MVP ARCHIVE HISTORICAL GALLERY | Leonardo da Vinci : Flying Machine | Ornithopter c.1480s–1490s / 飛行機械

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飛行機械
レオナルド・ダ・ヴィンチ が15世紀末に研究した、人間を空へ飛ばすための飛行機械。
巨大な翼、木製の骨格、滑車、ロープ、レバー、そして、その中央に人間が乗る、現代の航空機とはまったく異なる姿をしている。
ダ・ヴィンチ が最初に向き合ったのはエンジンでもプロペラでもない。
すでに空を飛んでいた存在 鳥だった。
鳥は、なぜ飛べるのか
ダ・ヴィンチ は鳥の飛翔を詳細に観察した。
翼の形・羽ばたき・翼の角度・風に対する姿勢・上昇と下降・旋回。
そして、空気の流れ。
彼にとって鳥は単なる生物ではなく、飛行という現象を実現している自然界の実物モデルでもあった。
鳥が飛べるのであれば、そこには何らかの仕組みがある。
その仕組みを理解し、人間が作る機械へ置き換えることができれば、人間も飛べるのではないか。
この問いから、数多くの飛行機械が描かれていった。
巨大な人工の翼
ダ・ヴィンチ が残した飛行機械には複数の形式が存在する。
その代表的なものが、鳥やコウモリを思わせる巨大な翼を持つ オーニソプター型の飛行機械 である。
木製の骨格によって翼の基本構造を作り、その上へ軽量な素材を張る。
関節部分には機械的な機構を設け、ロープ、滑車、レバーなどを介して翼を動かす。
操縦者は機体中央に位置し、腕だけではなく脚など身体の大きな筋肉も利用して翼を動かすことが想定された。
人間の筋力を機械によって増幅・伝達し、巨大な翼の運動へ変換する。
鳥の身体が行っていることを、木材と機械によって再構築しようとしたのである。
なぜコウモリのような翼なのか
ダ・ヴィンチ の飛行機械には、羽毛に覆われた鳥の翼というより、骨格の間に膜を張ったコウモリの翼を思わせるものがある。
機械として考えれば、その構造には合理性がある。
鳥の羽毛を人工的に完全再現するより、骨組みを作り、その間に軽い面を張る 方が製作しやすい。
翼の内部構造を機械的な骨格として考え、そこへ飛行に必要な面を形成。
自然の形をそのままコピーするのではなく、機械として作れる構造へ翻訳している。
人力で飛べたのか
最大の問題は、人間の筋力だった。
飛行するためには、機体と操縦者の重量を支えるだけの揚力を発生させなければならない。
そのためには巨大な翼を十分な速度と力で動かす必要がある。
しかし人間の筋肉が継続して発生できる出力は、鳥のような羽ばたき飛行を大型機械で実現するには不足している。
さらに機体そのものにも重量がある。
翼を大きくすれば揚力を得やすくなる一方で、構造はさらに重くなる。
ダ・ヴィンチ が構想したオーニソプターが実際に有人飛行へ成功したことを示す記録はない。
羽ばたくことから、滑空することへ
ダ・ヴィンチ の飛行研究は、単純な「 人工の鳥 」で終わらなかった。
鳥を観察する中で、羽ばたかずに風を利用して飛ぶ状態にも注目している。
翼を広げたまま空気の流れを利用する。
上昇気流を利用する。
身体や翼の姿勢によって方向を変える。
ここでは、飛行の中心が「 翼を動かすこと 」から「 空気を利用すること 」
へ変化していく。
そのため彼の手稿には、羽ばたき機だけでなく、後世のグライダーに近い考え方を持つ飛行装置も現れる。
鳥の飛翔に関する手稿
ダ・ヴィンチ の飛行研究は、機械の設計だけではない。
1500年代初頭には、現在 『 鳥の飛翔に関する手稿( Codex on the Flight of Birds )』として知られる研究を残している。
そこでは鳥の翼だけでなく、空気抵抗、重心、風、旋回、滑空、翼の運動、といった、飛行を成立させる現象そのものが観察されている。
「 空を飛ぶ機械を描く 」前に、飛行とは何なのかを理解しようとしていた、ここが ダ・ヴィンチ の飛行研究の重要な部分である。
空気ねじとの違い
同じ ダ・ヴィンチ の飛行構想でも、空気ねじとはアプローチが異なる。
飛行機械では、鳥の飛翔 → 翼 → 揚力 → 人間の飛行 という方向から考える。
空気ねじでは、回転運動 → 空気への作用 → 垂直方向の移動 という異なる発想を試している。
一つの方法へ固執せず、「 人間はどうすれば空へ行けるのか 」という同じ問いに対して、複数の機械原理を試していたことになる。
Historical Gallery
ダ・ヴィンチ の 飛行機械 は、実用航空機にはならなかった。
しかし、その図面に残されているのは単なる空想でもない。
そして、その仕組みを木材、布、ロープ、滑車、歯車によって再構成する。
自然界ですでに成立している現象を観察し、その原理を機械へ移す。
それは ダ・ヴィンチ の研究に繰り返し現れる方法だった。
人類が動力飛行に成功する約400年前。
まだ空を飛ぶための正解が存在しなかった時代に、レオナルド・ダ・ヴィンチ は鳥を見上げながら、「 なぜ飛べるのか 」という問いから、空への道を探し始めていた。

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