「わたしはベジータかもしれない」~戦闘力と誠実さの話②臨界篇
店頭で若い女性スタッフが応対してくれた。
事情を説明したら、店の隅のサポートデスクの机に案内された。
チラッと見たら、いつものサポート担当の男性の姿があった。
50歳前後のいかにも技術系といった風貌だ。
お客は誰もいない。
後ろを向いて暇そうにパソコンをいじっている。
女性店員は、サポート男性の元に事情を説明に走った。
すぐに対応に来るものと思ったが、彼は来ない。
その女性店員がこちらに駆け戻ってきて、こう説明した。
「最初は試用版Officeが入ってます。3ヶ月で切れるのでそのお知らせがパソコンに出ています」
そんな事は分かっている。
わたしの購入したパソコンに、そもそもOfficeが入ってないのが問題なのだ。
それを店員に伝えるとまたサポート男性の元に走る。
すぐそこにいるのに来ない。
2メートル半先だ。
もう女性店員は伝書鳩のように行ったり来たり。
顔は引きつり、明らかに困っている。
そして何やら紙を渡されて、それを持ってきた。
それによると、わたしのパソコンには"永続版Office”が入っている。
しかし3か月の無料のお試し版を使った後でないと、永続版が登録出来ない。
そして、一度継続請求手続きをしてしまうと、二度と元に戻すことは出来ない。
つまり、本来であれば一生モノの権利は失われ、毎年サブスク版にお金を払い続けるハメになっていたのだ。
あの時もし、例の継続請求ボタンを押していたら…。
冷や汗が首筋を流れ落ちた。
なんてこったい。
そんな大事な事を一言も伝えてなかったのか!?
だいたい、すぐそこにいるのに、なぜ来ない。
なんで彼女に伝書鳩させてる!?
不誠実にもほどがある。
私はイライラしながら彼女に言った。
「なんで、あの人は説明にこないの?」
「彼が担当者ですよ。あまりに不親切じゃないですか?」
すると・・・。ようやくサポート担当は私の横に立った。
めんどくさそうに、不機嫌な顔をして現れた。
私は決して怒鳴らない。
書類とパソコンの画面を見せながら、「危うく永続版の権利を失う所だった。そんな大事な事を何故購入時に伝えなったのか?」
と静かに問うた。
すると事も無げにこういった。
「ちゃんと言いましたよ。忘れてるだけじゃないですか」
「言ってません。私は大切な事はその場でノートに書き留めてます」
といいながら小さなノートを差し出した。
形勢不利と見るや。
「大丈夫ですよ。継続請求ボタン押してもクレジットカード情報をいれなければ、手続きは完了しませんから」
「最近Microsoftの仕様が変わって、私も知らなかったし」
(はぁ!?知らなかった)
(お前が知らないことを、どうしてど素人のわたしが知ってるんじゃい!)
住んだ事無いのに、なぜか関西弁。
見下して、言いくるめようとしている。
何かがスーと奥に落ちていった。
足元から、地中深く沈み込んでいく。
この感覚…
…前にもあった。
【続く】
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