vol.11 「学校が変わった日は、何が違っていたのか。」
【連載】『シン教育OS』が描く未来の教育 vol.11
<第2章> 学校を変える「シン教育OS」とは ⑥
「今日もAくん、授業中に離席して廊下を歩いてたね。」
「うちもそうですよ。」
気がつけば、どの学年も1人以上、
授業中に教室を抜け出す子供がいます。
あてもなくうろうろと・・・
彼らの言い分はこうでした。
「だって、授業がつまんないもん・・・」
さて、今回の旅は、「シン教育OSが描く未来の教育」の
リアルな姿をお届けいたします。
実際に学校が変わったお話。
ノンフィクションです。
教室を抜け出すのなら全員に
着任したばかりの校長は考えました。
「そうだ、校長室に抜け出す子供を集めて
サミットを開いてみよう。」
このサミットの議題は、
『どうして授業中、教室を抜け出して、
廊下をさまようのか』
集まった子供は、10人弱います。
広い校長室の席に座り、
子供たちは、素直に話し始めます。
この子供たちは、学習が嫌いな訳ではありません。
むしろ、学ばなければならない。
いや、学びたい!
その気持ちは、持ち合わせていました。
自分が学びたい学び
自分が学びたい学び方
自分が学びたい場所
が、教室にはなかったのです。
決して、先生たちを悪くは言いません。
むしろ、先生たちは一生懸命なので、
申し訳ない気持ちもあるのです。
校長は毎日、各教室の授業を見ています。
確かに、先生方は熱心に子供たちを指導します。
学習規律もしっかりできています。
しかし・・・
一斉授業形態の1時間がずっと続き、
多くの子供は、静かにしていますが、
目の輝きは感じられません。
一部の子供たちの活発な発言によって、
時間通りに進行する授業です。
そのこと自体は、悪くはありませんし、
授業力もある。
でも・・・
そうなると、この抜け出した子供たちだけが、
悪者のレッテルを貼られるのです。
レールを敷いた授業から脱落した子供たち。
その意思表示ができる
この10人弱の子供たちは、まだ良い。
むしろ、
教室に静かに目の輝きのない子供たちも
結局はレールから外れた子供たちなのです。
そこで、校長は決心しました!
「みんなを教室から抜け出させよう!」
子供たちに期待を
ある日の全校朝会です。
校長は、全校児童の前でプレゼンしています。
それは、
「授業を変える」
未来の授業像を子供たちに伝えています。
子供たちは目を輝かせています。
本当にそんな授業に変わるの?
様々な問いが生まれています。
一番、集中してプレゼンに目と耳を傾けているのは、
あの10人弱の子供たちです。
期待はどんどん膨らみます。
一方、先生方の表情は曇りがち・・・
これは、この校長の策略なのです。
校長が見せたかったのは、
校長のプレゼンではなく、
このプレゼンで、目を輝かしている
目の前の子供たちの姿なのです。
教員の意識改革へ
やはり来ました!
校長室に。
そうです。
初めに校長室に来たのは、
研究主任の先生でした。
「今までの研究に私も課題を感じていました。」
とその先生は、正直に話します。
そこで、校長は今までの研究の取り組みについては、
称賛し、次のステップに進むことを提案したのです。
それが学力論の転換でした。
これまでは、知識・技能が身についていない子供は、
学習に意欲的ではないという仮説で、
基礎・基本の力を身につけるための研究に励んでいました。
これは、一理あります。
子供たちにベースとなる武器を持たせること。
それが知識・技能の取得であること。
しかし、その知識・技能だけが基礎基本と捉えている
この学力論に問題があるのです。
vol.9で話したように非認知能力を含めた知識・技能を
基礎基本と捉える学力論の転換が必要だということを。
半年かかりました。
先進校の視察にも教員を連れて行きました。
そして、
ようやく研究授業で、4年生が、
教室も廊下も全部を学習環境として、
学習方法と場を子供一人一人に選択させて、
全員が教室から抜け出す授業を公開しました。
全教員が見たのです。
その子供たちの変容した姿を。
一体何が変わったのか
「いや、びっくりしました!」
「子供たちが、目の色を変えて、
早く自分の学ぶ場所に行きたいと」
これが、先生方の第一声でした。
4年が全学級一緒に、学年としてこの授業を公開しました。
もう、誰が何組かも関係ありません。
学年の仲間と自由に関わり、対話し、探究しています。
他の先生方は、この4年生の姿を見て、
これが、子供たちの学ぶ力を信じて任せる
ということなのかと実感できたのです。
それからこの学校の先生方はどうなったと
思いますか?
できる限り、同じ時間に同じ教科の授業をして、
教室も、廊下も特別教室も活用できるところは、
全部使って、学習方法と場の選択ができる
単元設計をし、みんなで授業準備をするように
なったのです。
「こんな楽しいことを今までの学校では、
やったことがなかったです。」
「今までは、一人で、全部考え、
全部自分で準備していたけど、
学年でやることで、質も高まるし、
時間も無駄になりません。」
「評価のあり方や、教師の働きかけを
考えるようになりました。」
もう、すっかり職場文化が変わっているのです。

ついに、この5番目のGearが回り始めたのです。
ここからは、先生たちの方からどんどんアイデアが湧いてきます。
校内研によって、共通言語化が進むので、
同じ視点で、どの学年の授業も語ることができるのです。
1年過ぎると、
その校長が考えていた以上の授業が展開されています。
理想の学校、
いや、
理想以上の学校が誕生したのです。
子供たちは、校舎のいろいろな場所に設定された
学習環境の中、今日も
目を輝かせて学習に臨んでいます。
授業を抜け出していたあの子が、
校長先生のところに駆け寄ってきました。
「校長先生の言うとおりになったね!」
この言葉は、この子自身が求めていた
学習の姿なのです。
学校が変わった日
一体何が変わったのか?
もう皆さんの心の中に
その答えがあるのではないでしょうか。
いよいよこの連載も次回が折り返しになります。
次回は、第2章「学校を変える「シン教育OS」とは」の最終話 vol.12「学校経営と授業改善がつながった瞬間、学校は変わる。」の旅をお届けいたします。
シン教育OSの中核を担う第2章から未来の形、学校DXやAXのあり方を探る第3章へ橋渡しいたします。
次回の旅もお楽しみください。
🗣️ この連載について
元校長・山下による連載「シン教育OSが描く未来の教育」(全21回)は、毎週木曜に配信しています。
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