#13|自分のことを優先してもよかった
前回は、給料の未払いに対する従業員それぞれの考え方を書きました。
それとは別に、会社に見切りをつける時期も、辞め方も人それぞれでした。
残る人や仕事を気にして動けない人もいれば、何も言わずに自分のタイミングで辞める人もいました。
退職金が出るうちに辞めた後輩
同じ部署で働いていた後輩は、
「ほかの場所で、やりたいことがある」
と言って会社を辞めました。
あらそう、がんばって! と、私はそのまま受け取って送り出しました。
でも、しばらくして偶然会った時に、
「実は、家族から会社の状況を聞いていた」
と話してくれました。
その家族は、会社の外から状況を知ることができる立場にいたそうです。
「退職金が出るうちに辞めようと思った」
とも言っていました。
早い段階で情報を得て、会社に見切りをつけていたのでした。
水面下で次へ動いていた人たち
みんなから慕われていた営業の人もいました。
その人は、会社の状況が悪くなってからも、それまでと変わらない様子で働いていました。
そして、周りがまだ状況をつかみきれていないなかで突然、同業他社へ移りました。
営業が同業他社へ移るということは、まぁ、そういうことです。
みんなびっくりしてました。
誰にも言わずに、前から足場を固めていたのだと思います。
ほかにも、周りに何も話さずに次の準備をしていた人はいました。
突然の退職に驚いたり、引き継ぎのないまま残された仕事に困ったりすることもありました。
話せば動きづらくなることもある。
まだ決まっていないことを、知られたくない。
そもそも、周りに話す必要がない。
何も話さずに準備を進めることが、その人たちにとっては、いちばん動きやすい方法だったのだと思います。
でも、残された側からすれば正直、
「そりゃないぜ」
と思いました。
会社の心配をしている場合ではなかった
私は動けなかった側でした。
辞めることへの不安もあったけれど、目の前の仕事や、残していく人たちのことも気になるといえば気になりました。
誰かが辞めると聞くたび、最初に考えたのは仕事の流れでした。
「あの人が辞めたら、この仕事は誰がやるんだろう」
「どうやって穴を埋めよう」とか。
そんなことを考えるのは会社の仕事だと、わかってはいました。
それでも仕事は相変わらずあり、新しい人を迎えられるような状況でもない。
目の前の仕事を滞らせないだけで、ぎりぎりでした。
こんな状況で自分まで抜けたら残る人や仕事はどうなるんだろう。
そうやって、自分のことより会社や仕事のことを先に考えてました。
こう書くと、良くいえば責任感があるっぽい。
でも #07|辞めることも、残ることも怖かった 気持ちもあるので、純粋な責任感ばかりでもないけれど。
どちらにせよ、
未払いがさらに増えたらどうするのか。
退職金まで払われなかったら、どう生活を立て直すのか。
そしてもし、会社が立ち直らないのなら、自分はいつ動くのか。
考えるべきだったのは、会社のこれからではなく、自分のこれからだったと思うのです。
自分を優先してもよかった
辞め方はともかく、先に辞めた人たちは自分の人生を優先していました。
誰に話すのか。
いつ辞めるのか。
どんな方法で動くのか。
それを自分で決めて、会社を離れていきました。
はっきり言えば、自分の生活がかかっているのだから、残る人に遠慮してはいられない。
自分が辞めたいように辞める。
当時の私は、そこまで割り切ることができませんでした。
でも、そのくらいの気合で、自分を優先してもよかったのだと思います。
動けない理由はいくつもありました。
でも、だからといって、自分の人生を後回しにしてよかったわけではない。
私は会社の心配をしているうちに、自分が動く時期を逃しました。
そのことが、今でも後悔として残っています。
次回は、会社で何が起きているのかわからないまま、不安だけが増えていた頃の話です。
そんななか、外部取締役の人たちが会社に来るようになりました。
#12|給料がおかしくなっても、従業員は一つになれなかった
#13|自分のことを優先してもよかった
#14|会社の実態が、少しずつ見えてきた
