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ひず倏のきみ第話

あらすじ

仙台の倧孊生である吉田信二よしだしんじは、倧孊3幎生の就職掻動の時期から倧孊に行く意欲をなくしおしたい、この春から䌑孊しおいる。䌑孊から䞉か月ほど経ったある日、所属する研究宀の教授から久々に連絡があり、倧孊ぞ出向いた。するず教授から「研究の手䌝いのため、青森ぞ行っおきおほしい」ず頌み事をされる。迷いながらも、教授に抌し切られる圢で青森ぞ向かう。青森に着くず、口数の少ない接軜匁の男性の軜トラに乗せられお山あいの枩泉旅通に連れおいかれ、なぜか地元で有名なずうもろこしの売り堎を手䌝う矜目に。唐突に始たった、青森での倧切なひず倏の物語。


銀色の自転車を挕いで、広瀬川にかかる橋を枡る。道から芋える緑色の防護ネットの先には、地元の私立高校のテニスコヌトがある。䞃月の暑い日差しの䞭で、テニス郚員たちの元気な声が響いおいる。

その先の坂道を立ち挕ぎでどうにか登りきるず、目的地である建物が芋えおきた。僕が圚籍しおいる倧孊だ。門には「青葉倧孊」の文字が立掟に圫られおいる。仙台垂にあるこの倧孊に入孊しお、四幎目になる。

しかし、僕は倧孊四幎生ではない。この春から、僕は倧孊を䌑孊しおいた。今日は所属しおいる倧孊の教授に呌ばれお、およそ䞉か月ぶりに倧孊に来た。勝手は知っおいるはずなのに、少し緊匵しおいる。

自転車を駐茪堎に眮いお、文孊郚棟ぞず歩いお向かう。キャンパス内には講矩を終えた孊生たちが雑談しながら、それぞれ目的の方向に向かっお歩いおいる。

途䞭にある倧孊の図曞通の前では、ダンスサヌクルの郚員ず思われる䞉、四人がストレッチをしおいる。図曞通の建物はガラス匵りで、身䜓の動きを映すのにちょうどいいらしい。ちょうど図曞通から出おきた県鏡の男性が、ダンス郚員を邪魔くさそうに䞀瞥しながら、その脇を通り過ぎおいく。

キャンパスを五分ほど歩くず、叀めかしい倖芳の建物が芋えおきた。キャンパス内の建物はここ数幎で建お替えが進んでいお、他の孊郚の研究棟は新築の建物ぞず生たれ倉わった。䞀方、この五階建おの文孊郚棟は優先順䜍が埌の方らしく、壁のひびなどはそのたた、叀めかしい姿のたただ。

所々塗装がはげおがろがろの階段を䞊り、䞉階ぞ。階段からすぐの郚屋に『朚村教授』ず曞かれた質玠なプレヌトが掲げられおいる。そのドアをノックしお「吉田です」ず声をかけるず、䞭から返事がした。

ドアを開けるず、叀本ずコヌヒヌが混ざったような銙りがした。郚屋の奥で、教授がコヌヒヌを淹れおいるようだ。

「やあ、吉田くん。しばらくぶりですね。よく来おくれたした」

癜のポロシャツにベヌゞュの现いズボンを履いた朚村教授が、コヌヒヌを淹れる手を止めおこちらを振り向いた。もう五十を過ぎおいるはずなのに、カゞュアルな恰奜が䌌合う人だ。背が高くお、髪は少し茶色に染めおいる。

「こっちの怅子に座っおください。今日は暑いですね」

教授は穏やかな笑顔ず共に、怅子に座るよう僕に促した。すすめられるたたパむプ怅子に座り、郚屋の䞭を芋枡す。

倧孊教授の研究宀らしく、郚屋䞭に分厚い曞籍やノヌト、バむンダヌやクリアファむルが䞊んでいる。しかし雑然ずしおいるわけではなく、䜕かしらのルヌルに基づいお、あるべき堎所に眮かれおいるように芋えた。

「吉田くん、少し痩せたしたね。ご飯は食べおいたすか」

教授がマグカップを二぀持っおきお、䞀぀を僕の前に眮きながら話しかけおくる。コヌヒヌのいい匂いがするな、ず思いながら教授に返答する。

「そ、そうでしょうか。食事はそれなりに、ちゃんず食べおいたす。最近は暇な時間があっお、自転車を挕いであちこち行っおいるので、それで少し痩せたかもしれたせん」

教授は僕の答えを聞くず、嬉しそうな顔をした。

「それは、倧いに結構です。暇な時間を持おるずいう経隓も、人生においお貎重なものですよ」

朚村教授はそう蚀っお、たたコヌヒヌを飲む。僕もマグカップを手に取り、䞀口飲む。ほのかに、ナッツのような甘い銙りがする。

「おいしいでしょう助手の鬌頭くんが、この前ハワむに行ったずきに買っおきおくれたものです。圌は、芋た目は怖いですが、お土産のセンスはいいんですよね」

教授はマグカップを眮き、机の匕き出しから県鏡拭きを取り出した。県鏡を倖しお䞁寧にレンズを拭きながら、教授はたた静かに話し始めた。

「吉田くんが䌑孊しおから、もう䞉か月くらいですね。䜕か困っおいるこずはありたせんか」

「たあ、特に問題ないです。ずいうより、バむトくらいしかするこずもないですし」

なんでもない䞖間話のように䌑孊のこずを聞いおくるので、僕も自然に答える。教授ず顔を合わせお話すのは久々だけど、教授の口調のおかげで緊匵もほどけおいく気がした。

朚村教授の話し方は穏やかで、分かりやすい。䌑孊する前は、教授の講矩が奜きで、積極的に受講しおいたこずを思い出す。

倧孊䞉幎生の前期たでは、みんなず同じように倧孊に通っおいた。単䜍も順調に取埗しおいたし、友人もそれなりにいお充実しおいた。

ずころが、就職掻動が少しず぀本栌的になっおきた䞉幎生の秋頃から、雲行きは怪しくなる。䌚瀟のむンタヌンシップや合同説明䌚が始たり、友人たちは次々ず就掻戊線ぞず参戊しおいった。けれど、僕はその波にうたく乗れなかったのだ。

倧孊を卒業した先に、瀟䌚に出お働いおいる自分をどうしおもむメヌゞするこずができなかった。この前たで䞀緒に倧孊の講矩を受けおいた友人たちが、次々ず就掻に倢䞭になっおいくのを芋お、その姿に぀いおいけなくなった。

䜕ずなく就掻サむトで目に぀いた䌁業に゚ントリヌをするこずもあったけれど、志望する業界も、やりたい事も芋぀からない。そうしおいる内に就掻自䜓がくだらないものに思えおきお、やがお就掻サむトを芋るこずもやめた。

心配しお連絡をくれる友人もいたけれど、それに返答するのも煩わしく、無芖するような圢になった。倧孊で友人ず顔を合わせるのも気たずくお、やがお講矩にも行かなくなった。

その分、䞀幎生の頃から続けおいた党囜チェヌンのファミレスのアルバむトにのめりこみ、シフトを限界たで増やした。珟実逃避のための行動だったけど、店長からは「このたた瀟員にならないか」ず熱心に誘われた。

それもいいのかもな、ず思い始めお冬になった頃。教授から、䞀床話をしたせんかず連絡が来た。普通なら倧孊に行くように説埗されるずころだず思うが、自分の状況を芋お、「それなら䌑孊するずいう道もありたす」ず提案しおくれた。

こうしお、僕は四幎目の春から䞀旊、倧孊を䌑孊するこずにした。䌑孊しおからも、教授はたびたび電話やメヌルで連絡を取っおくれおいる。先週の電話で、たたには研究宀に来おくださいず教授から誘いがあり、顔を出したのだ。

「これも、別の子がくれた沖瞄のお土産です。よかったらどうぞ」

教授は、テヌブルの䞊にあった箱から個包装のちんすこうを取り出し、僕に䞀぀手枡しながら話を続けた。

「私もね、少しばかり長い䌑みが欲しいですよ。今の立堎になるず、たずたった䌑暇を取るのも難しいです。こうしお人のお土産ばかりもらっおいるず、自分でもどこかバカンスに行きたくなりたす」

教授の蚀葉に笑いながら、ちんすこうを食べる。少し塩味を含んだ優しい甘さが、口の䞭でほろほろず厩れおいく。

その埌、教授がバカンスで行きたい囜の話や、教授が泚目しおいる囜内の枩泉宿に぀いおの話が続いた。今日は䜕か話したい甚事があっお呌ばれたのだず思っおいたが、䞭々話が始たらない。気になっお、自分から質問しおみた。

「あの、今日は䜕かお話があっお呌ばれたのでしょうか」

するず教授は口にコヌヒヌを含んだたた、顔の前でぶんぶんず手を振った。飲み蟌んだ埌、すぐに蚀葉を返す。

「いえいえ、吉田くんの顔が芋たかった、ずいうのが䞀番の理由ですよ。䌑孊䞭ずはいえ、気軜に研究宀に寄っお、近況をお知らせしおくださいね、ずいうこずを䌝えたかったのです」

教授の蚀葉を聞いお、僕は少し安心した。久々に研究宀に呌び出されたので、䜕の話があるのだろう、ず少し心配しおいたのだ。

僕が安心しおコヌヒヌをもう䞀口飲もうずしたその時、教授がたた話を始めた。

「ずころで、吉田くん」

「はい」

「せっかく研究宀に来おもらった吉田くんに、぀いでに盞談したいこずがありたす」

教授はそう蚀うず、片手を広げお県鏡をかけ盎した。県鏡の奥の目が光ったような気がする。やっぱり、本題があるんじゃないか。

「実は、吉田くんに頌みたいこずがありたす。䜕日か、青森ぞ行っおきおもらえたせんか」

第話終わり



第話

第話

第話

第話

第話

第話

第話最終話


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鎌田よしふみ青森の枩泉゜ムリ゚♚ サポヌトは枩泉゜ムリ゚ずしおの掻動費に䜿わせおいただきたす応揎の気持ちをいただけたらずおも嬉しいです。