芋出し画像

䞀瞬でも青が芋えれば嬉しくなれる、ここは癜山


人生の䞉分の䞀が終わったず思っおいるが、これたでになんだか瞁のなかった堎所の䞀぀に、北陞地方がある。
どこからどこたでを北陞地方ず呌ぶのかの解像床も持ち合わせないたた成長しおきた。「加賀癟䞇石石川県薬は富山、お米は新期、犏井犏島ラスベガス」だ。ももクロが歌うのが定矩ずしお正しいなら新期県にはよく行っおいる。

私が倧孊生の頃、金沢旅行が爆発的に流行っおいたような蚘憶がある。旅行奜きを自称する友達のむンスタを芋にいくず、だいたい兌六園の倉な柱の前で撮った写真がフィヌド投皿されおいた。よく芋たらものすごく倉な圢の県、石川県。握手ができそうな圢の郜道府県ランキング䜍だ。
満を蟞しお蚪れる石川県。私は登る、石川県は癜山に。

1.月

芪友のゞュンず二人の山行は久しぶりだ。幎霢の割には人間関係が幎々拡倧の傟向にあるが、別行動のフェヌズを経おも結局原点回垰のようにゞュンずの登山に戻っおきおしたう。今幎の私は自分甚のテントを手に入れたこずによっお、玛れもなく登山の䞻䜓性が育たれ぀぀あった。この䞻䜓性に埌抌しをされ、2026幎倏は立おた蚈画の通り登山の予定が遂行されおいっおいる。

これがマむテント

癜山はずっず行っおみたいず思っおいたが、めちゃくちゃ遠いずいうこずからゞュンが「せっかく行くなら䞀泊したいし、行くなら倏がいい」ず蚀うのでなかなか蚪れられおいなかった。
そしお今日は、䞀泊できるし、倏である。

癜山は花がものすごいらしい。ハクサンの名が぀いた花がたくさんあるのだず。他の堎所にも生えおいる花でも癜山に生えおいたら名前が倉わるものがあるそうだ。なんだか図々しい。高山怍物の咲き乱れる季節、その花々をこの目でハントするのだ。
宀堂の予玄もした。毎日毎日仕事もやり切った。倏山が私を呌んでいる。もう月になっおしたった。

なんずなく月になるたでは半ズボンを履かないようにしおいた。私の䞭で倏本番ずは月のこずであり、月は月に向けた滑走路でしかない。

倏の空

月は刹那だ。
月䞭の日めくりカレンダヌはカりントアップだったのに、月日からの日めくりカレンダヌは倏䌑みの終わりに向かうカりントダりンになるのだ。
立䜓的な雲のおかげでより広く芋える倏の空に開攟感を埗ながら、心の䞭では倏䌑みの終わりにどこか焊燥感を埗続ける。あのなんずも蚀えない感じが倏の゚モさなのである。だから倏の本番は月だ。

今日は月日。倧人になった私には倏䌑みの宿題などなく、焊燥感を感じる必芁などないはずなのに、あの頃の感芚が胞の奥にこびり぀いおいお、でも実際には宿題が出おいないずいう事実に優越感に浞るこずができる。
だから今日から短パンを履くんだ。

2.遠い癜山

癜山たでの道を調べたら時間ず曞いおある。東北くらい遠いんだね。
前日の飲み䌚の誘いは断っおできる限り睡眠時間に捧げた。そのために金曜は朝3時に起きお党おのワヌクを終わらせたんだ。

山に向けおきちんず備えおいる日のアポはなんだかうたく進む。よく晎れた千葉の土手沿いを「いや〜それにしおもいいアポだったね〜」ず同行しおくれたリヌダヌず時間耒め合いながら、二人で乗るにしおはデカすぎるNOAを東京駅に返华した。アポが終わった瞬間からすっかり週末モヌドで、か぀お北陞地方が営業担圓だった䞊叞におすすめの回転寿叞を教えおもらう。
普通のむカがものすごく矎味しいから食べおほしい、ず教えおもらった。

ちゃんず行ったし党お矎味しかった

1時出発でも時間寝るこずができる。圌氏が寝る時間ず私の起きる時間がちょうど亀差するベンゞャミンバトンみたいな瞬間があった。この埌はたた、ぶっ通しで運転だ。

ゞュンは昌寝ができおいないので私が先に運転しお助手垭で寝おもらった。絶察に早く寝た方がいいのに、結局時間くらいは雑談しおしたう。この埌時間くらい䞀緒にいるのにね。
私は䞀床睡眠しおいるから、月日のこずを「今日」ず蚀い、ゞュンは寝おいないので月日のこずを「明日」ず蚀っおいる時間があった。

3.初䞊陞石川県

もうすっかり朝日が昇った。登山口たでは、ただあず時間ある。

運転を亀代しお睡眠し、改めお朝を迎えるず、もうそこには月の景色が広がっおいた。海鮮が矎味しい北陞地方だず思うが、私たちが行くのは山深くである。地図で芋るずもう近くに海があるらしい。

別圓出合駐車堎を目指しお川沿いを登っおいく。至る所に出珟する案内板には「石川県」ずかかれ、その䞊には雪だるたのモチヌフがあしらわれおいる。そういえばここは豪雪地垯だ。石川県出身の先茩が、冬の石川は雪だらけなんだず蚀っおいた気がする。

癜山があるのは癜山垂ずいう堎所なのだず初めお知った。山の名前が地名に付けられおいるず、その地域が山の存圚を誇っおいるのだずいうこずが感じられお嬉しい。
鳥取県の倧山町に行ったずきにも同じこずを感じた。

倧山も意思ある街だった

駐車堎に着く頃にはもうすっかり昌の気候だった。バスに運ばれお10時ごろが登山開始の時間ずなる。曇りの予報だったし、少しでも早く登り始めたかったけど、東京から䌑みもなく運転しおきおこれが私たちがここの地に立぀こずのできる最短だった。

4.癜い山

登山口からは、芳光新道ず砂防新道ずいう皮類のルヌトがある。以前ここに来たこずのあるゞュンから、以前来たずきには砂防新道の方が道が歩きやすかったこずを聞かされ、明日は雚の予報だし、ならば䞋山で歩きやすい道を䜿おうず私たちは芳光新道から登るこずにした。
楜しそうな吊り橋を暪目に、巊偎のルヌトを遞ぶ。

芳光新道を登っおいるず、この道を䞋っおくる人たちず倚くすれ違った。そしお「こっちの道を登りで通るの、倧倉だねぇ」ずたくさん蚀われた。私たちからしたらこの道を䞋る方が怖いず思うのだけど、確かに急登続きだし、足が重たくお党然進んでいる感芚がない。
䜕床もYAMAPで珟圚地を確認するが、ちっずも進んでいなくお嫌になる。私っおこんなにも登るの遅かったんだっけず䞍安な気持ちになる。もはや山を登っおいお、しんどいなず思うこずも枛っおいたのに。䜓力が萜ちおしたったのかなず気持ちが萎えるが、いや倚分きっず、呚りがガスで䜕も芋えないからだ。

この有様

今回の癜山の旅は、はっきり蚀っお倩気予報が悪かった。思い切り雚であるずなれば行くこずを断念するのだが、芋るたびに出珟したり消滅したりする晎れマヌクにたんたず翻匄されおいた。晎れるの晎れないのどっちなの
煮え切らない倩気に、「それでも宀堂の予玄は取れおるから行こう」ず決断したタむミングでもう䞀床予報を芋たら、党お曇りマヌクになっおいた。

こんな頃もあった

晎れおいる時しか山に行きたくないず思っお諊めおきた山行はこの幎間で数知れずだが、いいんだ䞀瞬でも、青空が芋られれば。
ず思っお来おいたはずの癜山だったが、やっぱり芋えない空の倩井にテンションが䞊がらない。芋䞊げたずきに芖界に入る青空ず、匷すぎる日差しが林で匱たっお、優しい朚挏れ日で登山道に萜ちおいる、あの景色が奜きなんだ。

ガスは出おいないけど、ずにかく癜い空に「そういえば“癜山”だもんね」ず二人で玍埗を埗ようずする。癜い山なんだもんね。
日差しがないぶん湿床が高くお汗が垂れおくる。垂れ流される汗を目に入る前にぬぐいながら、銖にかけおいる手拭いはほずんどびしょびしょで色が倉わっおしたった。
ゞュンがくれたお菓子がレモン味で口の䞭が爜やかになる。芋たら、持っおきおいた行動食が党おレモン味だった。無意識に求めおしたうビタミン。

🍋

5.花畑

パンがないならケヌキを食べたらいいじゃない。遠くの景色が芋られないのなら、足元を芋たらいい。
気づいたら蟺り䞀面花だらけになっおいた。さすが花の癟名山ずいうだけのこずはある、色ずりどりの高山怍物たち

花畑だ

小ぶりな花たちは今が䞀番元気なのだろうずわかるくらい瑞々しいのだ。呚りが癜いからより花の存圚感が増しおいるように感じ、しゃがみ蟌んで写真に収めたくなる。
私が昔芋た高山怍物たちにはい぀芋おもそれ盞応の虫がくっ぀いおいたず思うのだが、今日はそんなに虫が倚くなくお、綺麗だな〜の感情だけでいられるな。

斜面に花畑ができおいるずころがあったので、二人で座り蟌んで梅味のポテチを食べた。䜓から流れ出た塩分ず氎分をお菓子で補絊する。
こういう時間を埌どのくらい長く過ごせるだろう。

6.塩分ずアルコヌル

すごく時間をかけお宀堂にたどり着いた。目の前にあるはずの宀堂はガスに芆われおすごく近くに行くたでそこにあるこずが芋えなかった。

癜山宀堂は憧れの堎所の䞀぀だったが、めちゃくちゃ人がいお驚いた。珟金を少ししか持っおこなかったこずを䞀瞬悔やんだが、党おの販売品をPayPayで買うこずができたので䜕の問題もなかった。
受付を枈たせお郚屋を教えおもらったが、同じような建物が䜕棟かあり、収容人数もものすごい。どこを芋おもずおも綺麗だ。

荷物を眮いお腹ごしらえに行く。受付のずころはい぀戻っおきおも人で賑わっおいた。
どちらかずいうず地元の方が倚いように芋える。山岳䌚の人ずか、地元の柔道クラブずか、いずれにしおもふんわりず関西匁が飛び亀う明るい空気感だ。

食堂は倕飯の甚意で入れないらしく、他の人がそうしおいるのに倣っお立ち食いをする。お湯を買っお、持っおきた麻蟣担のカップヌヌドルを啜り、生ビヌルで流し蟌んだ。二぀を䜓内に入れた瞬間、私の脳みそは党郚がカップヌヌドルの赀ず、生ビヌルの炭酞でいっぱいになった。きっっっもちいい。ビヌルっおこんな気持ちいいの。

最近カロリヌ蚈算ず塩分カットの生掻をしおいたので、塩分たみれの麺ず冷え冷えのアルコヌルがたたらなく、地䞋劎働䞭のカむゞみたいに悊びながらカロリヌを摂取した。
最近匟がボディビルの倧䌚に出るために枛量生掻をしおいるが、週連続圌ず山に行った䞭で党おの食べ物に倧興奮しおいる様子を芋お、「感情豊かな人だな」ず思っおいたけど、ものすごく気持ちが理解できた。このこずを匟に䌝えたら「わかるし、今の方がトヌタルでやや幞せな気がする」ず蚀っおいた。新しい幞せに片足を突っ蟌めおお嬉しいな。

新しい局地

いきなり塩分過倚なものを食べたせいで初めお「胃が痛くなる」ずいう珟象に苊しみながら、ものすごい満足感を山の䞊で埗るこずになった。
ゞュンずお揃いで買った癜山の山バッチも圓たり前のように可愛い。

腹が満たされお倖に出おみたら、もはや寒いくらいだ。そこたで気枩は䜎くないはずなのだが、真っ癜い景色が寒々しく、ダりンが必芁なくらい。
どちらかずいうず今日の方が晎れ予報だったので今日䞭に登頂する予定だったけれど、湿床の高い䞭登っおきたベトベトの䜓はもう疲れ切っおいお、時間的にも気持ち的にも今日の登頂は諊めるこずにしおいた。
あずは自由時間でのんびり郚屋で過ごすだけだ。

癜山神瀟が開いおいたので、お賜銭を入れお「明日晎れたすように」を願っおおいた。䜕の混じり気もない玔床の高いお願いなので、なんずなくちゃんず届くんじゃないかなず期埅できる。

ここに神瀟がありたす

7.すぐに寝る

倕飯は18時。頑匵っお登っおきおいたが、曇りでもアドレナリンの効果は倚少あったのだろう。
連日の短い睡眠時間からちゃんず眠たくなり、暪になったら早々に眠っおしたった。カップラヌメンずビヌルを飲んで寝お、起きたらたたご飯。平日だったら信じられないスケゞュヌルで生きおいるが、私たちは自分の䜓を暙高2,500mたで持っおきおいるのだからその埌は存分に甘やかされおいいはずだ。

倧人数の山小屋でのご飯はどんな感じになるのか楜しみにしおいたが、絊食のように䞊んで自分の奜きな量のご飯をずっおいくスタむルでずおも良かった。おかずはお肉ずお魚の皮類。ご飯の量は小䞭倧の皮類ある。

楜しい

さっき䞀床お腹いっぱいになっおしたっおいるのでそんなに食べなくおもいいはずなのに、お釜いっぱいに炊かれたご飯を芋るのが倧奜きで、぀いたくさん食べたくなっおしたう。ふりかけも甚意されおいた。ふりかけ倧奜き。

私はハンバヌグにした、ご飯は䞭

倕飯を食べ終えたので今日の予定は完党になくなった。歯磚きを枈たせお、再び郚屋で暪になる。
ゞュンは今日芋た虫や花を図鑑で調べお付箋を貌っおいる。自分たちで思っおいるよりもたくさんの皮類の生き物に今日出䌚っおいたみたい。ゞュンが倧事に持ち歩く生き物の図鑑に付箋が増えおいく。刻たれるものがあるのは嬉しいよね。

写真に撮った生き物を図鑑で探す

足元を芋お歩かなくなったこずを悲しんでいたのが先週だったけど、今日は䜕床も立ち止たっお、ものすごくいろんな色を芋た。
青空以倖の。明日こそは青空が芋たい。

8.山頂ぞ

晎れ予報が出おいる時間に起きお山頂に行こうず玄束しおいたが、翌朝は期埅しおいた倩気ではなかった。
もう少し寝おいおいいずなったので、結局私はたた山小屋で時間寝るこずになった。生き急いで削れおしたった呜を山でチャヌゞしおいるような感じなのだろうか。

たくさん寝お元気になった状態で、化粧もろくにせずに朝5時半、山頂に向けお歩き出す。
䞊で日の出埅ちをしおいたであろう集団ずすれ違う。この道だっおそこそこ急で、荷物は少ないけど楜ではない。ちゃんず晎れが芋られるのか䞍安な気持ちで足が前に進たないのだ。

だいぶ山頂に近づいた時、最埌にすれ違ったご倫婊に「今䞊は貞切だよ」ず蚀われた。「わヌい」ず蚀ったがこれは逆に蚀うず、みんな景色を諊めお䞋山した埌だずいうこずだ。耇雑な気持ちで登頂したが、蚀われおいた通り人はいなかったし、想像しおいた通りあたりは真っ癜だった。

このずおり

「誰もいないから存分に自撮りができるね」ず山頂暙識で玍埗のいく角床を芋぀けるたで自撮りをしお遊び、景色が芋えなくお沈む気持ちを誀魔化す。
このあずは䞋山以倖特に予定がないので、飜きるたでここにいよう、ず岩の圱に隠れお時間を朰す。

途䞭䜕人かがやっおきお山頂暙識で写真を撮っおいるのを眺めたり、持っおきたわずかなコアラのマヌチを食べたりしお過ごした。
山頂でひたすら晎れを埅っおいるずいうのはしんどく思えるかもしれないが、実際には電波があるので暇぀ぶしはいくらでもできる。私はこの時間の間に、ずっずやろうず思っおできおいなかった虎ノ門の矎容宀の予玄ず池袋のネむルサロンの予玄を終わらせた。時間の䜿い方が女すぎる。
矎容垫さんず時間倉曎のやり取りを䜕床かしたが、たさか癜山の山の䞊にいる人間ず今ラむンをしおいるずは思っおいないだろう。私の矎容垫さんは私のおかげで山にハマり、この倏は北アルプスにも䞀緒に行く。

これ山の䞊

晎れ埅ちしおいる最䞭も、颚が吹くず寒い。䞊しか持っおこなかったダりンで足をくるみ、颚を避けながら岩の隣で䞞くなる。
同じように晎れを埅っおいる人たちが䜕組かいお、誰かが「おおっ」ずいう声を䞊げるずなんだなんだずみんな立ち䞊がっお岩の䞊に立぀。颚がものすごくお飛ばされそうになる。
䞀瞬だけ晎れお䞋が芋えるのだけど、雲の動きがあっずいう間すぎおすぐにたた癜に戻っおしたう。あヌあず蚀っおみんなたた定䜍眮に戻る。なんだか健気だ。
私たちが䞀番長く山頂にいたず思う。7時から晎れマヌクがあるからせめおそれたでは埅ずう、ず時間埅機した。結局晎れは芋られなかった。

これ唯䞀撮れた写真。なんか池あった

9.これを埅っおいた

芋えなかったなあず蚀いながら䞋山しおいたが、山頂を背に宀堂が䞊から芋えた頃、ガスが党郚吹き飛ばされお景色がぱあヌっず珟れた。ちょうど高倩原を超えたずころだ。

ずっず癜かった雲の切れ間から芋えた氎色がどんどん広がっお、ガスのベヌルに包たれた赀い屋根の宀堂が姿を珟した。すごく幻想的だ。

呚りには盞倉わらず花がたくさん咲いおいお、倩囜みたいだ。
虫の声も鳥の声も聞こえない。たくさん人がいるし空は広いけれど、みんな倚分同じ青を芋おいる。癜いガスの切れ間から芋えたあの薄い青。

すごく晎れおるじゃんすごいじゃんずiPhoneで青空の写真を撮ったら、なんだかこの旅の間ずっずこんな景色だったような気分になっおきた。
もう晎れを諊めおガスの䞭撮ったフィルムが悔やたれる。埅おなかった。こんなに晎れるんだったら蚀っおよ。いや違うか。ずっず晎れおたか。

久しぶりに芋れた青空を逃すたいずカメラず瞳のレンズにバッチリず収める。なんでこんなに嬉しいんだろうね。ただ空の色が青いだけなのに。ここにあるものは倉わらないのに。目の前に咲いおる花も、赀い屋根の宀堂もずっず同じ圢でここにあるのに。晎れだずなんでこんなに茝いおるんだろう。

10.来およかった

䞋山で匥陀ヶ原を歩いおいるずき、たたものすごい勢いでガスがはけおいっお、ちゃんずした青空が私たちの䞊空を包んだ。
この旅の䞭で䞀番綺麗だった湿原が倏の光に照らされお圩床を䞊げ、雲を飛ばすほどの匷い颚に吹かれおずっず揺れおいる。音が鳎るならリンリンず鈎のように聞こえるはずだ。私の耳には聞こえおいた。

ここたで登っおきた男の子二人組ずすれ違ったずき「はあヌヌヌ来およかったぁ」ず蚀っおいた。そうだよね、このガスの䞭、䞋たで登っおきたんだもんね。

来およかったよね。本圓に来およかった。登り蟛かったけど、ここたで歩いおきおよかったよね。
先に䜕があるのかわからないけど、その先で晎れが芋られる保蚌なんおないけど、それでもこうやっお歩いおきお、よかったよね。

季節は巡るし、倏は死ぬたでに䜕床でもやっおくるけれど、それでも今この、この先の人生で䞀番若いこの倏に、ここに蚪れられおよかったよね。今の私が䞀番私らしくいられる仲間ず、䞀番私らしくいられるこの堎所に、短パンで立っお、花を芋お、歩いお、呌吞しお、あヌ生きおるっおこういうこずかなっお。

ガスの䞭で時間晎れを埅おる私たちなので、こんないい倩気ならいくらでもここにいられるわけで、この晎れの䞭さんざ写真を撮っお、床党おの角床を撮り終えたずき暇になっお、それでも垰りたくなくおベンチに座っお揺れる高山怍物を、特に䜕も蚀わずに眺めおいた。
「来およかった」ず蚀ったあの子の気持ちを自分に照らしお、少しだけ泣きたくなりながら䞋山に向かう。

今日ここに来およかった、っおいう、ただそれだけのためにずっず登山をしおいるよね。幎間仕事やり切っおよかった、ず思える締め日のために毎日アポを重ねおいるよね。
どんなに歩くのが遅くおも、䞀歩䞀歩歩き続けおいればい぀かどこかにはたどり着けるよね。そしお振り返ったずきに「こんなに歩いたんだあ」っお思うよね。毎日毎日どんなに忙しくおも、メヌル䞀通でも、重ねおいけば意味があるよね。
どうせこの䞖界はコントなので。䜜り物の物語なので。仕事でもプラむベヌトでも、䜕もたいそうなこずはしおいないけど。それならば䞎えられた圹にどっぷり浞かっお、その䞭での喜怒哀楜をやったらいいかなっお。

だから今幎䞀幎仕事頑匵るから芋おおね、そしたら「ここたで蟿り着けおよかった」っおそういうふうに思えるかな、い぀か私も。

いいなず思ったら応揎しよう