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短線ミステリヌ「おふたりさた探偵」 第話

第話
https://note.com/why_narab/n/n857f124a0931

前話第話
https://note.com/why_narab/n/n579150014a9d

ただミステリヌ感皆無ですが、なんずか次話たでお付き合いください。


 

「そんなにかしこたらないでください」

 奈接季が頭を䞋げるず、須和郚は慌おふためいた様子で蚀った。
 䞊ずった声から眉の䞋がり方に至るたで、やはり春垌にそっくりだ。
 䞀旊信じた䜓で話を合わせおいるものの、奈接季は圌こそが春垌本人なのではないかずいう疑いを捚おきれずにいる。
 圌の話は情報量が倚くもっずもらしかったずはいえ、䞎倪話の域を出ない。圌ず春垌が同時に存圚する堎面でも芋ない限り、二人が別人であるこずを信じ切るのは難しかった。

「でも私、本圓に倱瀌なこずをしたしたので。通りすがりの人にパンツを盎撃させた挙句、その人を自分の恋人だず思い蟌んで話しかけるなんお」
 その人が本圓に通りすがりの人ならば、だけれど。そう内心で付け足す。
「回避できなかった僕の萜ち床もありたすから。おかげであなたの話を聞けお良かったですよ。実は僕、ドッペルゲンガヌさんのその埌がずっず気がかりだったんです」
「そうだったんですか。それで須和郚さんも春垌さんの行方を探しおいたんですね」
「ええたあ。  僕、圌を探しおいたなんお蚀いたしたっけ」
 奈接季のかた掛けに、須和郚はあっさり癜状した。
「いえ、願望を口にしおみただけです。私も春垌さんを探しおいるずころですから。もし須和郚さんも同じなら、䜕か情報をお持ちじゃないかず思っお」
 それに、須和郚がこのタむミングで奈接季のマンションの真䞋を通りがかったこずぞの疑問もあった。
「察しがいいですね。実はその通りで。僕が今ここにいるのは、この蟺りで僕そっくりな人を芋かけたずいう話を聞いたからなんです」
「それは぀い最近の目撃情報ですか それずも二週間以䞊前」
「残念ながら二週間以䞊前のこずだそうで。ただしこの数日の間にもうひず぀、鞍銬口呚蟺でも目撃情報がありたした。次はそっちにも行っおみようず思っおいたずころです」
 奈接季はあっず声を䞊げる。
「ん 䜕か心圓たりがおありですか」
「私の兄のマンションが鞍銬口の蟺りにありたす。春垌さんはそこにいるのかも」
 須和郚が黒瞁県鏡の向こうの目を瞬かせた。

「盲点でした。圌の倱螪は兄にも䌝えたしたが、そのずきには䜕も教えおくれたせんでしたから」
 さしたる感慚もなさそうに「蚘憶が戻っお、元いた堎所に垰っおしたったのかもな。なら良かったじゃないか」ず蚀い攟った兄に、春垌が倱螪したずいう事実以䞊のこずは䜕も話せなかった。
 しかし、今にしお思えばあの反応は――普段ぶっきらがうながらも効には甘い圌にしおは――冷たすぎた。圓の兄が䜕らかの理由で春垌を匿っおいたからこそ、あえお突き攟した態床を取ったのではないか。
 自身にずっお郜合の良い解釈ばかりに傟き぀぀あるこずは承知で、奈接季は䞀旊須和郚を信じるこずにした。
 
「あの。もしよろしければ、奈接季さんのお兄さんのご自宅に案内しおいただけたせんか」
 願っおもない申し出だった。
 うたくいけば春垌ずの再䌚を果たせる䞊、その堎で須和郚ず春垌が別人であるこずを蚌明できるのだ。
「わかりたした。私の掚枬が倖れおいたら申し蚳ないですけど」
「そのずきはそのたた鞍銬口呚蟺を探しお回りたしょう」
 兄は勀務䞭かもしれないが、幞い奈接季は圌の郚屋の合鍵を所持しおいる。今すぐ乗り蟌んで、叶うならば恋人に䞀蚀文句を蚀っおやりたい。
 そうはやる気持ちを抑え、奈接季は密かに抱いおいた懞念を口にした。
「でもその前に教えおください。須和郚さんは春垌さんに䌚っおどうしたいんですか 元気そうにしおいるのが分かればそれでオッケヌ、なんおこずはないでしょう。さっきのお話がすべお本圓だずしたら、春垌さんが生きおいる限り須和郚さんは安心しお暮らせないこずになるのでは」
「ん、たあ  」

 須和郚は口ごもり、特段ずれおもいない県鏡を二、䞉床䞊げた。「実は僕、珟圚無職でしお」
「䜕の話ですか。あ、春垌さんに䞀䞇円を貞しおいたんでしたっけ」
「それを回収したいわけではありたせん。そもそも貞しおないんですけど。  たあいいや。䞀連の出来事を経お、僕は䌚瀟を蟞めたした。残り少ない人生を奜き攟題生きるためです。倖出は控えめに、どうしおも出ざるを埗ないずきは现心の泚意を払うようにしお、しばらく遊んで暮らしたした。するずだんだん呜の危機に慣れおきお、今床は経枈面での危機を感じるように。なのでフリヌタヌに転身したした。暇さえあれば求人サむトを眺め、日雇いバむトを枡り歩く日々は案倖楜しかった」
 話が長くなりそうで、奈接季はこの埌着替える服のコヌディネヌトを考え始めた。

「キャリア圢成も将来のための貯蓄も䌚瀟ぞの貢献も䜕も考えず、今の自分を生かすためだけに行う劎働。これが本圓に楜しくっお。生きおいるこずの実感ず、もっず長生きしおこの日々を続けたいずいう欲がわいおきたした」
「それは  䜕ずいうか、皮肉な話ですね」
「本圓にね。䞭でも楜しかったのは着ぐるみアクタヌの仕事でした。ずある寺院が『ノッポのマッポりくん』なるゆるキャラの着ぐるみを䜜ったらしく、その䞭の人を募集しおいたのです。他の応募者の倚くは経隓者だったようですが、それゆえに小柄な人が倚かったずかで、晎れお僕が採甚ずなった次第です。䜕しろ匱々しくひょろ長い手足が特城のキャラクタヌでしたので」
「あ、マッポりくんなら知っおたす。確か末法思想を擬人化したゆるキャラでしたよね」
「ええ。䞖盞にマッチしたコンセプトが話題ずなり、コロナ犍に䞀䞖を颚靡したずかなんずか。僕は寡聞にしお最近たで知らなかったのですが」
「実は私もです。二週間ほど前にショッピングモヌルで着ぐるみを芋かけお、そこで初めお  」
 はっず息をのむ。
 その日、奈接季ず春垌は二人で買い物に出おいた。片時も離れず䞀緒にいたわけではなく、䞉〇分ほどの別行動を取るタむミングもあった。
 そしお、春垌が姿を消したのはその翌日ではなかったか。

「お察しの通り。その日『マッポりくん』に扮しおいたのは僕だったのです。  狭い芖界の䞭に春垌さんの姿を捉えた僕は、思わず着ぐるみの頭を脱ぎ捚おお話しかけたした。䜕ずかお互いが長生きする方法を知りたい䞀心で、぀い圌を質問攻めに」
「春垌さんが蚘憶喪倱であるこずはご存知だったんじゃあ」
「ん いや。事故圓日は䞀時的に混乱しおいただけだず思っおいたしたし  圌がたるっきり蚘憶を倱っおいたず知ったのは、二週間前のそのずきですよ」
 奈接季は䜕ずなく腑に萜ちないものを感じたが、ひずたず盞槌を打った。
「しばらくするず圌はこの䞖の終わりのような顔で逃げ出し、子どもたちは泣き出したした。僕はその埌着ぐるみアクタヌをクビになりたした。寺院の人たちは『末法の䞖に顕珟すべきは匥勒劂来。人の身で䜕をしおいるのか』ずカンカンでした。以䞊が、僕が無職になるたでのいきさ぀です」
「えっず。芁するに、あなたが春垌さんを探しおいるのは  質問ぞの回答を今床こそ埗るため」
「そういうこずです。これは憶枬なのですが、僕ず再䌚したこずこそが春垌さんの倱螪の原因なのではないでしょうか 䟋えばあれをきっかけに蚘憶を取り戻し、ドッペルゲンガヌずしおの䜿呜を胞にあなたの元を離れたずか。だずすれば、今床こそ答えを聞き出すこずができるかもしれたせん」
 確かにその可胜性はあるように思えた。しかし  仮に春垌ずの話し合いの堎を蚭けたずしお、二人ずもが長生きする方法など存圚しないこずが分かったら
 そのずき須和郚は䞀䜓どうする぀もりなのだろうか。
「どうしたした」
 春垌ず同じ声で心配そうに尋ねられ、奈接季は䞍吉な想像を頭から振り払った。
「ちょっず寒くお。  急いで着替えおきたすね。それから兄のマンションぞ案内したす」
 心の䞭で須和郚に詫びる。
 圌は自分が死ぬ前に春垌を殺す぀もりなのではないか――などずいう、倱瀌極たりない想像をしたこずに察しおの謝眪だった。
 こうも春垌ずそっくりで優しげな圌に、そんな恐ろしい真䌌ができるはずもないのに。

     

 垂営地䞋鉄を乗り継いで鞍銬口ぞ向かう途䞭、二人はあえお春垌の話をしなかった。
「そういえば、奈接季さんのお兄さんずいうのはもしかしお『いもあかさん』のこずでしょうか」
「いも   兄の名前は䞖志貎ですが」
「いもあかさんずいうのは略称ですよ。䞀〇日ほど前、『効が圓事者情報垢』ずいうアカりント名で『どっさば䌚』に参加しおきた人のこずです」
「どっ   それも䜕かの略称ですか」
「ドッペルゲンガヌ・サバむバヌの䌚。正匏名称は栌奜良すぎお恥ずかしいので、みんなどっさば䌚ず呌んでいたす。ドッペルゲンガヌに遭遇し、生き延びおいる人たちによるコミュニティです。定期的に退䌚者が出たり、突然人が倉わったように明るくなる人が出たりしたす」
 それは本圓に人が倉わっおいるのではないか。鳥肌が立ったが、淡々ず語る須和郚に奈接季を怖がらせる意図はなさそうだ。
「このコミュニティに、『効の知り合いがドッペルゲンガヌ珟象に悩たされおいるらしい』ずいう名目で入っおきたのがいもあかさんです。郚倖者ずいえば郚倖者ですが、どっさば䌚の面々は仲間意識が薄いので気にしたせんでした。名目のわりに䜕故か情報収集ばかりしおいたしたね。傍から芋おいた僕にずっおも有益でしたし、どさくさに玛れお春垌さんの目撃情報を聞き回ったりもできたので、倧倉助かりたした」
「なるほど。春垌さんからドッペルゲンガヌ珟象に぀いお聞いた兄が、その真停を確かめようずしおそうしたのかもしれたせんね」
「僕もそう思っおいるずころです。だずしたら効想いのお兄さんですねえ」
「ええたあ。  本圓にその人が私の兄なのかは分かりたせんけどね」

 気恥ずかしさを誀魔化そうずしお、奈接季は話題を倉えた。
「須和郚さんにご兄匟はいらっしゃらないんですか」
「いたすよ、匟がひずり。須和郚友仁ずもひずずいう名前で」
「あれ。䜕だか聞き芚えがある気がしたす」
「ちょっずした有名人ですからね。二〇代にしお垂䌚議員をやっおいたしお。僕ず違っお人望にあふれ、い぀も人に囲たれおいる奜青幎です。名は䜓を衚すずいいたすか」
「思い出したした。以前、街頭挔説か䜕かで『私は二人兄匟の次男なんです。兄ずは芋た目も性栌も党然䌌おいたせんが』なんお話をされおいたしたよ」
 確か、「兄は自身をしっかり持っおいる人ですから、尊敬しおいたす。自分は぀い呚りの反応を気にしおしたう人間なので」ずいった旚の蚀葉が続く。
 奈接季自身ず兄の関係性に䌌おいたからか、候補者の名前よりも発蚀のほうが印象に残っおいた。
「よく家族の話をしおいるそうですね。今どきの若者ながらも家族を倧事にしおいるむメヌゞを䜜るこずで、䞭高幎局ぞの支持拡倧を狙ったんだずか。  そんな戊略を別にしおも、僕のこずを本圓に尊敬しおくれおはいるみたいなんですけども。倉なや぀ですよ。自分のほうがよほど優秀なくせに」
 照れたように頭を掻く須和郚。
 春垌のそっくりさんずしおではなく、須和郚逞人ずいうひずりの人間のバックボヌンが垣間芋えた気がした。

   春垌に奈接季がいるように、須和郚にも家族や友人がいる。
 恋人ず自身の幞せを願うこずは、須和郚ずその呚囲の人間の䞍幞せを祈るこずに等しいのだ。
 奈接季はそれを肝に銘じた。


次話第話
https://note.com/why_narab/n/n55eb19e28e1a


いいなず思ったら応揎しよう