錦織圭:全米予選1回戦を見て思ったこと
速いテンポと、勝負どころでの「耐える」選択
久しぶりに錦織圭選手の試合を、リアルタイムで最初から最後まで見ました。
今回は全米オープン予選1回戦。
僕自身、セットが終わるたびにその時点で感じたことを録音しながら試合を見ていたので、今回はその内容を整理しつつ、試合について考えてみたいと思います。
結果だけではなく、
「なぜ第1セットはあれだけ一方的だったのか」
「なぜ第2セットでは流れが変わったのか」
「第3セットの勝負どころで錦織は何をしていたのか」
この辺りが個人的にはかなり面白い試合でした。
第1セット――オフナーから「構える時間」を奪った錦織
第1セットを見ていて、まず感じたのが、
『錦織のテンポがとにかく速い』ということでした。
以前書いた錦織のプレースタイルの記事でも触れましたが、錦織はライジングを使って相手の時間を奪うのが非常に上手い選手です。
ただ、今回改めて見ていて思ったのは、単純に何でもライジングで早く打っているわけではないということです。
難しいボールが来れば、無理に早いタイミングでは打たない。
少しテンポを落とします。
ただし、その時でも相手を動かす。
これが嫌なんですよね。
テニスで動きながら打つというのは、当然ですが止まって打つより難しいです。
飛んでくるボールの変化を見極めながら、その位置まで自分も移動しないといけない。
つまり、
「ボールを見る」+「そこまで移動する」
という二つの作業が必要になります。
一方で、錦織がライジングで入れるボールでは一気に早く打つ。
すると今度はオフナー選手に構える時間がなくなる。
これが第1セットではかなり効いていたように見えました。
さらに途中ではスライスを使って、急に遅いテンポを混ぜる場面もありました。
ずっと時間を奪われていたところに、突然時間ができる。これはこれで相手からすると合わせづらい。
オフナーとしては、錦織のラリーにそのまま付き合っていても苦しい。
体格やパワーではオフナーの方が強みがありますから、強打で押して甘いボールを引き出したい。
実際、それで取ったポイントもありました。
ただ、第1セット全体としては、
『この速い展開には付き合いたくない。でもどう崩せばいいのか分からない』
という状態に見えました。
さらに錦織のリターンもかなり合っていました。
サーブを入れても鋭く返されて、3球目で簡単に攻撃できない。
自分のサービスゲームなのにリズムを作れない。
そうこうしているうちに、錦織のテンポに巻き込まれてエラーも出る。
第1セットは、錦織がオフナーに考える時間をほとんど与えなかったセットだったと思います。
第2セット――オフナーが「時間」を作り始める
ところが第2セットになると、流れが変わります。
一番大きかったのは、オフナーのファーストサーブが入り始めたことだと思います。
ファーストが入れば、当然錦織も簡単にはリターンできません。
第1セットは錦織のリターンがかなり合っていましたが、あれがむしろ出来すぎだったとも言えるかもしれません。
そしてもう一つ。
僕には、オフナーが少し後ろへ下がってプレーするようになったように見えました。
錦織のライジングに対して、ベースライン付近で同じテンポのまま付き合えば時間を奪われます。
だったら、自分から後ろへ下がって時間を作る。
当然、後ろへ行けば守備範囲は変わりますし別のデメリットもあります。
ただ、第1セットよりはボールを見る時間ができる。
すると、ただ返すだけではなく、多少コースを狙って返せるようになります。
そうなると錦織にも、第1セットほど簡単にライジングできるボールが来なくなる。
それでも同じように早く攻撃しようとすれば、当然エラーが増えます。
実際、第2セットでは錦織のミスがかなり増えました。
ここで興味深いのが、
『じゃあ錦織も普通のテンポでラリーすればいいじゃん』とも言い切れないところです。
錦織が普通のテンポで打てば、今度はオフナーにも構える時間ができます。
体格とパワーで上回るオフナーがしっかり構えて打てると、一発で押し込まれる場面も出てきました。
つまり錦織としては、
『早く打てばミスのリスクがある。
遅くすれば相手に時間を与えてしまう』
そのバランスを取らないといけない。
第2セットは、オフナーが錦織の速い展開に対して、一つの対応策を見つけたセットだったと思います。
第3セット――勝負どころで、あえて「錦織らしくない」選択をする
そして一番面白かったのが第3セットでした。
錦織は先にブレイクします。
ただ、早い段階でブレイクすると、その後が長いんですよね。
そこから何度も自分のサービスゲームをキープしないといけない。
しかも今回の錦織は、サーブに救われた場面もありましたが、逆にサーブから苦しい状況を作ってしまう場面もありました。
言ってしまえば、
『サーブに苦しみながら、サーブにも救われた試合』だったと思います。
その中で特に印象に残ったのが、ブレイクポイントをしのいだ場面です。
錦織は本来、早いタイミングで打ったり、角度を変えたり、テンポを変えたりすることが得意な選手です。
でも大事なポイントでは、僕にはむしろそれをあえて少しやめたように見えました。
無理に角度をつけない。
無理に一発で展開を変えない。
真ん中付近を使いながら、相手の強打をしっかり返す。自分の中でミスの出にくい範囲でプレーする。
ある意味、耐えるテニスです。
これは結構大事なことだと思いました。
『得意なプレーで勝てない時、どうするのか』
自分の得意なスタイルで勝つ。
もちろん、それが一番いいです。
フォアハンドが強いならフォアで攻める。
ライジングが得意なら早いタイミングで奪う。
でも試合では、毎回それが完璧に機能するわけではありません。
そもそも、自分の得意な分野にも上には上がいます。
そして、その日の調子によって自分の得意なプレーが上手くできないこともある。
そんな時に、
「自分らしく勝たなきゃいけない」
と無理をする必要はないんですよね。
今回の錦織のように、勝負どころではあえてリスクを下げる。
相手にもう一本打たせる。
相手のミスを待つ。
必要ならカウンターに回る。
それも試合に勝つための立派な選択だと思います。
今回の試合を見ながら、ここは一般プレーヤーにとっても結構参考になる部分なんじゃないかなと思いました。
良くも悪くも「錦織劇場」
Thumbs up for Kei 👍
— US Open Tennis (@usopen) August 25, 2026
2014 finalist Kei Nishikori is through to qualifying R2! pic.twitter.com/iNpXn9EiB6
試合全体をまとめると、本人も試合後に話していたように、良いところと悪いところが両方出た試合だったと思います。
速いテンポ。
鋭いリターン。
安定のバックハンド。
卓越したライジング。
そしてエラー。
サーブに苦しむ場面。
勝負どころで粘る場面。
フルセットになったことまで含めて、
『ああ、錦織の試合を見てるな』
という感覚がありました。
久しぶりにリアルタイムで最初から最後まで見ましたが、やっぱり錦織の試合は面白いです。
単純にショットがすごいというだけではなく、ゲーム展開そのものに変化が多い。
次に何をするのかを見ていて飽きない。
改めて、そういう選手なんだなと思いました。
そして今回の試合から、
『自分の得意なプレーができない時、試合ではどうするべきなのか?』というテーマも見えてきました。
これはまた別の記事で、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
では、この辺りで。
今後も、テニスの技術・戦術やATP選手について僕なりに考察していきます。面白かったらスキ・フォローしてもらえると嬉しいです。
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錦織選手のプレースタイルについて考察した記事もありますので、興味ある方はこちらから↓
先日マスターズ二大会連続で活躍したナカシマ選手を考察した記事もあります。興味ある方はこちらから↓
