MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : The Jet Age Begins / ジェット時代の幕開け

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ジェット時代の幕開け
20世紀前半、航空機は驚異的な速度で進化した。
木と布で作られた複葉機から、流線形の金属製単葉機へ。エンジン出力は数十馬力から数千馬力へ達し、航空機はより速く、より高く、より遠くへ飛べるようになった。
しかし、性能を高め続けたことで、新しい壁も見え始める。
プロペラによる高速飛行の限界である。
航空機がさらに速く飛ぶためには、より強力なエンジンを作るだけでは足りなくなり、必要になったのは、推進方式そのものを変えることだった。
プロペラの限界を超えて
プロペラは、回転する翼によって空気を後方へ加速し、その反作用によって航空機を前進させる。
ライト兄弟 以来、この方式は航空機を飛ばす中心的な技術だった。
しかし航空機が高速化すると、プロペラ先端部の速度が音速へ近づき、圧縮性の影響や衝撃波によって効率低下、振動、騒音などの問題が大きくなる。
レシプロエンジンそのものも、さらに大きな出力を得るためには大型化・複雑化が必要になる。
「 もっと強いエンジンで、もっと速くプロペラを回す 」という延長だけでは、高速航空機の未来を切り開くことが難しくなっていた。
そこで登場したのが、Jet Engine ジェットエンジン だった。
Frank Whittle|フランク・ホイットル
ジェット推進の実用化に大きな役割を果たした一人が、イギリス空軍士官 Frank Whittle( フランク・ホイットル ) である。
ホイットル は若い頃から、高速・高高度飛行には従来とは異なる推進方式が必要になると考えていた。
1930年、ガスタービンを航空機の推進に利用する ジェットエンジン に関する特許を取得、空気を取り込み、圧縮し、燃料と混合して燃焼させ、そのエネルギーによってタービンを回しながら高速の排気を後方へ噴射する。
この連続的な流れによって推力を生み出す構想だった。
1937年には試作エンジンの地上運転に成功する。
まだ航空機を飛ばしてはいなかった。
しかし、新しい推進方式が現実の機械として動き始めた。
Hans von Ohain|ハンス・フォン・オハイン
同じ頃、ドイツでも別の研究者が ジェットエンジン の開発を進めていた。
Hans von Ohain( ハンス・フォン・オハイン )である。
ホイットル とは独立して研究を進めた オハイン は、航空機メーカー Heinkel の支援を受けてエンジンを開発。
そして1939年8月27日、オハイン系統の ジェットエンジン を搭載した実験機、Heinkel He 178 が初飛行に成功した。
一般に、ジェットエンジン だけを推進力として飛行した世界初の航空機とされる。
異なる場所で進められていた研究が、ほぼ同じ時代に同じ技術的方向へ到達し、航空機は、プロペラとは異なる推進の時代へ入り始めた。
Jet Engine|ジェットエンジン
ジェットエンジン の基本的な流れは明快である。
吸気 → 圧縮 → 燃焼 → 膨張 → 排気
前方から取り込んだ空気をコンプレッサーで圧縮する。
そこへ燃料を加えて燃焼させ、高温・高圧になったガスを後方へ流し、その一部でタービンを回転させてコンプレッサーを駆動する。
そして高速の排気を後方へ噴出することで推力を得る。
レシプロエンジン でプロペラを回す方式とは、航空機を前進させる仕組みが大きく異なっていた。
特に高速・高高度になるほど、ジェット推進は大きな可能性を持っていた。
Gloster E.28/39
イギリスでも ホイットル の研究は航空機へ結びつく。
1941年5月、ホイットル 系統のエンジンを搭載した実験機 Gloster E.28/39 が初飛行した。
小型の実験機だったが、その目的は明確だった。
ジェットエンジン で航空機を実際に飛ばし、その可能性を確認すること。
飛行成功によってイギリスの ジェット航空機開発 は次の段階へ進み、やがて実用ジェット戦闘機 Gloster Meteor へつながっていく。
Messerschmitt Me 262
そしてジェット機は実験機から実用機へ進む。
ドイツが開発した Messerschmitt Me 262 は、1944年から本格的に実戦へ投入された。
世界初の実用的な ジェット戦闘機 として知られる機体である。
最高速度は当時の多くのプロペラ戦闘機を大きく上回り、航空戦において「 速度 」という条件そのものを変える可能性を示した機体だった。
しかし、新技術ゆえのエンジン寿命や整備、材料、燃料、運用上の問題も抱えていた。
第二次世界大戦 の結果を変えるには至らなかったものの、Me 262が示した方向性は明確だった。
ジェット時代の始まり
第二次世界大戦 が終わると、各国はジェット航空機の開発を本格化させる。
エンジンは改良され、信頼性と出力が向上した。
やがてジェットエンジンは旅客機にも搭載される。
それまで何十時間も必要だった長距離移動が短縮され、大陸や大洋を越える航空路が日常的な交通網へ変わっていく。
航空機の高速化は、単に機械の性能を向上させただけではなかった。
世界の距離そのものを縮めた。
Legacy
ライト兄弟 の Wright Flyer から、わずか36年。
人類は12秒間の動力飛行から、ジェット推進による飛行へ到達した。
プロペラ航空機が「 空を移動する技術 」を社会へ広げたとすれば、ジェットエンジン はその移動速度と高度を一段上の領域へ押し上げた。
そしてジェット技術はその後も進化する。
ターボジェット、ターボファン、アフターバーナー、超音速航空機、現代の大型旅客機。
一方、人類が大気圏そのものを離れるためには、外部の空気を必要としないロケットエンジンという別の推進技術が必要になる。
空をより速く飛ぶ技術と、宇宙へ出る技術。
その二つが発展することで、人類の移動領域はさらに広がっていった。
プロペラの限界を越えるために始まった技術革新は、航空機の新しい時代 Jet Ageを切り開いた。

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