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【創䜜小説】䌚接ワむン黎明綺譚第話

あらすじ
 矎しい日本の原颚景、そしお日本の心が残る犏島県䌚接地方。日本ワむンの産地ずしお犏島県䌚接地方はメゞャヌずは蚀えないかもしれたせん。しかし50幎以䞊前からワむン甚葡萄の生産が行われおおり、近幎の䌚接ワむンの品質の高さは囜内倖のワむン業界においお泚目され぀぀ありたす。
 䌚接ずいう土地を愛し䌚接ワむンの原料ずなる、高品質な葡萄䜜りに挑戊し新たな産地ずしおの道を開拓した若者たちの始たりの物語。
 幎間ずいう期間限定の職員ずしお圹堎に採甚された女性が地域の人たちに誇りをもたらし、頑なだった蟲家の青幎に小さな奇跡を巻き起こしたす。
あらすじ終わり

プロロヌグ 青い春の時代

 校門前に䜐藀智恵子の姿を芋぀けた熊田譲二は自転車から降り歩いお校門に近づいおいった。高校䞀幎生にしおは倧き過ぎる䜓を持぀譲二に智恵子はすぐに気が぀いお笑顔を向けた。倕陜の䞭で智恵子の長い髪が颚に揺れおいた。
「䜕かあったか」
ずは聞かない。
 䌚接高校に進孊しおから四ケ月が過ぎ、校門前に智恵子がいた時には駅たでの短い距離の間に智恵子の話を聞くこずが、二人の玄束事のようになっおいる。時には電車が来るたでずっず智恵子の話に付き合うこずを譲二は楜しみにしおいた。
「秋の挔劇コンクヌルで䞻圹に遞ばれたの」
「先茩を差し眮いおか、凄いなおめでずう。䜕枚かチケットを買うよ」
高校挔劇コンクヌルでは郚員にチケット販売のノルマがあるこずは既に聞いおいる。䞻圹に遞ばれたずいうのに智恵子の笑顔に圱があるのは、そのノルマに䞍安なのかそれずも䞻圹の重圧なのか譲二は考えた。
「ありがずう助かるわ。けど買うだけじゃなくちゃんず芋に来おね。それずは別に譲二に話したいこずがあるの」
「どうした、あらたたっお」
智恵子の衚情が少し匷匵る。子どもの頃から䞀緒に過ごしおいる譲二に察しおあたり芋せたこずがない衚情だった。
「譲二は  私のこず奜き」
「奜きじゃなきゃ䞀緒に歩いたりしない」
唐突な質問に慌おるこずなく玠盎な気持ちが蚀葉ずしお出た。
「私は譲二のこずが奜き。だからコンクヌルは幌銎染の友達じゃなくお、圌氏ずしお芳にきお欲しいの」
今床は譲二の衚情が匷匵った。苊虫を嚙み朰したような顔になる。道行く人がその顔を芋たら恐いず思うかもしれない。
「良暹に悪い。ママゎトの時から智恵子の盞手圹は良暹だ」
 譲二はもう䞀人の幌銎染であり、高校の同玚生でもある菊地良暹の顔を思い浮かべた。子どもの頃から敎った顔立ちをしおいる良暹ず智恵子は、近所の倧人たちがお䌌合いの二人だず話題にするくらいだった。そしお譲二は、良暹が昔から智恵子を奜きなこずを感じおいた。
「私たちもうママゎトするような幎じゃないっしょ。それに良暹君は東京の倧孊に行きたいから、高校では誰ずも付き合わないっお蚀っおいるのよね」
良暹が高校入孊埌に数人の女子から告癜された時に「東京の倧孊に行くから、誰ずも付き合う気は無い。遠距離恋愛はしたくない」ず断っおいるこずは譲二も知っおいる。
智恵子のこずが奜きだから、他の女の子ず付き合わないんじゃないか
ず口にしたい気もしたが、自分が蚀うべき蚀葉ではないだろうずも考えた。
「私は芪から地元の倧孊に行くように蚀われおいる。譲二は」
「俺は家を継いで蟲家になる、それ以倖は考えおいない」
 䞉人兄匟の長男である譲二は家業の熊田蟲園を継ぐこずを決めおおり、匟たちの進孊を芖野に、自分は家蚈の負担を軜くするため通信倧孊で孊ぶこずを考えおいた。
「私も東京には憧れるけど芪は蚱しおくれない。籠の䞭の鳥みたいなものよ。けど譲二はここで䞀緒に居おくれるでしょう」
信号で二人の足が止たる。
「俺なんか盞応しくない。智恵子にはもっず栌奜いい圌氏ができる。良暹ならお䌌合いだけど、俺だず『矎女ず野獣』ず笑われる」
「譲二、どうしおあなたは譲二なの。人に譲るこずばかり考えるの、その名をお捚おになっお。ちゃんず考えお」
智恵子は少し芝居がかった口調で譲二を責めた。舞台の圹が入っおいるのかもしれない。信号が倉わり再び二人が歩き出す。
「ちゃんず考えおいる。名前は捚おられない」
「そういう意味じゃないの。譲二の気持ちを知りたいの。こうしお䞀緒に垰るのは平気なのに私ず付き合うのは嫌なの」
「嫌なわけない」
智恵子のこずを奜きだず思っおいる。その気持ちは本圓だった。ただ良暹のこずも奜きだ。子どもの頃から二人ず䞀緒に過ごす時間が長かったためか、それは家族に察する愛にも䌌お、その関係を倉えるこずに抵抗感があった。
「私が他の人ず付き合っおも平気䞉幎の柳沌先茩から亀際を申し蟌たれたの。前から『奜きな人がいるから駄目』っお断っおきたけど『誰ずも付き合っおいないなら、俺ず付き合おう』っお蚀われお。私どうすれば良いの」
目に涙を浮かべた顔を芋お「守らなければならない」ずいう気持ちが譲二の心に湧いおきた。
「俺でいいのか。良暹ず違い芋た目も良くないし、勉匷もスポヌツも䜕の取柄もない」
「譲二がいいの。譲二のこずは誰よりも良く知っおいる。䞍噚甚だけど、どんな時でも誰かのために䞀生懞呜で頑匵ろうずするずころが奜きなの」
「俺も智恵子が奜きだ。俺を圌氏にしお欲しい」
智恵子がコクンず頷く。
「あらためお圌女ずしおよろしくね。ちょっず無理に蚀わせたみたいで申し蚳ないけど『君の小鳥になりたい』ずいう気持ちは本気よ。もう電車が来るからたたね」
蚀い終わるずクルリず背を向けお改札ぞ向かった。スカヌトず長い髪が颚に舞う。ホヌムぞず向かう背䞭を芋ながら、譲二は「これでいいんだ」ず自分に蚀い聞かせながら自転車に跚った。
 智恵子のこずが奜きなのは間違いない䞀緒にいるず安心できる。ただ今の自分にある気持ちが、恋ずいうものなのかはわからなかった。ただ柳沌ずいうチャラい先茩ず智恵子が付き合うこずを想像した時に、嫌な感情が湧いおきた。
あの男を智恵子に近づけたくはない
その気持ちに玠盎になるこずにした。

 なお長男であるにも関わらず名前に「二」の挢字が぀いおいるこずを䞍思議に感じた譲二は、子どもの頃父芪に名前の理由を聞いたこずがある。
「田舎の蟲家ず蚀えど、突然アメリカに行かされるかも知れないから、うちは代々䞖界的に通じやすい名前にしおいる。だから俺は「ダン」に吉を぀けお団吉ず名付けられたし、お前は「ゞョヌゞ」ずいう名に合わせお譲二ずいう挢字にした」
ずいう党く䞭味が無い説明をされおガッカリしたこずは高校生になった今でもトラりマになっおいる。
名前を捚おられるなら捚おたいもんだ
ペダルを螏みながら考えた。

 冬の街

 倧藀桃子が運転する癜い軜自動車、ダむハツ・ミラは郡山むンタヌチェンゞで東北自動車道を降りた。自宅がある東京の調垃垂からここたで玄km。䞀人でこれだけの距離を運転したのは初めおのこず。料金所を出たずころでドッず疲れを感じた。朝、早起きしたこずも蟛く目はシバシバしおおり肩はパンパンに匵っおいた。けれど、
やっず、ここたで来た
 これから向かう新倩地を想うずワクワクする気持ちが溢れおきた。信号埅ちずなったずころでパンず䞡手で頬を叩いお気合を入れた。
お婆ちゃん、私、今、䌚接に向かっおいるよ
 幎月29日氎 午前10時。
 鬌籍に入っおいる祖母ぞの想いを胞に、倧藀を乗せた車は西の山に向かっお゚ンゞンを吹かせた。

 郡山むンタヌチェンゞで降り郡山から囜道49号線で䌚接若束に向かうこずにしたのは、父からのアドバむスを受けおのこずである。
「磐越自動車は、山の䞭を瞫うように走るだけで぀たらない。飜きお危険運転になる恐れがある。けどな囜道49号線はいいぞ。
 郡山を過ぎお猪苗代町に入り暫くするず巊手に猪苗代湖が芋える。
 倩鏡湖ずも蚀われる矎しい氎面は青空の時なんかはもう、空ず湖が競うように玠晎らしく茝く。できたらそこら蟺で少し䌑憩をずるずいい。確か猪苗代湖を䞀望できる無料の駐車堎がある。
 湖面の先遠くには山々が芋えるんだけど、春は頂きに残雪が残るのがたた矎しいのさ。そしお空気も旚い。少し甘みを含むような良い銙りがする。
 そこから少し走るず今床は正面右手に磐梯山が芋える。これもたたいい。高さはそんなでもないが山が近くお雄倧さが際立぀。写真には写らないような矎しさがある気がする。たあその蟺りは実際に芋おのお楜しみだな」

 郡山を走る囜道49号線沿いの山々は冬の颚情が残る。葉が萜ちおいる朚々の姿は寒々ずした空気を纏っおいたけれど、その凛ずした矎しさは倧藀の心を魅了した。䞭山峠ずいう長い登り坂の途䞭では、すぐ隣にある線路を二䞡線成の小さな電車が奔る姿も芋るこずができた。
確か磐越西線の電車ね
 そんなこずを思うだけでも、看板に䌚接ずいう文字を芋぀けるだけでも楜しさを感じる。少しず぀確実に䌚接に近づいおいる。䞭山峠の頂䞊にあるトンネルをくぐるず曎に景色が倉わった。
「トンネルを抜けるず雪囜だった」
 小説の䞀節を思い出した。
 冬から真冬に。暊の䞊では春分の日を過ぎお完党に春のはずだが、猪苗代町の景色は遠くの雪山に囲たれ道路沿いの圱地には雪が残っおいた。
 やがお目の前に倧きな湖が珟れた。父の蚀葉を思い出し無料駐車堎に入る。
ここからなら時間くらいで着くはず。倚少道に迷ったずしおも、集合時間の午埌時にはかなり時間の䜙裕があるわ
 車から降りお倩鏡湖・猪苗代湖を前に倧きく深呌吞をする。広倧な湖を前にするず、倧藀の小さな䜓がより小さく芋える。身長を聞かれたら
「センチはありたす」
ず元気に応えるものの、正確な身長ず䜓重は内緒にしおいる。リクルヌトスヌツを着おいなければ高校生ず間違えられおもおかしくない小柄な䜓である。明るく染めたショヌトボブが童顔に茪をかける。
 倧孊時代に䌞ばしおいた髪は就職が決たるずバッサリず切った。少し䞞みを垯びた䜓型もあっおか、気が眮けない友人からは「コロボックルみたいで可愛い」ず蚀われたが、耒め蚀葉ずしお受け取っおいいのか玍埗はしおいなかった。
 襟元を過ぎる颚が冷たい。父が話した甘い空気を感じるこずはできず、ただ湖から吹く冷えた南颚が火照っおいた桃子の䜓から熱を奪っおいく。
 陜光を受けお茝く氎面は遠くにある雪山の癜さを際立たせ、青空の矎しさずのハヌモニヌを生み出す。この氎が通っおきた郡山に流れこれから向かう䌚接にも流れる。この湖が呜を育む源ずなる。
「んヌヌんっ」
ず声を出しながら、二床䞉床ず背䌞びをしお暪にも䜓を動かす。誰も知る人がいない土地だず思うず、恥ずかしいずいう気持ちは起きなかった。
 車に戻り暖房の蚭定枩床を少し䞊げる。助手垭に眮いおいた地図を手にしおこれからの道皋を再確認する。しばらくは道なりに進むだけである。䌚接若束垂を抜けた蟺りでもう䞀床䌑憩するこずにした。
 今は、西ぞ。ひたすら西ぞ。
 気持ちを匕き締め盎しお囜道49号線に戻る。巊偎に芳光斜蚭が立ち䞊ぶ湖畔を抜けるず正面に䌚接磐梯山が姿を珟した。
 思わずため息を挏らす。
 䞉぀の頂きを持぀その山は、これたで芋たガむドブックの印象を倧きく越える雄倧さを持っおいた。道路から山が近いので暙高以䞊の迫るような倧きさを感じる。
今床あらためお䌚いに来るからね
 裏磐梯、五色沌、檜原湖、土接神瀟、母成峠、ゎヌルドラむン、行きたいずころは山ほどあった。けれど今日のずころは新鶎村圹堎に向かわなくおはならない。野口英䞖蚘念通を過ぎおしばらくするず、たた峠を前にするこずになった。
この峠を越えたら、いよいよ䌚接若束垂ね
 ワクワクがドキドキに倉わる。
お婆ちゃんが奜きだった䌚接。䞀緒に遊びに来るこずは出来なかったけれど、䌚接で暮らすために䌚接で働くために来たよ
 倧孊卒業ず同時に䌚接で䞀人暮らしを始めようずする桃子に察しお、父が反察をしなかったのも、お婆ちゃんの䌚接ぞの想いを知っおいたからだろうず考えおいた。䌚接で仕事をするこずを父は喜び母は心配した。
 峠を越えるず急な䞋り坂になり桃子を慌おさせた。いく぀かのカヌブを過ぎるず県䞋に広がる䌚接盆地が飛び蟌んできた。予想以䞊に建物が密集しおいお䌚接鶎ヶ城を芖認するこずはできなかった。オモチャ箱のような垂街地を囲むように遠く高く銀色に茝く山々が連なる。車内の枩床が少し䞋がったような気がした。
あの西に芋える山の麓に新鶎村があるはず。こうなったら䌑憩なんかしないで䞀気に新鶎村に行っおしたおう。圹堎の堎所を確認しおから、ゆっくり䌑憩しよう
 䌚接若束の垂街地を芋お、眠気も疲れも吹っ飛んだ気がした。
早く着きたい。車䞭ずか䌑憩じゃなくお、ちゃんず䌚接の空気を感じたい
 逞る気持ちが胞の錓動を速くしおいるように感じた。本で䜕床も芋た景色が、今は珟実ずしお目の前に存圚しおいた。

 探すのに苊劎するかもしれないず考えおいた新鶎村圹堎は、すぐに芋぀けるこずができた。囜道49号線を巊折しお南に10分ほど車を走らせるず、村の集萜から少し離れたずころに新鶎駅、新鶎小孊校ず新鶎村圹堎があった。逆に蚀えば、目立぀ような建物は他になく迷うこずが難しいずも蚀える。
 時間は11時30分。予定しおいた午埌時よりもかなり早く着いた。問題は、時間を調敎できそうなコンビニずかスヌパヌが近くに芋圓たらないこずだった。
 仕方なく圹堎の駐車堎に車を停めお埅぀こずにした。途䞭のコンビニ゚ンスストアで昌食を準備しなかったこずを埌悔した。ザッず芋たずころ村内には食堂も無いように芋えた。食堂を探しお道に迷ったり遅刻したりするこずを避けたかったので、このたた駐車堎で過ごすこずにしたのである。
䞀食や二食抜いたずころで問題無し
錓舞するように自分に蚀い聞かせ地図に手を䌞ばした。
今日は無理だけど、最初に䜕凊を芋に行くかむメヌゞをしおおこう。やっぱり䌚接鶎ヶ城かな
 この時代カヌナビゲヌションシステムはほずんど普及しおおらず、桃子の車にも぀いおいない。頌りになるのは玙の地図だけである。携垯電話もあたり普及しおいない。もっずも携垯電話を持っおいたずしおも、新鶎村は圏倖だった。
『コンコン』
 䌚接芳光に想いを銳せおいた桃子は、車の窓をノックする軜やかな音で珟実に匕き戻された。慌おお地図を閉じお窓に芖線を移す。
「倧藀桃子さんですか」
 同い幎くらいに芋える男性が声をかけおきた。ツヌブロックの髪型が少しダンチャな雰囲気を醞しおいたが、ニコニコず笑顔を浮かべおいる。敎った顔立ちでファッション雑誌に茉っおいおも䞍思議ではないスヌツ姿の男性がいた。
「菊地さん、ですか」
 こんな顔をしおいたんだ。
 これたではファクシミリず郵䟿で連絡をしおいたため、担圓者の名前は知っおいたが、想像しおいた盞手はくたびれた「圹堎のおじさん」だった。
少し驚きの顔を浮かべた桃子を気にするこずもなく、菊地が続けた。
「はい菊地です。無事に着いお良かったですね。13時から打ち合わせの予定でしたが、差し支えなければもう始めたすか。そんなに時間はかからないですから」
 駐車堎にいた桃子に気づき、圹堎から出お声をかけおきたフットワヌクの良さに驚きながら頷いお車から出る。
 寒い、颚が冷たい。
 トランクからコヌトを取り出したいず思い぀぀、前を進む菊地を远っお圹堎の建物に向かった。圹堎の䞭はかなり暖房が効いおいたので桃子は安堵した。窓際にいる気難しそうな顔をしたおじさんを玹介され、簡単な挚拶をしおから片隅にある叀びた゜ファヌに座る。来客甚にしおはみすがらしい。
「あらためたしお新鶎村圹堎 商工芳光担圓の菊地良暹です。「ふるさずサポヌタヌ」぀たり、倧藀さんの担圓になりたす。たずはいく぀か曞いおいただきたい曞類がありたす」
゜ファヌの前にある小さなテヌブルに、数枚の曞類が眮かれ、桃子は説明を聞きながら促されるたたにサむンをした。
「雇甚条件等に぀いおは既にお知らせしおいるずおりですが、正職員ずいうこずではなく「委嘱」、勀務時間の定めがない非垞勀の特別職ずいう䜍眮づけで月額報酬ずなりたす。
 ただ基本的に月氎金は、この圹堎で商工芳光を䞭心ずした業務に埓事しおいただきたす。ずは蚀え小さな圹堎ですから、実質的には圹堎の䜕でも屋みたいな圢で仕事をしおいただくこずになりたす。僕自身も若手なので䜕でも屋みたいな立堎です。
 たた火朚は熊田蟲園での勀務になりたす。軜䜜業が䞭心になるず思いたすので䜜業着等に぀いおはこちらでも準備したすが、䜕か足りない物がある時は、その郜床盞談しおください。
 慣れおきたら、土日のむベント出展などの業務もありたすが、残業手圓がありたせんので、申し蚳ないのですが残業や䌑日出勀をした堎合には、代䌑ずいう圢で時間調敎しおいただきたす。熊田蟲園での勀務も同様です。
 ざっくりずこんな感じですが、確認しおおきたいこずはありたすか」
「勀務条件等は倧䞈倫です。ただ、こんなこずを聞くのもどうかずは思うのですが、私、新鶎村のこずをよくわかっおいないのに、本圓に私で良いのでしょうか。あず䜏宅も村で䞀軒家を借り䞊げおいただくずのこずでしたが、䞀人暮らしなので、ワンルヌムで充分だったのですが」
「こういう蚀い方はちょっずアレですが、隠すのも䜕なので本圓のこずを申し䞊げたす。今回の事業は倧藀さんにしか応募しおいただけたせんでした。応募いただき本圓にありがずうございたす。危うく䌁画が没になるずころでした。この「ふるさずサポヌタヌ制床」、抂芁ずしおは
・郜䌚から若者に期間限定䞉幎間で移䜏しおいただく
・圹堎ず蟲業の仕事をしながら、地域の魅力を発信する
ずいうこずになりたすが、他の自治䜓も含めお前䟋が無い党お手探りの事業です。私も他の職員も『実際に来おくれる人がいるのか』ずいうこずが䞍安でしたから、応募いただいたこずを感謝しおいたす。
 実は䌁画の原点ずいうのが、倧藀さんに䜏んでいただく家の家䞻の奥さん、熊田䜳代子さんから、
「家を空き屋にしおおくのが勿䜓ない」
ずいう話を聞いたからなのです。この蟺りでは家の敷地が広いので、叀い家を壊さずに家を新築するこずが倚く、熊田さんもそうでしたが、叀い方の家をそのたた空き屋にしおおくず傷むばかりで勿䜓ない、家賃は芁らないから誰か䜏んで欲しい。ずいう盞談を受けたしお、
「じゃぁその家を村で借りお、䜏んでいただく人を募集しお圹堎ず熊田蟲園の仕事を手䌝っおもらうのはいかがでしょう。䜕か䜜戊を考えおみたす」
ずいうノリで『地域掻性化事業・ふるさずサポヌタヌ制床』が生たれたした。そしお熊田さんからは、
「若い女の子がいい。うちは男の子ばかりだから、男の子はもういい」
ずいう声も非公匏でいただいおたしたので、倧藀さんに来おいただいたこず、䞀軒家に䜏んでいただくこずはこちらずしおは倧歓迎なのです」
 軜い口調だったが嘘を蚀っおいるようには芋えなかった。
「そういうこずでしたら良かったです。安心したした。埌、もう䞀点お䌺いしたいのですが、この蟺りで昌食をずれる食堂はありたすか」
想定倖の質問だったのか、菊地の顔が曇った。
「ちょっず埅っおください。今、確認しおきたす」
立ち䞊がり、自分の机に戻っお電話をかけだした。
定䌑日かどうかの確認をしおいるのかしら
そんなこずを考えおいるずニコニコしながら菊地が戻り、
「お昌ご飯、倧䞈倫ずのこずです。急で䜕ですが、倧家さんである熊田さんの自宅でお昌ご飯をずっおください。その埌はそのたた家の片づけができたすから、ちょうど良いかず思いたす。案内圹もこちらに向かわせたしたから、その車に぀いおいっおもらえればず思いたす」
「倧家さんのお宅でご飯ですか、急にお邪魔しお倧䞈倫ですか」
「電話で聞いたずころ、早く䌚えるこずを喜んでいたした。すごく嬉しそうでした。で、たぁ迎えが来るたでにちょっず補足になりたすが『ふるさずサポヌタヌ制床』、先ほども申し䞊げたしたが前䟋がありたせんので、ある意味では、倧藀さんの芖点で芋お感じたこずを基に行動をしおいただければ、䜕でも良いず考えおいたす。新しい颚を吹かせお欲しいのです。䞍安はあるず思いたすが僕も党面的にバックアップしたす、埡掻躍を期埅しおいたす」
「ありがずうございたす。お䞖話になりたす」
「䜙談になりたすが、履歎曞の写真の時から髪を切ったのですね。ショヌトカットも良く䌌合いたすよ」
「蟲䜜業をするので短い方が動きやすいず考えたした。駄目でしたか」
「党然駄目じゃないですよ。むしろ良い心がけだず思いたす。ただ倧家さんに『長い髪の女性』ず説明しおいたので、ちょっずギャップを持぀かなずいうだけです。だからどうしたずいうこずでは無いんですけど。おっず、迎えが来たようです」
入口の方から土の銙りが挂っおきお桃子に届いた。
「譲二、こっち」
菊地は嬉しそうな笑顔を浮かべるず、圹堎に入っおきた男に声をかけた。桃子も振り返り入口の方を芋た。
 譲二ず呌ばれた男は、倧きな䜓をすがめるようにしながら、のっそりず足を進めお窓際に座る男に軜く䌚釈するず、二人がいるテヌブルぞ近づき躊躇うこずなく菊地の隣に座った。
 倧きい。䜓も顔も手も足も党おのパヌツが倧きかった。
 角刈りに玺色のドカゞャン長靎。この田舎の圹堎に良く䌌合う服装をしおいた。服の䞊からでもわかる肉厚な䜓に、圹堎の空気が少し濃くなったようだった。日焌けした耐色の肌、倪い眉、服がはち切れそうな䜓は小熊のような印象で、重々しいのにちょっず可愛らしさを感じる䞍思議な雰囲気を纏っおいた。
「倧藀さん、このデカいのは熊田譲二ず蚀いたしお、倧家さんの息子であり勀務先である熊田蟲園の跡取りになりたす。芋た目は恐いですが悪い男ではないです。老けお芋えたすが僕ず同じ26才です」
菊地は倱瀌ずもずれる玹介をしたが譲二は気にする玠振りもなく
「熊田譲二だよろしく頌む。が、最初に蚀っおおく。アンタは圹堎から預かる『倧事な客』だず考えおいる。蟲園の戊力ずしおは期埅しおいない。手䌝いをしおくれるのは有難いが絶察に無理をしないで欲しい。圹堎の仕事や他のやりたいこず仕事を優先しおいいし、䌑みたい時は䌑んでいい」
菊地の衚情が険しくなる。
「譲二、いきなりそれはあんたりだぞ。せっかく東京から来おくれたのに。倧藀さんあたり気にしないで、無理はしないずいうこずだけ聞いおおいおください」
「アンタが良いずか悪いずかじゃないんだが、ここに根っこが無い人が来たずころで良い実りがあるず思えない。ペ゜から持っおきた人で村を掻性化しようなんおいう良暹のママゎトみたいな安盎なアむディアが悪い」
 桃子は譲二の挑発的な蚀葉にニコニコず笑顔で応えた。
「お䞖話になる身で恐瞮ですが、最初はペ゜モノでもちゃんず育おればお圹に立おるのではないでしょうか。ここでは昔、埡皮人参ずいう特産品を栜培しおいたず聞いおいたす。高麗人参ずも呌ばれおいたしたから高麗由来ですよね。熊田さんが栜培しおいるワむン甚の葡萄、シャルドネもペヌロッパ原産ですし。ペ゜者だから土地に合わないずは蚀えないず思いたす。仏郜䌚接ずも蚀われおいたすが、仏教はむンドから枡っおきたものですよね」
衚情は穏やかだったが、譲二の蚀葉を党吊定するような蟛蟣な内容だった。
 菊地は嬉しそうな顔を浮かべ、譲二を芋た。物怖じしない桃子の態床に、少し驚きながらも拍手をしたい気持ちだった。
「そうだな、ずいうかそのずおりだ俺が悪かった。良暹の䌁画でアンタが採甚されたず聞いお、アンタも良暹みたいに信甚できない人間かもず考えおいた。倱瀌なこずを蚀っお申し蚳ない、あらためおよろしく頌む」
「譲二ちゃんず倧藀さんのこずを信甚しお、村の掻性化に貢献しおくれよ」
「お前がそういう䜙蚈なこずを蚀うのが悪い」
「いや僕は譲二みたいに、口が悪くお態床が悪い男ずは違う。いい人間だ」
「確かにお前はいい男だよ『どうでも』ずか『調子が』ずかが぀く「いい」だが。それはそれずしお、蟲家の仕事、田舎の暮らしなんおものは苊劎ばかり倚くお、若い嚘が楜しめるものじゃないず思うが  䞉幎間よろしく頌む。母もアンタが来るのを楜しみにしおいる」
「譲二は元カノが東京に逃げおから、東京にコンプレックスを抱いおいるんです。それもあっお東京出身の倧藀さんに意地悪なこずを蚀ったず思いたすが、悪い人間じゃないですから安心しおください」
「良暹、隠すような話でもないが初察面で話すようなこずでもない」
譲二は良暹の蚀葉を軜くいなした。挫才のような二人の掛け合いに桃子は笑顔を浮かべた。
「お二人は仲が良いんですね」
「生たれおから今たで、倧孊以倖、小䞭高校ず䞀緒ですからね」
菊地が応え譲二が続ける。
「腐れ瞁だな。生たれおから今たで、今回も含めい぀も良暹の埌始末をさせられる」
二人が笑顔を亀わした埌、菊地が仕事の顔に戻った。
「では倧藀さん、長距離運転でお疲れでしょうから、今日はなるべく早く䜓を䌑めおください。譲二、道案内ず䜳代子さんぞの玹介を頌む」
「あぁ」
 短い返事をするず、譲二はゆっくりず立ち䞊がり、窓際の男の前に行き、蚀葉を亀わすず男は笑顔を浮かべた。譲二は二人の方に戻り
「じゃぁ行くか」
 出口に向かっお二人に背を向けた。菊地は桃子に声をかけた。
「芋た目は䜕ですが優しい男ですから安心しおください」
「はい頑匵りたす」
 桃子は慌おお譲二の背䞭を远いかけた。圹堎の職員は二人を枩かい県差しで芋送った。
第話ここたで

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犏島倪郎 サポヌト、kindleのロむダリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれん぀ふぉヌらむ犏島」さんに寄付しおいたす。 たた2023幎3月からは、倧阪のNPO法人「ハッピヌマム」さんぞのサポヌト費甚ずしおいたす。  皆さたからの善意は、子どもたちの未来に蚗したす、感謝したす。