DCJPYとステーブルコインが拓く、決済の実装最前線【イベントレポート・中編】
前編では、富士通 西田浩朗氏の開会挨拶と、川崎ひでと衆議院議員による基調講演から、「2026年は実装の元年」という政治・規制の現在地をお届けしました。中編となる今回は、金融機関・決済キャリアが語った具体的な実装事例を2つのセッションからお伝えします。
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銀行預金をそのままトークン化する「DCJPY」──セッション1
続くセッション1のテーマは、銀行預金を直接トークン化する「DCJPY」の社会実装です。富士通 金融ソリューション統括部長の山本義規氏がファシリテーターを務め、議論を進めました。
DCP 代表取締役社長執行役員 CEO兼COO平子惠生氏は、DCJPYが銀行法上の預金として位置づけられ、預金保険の対象になる点を紹介。スマートコントラクトによって「お金に色をつける」(用途を制限するなど)ことができ、EDI(電子データ交換)システムと連携すれば発注から決済・記帳までを一気通貫で処理できるといいます。特に家賃収納業務では、リードタイムの劇的な短縮によって業務を削減できるとのことです。
SBI新生銀行 次世代金融部長の瓦田宗大氏は、SBIグループが10年前からオンチェーン金融の可能性を見据えてきたと振り返りました。DCJPYの導入によって加盟店への即時着金が実現し、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の大幅な改善が期待できるとのこと。Partior社のネットワークを通じた海外送金を効率化するプレバリデーション(事前検証)の実装検討や、SBIグループとして取り組む信託型円ステーブルコインJPYSCにおいて、年利3%を実現したレンディングサービスへの反響の大きさにも言及しました。

リテールから機関投資家まで──ステーブルコインと国際送金・セッション2
セッション2では、ステーブルコインと既存決済インフラの融合というテーマのもと、リテールから機関投資家まで幅広い実装事例が共有されました。ファシリテーターを弊社代表の籾倉が務めました。
三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部ダイレクターの下入佐広光氏は、資産のトークン化には安定した決済手段が不可欠だと指摘。
担保移動を高速化し流動性管理を高度化するためのJGB(国債)やMMFのトークン化、さらにはLCR/NSFR等の銀行規制による貸出余力の限界を突破するための貸付債権の流動化は、切実な経営課題だといいます。同氏は、2025年4月にTIS、Avalabs、Fireblocksと開始した共同検討の進捗や、3メガバンクが揃って検討を進める発行・協議の枠組みにも触れました。
au Coincheck Digital Assets 代表取締役社長の笠井道彦氏は、4000万人規模のau Payユーザーに対し、Web3の複雑さを意識させない実装を重視していくと語りました。同社の提携先であるHashPort社がローソン店頭で実施したステーブルコイン決済のPoCでは、既存のQRコード決済と同等の極めてスムーズかつ迅速な店頭決済スピードを実現したとのこと。UI/UXへの妥協なきこだわりこそが普及の鍵だと強調しました。
セッション終盤のパネルディスカッションでは、決済キャリアとスタートアップの視点の違いが浮き彫りになる一幕もありました。笠井氏は、4000万人規模の会員基盤を持つ「au PAY」が連携する「Ponta」などのポイントは、本来は顧客を他社に逃さないための「囲い込み(ロックイン)戦略」の道具であると説明。しかし、オープンなステーブルコインの登場によって「ポイントも他社チェーンで自由に使えるようオンチェーン化すべきか」という点は今後論点になるだろうとし、ユーザの利便性は高まる可能性がある一方、企業にとってせっかく囲い込んできたデータや顧客を手放すことになりかねず、社内でも様々な考え方があり戦略の根幹に関わる検討が必要になる、と言及しました。
これに対し、ファシリテーターの籾倉は、自社でのプロジェクトとして携わっているJR東日本の「JRE WALLET」を例に挙げ、単なるポイントをデジタルで配るだけでは企業のデータ蓄積(CDP)の域を出ずビジネスとして面白みに欠けると指摘。そこにNFTやステーブルコイン、デジタル証券が掛け合わさることで、真のオンチェーン経済圏が花開くというビジョンを語りました。決済キャリアが抱える「経済圏をどう守り、どう開放するか」というリアルなジレンマと、スタートアップが描く「技術を掛け合わせた新しい顧客体験」という攻めのビジョンがぶつかり合う、イベントの中でも特に盛り上がったシーンでした。

次回予告
後編では、「PoCの段階を脱して実サービスとして自立させるにはどうすればいいか」をテーマにしたパネルディスカッション(セッション3)と、カンファレンスの総括、そしてPOCKET RDとして感じたことをお届けします。ブロックチェーンと著作権、給付金の在り方など、politics×techの意外な接点にもぜひご注目ください。
\ イベントレポート後編はこちらよりぜひご覧ください!! /
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