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MVP ARCHIVE HISTORICAL GALLERY | Leonardo da Vinci : Codex Atlanticus / アトランティコ手稿

Codex Atlanticus / アトランティコ手稿


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アトランティコ手稿

飛行機械・歯車・武器・橋・水利施設・建築・数学・植物、そして、日常のメモ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ が生涯に残した膨大な紙片のうち、現在もっとも大規模なコレクションとして知られるものが、アトランティコ手稿( Codex Atlanticus )である。

そこに残されているのは、約40年にわたって ダ・ヴィンチ が見て、考え、計算し、描き続けた痕跡である。

一冊の本ではない

「 手稿 」という名称から、ダ・ヴィンチ 自身が一冊の巨大な書物を書き上げたようにも見える。
もともとは ダ・ヴィンチ がさまざまな時期に残した多数の紙片だった。
完成した図面もあれば、走り書きのようなメモもある。

それらが ダ・ヴィンチ の死後に収集・整理され、巨大な手稿集となった。
つまりこれは完成された著作というより、一人の人間が生涯に残した「 思考の断片 」を集積した Archive に近い。

「 Atlanticus 」の意味

アトランティコ という名称は、内容が大西洋に関係しているからではない。
16世紀末、彫刻家ポンペオ・レオーニが ダ・ヴィンチ の紙片を整理し、大型の台紙へ貼り付けて編纂した。

その大判サイズが、当時地図帳などに用いられた大型判 いわゆるアトラス判に近かったことから、Codex Atlanticus と呼ばれるようになった。
名称は内容ではなく、手稿集の物理的な大きさに由来する。

約40年間の思考

収録された紙片は、おおむね1478年頃から1519年まで、ダ・ヴィンチ の活動期間のほぼ全体に及ぶ。
若い時代の研究、ミラノでの活動、軍事技術、飛行への挑戦、水の研究、建築、晩年の考察。

異なる時期、異なる場所、異なる問題について考えた記録が混在している。
だからこそ、この手稿集を眺めると、ダ・ヴィンチ の関心がどれほど広い範囲を移動していたのか が見えてくる。

機械

アトランティコ手稿 には大量の機械設計が残されている。
歯車・軸・ベアリング・滑車・クランク・ばね・動力伝達機構。
巨大な機械だけではない、一つの歯車が別の歯車へどのように力を伝えるのか、摩擦をどう減らすのか、往復運動を回転運動へどう変えるのか。
複雑な装置を構成する小さな機械要素まで繰り返し描かれている。

飛行

人間が空を飛ぶための研究も現れる。
翼・羽ばたき機構・空気ねじ・飛行に必要な機械部品・鳥や空気の観察。
完成した航空機の設計書ではない。
そこには、正解を知った人間の記録ではなく、まだ存在しない技術へ近づこうとしている過程 がそのまま残っている。

軍事技術

ダ・ヴィンチ は軍事技術についても多くの構想を描いた。
大砲・多砲身兵器・要塞・攻城装置・防御設備・装甲戦闘車・巨大弩。

当時のイタリアでは都市国家間の戦争が繰り返され、軍事技術は政治や技術者の活動と密接につながっていた。
ダ・ヴィンチ 自身もミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァへ、自らの軍事技術者としての能力を売り込んでいる。
Gallery に並ぶ奇妙な兵器群も、この時代背景の中から生まれている。

水は、ダ・ヴィンチ が生涯にわたって観察した重要な対象だった。
川・運河・水流・渦・洪水・水を持ち上げる装置・流れを制御する設備。

水は都市や農業を支える資源である一方、制御できなければ破壊的な力にもなり、水を描きながら、その運動を理解しようとした。
その研究は土木、水利施設、機械だけでなく、後の人体研究における血流の観察にも接続していく。

建築と都市

建築物や都市に関する研究も含まれている。
建物・教会・要塞・橋・道路・都市施設。

ダ・ヴィンチ にとって建築は、単に美しい建物を設計する問題ではない。
都市という巨大な構造の中で、様々な機能がどのように配置されるべきか。
後に「 理想都市 」と呼ばれる構想へつながる思考も、この広大な研究領域の中に存在する。

文字と絵が分かれていない

ダ・ヴィンチの手稿 で特徴的なのが、文字と図の関係である。
文章を書いてから図を添えるのではない。
図の横に文章があり、文章の途中に機械が現れる。
矢印が伸び、数字が書かれる。
別のアイデアが余白へ入り込む。
描くことと書くことが、一つの思考行為になっている。

さらに有名なのが、右から左へ書かれた「 鏡文字 」である。
ダ・ヴィンチ は左利きだったと考えられており、多くの手稿でこの書字方法を使用した。
鏡に映すと通常の方向で読むことができる。

死後に残された巨大な Archive

1519年、ダ・ヴィンチ はフランスで死去した。
彼の手稿類は弟子 フランチェスコ・メルツィ へ引き継がれ、その後、散逸と再編を経験する。
アトランティコ手稿 となった紙片は、16世紀末にポンペオ・レオーニによって大規模に整理された。

現在はイタリア・ミラノの アンブロジアーナ図書館( Biblioteca Ambrosiana )に所蔵されている。
20世紀には従来の巨大な製本状態から解体・再整理され、現在では多数のフォリオとして保存されている。

Historical Gallery

アトランティコ手稿 で本当に残されているものは、答えではなく、考えていた途中の記録 であり、約40年間それが積み重なっている。

モナ・リザも、飛行機械も、解剖図も、装甲戦闘車も、それぞれ別世界から突然生まれたものではない。
その背後には、見て、描いて、考え、また見る、という膨大な反復がある。

アトランティコ手稿 は、レオナルド・ダ・ヴィンチ が残した作品の一つというより、彼の頭の中を現在まで残した巨大な思考の Archive と呼ぶ方が、その姿に近い。

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