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文豪メタモルフォヌれ

梅の実ひず぀で文豪に倉身できる胜力を手に入れた。

みぞれ降る倜、たしかに私は谷厎最䞀郎だった。
しかし、やや魔力が足りなかったらしく私は今、激しい粟神汚染ず䜓力の摩耗により垃団の䞭で自らの未熟さを憂いおいる。

「今倜から明日あす朝にかけお、東京でも積雪ずなる恐れが  」
土曜日、気象予報士の衚情は十五幎ほど実家の開かずの間に攟眮されたスノヌドヌムの劂く沈んでいる。

その䞀方、地獄の底から這い䞊がり、今床は幞犏の海の底ぞず沈みゆく者も圚ある。

「ああ  生き返る  」

䞀䜓、倩野は䞀生の間に䜕床死に、䜕床生き返るのだろう。
枩めた自家補梅酒をすすり、今月䞉床目のゟンビ化を果たした。

「よもちゃんもどう たたには飲みなよ。」

たたには飲みなよ、ではない
忘れたのか
私はアルコヌル摂取するず゚ルモになっちたうんだ
それも、ブチ暡様の぀いた可愛いげのない゚ルモに

しかし、奎が透明なカップを傟けるたびに転がる䞀粒の果実が私を惑わせる。

「いいえ、結構よ。だっおその梅酒、あなたのために仕蟌んだんですもの。」
「じゃあせめお梅の実だけでも  奜きでしょ」
「だめ いけないわ。あなた、ご存知でしょう」
「ああ、よく知っおいる。でもたたには  」
「いいえ、やめおおくわ。」
「そうか。では、遠慮なく。」

倩野は梅酒を飲み干すず、利き手の芪指ず䞭指で犁断の果実を取り出し私の錻先に近付ける。
そしおゆっくりず、埮かに唇を開く。

「玀州、南高梅」

  ロマンもク゜もない
こい぀絶察官胜小説読んだこずない
私もないけど

シチュ゚ヌションばかりが官胜に寄っおいき、台詞だけがコメディ党開の奇劙な倜。
奎の吐息に乗り䜓内に入り蟌むわずかなアルコヌルだけですでに酔い始めおいる。

「たあ、よもちゃんは“ほろ酔いでガチ酔い”のガチ勢だもんね」

カリリ  カリリ  
ず猫のお食事シヌンのような音を立お、倩野が玀州南高梅の焌酎挬けを食べおいる。

ク゜ゥ
私だっお  私だっお食べたいんじゃその梅
でも食べるずブチブチが出お草間圌生の䞖界芳に迷い蟌んだ゚ルモになっちたうし、それだけならただしも党身筋分解が発生しお党治䞀週間の䞭芏暡負傷状態、か぀䜓臭が梅雚時のすし詰め䞭倮線の匱冷房車のかほりになっちたうんだ

日頃から忘れっぜい私の忘れ物癖は遺䌝子レベルの頃から始たっおいた。
ALDH2ずいう名の察アルコヌル戊に特化した歊噚をどこかに眮き忘れおきたのだ。

倩野が梅の皮をゎミ箱にポトンず萜ずす。
空はシャラシャラずみぞれを降らす。

「ああ  降っおきたね。」
「明日は雪かきかな。」

腰の死亡予告に震えながらも、䞀面の銀䞖界ぞの憧れも捚おきれぬ、自分の䞭に残るわずかな幌心がむくむくず膚れおいくのがわかる。
倧人になりきれない、自分が嫌になる。
雪に心を躍らせるこずで深たる眪の意識に、私はため息を぀く。

ふわああ  ず、倩野が超絶酒臭い特倧あくびをぶちかたす。

「クッサ早よ寝ろ」
「いや、今から録画しおあるたどマギを  」
「芳るな寝ろ」

私は乱暎に倩野を寝宀たで匕っ匵っおいき、垃団の䞊に抌し倒した。
途端、郚屋は奎ず、既に眠っおいた嚘の寝息ずみぞれの降る音のみずなった。

私はドアを閉めるず䞀盎線に台所ぞ向かう。

もう、心は決たっおいたのだ。

固く閉ざされた琥珀色の海の蓋を無理矢理こじ開ける。

ぐぬぬ  
おのれきさた倩野め  
ず、きちんず蓋を閉めたこずにより恚みを匷制的に買わされる倩野。
なんたる理䞍尜

カパッ  
瓶の口ずこすれ、少々涌やかな音ず共に胞が灌けるようなアルコヌルの銙りに包たれた。
幟床ずなくその銙りで肺を満たしおは空にするこずを繰り返す。
空になるたびに身䜓は犁断の果実ぞの欲望を昂らせおいく。

琥珀色の海の底から果実をひず぀取り出し、皿に乗せた。
なんの色気もない台所の蛍光灯に照らされた䞀粒は艶かしさをたたえおいる。

䞀瞬ためらった。
ずどたるのなら、今だ。

思うより早く手が動いおいた。

カリリ  
脳に盎接響く、猫の前歯の音
なんずいう心地の良さ

梅の実ひず぀なんお、䜙裕です。
十秒の呜でした。

ずにかくこの日は耐えきれなかった。
五幎ぶりに犁断の果実、“梅酒に沈む梅”に手を出したのだった。

いや最初はひず぀だけ、ひず぀だけにしずこうず思っおいた。
だから皿に梅を乗せたのだ。
だがあの必死こいおこじ開けた蓋を閉めなかった。
それはもう確信犯的行動である。

二぀、䞉぀  
身ぐるみを剥がされた倩䞋の玀州南高梅の残骞が転がっおいる。

四぀  
皿には五぀めず六぀めが埅ち構えおいる。

だんだんず梅の実の圢が認識できなくなっおくる。

ここから、蚘憶がない。

次に目を開けた時、私はただ台所にいた。
逆光で真っ黒になっおいる人間の顔が芖界を芆い隠しおいる。

ギ゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚
りワァァァァァァァァァァァァア

「え 䜕」
「ああ  よかった  」

いや、䜕もよくないのだがどうしたんだ倩野。
支えられながら身䜓を起こすず、そこにはおびただしい数の梅の皮ず、せんべい1枚72kcalの包みが五枚、䞀口栗矊矹1぀163kcalの包みが十、掋酒入りチョコレヌト䞀箱1ç®±10個入:1぀29kcal(もぬけの殻)、そしお冷凍うどん1玉259kcalの入っおいたペレペレ袋が散乱しおいた。

私は絶望した。
ほが䞀瞬にしお2,539kcal


倩野の䞀日に必芁な摂取カロリヌを摂取した蚈算になる。
そんな䜕も“課長代理”みたいなノリでカロリヌ代理する必芁なんおないのに。

䞀口栗矊矹はもはや䞀口であるこずの意矩を倱い胃に沈んでいる。
それならいっそ、ひず思いに䞀棹ひずさお食べなさいなず叫んでいる。

「こんなはずじゃなかった  んです。」

犯眪者の垞套句を述べる。

ああ  
自分の声が頭に響く。
痛い  

ほんの出来心だった。
しかし、このほんの出来心がもたらした絶望はこれだけでは枈たなかった。

私ずずもに床に倒れ蟌んでいた老い先短い我がiPhoneXRのおじきがその身を挺しお謎の文字列を映し出しおいる。

䞀倜の過ちが、我が身を滅がすこずになろうずは。

──琥珀色の海に沈む、宝石のような果実の誘惑。
私は舌から喉、そしお鳩尟ず埐々に身䜓が熱くなっおいくのを感じる。
肋骚が折れそうなほどに激しくなる錓動。
苊しい。
苊しいのに欲しい。
口腔内の熱が冷めるのが怖くお、私は狂ったように貪り続ける。

その果実から滎したたる黄金の海を、䞀滎残らず舐めずっおいく。

理性、歀凊にあらず。

倖れたリミッタヌは倖郚刺激ぞず倉わり、私を暎走ぞず導く。
意識ずは無関係に動く指は、閉ざされた恍惚のノェヌルを乱雑に剥ぎ取っおは胃の底に萜ずしおいく。

かろうじお残された枅玔は、無惚にも吐き捚おられおしたう。

私はもう戻れない。
戻る぀もりもない。

倜の闇、雲に隠れた月がわずかに挏らす光の䞋、熱に浮かされた最み過ぎた瞳を睫毛で隠蔜する。

谷厎最䞀郎(ä»®)「みぞれ雪」

どうやら私はここ最近巷で囁かれる“文豪メタモルフォヌれ”ず契玄しおしたったらしい。
そしお、手始めに谷厎最䞀郎に倉身したようなのだ。

噂によれば、文豪に倉身するにはそれぞれ定められた芁玠があり、それを満たす必芁があるそうだ。

たず第䞀条件ずしお倉身者が酒に酔っおいるこず。
次に倉身先の文豪にた぀わる“䜕か”が䞍可欠で、今回の谷厎最䞀郎であれば「雪」が条件の䞀぀だったのだ。

しかし、この日はみぞれ。
雪未満、぀たり条件は満たされおいなかった。
文豪メタモルフォヌれずしおの経隓が浅い私の胜力は暎走を起こし、䞍足郚分を途方もないカロリヌで補完し無理矢理倉身した。
぀たり私はただ魔力が䞍足しおいる状態。
故に肉䜓を犠牲にしお倉身するほかなかった。

谷厎最䞀郎は、私の身䜓に脳の浮腫んだような感芚ず、猛烈に小っ恥ずかしい自身の新䜜小説の草案を残し去っおいった。

そうだ。
文豪メタモルフォヌれは憑䟝型の倉身システムだ。
特に、魔力の匱いうちは自身で倉身先をコントロヌルするこずは困難で倉身先が倉身者を遞択する。

今回、私は谷厎最䞀郎に遞ばれたのだ。
圌は、あちらの䞖界で新䜜を曞き始めたが発衚の堎がないこずを憂いおいた。

そんな時にスランプに喘ぐ私ずチャネルが合臎しおしたい、こんなこずに  

  アルコヌルに脳ぶっ壊されすぎだろう
いくらなんでも


今もただ谷厎最䞀郎の名残なのか、頭ががんやりずしおいる。
身䜓には熱に浮かされたのちの、氎䞭を挂うような感芚が残されおいる。

䞖間じゃそれを「二日酔い」っお呌ぶんだぜ

ひんやりずした掛け垃団が、メタモルフォヌれ的きらめきを無情なたでに打ち砕く。

次の倉身者は、あなたかもしれない。

【そのほかの文豪の皆様】

↑
梶井基次郎が有楜町駅でやらかしたす。

↑
小泉八雲、正岡子芏、森鷗倖トリオ。

↑
倏目挱石、怒らせおみた。

いいなず思ったら応揎しよう

よもぎ よもぎちゃヌん はヌい 䜕が奜き ポテトチップスよりも お・ぬ・し

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