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【小説】名もなき空の若者たち【第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち】6.黒田教官の声

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第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち

第6節 黒田教官の声

「角度が甘い!
 艦爆の急降下は五十五度が基本だ。
 四十五度なんざ散歩だ……やり直せ!」

黒田一飛曹の声は、冬の空気を鋭く裂いた。
その声には怒りだけではなく、
どこか焦りにも似た影が混じっていた。

「黒田教官、今日も絶好調だな……」

石田が小声でつぶやいた。
その声は、本来なら笑いを誘うはずだった。

「聞こえてるぞ、石田!」

「すみません!」

石田は慌てて背筋を伸ばした。
だが、黒田の目は、まったく笑っていなかった。

その目には、
過去に何かを失った者だけが持つ、
鋭い影が、静かに宿っていた。

つづく



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