地元・石川県の発展に貢献したい~上級エリアコーディネーター・山下 貴夫さん(北陸RDXメンバーインタビュー)
銀行融資の現場で磨いた交渉力と、行政マンとしての調整力。その二つを兼ね備えた「橋渡しのプロ」が、石川のイノベーションを加速させています。
「雑談の中にこそ、本当の課題がある」と語り、オンライン全盛の時代にあえて対面での繋がりを大切にする、公益財団法人石川県産業創出機構(ISICO)の山下さん。
地域の枠を超えたネットワークを駆使し、自動車リサイクルの先進事例を国の大型事業採択へと導いた、その泥臭くも確実な支援の手法を紐解きます。
上級エリアコーディネーターとして複数案件を担当
北陸RDXで山下さんは、上級エリアコーディネーターとして、複数のプロジェクトに関わっています。
「上級エリアコーディネーターの役割は、各推進計画を主導し、地域の大学の研究シーズを企業のイノベーションや新事業に結びつけていくことです。産学官金をつなぐ立場として、その橋渡しを担うのが自分のミッションだと理解しています」
山下さんが所属する公益財団法人石川県産業創出機構(ISICO)は、県の公的支援機関として企業支援を幅広く担っています。各種補助事業の運営やイノベーション関連セミナーの開催、中小企業への専門家紹介などを通じ、地域産業の成長を幅広く支えています。その中でも山下さんが在籍する「イノベーション支援課」は、特に大学や研究機関と企業のオープンイノベーションを促進することを主なミッションとしています。
「ISICOは石川県内の企業支援を担う公的機関ですが、県内だけのリソースでは十分に対応できない場面もあります。そこで北陸RDXの枠組みを通じて多様なリソースを活用し、不足を補うよう努めています」
こうした取り組みによって、多様なプロジェクトが動いており、山下さんはその調整役として、日々奔走しています。
北陸RDXに携わることになったきっかけ
山下さんは石川県庁の職員で、現在は出向の形でISICOに在籍しており、北陸RDXの上級エリアコーディネーターも務めています。

キャリアの出発点は銀行勤務でした。全国各地を転勤する中で企業融資や営業の現場を担当し、経営者と向き合うなかで交渉力や調整力を磨いた経験は、現在の役割にも大きく活かされているといいます。
その後、家庭の事情から地元石川に戻り、県庁職員へ転職。
「子どもが生まれるタイミングで、地元で子育てしたいと考えました。銀行は転勤が多く、次の勤務地が遠隔地になりそうだったので、地元に戻る決意をしたのです」
石川県庁ではカーボンニュートラル推進課や交通政策課などに配属され、幅広い分野に携わりました。そして2024年、県庁からISICOに派遣されると同時に、前任者から北陸RDXの上級エリアコーディネーターの任務を引き継ぎました。
「私はISICOに来てまだ2年目ですが、前任者は5年間この分野に携わっていました。最初は正直、戸惑いもありましたし、他の上級エリアコーディネーターと比べても、自分は経験不足だと感じています」
経験不足を自覚しつつも、持ち前のコミュニケーション力に加え、ISICOや北陸RDXが持つ多様なリソースを積極的に活用しながら、日々、役割を着実に果たそうとしています。
印象に残るプロジェクト ― 会宝産業の挑戦
北陸RDXでの活動を振り返るなかで、山下さんが特に印象に残っていると語るのが、会宝産業株式会社の支援プロジェクトです。

会宝産業は、自動車リサイクル分野で知られる石川県の企業。近年はEV(電気自動車)の普及を見据え、使用済みバッテリーのリサイクルや再利用に取り組んでおり、北陸RDXでもその先進的なテーマを伴走支援しました。
「このプロジェクトでは、初期段階から北陸RDXのネットワークを通じてリサイクル分野の専門家を紹介していただきました。国内外の動向を踏まえた深い支援を受けられたのは、ISICOだけでは難しかった部分です。専門的な視点で具体的な方向性を示してもらえたのは非常にありがたかったですね」
その結果、会宝産業の取り組みは、国のGo-Techという補助事業に採択されるという大きな成果へとつながりました。単に地域支援にとどまらず、全国規模の事業展開を後押しできた点で、山下さんにとっても強く印象に残る経験となったといいます。
「県内の枠だけにとどまらず、北陸RDXのネットワークを通じて事業が大きく広がっていく。その姿を間近で見られたことが、自分の役割の意義を再認識するきっかけになりました」
この事例は、ISICOの支援機能と北陸RDXの外部ネットワークが相互に作用することで、地域企業が全国・海外へと飛躍する可能性を示す象徴的なケースでもあります。山下さんにとっても、北陸RDXの取り組みが成果につながった実感を得られた出来事でもありました。
人とのつながりを大切に
北陸RDXの活動を進めるうえで、山下さんが特に意識しているのは「人とのつながりを直接築くこと」です。
「オンラインのセミナーでは印象が薄くなりがちですが、実際に顔を合わせて話すと本音や課題が出てきます。雑談の中から『実はこんな困りごとがあるんです』と聞けることも多い。そういう瞬間を逃さないことが大切だと感じています」
そのため、ISICOや北陸RDXが主催するイベントだけでなく、大学や他団体が企画するシンポジウムや研究会にも積極的に参加してきました。現場に足を運ぶことでネットワークが広がり、支援につながる案件が生まれるケースも少なくありません。
こうした“リアルな場”での接点は、企業や研究者からの信頼関係を築くうえでも不可欠です。メールやオンライン会議ではなかなか表に出てこない課題や思いを聞き出し、次のプロジェクトにつなげる。その積み重ねこそがエリアコーディネーターの役割を支えているといえます。
「情報収集と発信は、エリアコーディネーターの基本だと思っています。自分一人で成果を出すのは難しいからこそ、人との関係を広げ、そこから次の案件を育てていきたいですね」
人とのつながりを大切にする姿勢は、自身の強みを発揮できる重要な手段でもあるようです。経験が足りない部分を補うだけでなく、関係性の中から新しいチャンスを見つけ出す。その一歩一歩が、北陸RDXの成果につながっています。
今後の展望 ― 石川県の発展に尽力したい
県職員としてISICOに派遣されている山下さんにとって、今後も長期的に北陸RDXの業務を担当し続ける可能性は高くありません。それでも、この活動期間で得た経験や人脈は、確実に今後のキャリアに活きていくと感じています。

「私の立場上、残念ながら、北陸RDXにずっと関わる可能性は低いと思います。ただ、ここで築いたネットワークはこれからも必ず役立ちます」
もともと「新しいことに挑戦するのが好き」と語る山下さん。銀行時代から県庁での幅広い経験を経て、今回の北陸RDXでの取り組みもまた、新しい領域でのチャレンジでした。経験不足に戸惑いながらも、外部のリソースを積極的に活用し、成果を積み重ねてきたことは今後の大きな財産となっています。
「ここで得られたつながりや経験を活かしながら、さらに地元経済の発展に貢献していきたいと思っています」
山下さんのキャリアの軸にあるのは、「石川のために貢献したい」という思いです。北陸RDXで培ったネットワークや知見は、たとえ立場が変わっても活かすことができ、これからも地域の成長を支える力になると考えています。
そして北陸RDXにとっても、山下さんのようにプログラムを通じて経験とネットワークを蓄積した人材が地域に増えていくことは、将来に向けた大きな財産です。関わった人々がその後も各所で活躍を続けることで、地域に持続的な価値をもたらす――それも北陸RDXの目指す未来の姿のひとつです。
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※本インタビューは2025年10月に実施しました。肩書や所属はインタビュー実施当時のものです。
※記事/構成:北陸RDX note編集チーム
