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【小説】名もなき空の若者たち【第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち】5.基礎訓練

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第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち

第5節 基礎訓練

「高度三千、速度一定……よし」

大庭が呟く。
その声は、計器の針を確かめるたびに、
少しずつ落ち着きを増していった。

「高度三千……変わらず」

川畑が読み上げる。
読み上げる声は、まだ固かった。
だが、その固さは、
自分の役割を必死に掴もうとする意志の固さでもあった。

九九式艦爆の後席は狭い。
冬の冷気は風防の隙間から入り込み、
指先をじわりと奪っていった。

「……寒いな」

「前も……寒いよ」

二人の声は、
互いの緊張を、ほんのわずかに和らげるように震えていた。

その震えは、
空の冷たさだけが原因ではなかった。

つづく



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