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䞊がる蚀葉に、酔っおいないか──『米揚げ笊』が教える良い報せの萜ずし穎【マヌケティングプランナヌの曞棚から―倏の特別䌁画】党4回 第3回

この倏の特別䌁画は、桂米朝の䞊方萜語を、珟代のマヌケティングず販促の芖点から読み解く連茉です。党四回、䞀回ごずに䞀垭を取り䞊げ、それぞれ独立しお読めたす。今回は第䞉回『米揚げ笊いかき』です。


この蚘事でわかるこず

人は、自分に郜合の良い蚀葉や、調子の良い報せに匕き寄せられたす。売る偎も同じです。しかし、良いこずばかりを喜んでいるず、商いの足元が危うくなる。この䞀垭から、良い報せに酔うこずの危うさず、郜合の悪い事実を芋る目の倧切さを読み解きたす。

前回のおさらい

第二回は『千䞡みかん』でした。䞀個のみかんが千䞡になる噺から、倀段を決めるのは切迫ず代替䞍胜ず費甚の䞉぀だ、ずいう話をしたした。

今回は、売り手が良い報せにどう向き合うか、ずいう話です。うたくいっおいるずきこそ、䜕が芋えなくなるのか。それを考えたす。

たず、笊いかきずは䜕か

本題に入る前に、笊の説明をしおおきたす。笊は、竹を现く割っお線んだ、ざるのこずです。今でいえば、氎を切ったり、豆や米をふるい分けたりする台所道具です。線み目の粗いものから现かいものたであり、甚途によっお䜿い分けたす。この噺では、その笊を売り歩く男が䞻人公です。

噺のあらすじ

口の達者な、よくしゃべる男がいたす。知り合いの甚兵衛が、倩満の源蔵町で笊屋を営む重兵衛のずころに、売り子を䞀人䞖話するこずになり、この男を送り出したす。

送り出すずき、甚兵衛は念を抌したす。おたえは口数が倚いのが玉に瑕だ、向こうぞ行っおも䜙蚈なこずは蚀うな、甚件は手玙に曞いおあるから、それを枡せばいい、ず。ずころがこの男、道を尋ねるだけでも、教わったずおりの文句をそっくり繰り返しおは、盞手を面食らわせる。ずにかく、しゃべらずにいられない性分です。

笊屋の重兵衛は、売り方のコツを男に授けたす。笊を二぀䞉぀重ねお、䞊から手で叩いおみせろ。「叩いおも぀ぶれない、䞈倫な品だ」ず思わせるためだ、ず。実はこれ、叩いお竹の粉を萜ずしおいるだけなのですが、買い手には䞈倫の蚌しに芋える。そういう駆け匕きです。そしお男は、笊を担いで売りに出たす。

やっおきたのは堂島。米盞堎の立぀町です。米の倀が䞊がるか䞋がるかに、倧勢が䞀喜䞀憂しおいる。匷気の者は倀が䞊がるこずを喜び、匱気の者は䞋がるこずを喜ぶ。

男が「米を揚げる、米揚げいかき」ず売り声を匵り䞊げたす。するず、匷気も匷気、倧倉な匷気の家の前でした。米が揚がるずいう蚀葉が、その家の旊那の耳に、この䞊なく瞁起の良い蚀葉ずしお響きたす。旊那は男を呌び入れ、笊を党郚買っおやろうず蚀いたす。

ここから、男の機転が冎えたす。旊那は「䞊がる」ずいう蚀葉が奜きだず芋お取るや、男は次々に䞊がる蚀葉を返したす。もらっお飛び䞊がるほど嬉しい、浮かび䞊がる、神棚に䞊げお拝み䞊げる。そのたびに旊那は䞊機嫌になり、金だ、自動車の新車だ、借家の登蚘だず、耒矎をどんどん䞊げおいきたす。

これを芋おいた番頭の藀兵衛が、旊那を諫めたす。盞堎ずいうものは、頂䞊が知れないものだ。倩井が分かっおしたえば、皆が儲かっおしたう。䞊がるだけずいうこずはなく、䞊がった埌には䞋がる。その䞋がったずころで、はじめお売り買いの手が合い、儲けが出る。䞊がる䞊がるず喜んでばかりではいけない、ず。しかし、䞊がる蚀葉に酔った旊那は、この道理に耳を貞したせん。

そしお噺は、笊売りのこんな䞀蚀で幕を閉じたす。叩いおも぀ぶれるような笊ずは、品物が違いたす、ず。なぜこの䞀蚀が萜ちになるのかは、埌で觊れたす。ここからは、商売の話をしたす。

旊那は、䞊がる蚀葉だけを喜んだ

この噺の旊那は、「䞊がる」ずいう蚀葉に、すっかり酔っおいたす。

米が揚がる、攟り䞊げる、浮かび䞊がる、拝み䞊げる。売り子が䞊がる蚀葉を䞊べるたびに、機嫌が良くなり、耒矎をはずむ。䞊がるずいう響きそのものが、旊那を気持ちよくさせおいたす。䞭身を確かめおいるわけではありたせん。ただ、良い響きに酔っおいるだけです。

そしお旊那は、䞋がるずいう蚀葉を嫌いたす。男が頭を䞋げれば、䞋がるのが気に入らないず䞍機嫌になる。䞊がるこずは䜕でも喜び、䞋がるこずは䜕でも拒む。良い報せだけを聞き、悪い報せを遠ざけおいる。

ここに、この噺の急所がありたす。旊那は、自分にずっお心地よい蚀葉だけを遞び取り、心地よくない事実から目を背けおいる。

番頭だけが、道理を芋おいた

その旊那に、番頭の藀兵衛が道理を説きたす。

盞堎は、頂䞊が知れない。もし倩井が分かっおしたえば、誰もが儲かっおしたう。そんな郜合の良い話はない。盞堎は䞊がった埌に䞋がり、その䞋がったずころで、はじめお売り買いの手が合っお、儲けが生たれる。だから、䞊がるこずばかりを喜んでいおはいけない。䞋がる局面こそ、商いが成り立぀堎所なのだ、ず。

これは、商いの本質を突いた蚀葉です。良いこずずくめの商売など、どこにもない。䞊がりっぱなしはありえず、䞋がる局面を織り蟌んでこそ、商いは回る。番頭は、旊那が浮かれお芋萜ずしおいるものを、正確に蚀い圓おおいたす。

ずころが、旊那は聞きたせん。䞊がる蚀葉に酔った耳には、䞋がるずいう道理は、ただ耳障りなだけです。番頭の正しさは、旊那には届かない。この噺のおかしみず、こわさは、ここにありたす。正しいこずを蚀う者はいた。しかし、心地よい蚀葉に酔った者は、それを聞かない。

ここから先は、今の売堎の話です

これは、昔の盞堎垫だけの話ではありたせん。今の商売で、日々起きおいるこずです。

売䞊が䌞びおいる。ある商品が圓たっおいる。良い数字が䞊ぶず、人は気持ちよくなりたす。その気持ちよさに酔うず、旊那ず同じこずが起きたす。䌞びおいる郚分ばかりを芋お、䌞びおいない郚分、売れ残っおいる棚、客の䞍満、離れおいったお客様ずいった、郜合の悪い事実から目が離れおいく。

良い報せは、攟っおおいおも耳に入りたす。誰もが喜んで䌝えおくれるからです。しかし悪い報せは、自分から取りに行かなければ入っおきたせん。しかも、良い報せに酔っおいるずきほど、悪い報せは耳障りに聞こえ、遠ざけたくなる。旊那が番頭の道理を聞かなかったのず、同じこずです。

そしお商売には、番頭がいるずは限りたせん。旊那に道理を説く藀兵衛の圹を、いったい誰が担うのか。うたくいっおいるずきに、埅っおください䞋がる局面もありたす、ず蚀っおくれる人が、あなたの呚りにいるでしょうか。

では、䜕をすべきか

考えられる筋道を䞉぀挙げたす。小さな小売店を仮に想定したす。

䞀぀目は、良い数字を芋たずきこそ、悪い数字を䞊べお芋るこずです。よく売れた商品の隣には、たいおい、たったく売れなかった商品がありたす。売れた喜びだけで終わらせず、同じ棚の売れ残りを、あえお䞀緒に芋る。良い報せず悪い報せを、い぀も察にしお芋る習慣が、旊那になるこずを防ぎたす。

二぀目は、耳障りなこずを蚀う人を、遠ざけないこずです。番頭の藀兵衛のように、うたくいっおいるずきに氎を差すこずを蚀う人は、煙たいものです。しかし、その人こそが、あなたの商売の足元を芋おいたす。郜合の悪いこずを蚀っおくれる盞手を、䞀人でも持っおおく。いなければ、悪い報せを自分から探しに行く仕組みを䜜る。

䞉぀目は、䞊がったものは䞋がる、ず初めから芋蟌んでおくこずです。番頭が蚀ったずおり、䞊がりっぱなしはありたせん。今売れおいるものも、い぀か売れなくなりたす。その日を織り蟌んでおけば、売䞊が䞋がったずき、慌おずに枈みたす。良い時に浮かれきらず、䞋がる日の備えをしおおく。これが、番頭の道理を珟代に掻かすずいうこずです。

ただし、混同しおはいけないこず

䞀぀だけ、区別しおおきたいこずがありたす。

悪い報せを芋るこずず、悲芳しお瞮こたるこずは、別のものです。

䞊がる蚀葉に酔うなず蚀っおも、䜕もかもを疑い、良いこずを玠盎に喜べなくなるのでは、商売はやせ现りたす。番頭は、儲けるなず蚀ったのではありたせん。䞊がるこずも喜び぀぀、䞋がる局面も芋おおけ、ず蚀ったのです。良い報せを喜ぶこずず、悪い報せから目を背けないこずは、䞡立したす。

倧事なのは、心地よい蚀葉だけを遞り奜みしないこずです。良いこずも悪いこずも、同じ目で芋る。旊那に欠けおいたのは、この䞀点でした。

あの萜ちが、刺しおいるもの

最埌に、あの萜ちに戻りたす。噺は、笊売りの「叩いおも぀ぶれるような笊ずは、品物が違いたす」ずいう䞀蚀で終わりたした。

思い出しおください。この笊売りは、笊を叩いお䞈倫に芋せる、ず教わっおいたした。叩いおも぀ぶれない、ず思わせる。しかし本圓は、叩いお竹の粉を萜ずしおいるだけで、䞈倫さを蚌明しおいるわけではありたせん。芋せかけを、䞈倫ず蚀い匵っおいる。

萜ちの䞀蚀は、この笊のこずを蚀っおいたす。そしお、この笊は、旊那の姿でもありたす。旊那は、䞊がる䞊がるず良い蚀葉で身を食り、機嫌よく振る舞っおいたした。しかし、番頭が説いた商いの道理には、耳を貞さない。䞭身の䌎わない、調子だけの姿です。叩いお粉を萜ずし、䞈倫を装う笊ず、良い蚀葉に酔っお道理を聞かない旊那は、同じものです。

萜語は、この芋立おを、説明せずに笊売りの䞀蚀に蚗しお終わりたす。良い響きで食った倖偎ず、䌎わない䞭身。そのずれを、笑いに倉えお眮いおいく。笑っお枈たせられるうちは、ただいい。同じこずを自分の商売でやっおいないか、ずいうのが、この噺の残す問いです。

今日から考えたいこず

今いちばん調子の良いものに぀いお、その裏で起きおいる郜合の悪いこずを、䞀぀でも挙げられるだろうか。

もし䞀぀も挙げられないなら、それは芋えおいないのではなく、良い報せに酔っお、芋ようずしおいないのかもしれたせん。旊那には番頭がいたした。あなたの商売には、道理を説く藀兵衛がいるでしょうか。

次回予告

次回は最終回、『した぀の極意』を取り䞊げたす。培底した倹玄を描いた噺です。ただし、この噺は倹玄を賞賛しおいるのではなく、むしろ笑っおいたす。最終回は、賢い倹玄ずやりすぎの境目を考え、さらに、倹玄を突き詰めた先で人が陥る萜ずし穎たで、この䞀垭から読み解きたす。そしお、連茉四回を締めくくりたす。

参考文献

『䞊方萜語 桂米朝コレクション  商売繁盛』
著者桂米朝
出版瀟筑摩曞房ちくた文庫

マガゞンに぀いお

この蚘事は、マガゞン「マヌケティングプランナヌの曞棚から」に収録しおいたす。マヌケタヌがふだん手に取らないような戊略論・歎史曞・思想曞を取り䞊げ、読み解いおいくシリヌズです。

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