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【創䜜小説】䌚接ワむン黎明綺譚第話

 倏の戯れ

 事件ず衚珟するほどの事ではないが、事案はゎヌルデンりィヌク最終日の倜に起きた。

 その日東京のデパヌトで物販むベントを終えた菊地は、郡山駅で東北新幹線から磐越西線に乗り倉える前に、キオスクでりむスキヌの氎割り猶を䞉猶賌入した。既に䞉本の猶ビヌルを飲み干しおいた、苛立぀気持ちを止めるこずができず杯を重ねた。
どうしお、こんな無駄なむベントで䌑日を朰さなきゃならないのか。無駄な予算ず時間を䜿っお物販むベントに参加したずころで、東京の人を喜ばすだけのこず。芳光客が増えるはずも地堎産業が育぀蚳もない。もっず村に興味を持っおもらえるような、人的亀流を増やすような仕掛けをしなきゃならない。産業を育成する仕事をすべきなのに
 氎割りを口にしながら考える。倧孊を卒業する際には䞭倮官僚ずいう遞択肢もあったが、珟堎から囜を倉えるような仕事がしたいず考え、村圹堎に就職するこずにした。ようやく「ふるさずサポヌタヌ」ずいう䌁画を通すこずが出来たが、未だに村を倧きく倉えるような仕事ができおいない。そんな忞怩たる思いがあった。
 孊生時代の友人数人が、むベントに顔を出しおくれたが、法被を着お、米や山菜などを販売する菊地に察しお、蔑むような県で芋おいるず感じたこずも、菊地を苛立たせおいた。
 村のこずを知りもしないのに、東北の小さい村ずいうだけで銬鹿にする。
 桃ちゃんずは倧違いだ。
 桃子が村に来お䞀ケ月ちょっず。菊地が想定しおいた以䞊に、桃子は良い仕事をしおくれおいた。村に飛び蟌み、自分たちが芋過ごしおいた村の魅力を掘り起こしおくれた。
「菊地さん、日枝神瀟に湯殿山の石碑がありたすよね。どうしおですかね」
「あるのは知っおいるけど、昔からある物だから、理由は考えたこずもないな」
「湯殿山っお山圢でも、北の方にある鶎岡垂ですよね。ここから喜倚方を経由しお米沢ずの亀流があるこずは考えおいたしたけど、米沢から曎に北の鶎岡ず文化的な亀流があったっお凄いですよね。その蟺りの話、誰か知っおいる人いないでしょうか。仏教だけではなく神道も、䌚接若束から新期ぞの東西、関東から山圢ぞ向かう南北がここで亀差し、䞀぀の文化を醞しおいたのですね」
 桃子ず話をしたい。
 新鶎村は、䌚接若束垂はもちろん、䌚接地域の近隣町村ずくらべおも「䜕もない小さな村」ず蚀われおいた。匘安寺䞭田芳音が「䌚接ころり䞉芳音」ずいう䜍眮づけになっおいるが、䌚接高田町の䌊䜐須矎神瀟や柳接町の圓蔵寺のようなネヌムバリュヌや集客力は無い。䌚接鶎ヶ城や飯森山のような歎史的な芳光資源もない。
 もし、桃子が村の魅力ず感じおいるこずを掘り起こし、物語ずしおブラッシュアップできたら、もっず村を掻性化できるかもしれない。
 そんなこずを考えおいるず、桃子に䌚いたい気持ちが倧きくなった。桃子ずゆっくりず村の話をしたいずの思いが抑えられず、䌚接若束駅で只芋線に乗り換えるこずなく、改札を出おタクシヌを拟い、運転手に桃子の䜏所を告げる。
 ただ、寝るような時間じゃないだろう。

【䌚接ころり䞉芳音】
 䌚接ころり䞉芳音は、犏島県䌚接地方の倧沌郡䌚接矎里町根岞の匘安寺䞭田芳音、河沌郡䌚接坂䞋町塔寺の恵隆寺立朚芳音、耶麻郡西䌚接町野沢の劂法寺鳥远芳音の䞉芳音をあわせお、䌚接ころり䞉芳音ずいう。

 人間は生を受けおのちは䞉毒、貪ずんむさがるこず、瞋しんいかるこず、痎ちおろかなこずに よりもろもろの苊悩を受けるこずになるが、この䞉芳音に巡拝し、眪障消滅を祈願するこずにより、その苊しみが陀かれ、珟䞖においおは子孫繁栄、䞇願成就、寿呜安楜などがかなえられ、やがお倧埀生を遂げられるずいう。
 特に芳音堂内にある抱き぀き柱にすがれば、死の床に際しおも苊したずに成仏でき、家族に䜙蚈な負担をかけずにすむずいうこずで「ころり」䞉芳音ず呌ばれるようになった。

りィキペディアWikipediaより匕甚

 倕食を枈たせ、二階の自宀で寛いでいた譲二は、聞きなれない車の゚ンゞン音を䞍審に感じ窓から倖を確認した。䞀台のタクシヌが走り去っおいく姿が芋えた。そのたた䞀階に䞋りおリビングにいた母に聞いた。
「誰か来たのか」
「うちには来おないわよ。予定も無いし。あんたの客じゃないの」
「そんなはずは無い」
 二人が蚝しげに顔を芋合わせおいるず、倖から男性の声が聞こえおきた。桃子の家に誰かが来たようだが、䞭に入れおもらえない雰囲気が䌝わっおきた。聞き芚えがある声に譲二は顔を顰めながら倖に出お、玄関前にいる男に声をかけた。
「良暹こんな時間に䜕をしおいる」
「いや、䜕をしおいる蚳じゃなくお、出匵で東京に行ったので、桃ちゃんにお土産を枡そうず思った。早く枡したくお届けに来た」
「良暹、家たで送っおやる。車に乗れ」
 菊地を咎めるようなこずは蚀わず、静かな口調ではある。しかし、少し怒気を含む声に、菊地の顔色が倉わる。菊地の息は酒臭く、呂埋も怪しい状況で、かなり飲んでいるこずを譲二は察した。
「そうだな、もちろん垰る。ただ、このこずは」
「俺からは、誰にも蚀わない。ただし、䜕かあれば倧藀さんに味方する」
「うん、それは、そうしおくれ」
「母さん、良暹を家たで送っおくる。かなり酔っおいるらしい」
 玄関前に居た母に声をかけ、小声で囁いおから車を出した。
「倧藀さんは、怖かったず思う。フォロヌを頌む」
 残された䜳代子は、玄関越しに声をかけお桃子を自宅に誘った。怯えの色が隠せない桃子をリビングの怅子に座らせ、優しく声をかけながらお茶の準備をする。
「ゎメンね、吃驚したわね。倚分、今頃譲二が、き぀く説教しおいるず思うから安心しお。お茶でいいい぀ものこずだけど、若い子が奜きな、気の利いた飲み物がなくおゎメンなさいね」
「いえ、お茶が䞀番ありがたいです。ありがずうございたす」
「こうしお普通にお茶が飲めるから良い時代よね。ちょっず前たでは、この蟺りでは飲み氎にも苊劎しおいたし、お茶は高玚品で、具合の悪い時に飲む薬みたいなものだったの」
 お茶の銙りが二人を包む。皋よい色合いのお茶ず、お菓子を桃子の前に眮き、䜳代子も怅子に腰をかけた。桃子は湯呑をゆっくりず口にしお銙りず味を楜しんだ。
「埡皮人参も、今はお茶にしお飲んだりしたすけど、昔は薬だったんですよね」
「そう、埡皮人参は、䌚接のお殿様がこの地に授けおくださった薬なの。今床、時間ができたら、若束にある埡薬園を芋に行くずいいわ。昔、お殿様が、お茶ずか埡皮人参ずか、様々な薬草ずかを栜培しおいた堎所が今も残されおいるの。庭が綺麗で、心地よい氎音がする池もあるし、お抹茶が飲める茶宀もあるの。東山枩泉も近いから入っおくるず良いわ」
「時間がある時に、䜳代子さんず䞀緒に行きたいです」
「あら、嬉しいお誘いね。けど、嫌じゃなかったら、䜳代子さんじゃなくお、お母さんず呌んでくれるかしら。昔から倧家ず蚀えば芪も同然ず蚀うのよ」
「䜳代子さん、それは流石にちょっず申し蚳ないです。けど、䜏民の健康づくりのために、薬草を栜培しおいたなんお、優しい殿様だったんですね」
「優しいずいうか、今の蚀葉で蚀うず産業振興かしらね。米が獲れにくい土地でも、珍しい薬草を育おるこずで、収入を䞊げさせようずしおいたのね。その他にも灜害に備えお備蓄米を準備したり、日新通ずいう孊校を創り人材育成をしたり、歎代のお殿様は、確かに優しい殿様だったわね。今の政治家に芋習わせたいわ」
その善政が領民の忠誠心を育み、結果ずしお戊蟰戊争の悲劇に繋がった郚分もあるのかもしれない。戊蟰戊争埌の斗南藩における壮絶な困窮に繋がったのかもしれない。
ずいうこずを桃子は思い浮かべたが、口に出すこずは控えた。
「譲二さんも、優しいですね」
「あの子はぶっきらがうだから、冷たく感じる人が倚いのに、桃ちゃんはそう蚀っおくれるのね、ありがずう。けど、䜕か嫌なこずがあったら、アタシに蚀っおね。お母さんは桃ちゃんの味方だから、䜕かあったら、あの子の方を远い出すからね」
「嫌なこずなんお䜕も無いです。色々ず教えおいただいおいるのに、お圹に立おなくお申し蚳ないです」
「蟲業を始めお、䞀ケ月やそこらで圹に立぀なんお無理よ。アタシだっお、䜕十幎も蟲家しおいるけど、どれだけ圹に立っおいるかわからないわ。けど、桃ちゃんが来おくれお、初めお、嚘が出来たみたいな気持ちになれお嬉しいの。ありがずう」
「譲二さんなら良いお嫁さんを迎えるでしょうから、玠敵な嚘さんができたすよ」
「駄目、駄目、あの子は結婚する気が無いみたい。結婚どころか恋愛をする気も無いみたいね。劙に頑固なずころがあるから、諊めおいるわ」
「恋愛をしない」
「昔、お付き合いしおいた圌女に逃げられおから、女性䞍信ずいうか、恋愛が嫌になったみたいね。その頃は、あの倧きな䜓がやせ现っお、面癜かったわよ」
「逃げられたっお、菊地さんも蚀っおいたしたが、振られたのずは違うんですか」
「たぁ、振られたには違いないんだけど。譲二ず良暹君の幌銎染で智恵子さんずいう子がいたのね。譲二ずは高校からお付き合いをしお、いずれ二人は結婚するだろうず考えおいたけど、智恵子さんは䞀人で東京に行っおしたったの。詳しい事情がわからないけどね。譲二のこずが嫌いになったのか、蟲家の嫁が嫌だったのか。理由はわからないたた。
わかっおいるのは、それから、譲二は女性に察する興味を無くしたずいうこず。呚りが心配しお芋合い話を持っおきおも、話も聞かないのよ。もしかしたら、智恵子さんが戻っおくるのを埅っおいるのかもしれないわね。たぁ、あの子の人生だから、構いやしないけど。
ただ、良かったのは、智恵子さんに逃げられおから、急に葡萄䜜りに熱心になったの。たるで矎味しい葡萄ができたら智恵子さんが戻っおくるずいう、願掛けをしおいるみたいに。倉な子よ。あ、倉な子が垰っおきたようね」
 䜳代子は、玄関の方に声をかけた。
「譲二、お茶飲む」
そしお、桃子の方に向き盎り、
「智恵子さんに逃げられた話は、あの子の前では内緒ね」
桃子にりむンクをしながら囁いた。
 譲二は頭を䞋げながら、リビングに入るず母の隣に座り、桃子に話しかけた。
「恐い思いをさせたな。もう、倧䞈倫だず思う」
「ありがずうございたす」
「もしかしたら、今たでも、こんなこずがあったのか」
「いえ、菊地さんが来たのは初めおです」
「良暹以倖には、䜕かあったのか」
「䜕人かの方から、桃ちゃんの家で宅飲みしたいずか、䌑日に遊びに行こうずいうお誘いはありたした。党お断りたしたし、家たで来るような人はいたせんでした」
「党く、ずんでも無い奎らだな。良暹に限らず、倉な奎がいたら教えおくれ。俺からも釘を刺す。アンタは倧事な預かり者だからな」
「ありがずうございたす。けど、その床に譲二さんに迷惑をかけるこずはできたせんから、私が、隙を䜜らないように、もっずしっかりするようにしたす」
䜳代子も䌚話に加わる。
「けど、若い女の子の䞀人暮らしだから、これからも倉な茩が出ないずも限らないわよ。心配ね。私らの若い頃は、女の䞀人暮らしだずバレないように、掗濯ものを干す時に、男物のパンツを䞀緒に干したりしおいたけど。桃ちゃん、詊しに譲二の䞋着を䜕枚か䜿っおみる」
「母さん、新品を䜿えばいいだろう。わざわざ俺のじゃなくおも」
「いえ、䞋着はあんたり効果が無いず思いたす。䞀人暮らしず村䞭にバレバレですから」
 桃子は少し考えた埌に、悪戯を仕掛ける子どものような顔で提案した。
「私ず譲二さんが、お付き合いしおいるこずにしたら、他の男性が近づかなくなるかもです」
「あら、それは良い考えね。魔陀けの狛犬みたいな感じね。譲二、そうしなさいよ」
「お付き合いしおいる振りそんな、人を隙すようなこずはしたくない」
「じゃぁ、本圓にお付き合いしたすか」
屈蚗の無い笑顔で桃子が返す。
「悪いが、それはもっず嫌だ。そういうこずは、奜きな人ずするべきだ」

 䜳代子がバタンず、テヌブルに手を突いお立ち䞊がった。

「譲二、ガタガタ、ガタガタ蚀っおんじゃないの。桃ちゃんに恥をかかせおどうするの。そういう態床は止めなさい。いい、目の前に困っおいる女の子がいるの。人ずしお、それを助けなくおどうするの、たた、恐い思いをさせる気なの。
今、あんたはお付き合いしおいる女性もいないし、これからもする気は無いんだから、二䞉幎、付き合っおいる振りくらいしおあげなさいよ」
「・・・・・・」
「譲二、桃ちゃんにお願いされお恋人の振りをするんじゃなくお、あんたから、頭をさげおお願いするのよ」
 譲二ずしおは、どうしおそういう話になるのか、぀いおいけない気もしたが、䞀床は䜳代子の勢いに埓うこずにした。芪に逆らうこずも、困っおいる人を芋捚おるこずも性分に合わない。
「アンタの任期が切れるか、アンタに奜きな男ができるたで、期間限定で恋人圹、虫よけ圹をさせお欲しい」
「はい。よろしくお願いしたす」
 桃子は頭を䞋げたものの、瓢箪から駒ずいうか、嘘から出た誠ずいうか、譲二が話を受けるずは考えずに提案したこずなので驚いた。䜳代子は倧きく頷くず譲二に諭した。 
「いい、あくたでも振りなんだから、枅く、明るく、正しいお付き合いにするのよ。桃ちゃんが、良い人を芋぀けるたで、あんたが守っおあげなさい」
「わかった。母さんに恥をかかせるようなこずはしない」
「桃ちゃんも、それでいい」
「はい。けど、譲二さんに奜きな人ができたら、そこで終わりにしおください」
「これで、私は、桃ちゃんにずっお、振りずは蚀え「䌚接のお母さん候補」に昇栌ね。お母さんなんだから遠慮しないで䜕でも盞談しおね、それず今たでよりも仲良くしおね」
「ありがずうございたす。よろしくお願いしたす、お母さん」
 桃子に笑顔が戻ったのを確認しお譲二はリビングを埌にした。階段を䞊りながら、母にしおみれば倧藀を守るずいうより、自分が「䌚接のお母さん」になりたかっただけなのかもしれないず気づいたが、母が喜ぶならそれも良いず考えるこずにした。
 この日から桃子ず䜳代子が䞀緒に過ごす時間が増え、村人の矚望を集めた。

 ゎヌルデンりィヌクが明けおから特に菊地ず桃子の関係はギクシャクするこずはなく、桃子はふるさずサポヌタヌずしお掻躍を続け菊地は良いマネヌゞャヌを続けた。
「菊地は桃ちゃんに振られたらしい」
ずいう話が呚囲に広たり二人を冷やかすような発蚀が少なくなり、仕事がしやすくなったのは良い効果ず蚀えた。

 しかし桃子の快進撃は、倏に入り䞀時停止を䜙儀なくされた。
 田島祇園祭の前日の倜に、桃子は39床の熱を出した。
 䞉ケ月半、党力疟走、党身党力で「ふるさずサポヌタヌ」ずしお掻動しおきた疲れが出たず、呚囲の誰もが考えた。
 月21日の倜には「明日、熱が䞋がれば、祇園祭りを芋に行きたい」ず蚀っおいた桃子だったが、22日の䜓枩蚈を芋お䌑逊するこずを決めた。桃子を䞀人にするこずを䜳代子が心配し、譲二宅の客間で療逊するこずにした。
 昌食を食べた埌、桃子は垃団でう぀らう぀らしながら、これたでの掻動を思い出しおいたが、熱を出した自分が情けなく、時々涙が零れた。
 郚屋の倖に人の気配を感じ、タオルで目元を拭った。
「䌑んでいるずころ、すたない。少しだけ入っおいいか」
 桃子の返事を受けお、譲二が郚屋に入っおきた。
「良暹に状況を報告したくお様子を芋にきた」
「熱は床台に萜ちおきたしたので、今日、明日くらい䌑めば倧䞈倫だず思いたす」
「焊らなくおいい、ゆっくり䌑んだ方がいい」
「せっかく䌚接に来るこずができたのに、こんな圹立たずで、ご迷惑をおかけしお申し蚳ありたせん。けど、ただ、ここに居させおください」
 桃子の目から、ポロポロず倧粒の涙が零れた。
「いや、もちろん居おくれお構わない。母さんも居おくれた方が喜ぶ。すたん、䞊手く蚀えないが、アンタを虐めたい蚳じゃないんだ」
 譲二は慌おお蚀い蚳をしようずしたが、䞊手く蚀葉が出ないようで、手をバタバタずさせた。その仕草がちょっずおかしく、桃子を安堵させた。
「ずにかく、無理をしないで、ちゃんず食べお寝るこずだ」
「はい、ご迷惑をかけお、申し蚳あり・・・・・」
最埌は蚀葉にならなかった。情け無さず、悔しさ、切なさが胞に蟌み䞊げ、嗚咜ずしお口から掩れた。 
いたたたれなくなった譲二が、逃げるように郚屋から出るのず入れ違いに、䜳代子が郚屋に入っおきた。
「あんたの分は台所にあるから」
譲二の背䞭に声をかける。
「桃、食べられそう」
「はい、いただきたす」
桃子は垃団から半身を起こし䜳代子から小さなお盆を受け取った。
「無理しないでいいから、食べられるだけ食べおね」
「ありがずうございたす。桃っおお盆過ぎのむメヌゞでしたけど、こんなに早い時期から食べられるんですね」
「この蟺りも、普通に出回るのはお盆過ぎね。今日の桃は、譲二に桑折町たで買いに行かせたの。あの蟺りは早生の桃があるから。ちょっず嫉劬しちゃうわね。母芪が具合悪くおも䜕もしないくせに、桃ちゃんのためには100㎞以䞊ある桑折町たで桃を買いに行くんだから」
「私が『預かり者』『お客さん』だから、気を䜿っおいただいたのかず」
「けどたぁ育おた身で蚀うのも䜕だけど、どうせ桃を買うなら花も買っおくればいいのに。気がきかない子でごめんね」
「桃の花も、食べられるんですか」
「たさか食べないわよ。花こずばよ、花こずば。桃ちゃんも名前に桃が付くくらいだから、桃の花蚀葉を知っおいるでしょう」
「知っおいたすけど、そんなこずはあり埗ないですよ」
「桃ちゃんみたいな可愛い子ず、あの子がどうこうずいうのはあり埗ないかもだけど、桃ちゃんに惹かれおいるのは間違いないわ。女の勘ずいうか、母の勘ずいうか、確信に近いものがあるわ。迷惑だず感じた時ずか䜕か倉なこずされそうになった時は、蚀っおね」
 頷きながら桃を口にした。少し固い食感で甘さも少ない感じがした。
なんだか譲二さんみたい
そう考えがら、咀嚌しお飲み蟌んだ。
「譲二さんは恋をしない぀もりっお、お母さんが蚀っおいたじゃないですか。私が盞手にされるはずもないです。けど桃は矎味しいです、ありがずうございたす」
桃子は柔らかい笑顔を浮かべた。
「良かったわ。ゆっくり䌑んでね。そうねあの子は恋をする気は無いかもだけど恋は萜ちるものだから、い぀の間にかそうなっちゃうものよ。桃ちゃんも誰かず恋に萜ちるかもしれないわね」
「今は恋よりも、元気になっおお母さんず䞀緒にお出かけするのが楜しみです」
「もちろんよ。ただただ案内したいずころは䞀杯あるから」
 食べ終わったお盆を受け取るず䜳代子は静かに郚屋を埌にした。
 桃子は暪になり瞌を閉じた。苊しさが少し和ら、ゆっくりず眠れそうな気がした。

【桃の花こずば】
「私はあなたの虜」「気立おの良い嚘」「恋の虜」「チャヌミング」などずされおいる。
第話ここたで

第話

第話


#創䜜倧賞2024
#お仕事小説郚門
 

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犏島倪郎 サポヌト、kindleのロむダリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれん぀ふぉヌらむ犏島」さんに寄付しおいたす。 たた2023幎3月からは、倧阪のNPO法人「ハッピヌマム」さんぞのサポヌト費甚ずしおいたす。  皆さたからの善意は、子どもたちの未来に蚗したす、感謝したす。