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ysgenfu
【小説】名もなき空の若者たち【第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち】2.ペアが決まる
第1章 佐伯の冬 ― 九九式艦爆訓練生たち
第2節 ペアが決まる
「大庭、後席は川畑だ」
山名飛曹長の声は、
紙に書かれた名前を読み上げるような平坦さだった。
そこに感情はほとんど乗っていない。
だが、その一言が、これからの空の形を決めてしまう。
大庭は一歩前に出て、川畑の方を見た。
川畑は、少しだけ戸惑ったように目を瞬かせ、
それから、ぎこちなく笑った。
「よろしく頼む」
大庭が手を差し出す。
川畑は、その手を両手で包むようにして握った。
「こちらこそ……前は任せます」
その言葉には、
自分の命を預ける相手に対する、
まだ形になりきらない信頼と不安が混ざっていた。
「石田、後ろは浜田」
「はい」
石田は、いつもの調子で軽く返事をしたが、
その目は浜田の表情を探るように動いていた。
「よろしく」
「……よろしくお願いします」
浜田の声は小さかったが、
その小ささは、弱さというより慎重さに近かった。
「村瀬、新城」
「はい」
村瀬俊太は、まっすぐに新城の方を見た。
新城は一瞬だけ視線をそらし、
それから、少し照れたように笑った。
「一緒に、落ちないようにしましょう」
「……ああ」
九九式艦爆は二人で飛ぶ。
前席の操縦と、後席の偵察・高度読み上げ。
どちらが欠けても急降下は成立しない。
六人は、まだその重さを知らなかった。
ただ、自分の名前と誰かの名前が、
ひとつの組として呼ばれたという事実だけが、
胸のどこかに静かに沈んでいった。
遠くで、海鳥の鳴き声がした。
冬の佐伯は、相変わらず音の少ない場所だった。
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