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piccolotakamura
第31話 | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて
第31話 静かな夏 | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて
あれから1年が過ぎた。3人は高校2年生の夏を迎えていた。
拓実と優花は、あの日の公園での約束通り、新しい恋の物語を紡ぎ続けていた。時折、智之とサッカー部のマネージャーを交えて4人で集まることもあったが、集まる時にはいつも、「隊員の証」として、それぞれの胸ポケットに、それぞれの色の万年筆を差していた。
しかし、8月、3人を繋いでいたもう一つの源流が、静かにその役目を終えた。優花のおじいちゃんが、眠るように息を引き取ったのだ。
お通夜の夜、3人はおじいちゃんの書斎に集まった。主を失った部屋には、まだインクの香りが微かに漂っているかのようだった。使い込まれた万年筆が1本だけ置いてあった。
「おじいちゃん、最後まで言ってたの。優花たち3人が、ちゃんと自分のペンで自分の人生を書いていくのが楽しみだって。」
優花の声は小さかった。だが、悲しみだけでなく、深い敬愛の念がこもっていた。
拓実は、自分の黒い万年筆を見つめた。インクを入れ、書き方を教わり、そして大切な想いを綴る勇気をくれたのは、優花のおじいちゃんだった。
「明日、おじいちゃんの棺に手紙を入れるの。拓実も智之くんも、書いてくれるかな?私たちそれぞれのペンで。」
智之も、緑のペンを握りしめて頷いた。
「そうだな。おじいさんがいなきゃ、俺たちの友情も、これほど深まらなかったから。」
3人は、おじいちゃんの愛用していた便箋を3枚、それぞれ、そっと手に取った。
かつて、ロケット隊員だった頃と同じように、3人は机を囲んで座った。
今、耳に聞こえるのは、宇宙へ飛ぶエンジンの音ではない。3人のペン先が紙の上を滑る、サッ、サッ、という筆音だった。
…次回最終話

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