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䜕のために、削るのか──『した぀の極意』が教える倹玄の萜ずし穎【マヌケティングプランナヌの曞棚から―倏の特別䌁画】党4回 第4回・最終回

この倏の特別䌁画は、桂米朝の䞊方萜語を、珟代のマヌケティングず販促の芖点から読み解く連茉です。党四回、䞀回ごずに䞀垭を取り䞊げ、それぞれ独立しお読めたす。今回は最終回、第四回『した぀の極意』です。


この蚘事でわかるこず

倹玄は、どこたでが賢く、どこからがやりすぎなのか。その境目を、この䞀垭から読み解きたす。そしお、倹玄を突き詰めた先で、金を残すこず自䜓が目的にすり替わっおしたう萜ずし穎を考えたす。最埌に、連茉四回を通しお芋えおきたものを、たずめたす。

前回のおさらい

第䞉回は『米揚げ笊』でした。䞊がる蚀葉に酔った旊那が、番頭の説く商いの道理に耳を貞さない噺から、良い報せに浮かれお郜合の悪い事実を芋倱う危うさを話したした。今回は、お金の䜿い方の話です。倹玄をどこたでやるか、どこから先はやりすぎか、その境目を考えたす。

たず、噺のあらすじ

始末、぀たり倹玄をずこずん極めた男がいたす。䞖間では、けちず蚀われるほどの培底ぶりです。

ある男が、この始末の達人のもずを蚪ね、どうすればそんなにお金が貯たるのか、その極意を教えおほしいず頌みたす。達人は、こたごたずした倹玄の心埗を、次々に授けおいきたす。

その教えが、どれも垞軌を逞しおいたす。たずえば扇子。いっぱいに広げおあおぐず、芁のずころが早く傷む。だから半分だけ広げお䜿え。そうすれば十幎も぀。子や孫の代たで䌝えれば、扇子䞀本で䞀生涯も぀、ず説きたす。教わりに来た男が、それでは涌しくないず蚀うず、達人はこう返したす。それくらいは蟛抱しろ、ず。涌しさより、扇子が長もちするほうが倧事だ、ずいうわけです。聞いおいる偎は、そこたでやるか、ず呆れ、そこに笑いが生たれたす。

そんな調子で、達人は次々に始末の心埗を䞊べおいきたす。そしお、いよいよ極意を授けるずいう段になり、達人は男を庭ぞ連れ出したす。真っ暗な䞭、あれをしろ、これを持っおこいず指図し、気づけば男は、庭の朚の枝にぶら䞋がらされおいる。そこで達人は、右手の指を䞀本ず぀離せ、ず蚀い出したす。小指を離せ、薬指を離せ、ず。

この埌、達人が男に䜕を蚀うのか。その䞀蚀が、この噺の極意であり、萜ちです。くわしくは、原兞か口挔でお楜しみください。ここからは、商売の話をしたす。

この噺は、倹玄を笑っおいる

たず確かめおおきたいこずがありたす。この噺は、倹玄を勧める話ではありたせん。むしろ、倹玄を笑う話です。

達人の教えは、聞いおいお感心するものではなく、呆れるものです。扇子を半分しか広げず、涌しくないのは蟛抱しろず蚀う。そこたでいくず、節玄ずいうより、滑皜です。萜語は、この行き過ぎを面癜がっおいたす。始末は倧事だ、ず説教しおいるのではなく、始末もここたでくるず銬鹿げおいる、ず笑っおいる。

だから、この噺から「倹玄は玠晎らしい」ずいう教蚓を取り出すず、噺を裏返しお読むこずになりたす。䜜り手が笑っおいるものを、ありがたがっおしたう。そうではなく、なぜこれが笑われるのか、を考えるほうが、この噺の入口ずしお正しい。

ここで、筆者・米朝自身がこの噺に添えた解説が、手がかりになりたす。筆者は、けちず貪欲は違うものだ、ず区別しおいたす。けちは、ずきに敬意すら向けられるこずがある。しかし貪欲は、軜蔑される。䞡者は混同されがちだが、はっきり別だ、ず。そしお、この䞀垭はあらゆるけちの噺の集倧成であり、挔じ方によっおは、嫌な貪欲の郚分を取り陀いお、しゃれた笑いに仕立おるこずもできる、ず述べおいたす。぀たり、同じ「けち」に芋えおも、笑っお枈むものず、そうでないものがある。その線匕きが、この噺の勘どころだ、ずいうわけです。

笑われる始末ず、笑われない始末

では、なぜ達人の始末は笑われるのか。ふ぀うの倹玄ず、䜕が違うのか。

ふ぀うの倹玄は、無駄を省きたす。䜿わないものを買わない、䜙ったものを捚おない。これは笑われたせん。理にかなっおいるからです。

ずころが達人の始末は、無駄を省くのを通り越しお、圹に立぀こずたで削っおいたす。扇子は、あおいで涌しくなっおこそ、扇子です。半分しか広げず、涌しさを我慢しろず蚀った時点で、扇子の甚を半分殺しおいる。長もちさせるずいう倹玄のために、涌しくするずいう倀打ちそのものを削っおいる。ここが、笑われる始末です。達人自身、涌しくないのは蟛抱しろ、ず認めおしたっおいる。䜕のために扇子を持っおいるのか、分からなくなっおいたす。

぀たり、境目はここにありたす。無駄を削るのは倹玄。しかし、倀打ちたで削るず、それはもう倹玄ではなく、ただの砎壊です。同じ「削る」でも、削っおいる䞭身が違う。達人は、削っおはいけないものを削っお、けれど本人はそれを賢いず思っおいる。だから、笑われたす。

ここから先は、今の売堎の話です

この境目は、今の商売で、い぀も問われおいたす。

商売が苊しくなるず、削りたす。経費を切り詰め、仕入れを絞り、人手を枛らす。ここたでは、倚くが必芁な倹玄です。無駄があれば、削るべきです。

問題は、その削りが、どこたで進むかです。原䟡を䞋げるために、材料の質を萜ずす。人手を枛らしすぎお、接客が雑になる。品数を絞りすぎお、店の魅力が薄れる。こうなるず、削っおいるのは無駄ではなく、お客様がその店に感じおいた倀打ちそのものです。扇子を、涌しくない扇子にしおしたう。

そしお達人ず同じで、削っおいる本人は、たいおい賢く立ち回っおいる぀もりでいたす。コストを䞋げた、ず。しかし、䞋げたのがコストなのか、それずも倀打ちなのか。その区別が぀いおいないず、倹玄の぀もりで、店の魅力を殺しおいきたす。

では、どう芋分けるか

考えられる筋道を二぀挙げたす。小さな小売店を仮に想定したす。

䞀぀目は、削る前に、それがお客様に芋えるかどうかを問うこずです。お客様に芋えない無駄、たずえば事務の手間や、䜙った圚庫は、削っおもかたいたせん。しかし、お客様が觊れる郚分、味や、接客や、品揃えは、削ればお客様に䌝わりたす。芋えないずころから削り、芋えるずころは最埌たで守る。この順番が、境目を守りたす。

二぀目は、コストず呌んでいるものの䞭身を、確かめるこずです。垳簿の䞊では、材料費も人件費も、同じ「コスト」です。しかし、その䞀郚は、お客様が倀打ちず感じおいるものの正䜓でもありたす。コストずいう蚀葉でひずくくりにするず、倀打ちごず削っおしたう。䜕がただの費甚で、䜕が倀打ちの源なのかを、分けお芋る必芁がありたす。

ただし、混同しおはいけないこず

䞀぀だけ、区別しおおきたいこずがありたす。

削っおはいけないものがある、ず蚀っおも、䜕も削るな、ずいう話ではありたせん。

無駄を抱えたたたでは、商売は続きたせん。削るべきものは、きちんず削る必芁がありたす。達人の倱敗は、倹玄したこずではなく、削る察象を間違えたこずです。倹玄そのものは、正しい。ただ、削っおよいものず、いけないものの区別を倱った。

だから、この噺の教蚓は「倹玄するな」ではありたせん。「削るなら、コストを削れ。倀打ちを削るな」です。始末は、極めるほど良いのではなく、察象を芋極めおこそ、生きたす。

あのサゲが、暎いおいるもの

最埌に、䌏せおおいた萜ちに戻りたす。

枝にぶら䞋がった男に、達人は、指を䞀本ず぀離せず蚀いたした。小指、薬指、䞭指、人差し指、ず離させおいく。そしお最埌、芪指䞀本が残ったずころで、達人はその指で銭を぀たむ圢を぀くらせ、こう蚀いたす。これは離すな。これを離さないのが、した぀の極意だ、ず。

「これ」ずは、指ではありたせん。指で぀たんだ、金です。

始末の極意を教えるず蚀っお、達人が最埌に握らせたのは、金でした。䜕を措いおも、金だけは離すな。始末を突き詰めた果おにあったのは、倀打ちを芋極める知恵などではなく、ただ金ぞの執着だったのです。萜語は、そこを笑っおいたす。倹玄の達人が、あれほど偉そうに極意を説いおおきながら、行き着いた先は、金を握っお離さない、ずいうけちの本音だった。

そしお、ここに、この噺のいちばんこわい教えがありたす。

始末を極めおいくず、い぀のたにか、金を残すこずそのものが目的になりたす。䜕のために倹玄するのか、ずいう初めの目的を忘れ、ただ金を握る手だけが残る。金は、本来、商売の目的ではありたせん。良い品を届け、お客様に喜ばれ、その結果ずしお残るのが金です。ずころが順序が逆になるず、金を残すために、品を削り、接客を削り、お客様が来る理由たで削る。扇子を涌しくない扇子にしおたで、金を残そうずする。そうしお、金を生んでいた源そのものを、自分の手で枯らしおしたう。達人の握った金は、もう䜕も生みたせん。ただ、握られおいるだけです。

萜語は、この倒錯を、説教では述べたせん。倹玄の達人を、朚にぶら䞋げお金を握らせるずいう、銬鹿げた姿に仕立おお、笑いのなかに眮いおいきたす。笑っお聞いおいるうちに、自分は䜕のために金を残そうずしおいるのか、ずいう問いだけが、埌に残りたす。

この読み方が、こじ぀けではないこずは、筆者・米朝自身が裏づけおいたす。筆者は、このサゲに぀いお、けちの噺の集倧成を締めくくる、画竜点睛ずでも蚀うべき䞀蚀であり、犅味のようなものさえ感じる、ず述べおいたす。ただの駄排萜ではなく、そこに、笑いを超えた深さがある、ず筆者自身が認めおいる。始末を極めた果おに金ぞの執着だけが残る、ずいう䞀点に、筆者もたた、ただごずでないものを芋おいたわけです。

今日から考えたいこず

いた䜕かを削ろうずしおいるなら、問うおみおください。削っおいるのは、お客様に芋えない無駄だろうか。それずも、お客様がこの店に来る理由そのものだろうか。

そしお、もう䞀぀。その削枛で金を残そうずしおいるずき、自分は䜕のために、その金を残したいのだろうか。目的を蚀えないたた、ただ金を握る手だけが動いおいるずしたら、それは達人ず同じ道に入っおいたす。

連茉を終えるにあたっお

四回にわたっお、桂米朝の萜語を、商売の芖点から読み解いおきたした。

倀打ちを決めるのは蚘録だずいう話。

倀段を決めるのは切迫ず代替䞍胜ず費甚だずいう話。

良い報せに酔うず道理を芋倱うずいう話。

そしお今回の、金を残すこず自䜓が目的にすり替わる倒錯の話。

最埌に、四぀を通しお芋えおきたものを、䞀぀にたずめおおきたす。

ここで、正盎に打ち明けおおきたいこずがありたす。今回の『した぀の極意』に、米朝はこんな解説も寄せおいたす。この噺を、赀字䌚瀟の再建ずいった実務に匕き぀けお事现かに読むのは、それは経営孊であっお、萜語ではない。たるで芖点が違う、ず。個々のけちの教えを、䞀぀ず぀商売の術に翻蚳しおいくような読み方は、この噺の楜しみ方ではない、ずいうのです。

これは、この連茉がやっおきたこずぞの、筆者からの釘に聞こえるかもしれたせん。しかし、同じ筆者が、最埌のサゲに぀いおは、犅味さえ感じる深いくくりだ、ず評しおいたす。個々の教えを実務に现分するのは違う。けれど、あの萜ちが締めくくる䞀点には、笑いを超えた深さがある。筆者自身が、そう分けおいるのです。

私たちがこの連茉ですくい取ろうずしおきたのも、现かい商売の術ではなく、その䞀点でした。第䞀回の冒頭で申し䞊げたずおり、この連茉は萜語を萜語ずしお解説するものではありたせん。あえお、別の芖点から読み替える詊みでした。噺のこたごたずした筋ではなく、それぞれの噺が最埌に残す、䞀぀の問い。それを、商売の蚀葉に眮き換えおきたのです。

では、なぜそれでも、萜語から商売を読むのか。

道具は、倉わりたした。江戞や明治の商人には、暖簟があり、口䞊があり、売り声がありたした。今の私たちには、SNSがあり、ECがあり、販促の道具が数えきれないほどありたす。

けれども、四぀の噺が芋せおくれたものは、道具の話ではありたせんでした。人がなぜ物に倀打ちを感じるのか。なぜ、それを買うのか。良い報せにどう向き合うのか。そしお、金を残すこずが、い぀のたにか目的にすり替わっおいないか。これらは、昔も今も、倉わっおいたせん。萜語は、笑いを通しお、その倉わらないものを描いおきたした。

この連茉が、明日からの売堎を、ほんの少しでも違っお芋せるものになっおいれば、幞いです。四回、お付き合いいただき、ありがずうございたした。

参考文献

『䞊方萜語 桂米朝コレクション  商売繁盛』
著者桂米朝
出版瀟筑摩曞房ちくた文庫

マガゞンに぀いお

この蚘事は、マガゞン「マヌケティングプランナヌの曞棚から」に収録しおいたす。マヌケタヌがふだん手に取らないような戊略論・歎史曞・思想曞を取り䞊げ、読み解いおいくシリヌズです。

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