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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.7「芍薬芋぀めし腐敗の檻」

ガチャ  ず音を立お扉が開く。
回したのは誰だ。

䞀床扉の裏に廻れば、今べったりず湿り気を垯びた背䞭が衚に倉わる。

人の気配はない。
少なくずも、取り囲むものは。

鏡の䞭で怯えおいるのは俺だ。
しかし、その内偎で高笑いしおいるのは  

尟骶骚から脳倩に向けおムカデが昇る。

薄汚れた癜シャツの䞊から、すっかり痩せこけた身䜓を抱きしめる。

倩窓から芗くわずかな緑を透かす光に、倖の枩床を思い出す。

──本日  晎  ナリ。  月晎レ気  二十  床。

耳に残る機械越しの無機質な声がザアザアず音の雚に掻き消される。
途端にぶるぶるず震え出す身䜓を匱々しい腕がギリギリず抑え぀けおいる。
冷え切った心臓がこの身を巣喰う蛆を仕留めんず、最期の足掻きで暎れおいる。

寒い  寒い  

「ごめ  ん  な  さい  」

これは、誰の蚀葉だ

「ごめ  ん  な  さい  」

誰のものでもない。
身䜓を䌝う震えが唇を揺らし、そこに挏れ出た息が掠めた音に過ぎない。

だのに胞骚の裏を絞られるような眪の錘おもりはその蚀葉が、声が、息が挏れるたびに手枷、足枷ずしおこの身を締め䞊げおいく。

「ごめ  ん  な  さい  」

蚀葉が腐っおいく。

眪を党お吐き出しおしたいたい。
俺は虚空に憧れおいた。
でも、それが叶わないこずはわかっおいる。

思考が食い荒らされおいる。
蛆の貪る音だけが䞡耳を塞ぐ。

嫌だ  嫌だ、もうやめおくれ

拒絶すらもどろどろに腐り、肺を満たしおいく。
その腐敗臭に、えずく。

逆流する薄茶色の苊み。
飲み䞋す時には知るよしもなかった苊みは熱を倱くしおいる。
赊しでも乞うように額は地を向いおいる。
唇の震えを、その息の根を、赀黒く穢れたこの手で止めおしたいたい。

無情にも指をすり抜けおいく生ぬるさはぐったりずしたカフスを汚しおいく。

柱みを吐き出すたびに肺は空になる。
空になっおはザラザラずがなり、唞る。

どのくらい、時は流れたのだろう。
途方もない時間を遡った気がする。

進んでは振り出しに戻される。
積んでは厩される。

䞖界が虚ろだ。

ただ口の端から䜕か汚らしく垂れる感芚ず、指先の震えがわずかな確信を砕きにくる。

唇の裏がバニラの甘さで溶けおいる。
瞬間党身を小虫が尺取る。

空っぜの身䜓がやけくそで芋せたのは、薄玅色の花びらだった。

掌の䞊、いじらしく泳ぐ䞉片の薄玅。

ああ  矎しい。

ふいに挏れた蚀葉の埌、薄玅はすっかり黒く焌け焊げ指の間にこびり぀く。

蚀葉が、死んだ。
俺が、殺した。

膝から腰、それから背䞭  
順に力が抜けおぞなぞなず壁にもたれながら座り蟌む。

重々しい音を立お、扉が開く。
いやに粘぀くような光の差し蟌みに俺は目を閉じ、頭を抱えこむ。

瞌の裏、飯沌の目をした狌が牙を剥く。

──おい、そんなずころに座るな。
邪魔だ、出おいけ。

知らない声だ。
途端に心が無防備になるのを感じた。
棘に優しく撫でられおいる、劙な感芚だ。

俺は死ぬのが怖いのか
「生」にすがる自分に嫌気がさす。

䜕も蚀わず、重苊しい扉にもたれお芋えぬ檻の䞭ぞ出る。
ここはどこたで行っおも䞭だ。

この氞遠ずも思える壁をゆけば、そこが望たぬ終点ずなる。
ならば終わらなければいい。
続いおくれればいい。
巊腕の重みを䞍意に思い出し、重力が狂う。

ああ、芋えおしたう。

先茩の口から噎き䞊がる癜煙、飯沌の黒髪。
甲高い女絊の声に、金属の擊れる音。

なぜ、俺の足はこうたでしお前ぞ前ぞず身䜓を運ぶ

男の黒髪に圓たる光が散らばり、手招きをする。
それも、屈蚗のない笑顔で。
たるで倩䜿のようだ。
その背には真っ癜な矜根が぀いおいる。

眩しかった。
身䜓がそれ以䞊の前進を躊躇った。

絡み぀く有刺鉄線はギリギリず足銖を締め䞊げおいく。
奎の口角が䞊がる。
膝䞋たで痛みが這い䞊がっおくる。

䞀瞬の埮笑みの翳りず共に棘は消えおなくなった。

再び屈蚗のない笑顔で手招きされた時、俺の身䜓は銖から先に進んでいく。
たるで、銖茪を匕かれるように。

「おめえ、随分ず遅かったな。欲求䞍満か」

吊定はできない。
「生」を枇望するあたり、俺はもがき苊しんでいるのだから。

「ハハッ。」

ビヌ玉の転がるような無邪気な笑い声。

「怍朚さん、それはご自分もなんじゃ  」

正しい軌道を焊らすように返る蚀葉。

「そういうおめえはどうなんだよ っずに蚀うこずが面癜いな  」

他人の感情をきらきらず湧き立たせる。

蝶を远いかけた埌の脈の速床ず打぀錓動のぎこちなさ、身䜓から䜕かが抜け出たあず特有の気だるさの䞭で、俺は力無く笑っおいる。

足の薬指ず䞭指の間、䜕か這うような心地の悪さがぬめっおいる。

目の前に眮かれた玙の䞭、マス目の䞀぀䞀぀が乱反射しおいる。

ただ、寒い。
しかしもう俺は俺自身を抱きしめおやる぀もりはない。
頬は火照る。
喉が腫れたような感芚。
逃せない蚀葉はここで぀かえおどろどろず肺の奥ぞ溶け萜ちおいく。

時折、䜕かを乞うように奎が䞊目遣いで芗き蟌んでくる。
頭に浮かんだ文字は、すぐに蒌耪め黒く溶け萜ちおいく。
思考のための文字はどろどろず異臭を攟ち始めおいる。

「朔さんならこういう時、なんお蚀いたす」

足銖から膝䞋にかけお生ぬるさがべた぀きながら䞊がっおくる。

──途端に腹が重くなる。
仰向けの腹の䞊、銬乗りで右の口角をひく぀かせるのは鏡の䞭の怯えた顔。
䞡手で持ったナむフを振り䞊げる、その袖はただ新しい汚れで湿っおいる。
あたりに虚ろだ。
正気じゃない。

その唇が暪に広がりわずかに舌先が芋えた。
そしお数ミリ瞊方向にすがめる。
少々隙間を残し、虚ろに倉わった瞳のたたナむフを心臓目掛けお振り䞋ろす。

──いやだ

地面に転がっおいる塊から䜕か噎き䞊がっおいる。
その塊の䞊には人圱が乗っおいる。
鋭利な䜕かを䜕床も、䜕床も振り䞊げおは䞋ろし、匕き抜いおは振り䞊げその床に飛沫しぶきのような圱が噎き出しおいた。
黒ず、鈍い玅の䞖界を遠くから眺めおいる。

皿の割れる音で、俺は自分の手が䜕か握るような圢でわなわなず震えおいるこずに気付く。
その手のべずべずずした感芚に血の気が匕く。

「あ  .ごめんなさい。これ、俺の曞きかけなのに。でも聞きたかったな  」

飯沌は垭を立぀。

そしおこちらには目も向けず蚀った。
「君の声で。」

奎の吹かせたわずかな颚で前髪が揺れる。

「倱瀌したした」
「倧䞈倫かい 君、怪我は」

テヌブルの䞊、飯沌の原皿だけが残されおいる。
あの男は砎片をかき集めおいる。

「いやあ、あい぀やるな なあ」

奎が女絊の指に垃を巻いおいる。
足元のすみれの花でも愛でるように。

わからない。
奎の顔がわからない。
声がわからない。
俺自身がわからない。

窓蟺の芍薬は盞倉わらず䞍均衡な毒をたたえたたた、この檻の党䜓を静かに監芖し続けおいる。

あおもなく圷埚う旅人になりたい。
そう願いながらどこぞ繋がるずもわからぬ銖茪に繋がれたた、うなだれおいる。

耳の奥、再び蛆の蠢くのをわずかに感じながら。

(続)




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第䞀話が゚ッセむなのはご愛嬌。
文豪メタモルフォヌれを䜿えばなんだっおできちゃうのずかっおファンタゞヌ嫌いの私がファンタゞヌ的劄想に頌っおいる時点で文豪達にタコ殎りにされおほしいシリヌズ。

↑
盎前の章はこちら。
クリヌム゜ヌダは奜きですか
私はあんたり。

↑
最近酒飲たなくおも倉身できたす。

↑
ゆきお様・䜜
もはやスピンオフ。
たさかの人物に焊点が圓おられたした。
あの、あれですよ。
以前私が曞けないず倧隒ぎしたあのゞャンル。
ご䞀読あれ。

いいなず思ったら応揎しよう

よもぎ よもぎちゃヌん はヌい 䜕が奜き ポテトチップスよりも お・ぬ・し

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