見出し画像

MVP ARCHIVE HISTORY | Flight : The Engine That Changed Flight / 航空エンジン - 翼だけでは飛べない

The Engine That Changed Flight / 航空エンジン - 翼だけでは飛べない

MVP ARCHIVE HISTORY > Flight > The Engine That Changed Flight / 航空エンジン - 翼だけでは飛べない

航空エンジン

翼だけでは飛べない

1903年、ライト兄弟 は Wright Flyer によって動力飛行を実現した。
しかし、航空機は翼だけで飛んでいるわけではない。
翼が揚力を生み出すためには、機体が空気の中を前進し続けなければならない。そのために必要なのが推進力である。
航空機が性能を高めていく歴史は、それを動かす エンジンの進化の歴史 でもあった。

航空機に必要なエンジン

航空用エンジンには、自動車や船舶とは異なる厳しい条件がある。
強力なエンジンでも、それ自体が重すぎれば飛行性能を損なう。
高い出力を発生しながら、可能な限り軽量でなければならない。
さらに飛行中に停止すれば、航空機は推進力を失う。
そのため、軽い・強い・信頼できる、という相反しやすい条件を同時に満たす必要があり、航空機の発展は、この「 出力と重量 」の戦いでもあった。

レシプロエンジン

プロペラ航空機時代の中心となったのが、レシプロエンジン( Reciprocating Engine )である。
シリンダー内部で燃料を燃焼させ、その圧力によってピストンを往復運動さ、その運動をクランクシャフトによって回転運動へ変換し、プロペラを回す、基本原理は自動車用の内燃機関と共通している。

しかし航空用では、重量を抑えながら高出力を発生させ、長時間安定して作動することが求められた。
航空機専用エンジンとしての改良が進み、やがて数百馬力、さらに1,000馬力を超える高性能エンジンが登場していく。

空冷と液冷

エンジンは燃料を燃焼させるため、大量の熱を発生する。
この熱をどう処理するかは、航空エンジンにとって重要な問題だった。
一つの方法が 空冷方式 である。

シリンダーに冷却フィンを設け、飛行によって生じる走行風を利用して直接熱を逃がし、冷却液やラジエーターなどを必要としないため、比較的構造が単純で軽量にできるという利点があった。

もう一つが 液冷方式 である。
エンジン内部を循環する冷却液によって熱を運び、ラジエーターから外部へ放出する。
冷却系統は複雑になるものの、温度を管理しやすく、機体前面を比較的細く設計できることから、高速機にも広く採用された。
それぞれに長所と短所があり、航空機の用途や設計思想によって使い分けられていった。

星型エンジン

空冷航空エンジンの代表する存在が、星型( Radial )エンジンだった。
クランクシャフトを中心として、複数のシリンダーを放射状に配置する。
前方から見ると星のような形をしていることから、この名で呼ばれる。

各シリンダーへ走行風を当てやすく、空冷方式との相性が良い。
高い出力と信頼性を実現できたことから、戦闘機、爆撃機、輸送機、旅客機など幅広い航空機に採用された。
特に1930年代から 第二次世界大戦 期にかけて、星型エンジンは航空機を象徴する機械の一つとなった。

高出力化への競争

航空機が大型化・高速化すると、エンジンにはさらに大きな出力が要求されたが、単純にエンジンを大型化すればよいわけではない。
重量も増えてしまうからである。

そこで航空エンジンには、当時の先端技術が次々と投入された。
軽量合金、高精度な加工技術、燃焼効率の改善、高性能燃料、そして過給機( Supercharger )

高度が上がると空気は薄くなり、エンジンへ取り込める酸素が減少する。
過給機は空気を圧縮してエンジンへ送り込み、高高度でも出力低下を抑える技術であり、航空機の高高度性能は、翼だけではなくエンジン技術によっても大きく左右されていたのである。

エンジンが航空機を変えた

エンジン出力の向上がもたらしたものは、速度だけではなかった。
エンジンが強くなることで機体設計の自由度そのものが広がった。
小型の偵察機から戦闘機へ、大型爆撃機へ、輸送機へ。
そして多数の乗客を乗せ、大陸や海洋を越える旅客機へ。
エンジンの進化は、航空機に新しい役割を与え続けた。

プロペラが直面した壁

レシプロエンジンは改良を重ね、非常に高い性能へ到達した。
しかし航空機がさらに高速化すると、新しい問題が現れる。
プロペラの先端速度が音速に近づくと、圧縮性の影響や衝撃波によって効率が低下し、騒音や振動も大きくなる。

エンジンをさらに強力にしても、その出力をプロペラによって効率よく推進力へ変換することが難しくなっていく。
航空機は、「 もっと強力なレシプロエンジンを作る 」だけでは越えにくい領域へ近づいていた。

Legacy

ライト兄弟 が動力飛行を実現したあと、航空機の可能性を大きく広げたものの一つがエンジンだった。
数十馬力の小さなエンジンから、数千馬力級の航空エンジンへ。
その進化によって航空機は、速く、高く、遠くへ飛び、多くの人と物資を運べるようになった。

しかし技術が成熟すると、その延長線上には限界も見えてくる。
人類がさらに高速の飛行を求めたとき、必要になったのは レシプロエンジン をさらに巨大化することではなかった。

推進の仕組みそのものを変えることだった。
プロペラによって空気を後方へ押す時代から、燃焼したガスを高速で噴射して推力を得る時代へ。

航空史は、ここから次の大きな転換点を迎える。
Jet Engine ジェットエンジンの時代である。

MVP ARCHIVE HISTORY > Flight > The Engine That Changed Flight / 航空エンジン - 翼だけでは飛べない


いいなと思ったら応援しよう!