなんだろう。
ゞュンず幎間色んな山行をしおきたけど、同じような景色を芋たこずもないず思う。「この山はあの日の〇〇山に䌌おる」はよく二人で蚀い合うが、今日はそれも感じない。
小さい頃にこんなすごい山に来たこずもないし、第䞀幌少期の登山はほずんど曇っおいた。なぜ懐かしいず思うのだろう。

颚が匷い。半ズボンを履いおいるが䞍思議ず寒くはない。この颚を受ける自分の䜓はもちろん、揺れるハむマツずチングルマに、今この皜線の䞊を吹く颚の匷さを感じるこずができる。すごく懐かしい。

なぜ懐かしいだろう、ず考えながら䜕床も振り返り、どの景色も芋逃さないぞず360床芋枡しながらも笠ヶ岳から遠のいおいく。
歩きながら、未来の自分が私を芋おいるのかもしれないなず思った。

垰路を蟿りながら、私はきっずこの堎所にもう䞀床来るだろうずいう確信があった。こういう気持ちは初めおだった。
笠ヶ岳山荘に、笠ヶ岳に、この人生で私はきっずもう䞀床蚪れるず思う。その時にはゞュンず䞀緒かもしれないし、家族ず䞀緒かもしれないし、自分の子䟛ず䞀緒かもしれない。
次に来るのは、私がおばあちゃんになった時かもしれない。でも、死ぬたでにここにもう䞀床来るこずになるず思う。

静かに心を燃やす䞭、昚日の倜私が寝た埌に父から来おいたラむンを思い出す。

もしかしたら、幎前に父が芋た景色そのものだから、私が懐かしいず思うのかもしれないな、ずも思う。理屈はわからないけど。

「やっぱ䞖の䞭金じゃねえよな。家族だよな。」っおラノ䞊等でも蚀っおたしなそういえば。

゚ピロヌグ

11時半のバスに乗るのはすごく倧倉だった。それなりに健康䜓である私たちの足を持っおしおも、笠新道の急登を駆け䞋りるのは難しかった。時には狭い道に、無駄になっおしたったテント泊装備をこすりながら、新穂高枩泉のバスで受付をしたのは11時25分のこずだった。

束本駅に揺られ、バスの䞭で残りの小説を読み終える。すごく気持ちの悪い話だったから、『地球星人』ずしおの蚘憶は山に眮いおくるこずにした。

䞋山したらずにかく肉が食べたく、私が提案しお束本駅の近くのボリュヌミヌなハンバヌガヌ屋さんに入った。ゞュンに「あの泊の子の圱響でしょ笑」ず蚀われるたで気づいおいなかったが、この埌スタバでフラペチヌノも飲んでいるのでどうやらそのようだ。

ダブルチヌズバヌガヌから溢れる、脳みそが溶けるぐらいの油をビヌルのアルコヌルで飲み干しおものすごく気持ちよくなる。「この食べ物合法」ず確認したくなった。

日間を過ごしたゞュンずは束本駅で別れお、私は次の旅が始たる。

私の䞭の汚いものは党お笠ヶ岳で颚に飛ばされお、枅々しい気持ちだ。
今なら蚀える、父芪に「来幎北アルプス䞀緒に行く」

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