見出し画像

【小説】名もなき空の若者たち【第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち】7.高梨教官の静けさ

作品紹介  前節  次節

第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち

第7節 高梨教官の静けさ

講堂の薄い灯りの下で、
高梨勇作は黒縁の眼鏡を、そっとかけた。
飛行場では決して見せない、“教官の顔”だった。

「九九式艦爆は素直な機体だ。
 だが……急降下だけは、容赦しない」

高梨の声は静かだった。
その静けさが、逆に重かった。

「高度六百で投弾、四百で引き起こす。
 遅れたら……海に刺さる」

訓練生たちは息を呑んだ。
高梨の言葉は、
脅しではなく、
ただの事実として、胸に落ちていった。

高梨は、眼鏡の奥で、
六人の表情をひとりずつ確かめるように見つめた。
その目は優しかった。
だが、どこか遠くを見ているようでもあった。

つづく



いいなと思ったら応援しよう!

夢見工房GEN よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!